GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版 作:ウルヴァリン
文化交流は早々に打ち切られてしまった。
文化交流をしている最中に俺の右腕を刺した金髪女が売春婦みたいな格好で伊丹の部屋に入ってきていきなり平手打ちを伊丹にしやがったからだ。
もちろん瞬間的に取り押さえられ、全員が一斉に武器を手にして銃口を突きつけた。
事情を聞いてみたら条約違反を無かったことにしたいが為に伊丹を籠絡すると同時に詫びという意味を込めてやってきたまでは良かったのだが、交流で誰も気が付かなくて気が付けば平手打ちをしていた。
呆れすぎてものもいえなかった。
そして俺たちは金髪馬鹿女を連行し、ピニャがいる部屋に揃った。
「…………で……その傷は?」
「……私がやりました………」
金髪女のボーゼスが気まずく小さくそう口にするとピニャは大きくため息をしながら椅子に崩れるように座る。
「こ……この始末………どうしてくれよう?」
「あ……あのぉ……自分らは隊長達を連れて帰りますから、そちらのことはそちらで……」
「まぁな。今回のこいつを張り倒したことには俺らにも責任はある。だから呆れはするが別にどうこうするつもりはない。お前らの好きにすりゃいい」
「勝手に決めてもいい……と」
「そ…それは困る⁉︎そうだ‼︎朝食を一緒に摂ろう‼︎そしたら考えも‼︎」
「悪いな姫さん。俺らは日本の国会に参考人招致で呼び出しを食らってんだ。だからあんたのママゴトなんざに付き合う暇はないんだ」
「伊丹とエース達は日本の元老院に報告を求められている…と」
「元老院⁉︎」
「だから……すぐに戻らなければならない」
恐らく今回の不手際に関する報告をして、自衛隊による帝国討伐を進言すると思い込んでいるだろう。いい気味だ。すると何かを決意したかのようにピニャはこちらに歩み寄ってきた。
「ま……待ってくれ‼︎では妾も‼︎妾もアルヌスに道々させてもらおう‼︎」
「えっ⁉︎」
「どういうつもりだ姫さん?帰るってのに余計な荷物を抱えるなんざ御免被るぞ」
「此度の協定違反……ぜひ上位の指揮官に正式に謝罪しておきたい。よろしいな?伊丹殿、クレイグ殿」
「ええっ⁉︎」
「…………勝手にしろ。だが条件がある」
「ちょっ⁉︎エース何を⁉︎」
「まぁ任せておけ伊丹………まず同行する帝国騎士は1名とあんたを含めた2名のみ。武器の持ち込みは許さない」
「あぁ。構わない」
「もう1つはメイドの中から1名だけ俺たちと同行してもらう。今回の防衛戦で証人が必要なのでな」
「分かった」
それだけの条件をつければ問題はないだろう。
それから俺たちは残りの部隊と合流を果たし、姫さんの提案で朝食を摂って朝を迎えた。こちらの朝食は目玉焼きにベーコン、マッシュルーム、ビーンズ、グリルソーセージ、トーストというイギリスの朝食とよく似た組み合わせで、なかなかガッツリとした組み合わせだった。
朝食を摂り終わるとすぐに車両に乗り込み、俺もM1161 ITVの助手席に乗り込んで被っていたECHを外した。
そして後部座席には……。
「わぁ‼︎本当に鉄なんですね‼︎」
「あぁ。防御力は低いがな」
ゲインフォート伍長、ハック伍長、ロックフォート上等兵、九条上等兵、コーエンス曹長の他に俺の世話をしてくれたミオが同乗していた。
彼女を指定した理由として表向きは参考人招致における防衛戦の正当性を日本に証明する為の証人。
俺が日本で嫌いなのは共産党と野党、事実を伝えようとしないジャーナリストだ。
