SDガンダムフルカラー幻想郷劇場(SDガンダムフルカラー劇場×東方Project) 作:たくらまかん
「霊夢霊夢ー!」
霊夢
「あによ、うるさいわね。ふ、あぁ。まだ明け方じゃない……」
ガンダム
「真っ赤な霧! 空! 洗濯物! おじゃん!」オソトガー
霊夢
「意味が分からないわよーー、いやあぁぁ!?」センタクモノマッカッカ
霧が見渡す限りに満ちていた。宙に浮き、遠くを眺めども視界に映る景色は血で染まったように紅で覆われている。本来だったら人里が見えるのだけれど様子を伺うことも困難だった。昨日までの青は嘘だったというのか。
石畳の上に降り立ち、隣でこちらを見上げている友人に私は幻想郷の状態を報告する。
「ダメ。本当だったら妖怪の山まで一望出来るんだけれど、紅くて見れたものじゃないわね」
「そっかー」
状況を知ると眼に見える形でがくりと肩を落とすガンダムにつられて、私も気が滅入ってしまう。何せ、昨晩から庭の物干しに出していた巫女装束が霧のせいで紅一色に染まってしまったのだ。それに加えてこの騒動、自分が解決に乗り出さなければいけないという考えが頭をもたげていた。
「そういえばガンキャノン達は?」
「あー、魔理沙が来てて。服に付いた紅いのに苦戦してる」
自分の家を親指で示してそう言うガンダムに促され、お隣へ視線を送ると白い馬は依然変わらず目立っている。 博麗神社にやってくる参拝客に、ホワイトベースを拝むと御利益が云々を伝えている為、私の服のように紅く染まってしまったのではと心配したがまったくの杞憂であった。
「さてと、紫? 居るんでしょ?」
この異常事態だ。出てこないわけはないでしょ。思った通り、私の呼びかけに応じて目の前の空間に切れ目が走り、開くと同時にすかさず管理者が顔を出した。
「おはよう、ふたりとも」
「おはよー。久しぶりだね」
「そうね。元気そうで安心したわ」
ガンダムと顔を合わせるや、普段の胡散臭さはなりを潜め、子どもを見守る母親のように穏やかな表情を見せる。
不思議な感覚だわ、こいつもこんな顔をするんだ……。
日頃見受けることのない知人の姿に関心を寄せていると、紫は視線を私に向けた。さてと、と言うや一瞬でその佇まいを厳格なものにあらためる。流石のガンダムも彼女の変わりように眼を見開いていた。
「今、幻想郷中は見てのとおり紅い霧で覆われているわ。人里も大混乱よ。そしてこの騒動を起こしているのはここから離れたところにある洋館が元凶らしいの」
「あっちって霧の湖がある方向よね?」
「ええそうよ。湖の畔に建っているわ。それも、ガンダム。あなた達と敵対しているじおんと手をくんで……ね」
「あー、って。ええ!?」
紫から発せられた名に、私はガンダムと互いの顔を見合わせる。グフやザク、ガイアとか名乗ったドムが所属しているという組織が今回の異変の片棒を担いでいる。つまりは否が応でもれんぽーと彼らの競り合いは避けられなくなったということだ。
そう来るわけね、上等じゃない。心配することはないわ。あんなガンダム達に負け劣らずのほほんとした連中など私が直ぐに懲らしめてやるんだから。
「良いわよ、紫。今すぐじおんなんかーーって、あれ?」
「紫ー!」
振り向くと、そこに居たはずの話し相手がスキマもまとめて忽然と姿を消していた。ガンダムがあいつの名を叫ぼうとも辺りの空間に切れ目が生じることもない。
何で? どうして!? 疑問を投げかけても答えは当然出てこない。紫はこんな大事な話の途中で居なくなるようなお巫山戯はしない。
「この異変を起こした奴らが原因よ。紫の能力すら阻害するような能力を使ったんだわ、きっとそう」
「……」
私がそう言うも、ガンダムは何か思うところがあるのか眼をつぶって腕組みをする。考えに耽っているみたい。その思惑を知りたいといった衝動に駆られるけれど、なんとなく声をかけづらかった。そして、おもむろにガンダムの視線が私の方を向いた。
