真・三國無双〜星彩の守り人〜   作:意思を継ぐ者

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第九話 諸葛亮様は僕たちにお話しがあるようです

「趙子龍が軍師に拝謁致します!」

 

「剣龍心が軍師に拝謁致します!」

 

「呂玲騎が軍師に拝謁致します!」

 

僕は趙雲様と玲騎殿と一緒に明日の江東へ出立する劉備様の護衛役という大役を授かった。

張飛様は詳しくは趙雲様に聞くように言ってたけど、どうやら趙雲様も細かい指示はまだされてないなかったようで、その件の指示については後日話すので、二日後に自分の住まいに来るようにと諸葛亮様に言われ、今日に至る。

 

「よくいらっしゃいました こちらにどうぞ」

 

出迎えてくれたのは諸葛亮様ではなく、赤毛に少し肌が黄色く、額には特徴な模様がある女性。

この人は月英様と言って、諸葛亮様の妻。

ちなみに諸葛亮様は毎日のように自慢の妻だと皆んなに言いまくっているので独身の兵士たちの心が抉られているとかなんとか……。

そりゃね、美人で頭も良くて優しいうえにセクシーな大人の女性だから自慢したくなるのは分かる。

何でも諸葛亮様は月英様の父上に自分の娘は酷女だと忠告されたらしいけど顔で選んだのではなく、綺麗な心に惹かれたのだと言って父上と月英様を口説き落としたのだとか。

でもね、このエピソードって美談みたいになってるけど、月英様ってバリバリ美人なわけですよ。

どこら辺が醜女なんですかね……。

だから何か美談になるにはちょっと説得力が足りないと言うか、う〜んって感じなんですが……。

 

僕たちは言われるがまま、客室に案内されたものの諸葛亮様の姿はなかった。

おそらく、久しぶりにゆっくりできると言っていたので自室にこもっているものと思われる。

まぁ、こもってると言っても、ゴロゴロしたりしているわけではないのだろうけど。

諸葛亮様は非番の日ですら、常に大局を見据え、外交や内政、軍備関係を思案しておられるようでこの前、劉備様と月英様が体調を崩されないか心配していたという話しを聞いた関羽様から聞いたと言う張飛様から聞いた張包様から僕は聞きました……。

それが本当なら休日と言っても、休日じゃない……。

張飛様なんて、非番の日は酒を浴びるように飲んでゴロゴロしてるだけなのに……。

 

「そちらに座り、お待ちください 今、孔明様を呼んで参りますので」

 

しかし広い家だ……。

これ張飛様の住んでる家の倍は有るぞ。

さすが劉備様が三顧の礼で迎えただけあって、待遇が他の武将や文官たちと違う。

こんだけ広かったら、星彩様や長敬様も小言言わないだろうから羨ましすぎる……。

 

「お待たせしました 貴方方が呉に行った後の対策を考えていたもので、少しばかり遅くなり申し訳ございません」

 

と、言いつつゆっくりとした足取りで諸葛亮様は客室へと入ってきた。

この感じ絶対、申し訳ないとか思ってないわこれ。

 

「御三方、明日の明朝には出立と言う予定ですが準備の進み具合はいかがでしょうか?」

 

諸葛亮様が僕たちの目の前に座ると同時に月英様がお茶四人分を用意して、一人一人置いてくれた。

さすが月英様。

動きがスムーズで気配りまでできる正にお嫁の鑑……。

 

「諸葛亮殿に言われた通り、五百の兵に急ぎ支度をさせましたので、いつでも出立は可能です 剣義に呂玲綺、お前たちはどうだ?」

 

「「準備万端にございます!!」」 

 

そりゃね、僕と玲騎は特に準備と言う準備はいらないからね。

趙雲様は兵や非常食の管理とか色々と大変そうだったけど。

 

「ですが婚礼の日時すら決まっていないとのこと 何故、こんなにも出立を急がれるのです?」 

 

「それは私も疑問に思っていた 様子を見るわけでもなく、すぐに呉に発つ理由が知りたい」

 

趙雲様と玲騎殿の疑問はごもっとも。

肝心の日取りが不正確で呉からの使者によれば、いつでも良いとのこと。

明らかに何か企んでるだろこれ……。

僕ですら分かるわ。

 

「趙雲殿、呂玲綺殿、少し考えてみてください 何故だか分かりませんか?」

 

