GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版 作:ウルヴァリン
01:始まり
東京都銀座
ずっと仕事漬けだった俺は前から妻が来たがっていた銀座に休暇を利用して旅行に来ていた。
第2海兵師団に所属しているエース・W・クレイグ。
それが俺の名前だ。
日本に16歳まで留学し、帰国後に大学を飛び級で19歳の頃に卒業し、22歳の頃に軍曹。直ぐに士官候補生として訓練を受けて4年後にようやく今の階級である少尉に任官した。
少尉に任官して既に6年が経過し、近い内に昇進があるっていう話があるが、今は手洗いに行っている妻のエミリアを壁にもたれ掛かりながら待っている。
「ごめんなさいエース。思ってたより時間が掛かっちゃって………」
「大丈夫だよ」
店から出て来た俺の妻であるエミリアを迎える。
彼女はブロンドの三つ編みをした小柄の女性で、ハイスクール時代の後輩だったから両親とも前々から知っていた。
結婚したのは少尉任官から1週間後で、6年前にようやく一緒になれたっていうことだ。
エミリアは茶色のハンドバッグを肩に担いで、俺の左手を握って銀座を歩き始める。
観光地であって繁華街でもあるので人の賑わいは凄く、辺りに買い物袋を手にした同じ海外からの観光客が目立っていた。
しかも賑わいの中にも日本人らしい謙虚さと仁義が満ちており、観光客からの道案内を快く答えたり、持ち切れない荷物を持ってあげたりと親切な国であると感心する。
「けど日本ってやっぱりいい国よね?」
「あぁ。飯は美味いし文化は面白い。しかも住んでる人は親切で人当たりもいいから観光にはうってつけだよ」
「こんないい国だったら移住してみたくなっちゃうわ」
「全くだな。いっそのこと第3海兵に転属して沖縄にでも暮らしてみるってのもありだ」
「だったら嬉しいわね。日本のお寿司って本当にヘルシーだから………あら?」
「どうした?」
「なにかしら………なんだか騒がしくなって来たわ」
エミリアが何か聞き取り、俺も耳を研ぎ澄まして辺りを観察する。確かに少し進んだ辺りで騒がしくなり始め、イベントか何かと思ったがそんなものじゃない。
聞こえてきたのは悲鳴だからだ。
非常に危険な状況だと理解した俺はすぐに彼女を庇うように前に立ち、睨みつけるように騒がしくなって来た方角を見る。
「エミリア……近くの店に隠れていてくれ」
「エース?」
「どうやら………尋常じゃならなくなりそうだ。だから安全な場所に隠れていなさい」
「えっ………う……うん」
そういうとエミリアは戸惑いながらも近くの店に入っていき、それを確認した俺も急いで曲がり角に向かった。
だが目の前に広がった光景に驚きを隠せなかった。
「こ………これは……」
目の前に広がったのは逃げ惑う人々に、それを追撃する一団。だが問題は一団だった。
手には剣や槍、弓を手にした鎧を身につけた武装集団で、槍を手にした奴らは馬に乗って通過する市民を見境なしに殺害していった。
そしてそれらを上回る驚愕な存在が、異形の人ではないモンスターや飛来するドラゴンだ。
おとぎ話でしか存在することがない筈のモンスターが目の前にいる。とても現実とは思えない光景ではあるが、目の前に存在しているのだから受け入れるしかない。
そんな光景に呆気に取られていると、少し離れた場所にM360Jを構えた警察官に剣を手に殺害しようとする奴がいた。
しかも警官は恐れを抱いているのか手元が震えており、照準が合わさっていない。
すると余裕の表情をしながら敵兵はグラディウスを構えて仕掛けたが、素早く警官に駆け寄って半ば強引にM360Jを手にして狙いを付けて発砲。
.38スペシャル弾は敵の額に命中して、目標は崩れるように倒れた。
「えっ………あっ……」
「撃つ気概が無いなら銃を握るな‼︎死にたいのか⁉︎」
それだけいうと警官にM360Jを返却する。
