GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版 作:ウルヴァリン
エース達リーパー隊が馬車を襲っていた盗賊を撃退したその日の晩、襲撃地点からそれ程離れていない場所に焚き火を囲む数人の男達が屯していた。
「頭、コダ村の連中が村から逃げ出してるみたいですぜ」
「いい獲物だ。だが昼間の妙な連中でこっちの手下がくたばったから人手が足りねぇぞ。なんか宛でもあんのか?」
盗賊の頭に手下の男達はコダ村の村人を襲う手筈を提案する。
だが昼間に馬車を襲わせた自分の手下はエースの救援により壊滅し、当初は40人ほどいた盗賊は20人にも満たない数になっていた。
たった20人弱では村丸ごとのキャラバンを襲うには大き過ぎる獲物だ。だが手下は何か宛かあるようで、すぐに笑みを浮かべながら頭に考えを知らせた。
「アルヌスの丘で戦った敗残兵なんざどうですか?戦の敗残兵をかき集めりゃ村どころかちょっとした町だって襲える筈でさぁ」
「領主を追い出すのも夢じゃねぇぜ」
「盗賊の頭が領主様か………悪くない……いい加減その日暮らしの盗賊には飽きちまったからな……へへっ……」
自分が領主となって何人もの美女を抱き、毎日贅沢な食事をしている姿でも想像したのだろう。
だがそんな淡い夢は瞬く間に闇に消えることとなる。
頭の首がゆっくりと身体からずれて、ゆっくりと地面に身体と一緒に倒れたからだ。
手下連中は最初は何が起きたのか分からなかったが、やがて自分達の頭が即死したことに理解して思わず声を出しながら恐れを抱いた。
「ふふふっ……おじ様方ぁ………今宵はどうもありがとう」
頭の後ろにあった岩の上に誰かがいることに気が付き、全員が一斉に視線を向けた。
‘‘闇’’
それが最初の印象だ。
フリルで飾った漆黒の服装に重い鉄の塊の如き重厚なハルバート。
血のように真っ赤な瞳。
そして柳のような細い腕と白魚のような細い指で重厚なハルバートを振り回す姿をした1人の少女。
その少女はスカートをつまみ上げ、一礼をするが不気味さは倍増するばかりだ。
その少女は笑みを浮かべ、優雅さを見せているが眼だけは笑っていなかった。
「生命をもってのご喜捨を賜り、本当にありがとう」
少女は唇を小さくひと舐めし、掲げたハルバートを眼にもとまらぬ速さで盗賊の1人を斬り捨てる。
「主神はぁ、あなた達の振る舞いが大層気に入られてぇ、おじ様方をお召しになるって仰ってるのぅ」
少女が1歩ずつ近付く度に賊の首が次々と刎ね飛ぶ。そして長い黒髪が揺れる中、焚き火の明るさで少女の素顔がはっきりと見えてきた。そして少女はくすりと笑いながら小さい口を開いた。
「私はロゥリィ・マーキュリー。暗黒の神‘‘エムロイ’’の使徒」
ロゥリィ・マーキュリー。
それが彼女の名前だ。
月明かりに照らされながらハルバートを地面に突き立てる。
そして彼女の正体を知った盗賊は今までにない位の恐怖を見せながら後ずさりを始める。
「十二使徒の1人……‘‘死神ロゥリィ’’⁉︎」
「ありゃ⁉︎エムロイ神殿の神官服だぁ⁉︎」
「に……逃げろぉおおっ⁉︎」
1人が大声で逃げろと叫ぶと、その言葉が感染したかのように辺りの賊に感染していって蜘蛛の子が散るように逃げ始める。
だがロゥリィは死の淵から逃げようとする賊を笑いながら追撃する。
「駄目よぉ」
自分の体重の何倍もあるかのようなハルバートを軽々と抱えながら飛び、すれ違いざまの賊の身体を次々と両断していく。
斧部を地面に叩きつけて舞い上がった頭ほどのサイズがある岩を空中で連続で弾きとばし、賊の後頭部に全て命中させ、深くめり込んだ岩も中にはあった。
そして直後に逃げる賊にハルバートを投げ飛ばし、自身も高々と舞い上がる。ハルバートは賊の身体を貫通し、鋒が地面に届くと地面が衝撃で陥没し、周りにいた2人の賊が吹き飛ばされた。
ロゥリィは地面に突き刺さったハルバートを着地したと同時に抜き取り、それを構えた。
構えた先にいるのは恐怖に動けなくなった最後の賊。
「ひぃ⁉︎」
「ふふふっ」
そして力を込めて最後の1人にハルバートを最後の賊に振り下ろし、賊の身体は盛大な砂煙と爆音の中で地上から消え去った……………。
コダ村の人たちを護衛する伊丹達。無事にエース達リーパー隊と合流を果たし、安全地帯へと向かう。
その道中でロゥリィと名乗る女の子と出会い、やがて太陽を背にするかのように巨大な存在が彼等に襲いかかる。
次回[炎龍]