GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版   作:ウルヴァリン

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31:黒髪のメイド

痛い……それが意識を覚醒させた第一の感覚だ。

 

あのクソッタレ騎士団に散々痛めつけられ、金髪の女に刺された傷跡に対して何度も踏み付けられた。

イタリカに到着してからはすぐに独房に放り込まれ、武器の使い方や兵力、警備の薄い箇所などを知る為に奴等は拷問を始める始末だ。

 

そして意識が朦朧とする中、あの馬鹿姫がいる謁見の間に引き摺られてハミルトンの首を掴んだ辺りで再び意識を失った。

 

痛みを感じながら俺はゆっくりと瞼を開けた。

 

 

「うっ……あぁ………」

 

 

目の前に映ったのは天井。気がつくと俺は手当された状態でベッドに寝かされていた。部屋は蝋燭の灯りで満たされ、朦朧する意識をゆっくり正常にしていくには十分だった。

 

 

 

「こ……ここは……」

 

「お目覚めになられましたか?」

 

 

 

気がつくと少し離れた場所に1人の女性がいた。姿はメイド服を着た黒髪の女性だが耳が犬みたいに頭から出ていて、腰の辺りから尻尾が生えていた。

 

たしか事前情報で判明している種族で外見は人だが狼の特性を持ったワーウルフという種族が居るらしい。

 

つまり目の前にいる女性こそメイドをしているワーウルフということだ。

 

俺はすぐに立ち上がろうとするが痛みが走っていうことが効かない。

するとイヌ耳の女性が慌てて手を差し伸べた。

 

 

 

「無理をなさっては駄目です‼︎」

 

「貴様……騎士団の奴か?」

 

「えっ?」

 

「とぼけんじゃねぇ………協定違反を無かったことにしたいから俺を殺しに来たんだろう?………やれるものならやってみろ‼︎その時は貴様を道連れにして帝国をぶっ潰すきっかけにしてやる‼︎」

 

 

 

帝国の刺客かも知れない彼女に対して殺気を見せつけながら威嚇する。するとワーウルフの女は軽く笑いながら話しかけた。

 

 

 

「ふふっ。ご心配なく……私はミュリ様にお仕えしているメイドですので、ピニャ様の配下でも騎士団の一員でもありませんわ」

 

「その根拠は?」

 

「もし私が本当に刺客でしたら貴方様は既にお亡くなりになっております。私はミュリ様の戦闘メイドをしておりますので……」

 

「…………名前は?」

 

「申し遅れました。私はミュリ様にお仕えしております副メイド長でご主人様のお世話をさせて頂きますミオ・ルカ・ヴォートスと申します」

 

「………どうやら本当のようだな」

 

「この度は盗賊からイタリカをお救い下さいまして、誠にありがとうございます」

 

 

 

ミオと名乗るメイドは深々と頭をさげる。

 

 

 

「救いの手を差し伸べて下さった恩人に対して帝国の騎士達は無礼を働いてしまいました。もしお怒りが収まらぬのでありましたら、イタリカにいる全ての戦闘メイド………いえ、全てのワーウルフ族を召集して助力をさせて頂きます。ただ………」

 

「ただ……なんだ?」

 

「ただ…………どうか…どうかミュリ様にだけは怒りの矛先をお向けになられませぬよう深く……深くお願い致します」

 

 

 

俺はミオの言葉と眼が誰かに似ていると思っていたがようやくわかった。

 

死んだエミリアとそっくりだ。

 

その主を想う心に決意に満ちた瞳………本当に瓜二つだ。

 

 

「…………俺だって馬鹿じゃない。あんたらの主と今回の衝突は全くの無関係だっていう事くらいは分かっている」

 

「じゃあ……」

 

「心配するな。今回の一件は流石に報告はするが、イタリカやあんたらの主を巻き込むことはさせるつもりなどない」

 

「ありがとう‼︎ご主人様‼︎」

 

 

 

嬉しさのあまりミオが俺にいきなり抱きついてきて、顔に胸を押し付けてきた。

彼女の胸は間違いなく巨乳で柔らかいし、犬や狼みたいにフサフサした尻尾を振っている。

 

男なら嬉しい状況だがワーウルフっていうのは戦闘種族で力も凄いらしい。

 

彼女は無意識に俺にヘッドロックを掛けている状態になっていた。

あまりの痛さに俺は彼女の腕を何度か叩いて痛さを知らせ、それに気がついた彼女も慌てて離れた。

 

 

 

「す……すみません………ご主人様」

 

「だ……大丈夫だ」

 

 

 

まるで失敗をした子犬のように耳をシュンとさせる。

 

というか普通に可愛らしいな………。

 

だが俺はあることに気がついたのでミオに質問してみることにした。

 

 

 

「それで2つ質問があるんだが……伊丹はどこだ?」

 

「はい、伊丹様は隣のお部屋で休まれております」

 

「そうか………2つ目なんだが…なぜ呼び方をご主人様なんだ?」

 

「はい。ご主人様はご主人様だからです♪」

 

「なんだそりゃ………」

 

 

 

若干天然の要素があるミオと暫く話を続けた。この異世界に来てから初めて誰かとゆっくり会話し、穏やかな時間を過ごした。

 

帝国に対する怒りと恨みは未だに消えてはいないが今の時間だけはどうでもよく感じ、ミオと話をすることがなんだが楽しかった。

エミリアに似ているからかも知れないが折角だ。

 

少しの間だけでもゆっくりさせて貰うとしよう……………。

 

 




エース達が拘束されている頃、ゲートの向こう側でも動きがあった。各国が日本にて現地の住民を招いた参考人招致が急遽行なわれると聞きつけ、アメリカと台湾も首脳会談と称した異世界人との面会をする為に横須賀へと向かう。


次回[動き出す各国]
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