諸葛亮様の問いかけに趙雲様と玲綺殿は眉間に皺を寄せながら、暫く考えこんでいたようだが、諸葛亮様の真意を見抜けず、二人とも黙り込んでしまった。

呉も何か企んでるだろうけど、諸葛亮様も何か企み……いや、策があるということなのだろう。

あ、正確には諸葛亮様と龐統様か。

劉備様の軍には今のところ、二人だけしか軍師と呼べる存在はいない。

でもこの二人は天才がすぎる……。

 

「剣義、貴方も分かりませんか?」

 

うわ、急にキラーパス来るやん。

諸葛亮様、趙雲様、月英様、玲騎殿の視線が一気に僕に集まる……。

やめてくれ……プレッシャーに弱いんだから……。

こうなると間違っててもいいから何か答えないとって気持ちになる。

 

「えーっと……孫呉が策を準備をする前に行って、慌てている間に帰ってくれば何とかなりそうだからとかですか?」

 

小さい脳みそから、それっぽいことを捻り出して答えてみたけど……。

どうだろうと思って、諸葛亮様の反応を窺うと目を細め、茶を一気に飲み干すと一つ浅く息を吐いた。

おっ? この反応は?……。

 

「掠っています 剣義には武芸の資質だけではなく、先見の明も鍛え甲斐がありそうですね 帰って来たら馬謖と共に私が徹底して鍛えてあげましょう」

 

「は、はい……ありがとうございます……」

 

ん?……えっ?……。

うわぁ……。

もしかしてやらかしたか?。

諸葛亮様の講義は一度受けた事があるけど高度すぎて、ついていけないから初日で離脱したんだよなぁ……。

朝早く起きて、薪を取りに行って戻ったらすぐに調練場に行かなきゃならない。

帰ったら、息つく暇もなく夏侯姫様の買い出しや夕食の手伝いもしなきゃならないのに諸葛亮様の講義なんて受けてたら、過労死するだろこれ……。

勘弁してくれ……。

 

「この政略結婚は恐らく孫呉の内部で三つの意見に分かれるはずです 今は過激派、中立派、穏健派が激しく口論していることでしょう」

 

諸葛亮様曰く、劉備様を亡き者にしようと企む派閥、劉備様を生かしたままその勢力を孫呉に取り込もうとする派閥、結婚を機に孫劉同盟を強化して曹操に立ち向かおうとする派閥が存在しているはずだと……。

何でそんな敵の内部事情まで読めるんだこの人……。

 

「美人之計とは関わる者たちが全員が納得し、口裏を合わせなければ成功は難しくなります 意見がまとまっていない中に劉備殿が来たとなれば派閥同士が牽制しあい、迂闊に手出しはできないでしょう なればこそ、今が好機なのです」

 

「諸葛亮殿の言う道理は理解しました ですが何故、そこまで呉との同盟に拘るのです?」

 

「確かにな 私は外交や大局に疎いからあまり強い事は言えないが、孫呉とやらはわざわざ主君を危険にさらしてまで手を組む勢力なのか?」

 

この政略結婚に納得できていないのは趙雲様と玲騎殿だけではない。

反応を見るに張飛様や関羽様だって乗り気ではないはず。

かつて魏軍だった父も孫呉は孫堅や孫策が君主だった時から、人当たりが良く和気藹々とした雰囲気が売りだったと言ってはいた。

しかし孫堅は帝の物であるはずの玉璽をどさくさに紛れて盗んだり、孫策は袁術の世話になっていたにもかかわらず、騙して江東で挙兵したとも聞いた。

したたかで何か腹に一物ある人物が集まっているのではないかと、僕自身も疑っている。

孫呉の武将や文官たちが全員そう言う人物ではないのかもしれないが、実際に今回の結婚でも何か企んでるのは明らかだろう。

だから皆んなが劉備様を危険に晒してまで、縁戚になり同盟を組むと言うのは危険だと思うのは無理はない。

 

「時が来るまでは呉の力は必要なのです 曹操軍は天下の半分を手中にし、孫呉にすら我々の今の国力で勝つのは困難と言えるでしょう」

 

確かに赤壁の戦いでも、呉の協力がなければ今頃、曹操軍に呑み込まれていたことは容易に想像はつく。

言われてみれば、張飛様、関羽様、趙雲様などの最強格の猛将を擁し、諸葛亮様や龐統様の天才軍師に加え、最近では呂玲綺殿、月英様、周倉様、関平様という優秀な武将たちが劉備様の陣営に加わったものの、それを活かすだけの兵力や兵糧がないのは否定できない。

