GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版   作:ウルヴァリン

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15:黒の出会い

コダ村の避難支援を開始して3日。

 

コダ村を出発したのはいいが荷物を馬車に満載しているから必然的に足は遅かった。

こんな遅い状況で炎龍にでも襲われたら間違いなく被害者が発生する。

 

今の懸念すべき箇所はそこだ。

 

初日の段階で北側を偵察していたエースも合流し、戦力の増強は出来たが来る前に戦闘が発生して弾薬を少し消費したらしい。

 

対戦車火器はあるから炎龍にも対抗できるかもしれないけど、それでも襲ってこないことを心から願いたい。

 

高機動車の助手席で後続に続くキャラバンを見ていた。

 

 

 

「遅々として進まない避難民の列。次から次と起きる問題。増加する傷病者と落伍者。本当に難民ってのは何処でも同じなんだな」

 

「そうっすね。これって宛でもあるんですか?」

 

「ないってさ」

 

「ないんすか⁉︎」

 

「敢えて言うなら炎龍が襲って来ないことが分かるまでってらしい」

 

 

 

今の避難民は行く宛がない状況だ。

 

近隣に身内がいる街があるならそこに向かっていけば問題はないが、そんなのは一部しかいない。

すると無線機から通信が飛び込んできた。

 

 

 

<リーパー00から3-1>

 

「こちら3-1、感度良好。送れ」

 

<そっちの状況はどうだ?>

 

「これまで落伍した馬車は4台。焼却して避難民は歩くか他の馬車に乗ってもらってるよ」

 

<こっちも似たような状況だ。ハンヴィーにも子供や老人を載せてはいるが車両が足らん。可能だったら増援を呼ぶがどうする?>

 

「お前が俺だったらどう考える?」

 

<できることなら避けたい。近くに帝国軍がいないとも限らんし、下手に移動したのを見られて襲われたら民間人が犠牲になる。それだけら避けなきゃな>

 

「そういうことだ。もし万一に接敵したら俺たちが相手をする。エース達も火力で支援して欲しいけど頼めるかな?」

 

<任せてくれ。だが無理はするなよ。通信以上>

 

 

 

無線でエースに今の状況を簡単に知らせる。

 

既に高機動車内部には子供が3人に足を挫いて歩けない大人と妊婦、老人が1人ずつに森の集落で助け出して意識が戻らないエルフ族の少女が乗っていた。

 

他には俺にドライバーの倉田、副隊長のおやっさんに衛生要員の黒川2等陸曹と11人。

 

本来は10人乗りなので定員オーバーだが今の段階では仕方がない。

 

子供が3人ということであと大人1人位ならまだ余裕がある。だがこれ以上落伍者が増えれば流石に輸送科の1/2tトラックや7t特大型トラックを要請する必要がリスク覚悟で出てくる。

 

もしその部隊が敵に発見されたら動き出すだろうし、戦線拡大に最終的に被害が大きいのは全く関係がない民間人だ。

 

キャラバンに合わせて微速で移動していると少し進んだ先に何か映り込んだ。よく見えないので双眼鏡を取り出して前方を伺った。

 

 

 

「なんだ………カラス……えっ⁉︎」

 

 

 

双眼鏡に映し出されたのはカラスの群れ。

 

だがその中央からいきなりハルバートが姿を現して思わず双眼鏡を外してしまう。

そして改めて前方を確認してみるとカラスに囲まれるようにして1人の少女が路頭に座り込んでいるのを確認した。

 

 

 

「ゴスロリ少女⁉︎」

 

「ええっ⁉︎」

 

「女の子………それにゴスロリってなんですか隊長?」

 

「えっと……等身大の西洋人形みたいな女の子ですね」

 

 

 

おやっさんはゴスロリという意味が分からず、黒川も少女の外見を人形みたいだと口にする。

それ程までに無機的で隙のない造形をしていたのだ。俺は反射的に無線機を取り出してエースに連絡する。

 

 

 

「こちら3-1。リーパー00送れ」

 

<こちらリーパー00>

 

「エース。これから車列を停止させる。警戒してくれ」

 

<何かあったのか?>

 

「目の前にゴスロリ少女がいて道を塞いでいる。これから接触を試みる」

 

<ゴスロリ少女?>

 

「あぁ。なんていうかいかにも苛めてみたいっていう目でこっちを見てる」

 

<了解だ。気を付けてくれ>

 

 

 

後方のエースに状況を伝えると、直後に少女がこちらに歩み寄ってきた。

 