別に俺が使っても良かったんだが、合計で5発しか支給されない日本警察なら使い慣れている警官が使用した方がいいだろう。
警官はM360Jを受け取ると近くで震えていた市民を連れてその場を後にする。それを狙ったかのように今度は辺りを武装集団6人が囲み、背後の敵が刺突で仕掛けてきた。
「ふんっ‼︎」
敵の刺突をいなすと首を掴んで一気に地面に叩きつけ、ハスタを持った敵の足をしゃがみ姿勢から一気に足払いをし、先ほど倒した敵のプギオを奪って喉に突き刺した。
すると4人同時に仕掛けて来たが、プギオを引き抜いてハスタを持つ敵を斬り裂き、敵の腹に突き刺して今度はグラディウスを奪い取る。
これで残り2人だ。
そのまま目の前にいる敵の喉をグラディウスで振りかざしながら斬り裂いて、最後の敵の首を腕で締め上げて一気に首をへし折った。
6人を短時間で制圧すると上空を飛来していたドラゴンの翼がいきなり捥げて地上に墜落していった。
上空を見上げると陸上自衛隊が使用している攻撃ヘリのAH-1SがM197を発砲しながら飛来してきた。確か練馬区に駐機している機体だ。
地上からも10式戦車や16式機動戦闘車など自衛隊車両が搭載されているM249やM2、下車戦闘で展開してきた兵士が主力ライフルの20式小銃で射撃を開始し始めた。
古代ローマのような装備しかない連中は次々と射殺されていき、ゴブリンやオークみたいなモンスターも次々と屍を晒していく。
これで敵は制圧されるしかないだろう。
ダガーを投げ捨てると俺の頭上をドラゴンが飛来していき、目の前にいたコブラに火の玉を吐き出した。
だがコブラは素早く反転してバルカンを発砲してドラゴンを叩き落とした。
だが俺は嫌な予感がした。
ドラゴンが吐き出した火の玉が飛来していった方角を見ると落ちた場所は……。
「エミリア⁉︎エミリア‼︎」
先ほどエミリアが隠れたビルだったからだ。俺はガムシャラに火の玉で燃え広がるビルに入り、1階を突き進む。
「エミリア‼︎どこだエミリア‼︎」
瓦礫を除きながら必死にエミリアを探す。
すると近くの瓦礫の下に身に覚えがあるものがあった。
それは人の左腕であり、細さからして女性だ。しかも左薬指にはめられている結婚指輪で誰かがすぐにわかった。
「エミリア⁉︎」
間違いなくエミリアだ。
俺は瓦礫を急いでどかし、必死にエミリアを助けようとする。少ししてから大きい瓦礫を取り除くとようやくエミリアを抱き抱え、彼女の名前を必死に呼び続けた。
「エミリア⁉︎しっかりしろ‼︎頼むから目を開けてくれエミリア‼︎頼むから⁉︎頼むから目を開けてくれエミリア⁉︎」
彼女の上半身を抱え、耳元で彼女の名前を呼び続ける。だが彼女は目を閉じたままピクリとも動かない。
認めたくはない………認められる訳がない………俺たちはただ観光に来ていただけだというのに……なぜこんなことに………。
「くそっ⁉︎くそっ⁉︎くっそぉおおおおおおおっ‼︎‼︎‼︎」
俺の叫び声は虚しく空に響き渡った。
戦闘は暫くしてから終結し、武装勢力は自衛隊の活躍により完全に制圧された。
後で知ったんだが自衛隊に入隊していた知り合いの伊丹 耀司が二重橋で多数もの国民を救出し、中尉に相当する2等陸尉に昇格して桐花大綬章を授与したらしい。
エミリアを失った俺は彼女の遺体を本土に帰還させ、葬儀を終わらせた。
市民救出に貢献したということでブロンズスターを授与されて中尉にも昇格したが、そんなくだらないものなんてどうでもいい。
後に"銀座事件"と呼ばれる事件で俺が最も愛した女性の命を失い、無関係な人達を虐殺した奴等を絶対に許さない。
指導した奴等を絶対に見つけ出して生きたまま灰にして豚のえさにでもしてやる。
絶対にな……………。
日本の銀座で戦闘が発生したと聞いた台湾。速やかに支援部隊派遣と台米合同演習を中止し、不足の事態に備えていた。
台湾の谷中尉もまた、愛車の整備を始める。
次回
"台湾"