 

「しかし呉と組み、後方の憂いをなくし、蜀を奪い国力をつけた後、漢中へ侵攻し涼州を手懐け、同時進行で宛へと出兵し、その勢いのまま許都を攻めます その時が来れば、我々は曹操や孫権を上回る力をつけているはずです」

 

まるで役者のセリフのようにスラスラと言い終えると、諸葛亮様は微笑する。

これが三國時代、最高の軍師と名高い伏龍こと諸葛亮孔明というのか……。

この人は一歩先どころか、百歩先を見ているのだろう……。

 

「しかし周瑜は私よりも知略に長けた呉の名将 何かしら仕掛けくるはず その時、本当に私だけで対処できるでしょうか…… 殿の身に万が一の事があれば、荊州の皆に顔向けが……」

 

こんな弱気になる趙雲様は珍しいな……。

劉備軍にとっては絶望的な状況だった長坂の戦いの時、阿斗様や夫人を助ける為に一人で曹操軍に突撃した人だ。

どんな逆境でも劉備様の為なら、決して諦めずに活路を見い出そうとする完璧超人の姿しか見た事がなかったから、趙雲様も人間なんだなと安堵にも似た気持ちになる。

 

「ご安心を 趙雲殿には三つの袋を渡しておきます」

 

諸葛亮様がそう言うと、月英様が色のついた錦の袋をすぐに趙雲様に手渡す。

てか、このやり取りは夫婦でリハーサルでもしてるのだろうか……。

想像すると、ちょっと面白いけど。

 

「その袋には呉を出し抜く策が書いてあります 赤い袋は蘆江に近づいたら開け、黄色の袋は年の瀬が近くなったら開けてください 白い袋はいざと言う時に開けるのです」

 

並の軍師にそんな事言われて、袋を手渡されても不安しかないけど、諸葛亮様ってだけで袋が御守りにすら思えてくるという……。

 

「あぁ、剣義殿と玲騎殿は基本的に趙雲殿の指示に従ってください と、言っても必ず劉備様と趙雲様を引き離すでしょうから、貴方達にも袋を渡しておきます 二人で共有してください」

 

そう言って、渡されたのは赤、黄、白、黒、緑、青、茶の六色の錦の小袋。

いやいや、趙雲様より多いやんけ!。

 

「白は蘆江に着いたら、青は趙雲殿と離れなければならなくなった時、残りは良き時に開けてくたださい ただ白、青、赤、黒、黄、茶、緑、の順番で開ければ、問題はありません」

 

ちょ、ちょ、ちょ、そんな早口で言われても覚えられないし、良きタイミングで開けろってまた曖昧な……。

とにかく、もう一度確認しとかないと。

 

「ちょちょちょ!? いやいや、もう一度よろしいですか?」

 

「情報を聞き逃していては一人前の将にはなれませんよ? もう一度だけ言います 白、青、赤、黒、黄、茶、緑、の順です」

 

「す、すいません」 

 

え?。

これ、僕が悪いん?。

厳しいすぎないですかね……。

 

「白き雲に大海の青を忘れ、赤き夕日が深く沈む 黒く染まりし空に身を委ねれば、黄色い満月に茶色の地面や緑の草木ですら踊る……と、復唱すれば覚えやすいでしょう」

 

「何ですか、それは?……」

 

「私が今、執筆している創作の物語の一部です ちなみに貴方方が来るまで書いていました」

 

いやいや、余計に覚えにくいわ!。

しかも遅れた理由はそれかい!。

今の時期は劉備軍師にとってめちゃくちゃ大事な場面なのに余裕見せすぎでしょ……。

涼しい顔で言うなや。

 

「さすがは孔明様! 引き込まれますね」

 

あぁ…ダメだこの夫婦。

僕たちは明日、命を懸けて呉に赴くと言うのに何を見させられてるんだ……。

 

「劉備様及び、我が軍の命運は貴方方三人にかかっていると言っても過言ではありません では託しましたよ」

 

最後だけ真面目なんかい。

とにかく帰ったら、すぐに色の順番をメモっておこっと……。

で、帰ったらすぐ星彩様と長敬様にスライディング土下座だな。

かくして、僕たちは諸葛亮様の宅を後にしたのだった。

 

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