「そうだね。血ヘド吐くまでボコればきっと事情を説明してくれるよ」
「……ガンダム。あ、あなた意外に物騒よね」
「ちょ、失敬な!? ガンタンクじゃあるまいし」
やだもー、と何の汚れもない澄んだ笑顔を目一杯に浮かべながら否定する彼に、私は背筋に冷たいものを感じてしまう。だって、今のガンダムってば砲撃する際のガンタンクみたいな威圧感があったんだもの。ちょっと泣きそうになったわ。
☆★
我ながら謎を残した消え方をしたものだと思う。互いを見合うふたりを尻目に状況の説明において重要な部分を明かすくだりで私は逃げてきた。
「で、首尾はどうだ?」
「上々、といったところかしら。お久しぶりですわね。少佐ーーううん、今は中佐だったわね」
「まあな。今回の共同戦線に伴って友人のガルマが働きかけてくれたのでな」
「あら、良好な間柄ですこと」
スキマの向こう側、ムサイのブリッジへと辿り着いたところで私は数日ぶりに赤いモビルスーツと再会した。何故このような異変の中、彼のもとを訪ねたかと言うと答えは明白である。
「見事に紅くしてくれたわねー」
「やり過ぎたか?」
ブリッジの窓から真っ赤に霞む外の景色をふたりで眺め、シャアが頭を掻きながら反省するけど、私は顔を横に振って今回の異変にかける想いを明かす。
「気にしなくて良いわ。今回の異変は最近怠けている巫女の為でもあるの」
あの子ってば今までも修行に意欲を示さないできたのだけれど、お隣にホワイトベースが来てから輪をかけて義務を怠るようになってしまったのだ。これは全くの予想外である。
私の言葉に、あぁ、と声を漏らしてシャアは最初の時のことを持ち出す。
「ホワイトベースの行き着いた先か」
「ええ。ガンダム達と知り合ったはじめは彼らから神社へ、巫女がホワイトベースへって交互に行き来してて、これなら成長するだろうって思ったわ。でも最近じゃ朝起きたらまずホワイトベースに行っているのよ? 留守を他人任せの状況も一回あったし。このままじゃ巫女としての立場もぞんざいになるわ」
「分かった分かった。ストップな」
「え、あ……ごめんなさい」
シャアに手を揺すられ、気づいた時には頬が熱くなっていた。モビルスーツとはいえ、男性の前だというのにはしたないわ。こういうところはガンダムと変わらず宥めるタイミングが上手く感じる。
気持ちを落ち着かせていると、私を見上げていたシャアの眼が鈍い音を響かせた。
「フフ、ガンタンクならともかく。そこいらの小娘に我らじおんが負けることなどありえん。既にグフとガイア達を神社へ遣った」
「……そう、期待しているわ。でも簡単にやられないでよ? 霊夢には思い知ってもらわないと」
「適当に巫女とガンダム達を弄ってやるさ。幻想郷の連中には悪いがしばらくこの霧は晴らせん。これについては本当に構わんのだな?」
「あの子の、幻想郷のためよ」
幻想郷に配慮をしながらもその自信を揺らがせることない彼に私は安堵する。幻想郷はそう脆くもない。だからこそ気にかけすぎて決着が容易くついてしまっては困るのだ。紅魔の思惑など知ったことではないが、この異変を利用しないわけにいかない。
「あとガンタンクだけは何とかしてくれ。つーか、ホントに何とかして」
「じゃ、武運を祈るわっ」
「おいコラmーー」
急いでスキマに潜り込んだから彼の言葉ほぼ聞き取れることはない。それだけに今請われたことは難題なのである。あの子の砲撃だけ何でかスキマが通用しないのよねぇ。だから、シャアの依頼はやってあげたいけど出来ない。
自分の織りなす力の空間を抜け、ムサイから神社へと戻った私はそこで繰り広げられている戦闘を目撃するのだった。
☆襲撃、じおんの四連星★
こんなことが起きるんならさっさと応援を頼めばよかった。何故なら、紫の教えてくれた紅魔館ってところに行こうとした途端、じおんが神社にやってきたからだ。賽銭を入れたのは律儀だけど、もちろんこの状況でこいつらがここに来たのは別に目的があったからだ。