しかも肩にハルバートを担いで不敵な笑みを浮かべながらだ。

 

 

 

「あなた達、何処からいらして、何方に行かれるのかしらぁ?」

 

「………現地語だよな?」

 

「言ってる言葉は分かりませんけど、少なくとも日本人じゃ無さそうですね」

 

 

 

目の前にいる少女が口にしたのは日本語や英語ではなく、この世界の言葉だった。

これにより彼女が現地の人間であるということが判明した。すると少女を見た子供達が後部扉を開け、外に飛び出した。

 

 

 

「神官様だ‼︎」

 

「神官様‼︎」

 

「神官?」

 

 

 

子供達の言葉に現地語で神官という言葉が出てきた。すると大人達も降りて少女に歩み寄っていった。

 

 

 

「どこから来たの?」

 

「コダ村からだよ‼︎」

 

「村を逃げ出しておりまして………」

 

「炎龍が現れて、皆でここまで……」

 

 

 

大人達は跪いて祈りを捧げ始める。

 

 

 

「祈りを捧げているみたいですね?」

 

「あの変な服装は信仰的な意味合いがあるってことか……」

 

 

 

そんな推測をしていると、少女がこっちに気が付いて歩み寄ってきた。俺は座席に座りつつ、様子を伺うことにした。

 

 

 

「この変な人達は?」

 

「助けてくれたんだ。いい人達だよ」

 

「嫌々連れて行かれてる訳じゃないのね?」

 

「うん‼︎」

 

「これ、どうやって動いてるのかしらぁ?」

 

「分かんない。けど乗り心地は荷車よりずっといいよ‼︎」

 

「へぇ……乗り心地がいいのぉ?」

 

 

 

何を言ってるか分からないが、少女はこっちを見て唇を小さくひと舐めし、口元に指を持ってきて何か思い付いた表情でこちらを見る。

 

 

 

「私も感じてみたいわぁ。これの乗り心地」

 

「えっと……さ…ザワール アル ウール?(こんにちは、お元気ですか?)」

 

 

ひとまず現地語で挨拶をする。すると少女は後部扉から中に入ってきて、ハルバートを置くと何を考えているのか俺の膝に乗って来た。

 

 

 

「んふふふ〜♪」

 

「ち……ちょっと⁉︎」

 

「ふふふ♪」

 

「窮屈なんだが……」

 

「んふふ♪」

 

「どいてくれ⁉︎」

 

「羨ましいです隊長⁉︎」

 

「あらぁ?」

 

「って小銃に触るな⁉︎」

 

「ふふふ♪」

 

「だから触んなって⁉︎」

 

「羨ましいっす⁉︎」

 

「いや嬉しかねぇ⁉︎ってだから触んな⁉︎」

 

「羨ましいっす‼︎⁉︎⁇」

 

「いいから降りろー‼︎」

 

 

 

そんな訳のわからん攻防戦が続いてしばらく、何とか少女を片膝に移って貰うことで妥協して貰った。

 

そして気が付けば辺りの風景は草原から荒地に変わったようで、かなり長い距離を移動したことになっていた。

 

 

 

「だいぶ雰囲気が変わりましたね」

 

「村からだいぶ離れたからな。このまま逃避行も終わりにしたいよ」

「全くです」

 

 

 

そういいながら後方を見る。天候は晴天で、太陽の日差しが辺りを照らしている。

 

 

 

「こっちの太陽って……日本より暑くないか?」

 

 

 

ギラギラに輝く太陽を見る。

 

すると太陽を背にしながらこちらに向かって来る何かを見つけたが、よく見るとゲートの遭遇戦に遭遇したワイバーンだ。

 

人が乗っていないから野生か逃げ出したかのどちらかだと思う。脅威はないだろうと考えるがそれは次の瞬間に打ち消されることになる。

 

そのワイバーンに横から何かが噛み付いたのだ。

 

ワイバーンを遥かに上回る真っ赤な巨大に力強い翼、そして獰猛な黄色の眼球。俺は反射的に無線機を使って全ての車両に通信を送った。

 

 

 

「戦闘用意‼︎」

 

<リーパー00から全隊員‼︎コンタクト‼︎前に出ろ‼︎>

 

 

 

無線機からもエースの指示が鳴り響いていた。

 

脱出開始から3日、最悪の状況である炎龍に捕捉された……………。

 

 




炎龍に捕捉され、次々と犠牲になるコダ村の避難民達。それに立ち向かう為にエース達も全ての力を持って炎龍撃破に挑む。


次回[深紅の暴君]
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