GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版   作:ウルヴァリン

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17:怨み

アルヌス攻防戦から暫く、左手足を失ったエルベ藩王であるデュランは生き残った部下達によりある修道院に運び込まれた。

 

自身の身体の一部を失ったことはいい。

 

戦場に出るなら命を落とす覚悟をしていたから生きているだけまだ良かった。

しかし彼は何よりも自身を信じていた部下達を瞬く間に喪ったことに心を痛めていた。

 

彼はもとから60を超える年齢ではあったが前の黒く歳を感じさせなかった黒髪は白髪になり、覇気も無くなっていた。

 

そんなデュランの下に1人の来客が現れた。

 

赤髪の髪を束ね、騎士団の標準的な女性騎士の装備を身につけた赤い瞳をした幼さが見える女性。

 

ピニャ・コ・ラーダ。

 

皇帝第3皇女の地位に位置する皇帝と側室の間に産まれた女騎士で、皇帝の指示で自らの騎士団である‘‘薔薇騎士団’’を率いてアルヌスに陣取る連合特地派遣団の偵察の為、道中でデュランの存在を見つけてこの修道院に立ち寄ったのだ。

 

ピニャは目の前に寝台で横になった獅子に言葉を詰まらせていた。

 

 

「………デュラン陛下」

 

「…ピニャ殿下か……何故ここに参られた?」

 

「無論、アルヌスのことです。アルヌスに関する情報を散策中、ここに高貴なお方がおられると聞きつけ、立ち寄った次第であります」

 

「情報?……姫はアルヌスで何が起きたのかご存知ではないのか?……何も知らされておらぬのか?………我ら諸王国軍に何が起きたのか……」

 

 

デュランはピニャを睨みつける。覇気は失われたとしても、その瞳からは帝国に対しての‘‘恨み’’が存分に込められていた。

 

 

「隊列の中衛にいた儂は、アルヌスの丘が吹き飛ぶような爆発を目にした。まるで火山噴火だ………だが前触れの地震はなく、気がつけば目の前に広がったのはアルグナとモゥドワン両軍の死体が辺りを埋め尽くしておったよ……」

 

「両国の王は……どうなされたか?」

 

「…………死んだよ……リィグゥ公もだ」

 

「何ということか……」

 

「そして我らは一矢報いる為に3度目に夜襲を仕掛けたが見ての通りじゃ……細い鉄で出来た茨に遮られ、気がつけば儂は左手足を失ってこの寝台の上ということだ……」

 

「陛下……すぐに帝都に使者を送ります。医師と馬車を手配します故、一先ずは我等の下で体力の回復を図って下さい」

 

「ふん……もはや帝国に世話になろうとは思わぬ……」

 

「何故で……何故なのですか?」

 

「姫………連合諸王国軍は最後まで戦い抜いた……じゃが帝国は…皇帝はこうなることを知っておったのだろう…………。

帝国は我等よりも早く敗走していたのであろう?健在な我等を目障りとしておったのであろう?

つまり皇帝は……そなたの御父上は…我等の始末を敵に押し付けたのだ」

 

「………」

 

「知らなかったとは言わせぬよ姫………姫も皇帝の一族に身を置く立場………アルヌスの敵と戦い、どうなったのか………ご存知の筈だ」

 

 

いつの間にか敬称を無くし、怒りを見せるデュランにピニャは思わず後ずさりしようとしたが、何とか押し留めて凛とした姿勢でデュランに問いかけた。

だが先にデュランが口を開いた。

 

 

「すぐに立ち去るがよい姫………不実の鎧を身に纏い、欺瞞の剣に傲慢な盾を手にし、不義なる心で儂の前に立つではない。

そして我等の真の敵は異世界の軍勢ではない………其方たち帝国だ」

 