その目的がーー、
「でえぇぇいっ!」オレ達の足止めだ。
「きゃ!? 何よあの刀、ガンダムのとは違う?」
「当然だ、ヒートサーベルだからな。お前達にはここで大人しくしていてもらうぞ。賽銭は大量に入れたから安心しろ、お嬢ちゃん!」
「ありがとおじさまっ!」
「霊夢!」
グフの剣が熱を発して霊夢を襲う。そう、今回襲撃を仕掛けてきたのが青い巨星だ。一眼向けただけであいつは霊夢を標的とし、部下のザクII隊に命じてオレの周囲を封鎖している。
「足を止めてる場合か!」
「わわっ!?」
「タクラマカンでの借りはここで返すぜ、ガンダム!」
「うぉ!」
何とか囲みを解き、霊夢と合流したいのにさっきからザクマシンガンとマゼラトップ砲がバララ、ドンドン飛んできて邪魔する。ムカッ腹が立つから先に墜とそうと距離を詰めたら逃げるし。
「コラー!」
「やべ、逃げるぞ!」
「おう!」
「あ、逃げんな! ってか足早っ!?」
「おっ、止まったぞ! 撃てー!」
「くたばれフランス国旗色!」
「ギャー痛ぇ! くっそ待て!」
「逃げまーす!」
「全速前進!」
「あんたら真面目にやんなさいよ!」
ついに霊夢から怒られてしまった。とまあ、こんな感じでずっと神社の周りぐるぐる回ってたんだから怒られても仕方ないか。
「そうだぞガンダム。そんなザクIIごときに手間取っていたらホワイトベースもどうなるかな」
「っ、どういうことだ!」
逃げ続けるザクに対し、ビームジャベリンを投げながら聞くとグフは隣の木々の間にそびえるウチを指した。
「簡単な話だ。ガンダムの留守を狙ってあちらに黒い三連星が「夢想封印!」ぎゃあぁぁ!?」
「あぁー!? 隊長!」
「あ、おい!? 今h「うっさい黙れ!」
ふと見せた隙にチャンスが来たのだ。オレにモノアイを向けていたグフを霊夢が頭上から大玉をぶつけ、それに気を取られたザク達にオレはビームサーベルを振るった。
「霊夢ヒキョー」
「ガンダムひどー」
互いの外道ぶりを指摘しつつ、オレ達は石畳の上に伏す三機を一瞥する。モノアイから光は灯っておらず、警戒しながらこいつらの身体をつっつくも動く気配がなかった。
「ふふん、グフもたいしたことないじゃない」
「つっても手も足も出てなかったじゃん」
「う、うるさいわね……」
封魔針を投げても盾で払われ、いっきに間合いを取られていたのは焦った。霊夢も体術は出来るけど、グフの使う熱剣には避けることしか出来ていなかったのが事実だ。それにところどころ服が斬り裂かれており、軽傷とはいえ見ていて痕が生々しかった。
「ま、傷の手当てのついでにホワイトベース行こうか」
「え、ついで!?」
「大丈夫大丈夫。黒三なんかただの踏み台だもん」
「で、でもさー」
グフからああ聞いた時は反射的に驚いちゃったけど、ホワイトベースに一番戦力残っているし、そうそう不安要素でもなかった。霊夢はオレの言葉に得心がいっていないみたい。でもその証拠はスグ目の前に現れることになった。
「ほらアレ」
「え?」
視線の先に見えるホワイトベースを指し示すとやがてブリッジから二つの極太ビームが壁を突き破って紅空に走り、一瞬であるが青空が垣間見ることが出来た。続けて大規模な爆発が五つ続けて起こり、かすかに汚い悲鳴が神社まで響いた。
「ね?」
「あー、うん」
目の前のグフ達に叩きつけられるように落下したドム三機を前に、霊夢はただただ頬を引きつらせるだけだった。
魔理沙
「左舷、弾幕薄いぜ。何やってんの!」
キャノン
「いやいや、充分濃かったろ」
タンク
「まだぶっとばしたりない」ブー
幽香
「というワケだから私達に付き合いなさい。リ ッ キ ー く ん?」ジャキッ
リッキー
「エェェェ!?」
魔理沙
「てか幽香居たのかよ?」
幽香
「この状況、花に良くないからねぇ」コマッタワー
魔理沙
「あぁ、なるほどな」