奴等は俺たちアメリカ軍が国内で行動することを適当な理由をつけて批難し、中にはアメリカ軍は国内から日本を侵略しにきたなんていう記事を作るジャーナリストもいる。
だから参考人招致で奴等が連合に何か適当な事を口にして批難することは目に見えているから、彼女の存在が有効となる。
ただ裏は彼女を何だか放っておけないということもある。
保護欲というか、彼女がいないとまた帝国に対して怒りが爆発するかもしれないとかという理由だ。
「ミオ。危ないからあまり走行中は動くなよ?」
「そうなのですか?」
「あぁ。だが眺めはいい筈だから走行中の光景を楽しんでくれ。だからいい子にしていろよ?」
「はい♪ご主人様♪」
<3-1からリーパー00>
「こちらリーパー00。客人は乗り込んだ。いつでも出発できる」
<了解。3-1から全車。前へ>
すると伊丹が搭乗するジャパニーズハマーを先頭に車列が移動を開始した。
アルヌスベースまでは実に数時間。
距離的には300km程になるので途中で待機していた補給地点に立ち寄り、ガソリンを補給してからアルヌスへと向かう。するとアルヌスにあと少しとなった辺りで無線があった。
<殿下‼︎アルヌスです‼︎>
<もう着いたのか⁉︎なんという速さだ……>
「中尉……」
「伊丹の奴………また無線を切り忘れているな」
インカムを手にして注意しようとしたら、上空を第4戦闘団のコブラと海兵隊のスーパーコブラがフライバンで飛行していった。
別の場所では骨組みのみの建物でCQBトレーニングをしている陸軍のスクリーミングイーグルズがいて、それをミオは身を乗り出して目を輝かしながら眺めているが、気にしないで俺は無線に耳を傾けた。
<あの杖……連合派遣団の兵士は皆魔導師なのか?>
<あれは魔導ではない。銃、あるいはライフルと呼ばれている武器>
<武器だと⁉︎>
<原理は簡単。鉛の弾を炸裂の魔法で封じた筒で弾き飛ばしている。それらの特性を最大限に活かす戦術を持って、いまに至っている>
<戦い方が………根本的に違う>
<だから帝国軍は大敗退した>
無線の向こう側から聞こえてくるレレイの説明と馬鹿姫の驚愕した話。中世ヨーロッパか古代ローマ時代に似た戦術しかない帝国に負ける筈がない。
そう考えていると少し離れた場所から戦闘速度で移動している74式戦車とスティングレイⅡが砲撃をしながら前進していた。
<鉄の天馬に……鉄の象……まさに異世界の怪物だ‼︎>
「戦車が象ってねぇ」
「言わせておけ。くだらん戯言だ」
<なぜ……こんな連中が攻めて来たのだ⁉︎>
<帝国は鷲獅子の尾を踏んだ>
<帝国が危機に瀕しているというのに、その物言いはなんですか⁉︎>
<私は流浪の民。帝国とは関係ない。寧ろどうでもいい>
<私もエルフよ。だから帝国とは何の関係もないわ>
「…………」
「さっきから聞いていたが…………おい馬鹿姫」
<なっ⁉︎は…箱から声が⁉︎>
<いけね。また送信しっぱなしだった>
「さっきの会話は筒抜けだ。先に攻め込んだのはお前達帝国だろうが………攻め込む覚悟があんなら攻め込まれる覚悟も持っていろ」
それだけ言うと無線機のスイッチを切った。今頃は沈黙しているだろうが、攻め込まれる原因が帝国の侵略であるということには腹が立つ。
まだ自分達が犯した罪を意識していないようだ。
興味津々に戦車隊を眺めているミオの頭を撫でながら俺も戦車隊の演習を眺めていた……………。
台湾軍陣地にて谷中尉は日本の要請で台湾軍から特地における自衛隊に関する証人喚問の証人として同行するよう命令される。
そしてルフスにも同行をたのむ為に食事しながら話をする。
次回[谷とルフス]