「陛下⁉︎もはやお怒りを鎮められよとは申しませぬ‼︎しかしせめてどうか敵についえ教えて頂きたい‼︎敵はどのようなものであり、どのような魔導を駆使し、どのような戦運びをした「触れるでない‼︎」⁉︎」

 

 

なんとか情報を引き出そうとしてデュランの肩に手を置いたピニャの腕を振り払い、帝国に対する怒りを隠そうとしないデュランは殺意を込めながら睨みつけた。

 

 

「もはや帝国に手助けなどせぬ。それに儂は敵を知る為に我が身を犠牲にした……ならば知りたくば姫自らがアルヌスに向かえば良かろう……そなたの私兵の血肉を犠牲にすれば知ることが出来ようぞ。

特に我等をこのようにした皇帝の娘たるそなたに教える情報などあらぬ」

 

「……そうは参りませぬ。何としても情報を教えて頂きます。もし頂けないならば我等はエルベ藩王国を逆賊とし、悉くを焦土としてみせましょう」

 

「ふん………戦を何も知らぬ小娘が……皇帝が皇帝ならば娘も同じく愚かということか……。

やれるものならやってみよ……偽りしかない剣を振るう業は…やがて自らに跳ね返るということを知るがよい」

 

「ぐっ………」

 

「帝国は力をもって好き放題してきた………だがアルヌスの異世界からの軍勢はそなたらを遥かに上回る力を持っておる。

儂は敵に恨みは持っておらぬ………寧ろ感心を持った。帝国など足元にも及ばぬ力を持ち、手傷を負った兵に慈悲を持って救いの手を伸べる………貴様ら帝国とは比べ物にもならぬのだ……。

その事実に気付き…真に悔い改め慈悲と赦しを乞うても誰も応じはせぬ」

 

「……………」

 

「その時になって………帝国に降り注ぐ死神の鎌を眺めるがよい‼︎‼︎もし儂が冥府へ先に逝くことになろうものなら、無様に散ったお前達を嘲笑いながら出迎えてやろうぞ‼︎」

 

 

これまでにないデュランの怒りにピニャは言葉が出なかった。

 

力を持って権力や腕力を持って屈服させれても、人心という城壁を崩すことは叶わない。もはやデュランから情報を得ることができないと判断したピニャは諦めて修道院を後にした。

 

ピニャの心に残ったのは頑ななデュランに対する怒り、諸侯にここまで離反させる父への憤懣である。

 

修道院を出ると自身の腹心であるハミルトン・ウノ・ロー、薔薇騎士団にて数少ない男性騎士で自身の叔父のような存在であるグレイ・コ・アルド、長年の部下であるノーマ・フレ・ガウが待っていた。

 

 

「姫様、騎士団でアルヌスに突撃なんて言いださないでしょうね?」

 

「妾もそこまで馬鹿ではない。だが何にせよアルヌスに向かわなければならない。ノーマ、伝令を出して本隊に移動の指示を送れ」

 

「承知しました姫」

 

「グレイ、この先に街はあるか?」

 

「ここからならばアルヌスに向かう道中にイタリカがあります」

 

「イタリカか………」

 

 

道中にて何か情報が転がっているかも知れない。

 

アルヌスの道中にあるのなら立ち寄ってもある程度の休息が出来るし、イタリカを統治していた前フォルマル伯爵とは面識があったから損はない。

 

そう判断したピニャは自らが率いる斥候を率いてイタリカへと向かう。

 

帝国の歯車が急速に且つ複雑に噛み合い、ピニャ達に運命的な出会いが待ち構えていた……………。

 




補給を受け、再び偵察を開始した谷率いる高雄隊。北側に100km程進んだイタリカ近郊を目指す。
一方で伊丹率いる第3偵察隊と現地商取引の見学を命じられたエース率いるリーパー01。アルヌスを目指すピニャ達もイタリカへと向かっていた。運命の地であるイタリカにて英雄と呼ばれる存在達が集結しようとしていた。


次回[イタリカへ]
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