GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版 作:ウルヴァリン
レレイやテュカ達を連れて議会の参考人招致に挑む伊丹たち。道中でテュカの服装だったシャツにジーンズをどうにかすべくスーツショップにて女性用スーツを購入。
土産や帝国に技術を見せつける為に姫様に1着ずつプレゼントし、それから時間があったので牛丼屋で昼食を摂った。
最初は国民食だからどうかと思ったけど意外にも姫様達は牛丼をかなり気に入ったようで、あまりにも美味そうに食べてたから俺も特盛で追加して牛丼を満喫した。
因みに日本では収穫された卵は殻に付着したサルモネラ菌を完全に除去してから出荷しているので問題は無いが、中世ヨーロッパや古代ローマレベルの文明である向こう側では古いものも混ざる場合があることも相まって生卵なんて食べれたものじゃない。
牛に関しても向こうでは食用に育てる発想はなく、一般に出回るのは農作業が出来なくなった老牛のみ。宮殿でも滅多に食べられない代物らしい。
姫様達が伊丹が牛丼に卵を掛けて食べた事に驚いていたのはこれが理由だ。
それから国会議事堂に到着したら富田と栗林に表向きでは来日していない姫様を任せ、伊丹たちは議事堂へと入る。
伊丹は後で知ったんだが今回の参考人招致は日本全国ところか世界中が注目していて、特にエルフが来たという項目で視聴率が国会中継で平均視聴率46%と非常に高かったらしい。
そして入室したと同時に議員、マスコミ、記者達がどよめき出した。確かに目の前にエルフやイヌ耳メイド、ゴスロリ少女にプラチナヘア魔導師、銀髪戦士がいるんだからオタクにとって注目しない訳がない。伊丹たちが着席したら静粛となって参考人招致が開始された。
「これより参考人に対する質疑に入ります。幸原議員」
「はい」
進行役がそういうと立憲民主議員の幸原がフリップを手にして演説台まで歩み寄り、フリップを見せてきた。
俺や谷、伊丹自身も立憲民主党は嫌いだ。
日本の野党の半数以上が売国奴としか言いようが無い。
1年前に可決された平和憲法第9条改正や沖縄県知事特別派遣法、スパイ行為取締法など野党からしたら都合が悪すぎる法案を話し合いといいながら実際は単なる暴力で廃案させようとしている。
与党の政策を邪魔するだけしていざ自分達が問題となったら与党に責任を押し付けて平気で被害者面したりする。
現に立憲民主党を含めた野党の支持率は異例の0.3%にまで落ちていて、議席数総数465席の内で野党はたったの43席のみ。立憲民主党に至ってはたった2席しかない。
数年前に発生した民主党議員への立憲民主党議員による死ねという恐喝行為、日本国内における不法入国者の強制送還に関する決議にて無理やり廃案させようと暴れ回ったりとやりたい放題で国民からの支持は大半が70代という世捨て人のような感じになっている。
だから野党はなんとしても揚げ足を取りたいと躍起になっている。
「単刀直入にお尋ねします。避難民から150名もの犠牲が出たのは何故でしょうか?」
「伊丹 耀司参考人」
「はい。え〜……それはドラゴンが強かったからです」
「なっ……なにを他人事みたいに⁉︎尊い命が失われたのですよ⁉︎人命を守る存在だというのに何とも思わないのですか⁉︎」
「質問を質問で返すのは申し訳ないのですが、ドラゴンが現れたのは自分の責任だと仰られるのでしょうか?」
「私が言いたいのは指揮官であるあなたのになんの問題が無かったかと聞いているのです‼︎死者を出した無能な低脳の税金泥棒のくせにそれくらいは理解して下さい‼︎」
伊丹は心の中で‘‘殴り飛ばしていいかな?’’と思ってるだろう。
日々海外からの脅威から護られていることを全く理解しようとしない老害とはあのアバズレ女のことを表すんだろう。
今の発言にはムカついているが、伊丹は気にせず冷静に解答した。
「お言葉を返しますが、問題があったのは銃の威力です。5.56mmや7.62mm、12.7mm弾なんか豆鉄砲程度しか通用しませんでしたし、あの時にパワードスーツや粒子砲なんかがあればいいなと感じましたよ。それに質問を質問で返すようで申し訳ないのですが、議員は実物を見て同じ事がいえますでしょうか?」
「議長。伊丹2等陸尉から提出されたサンプルによれば、ドラゴンの鱗はタングステン並かそれ以上の強度だということが判明しております。強度の数値が9であるにも関わらず重量はダイヤモンドの7分の1。そんな鱗を持つドラゴンはいわば空飛ぶ戦車です。
それなのにそんなものと戦って犠牲者を0にしろという言い方や一方的に無能呼ばわりをする方が問題ありと進言致します」
与党議員がドラゴンの鱗に関する情報を提示すると与党は頷き、野党は不機嫌そうな表情をする。
「幸原議員、過度な発言を控えるように」
「………分かりました。でしたら次は海兵隊の方を……」
「エース・クレイグ参考人」
「はい」
「落ち着けよエース」
「分かってるが約束は出来ないぞ伊丹」
小声で起立した俺に話しかけるが、俺はそこまで我慢強い人間じゃない。いざと言うときはこんな権力にしがみつく腰抜けのクズの言葉を打ち切って全員連れて強制終了させてやる。
「ではまず、所属と名前をお願いします」
「アメリカ海兵隊第3海兵遠征群第31海兵遠征隊所属、リーパー隊隊長エース・クレイグ中尉」
「ではお尋ね致します。避難民が亡くなられた際にあなたは最後尾におられたと聞きましたが、どうお考えですか?」
「……言っている意味がよく分かりませんが?」
「はい。あなた達海兵隊と自衛隊が民間人を盾にして自分達だけ助かろうとしなかったのかと聞いています」
「つまり私達が逃げ出したと?我が身可愛さの為に卑怯にも他人を犠牲にしたと?」
「質問に応えて下さい」
「ならはっきり言いましょう………決してそのようなことはありません。私がいうのはそれだけです」
本当に気に食わない質問だ。戦いのことを全く理解しようとせず、ただ相手を侮辱したいという耳が腐りそうな問い掛けに腹を立つが、せめて怒気と殺気を込めてこいつをびびらせてやる。
「………で…では次は台湾軍の方にお願い致します」
「谷 劉郭参考人」
「はい」
今度は谷が起立し、演説台の前に歩み寄るが表情からは軽く怒りが見え隠れしているようだ。
「所属と氏名をお願い致します」
「台湾陸軍第564装甲旅団高雄阿蓮駐屯基地隷下第6戦車小隊‘‘高雄隊’’隊長の谷 劉郭中尉です」
「では谷中尉にお尋ねしますが、自衛隊と海兵隊、更にはあなた達台湾陸軍は難民キャンプの対応は問題ありではないのですか?」
「難民キャンプでは様々な支援や援助で可能な限り負担が無いように生活して貰っています。特に自衛隊は難民を自分達の本当の家族みたいに接しており、印象は限りなくよいものだと判断しています」
「では、避難民に犠牲者が出たことに対してはどう考えていますか?」
「戦闘になりましたら犠牲者は必ず出ます。確かに犠牲者が出たことは残念に思います。しかし私から判断しましても強大な敵を前にして犠牲者を最小限に抑えた伊丹中尉とクレイグ中尉は目覚しい活躍をしたと判断します」
「……結構です」
求めていた答えが全く無いと判断した幸原は少しイラつきながらも切り上げた。そして次はいよいよレレイ達の番となった。
「レレイ・ラ・レレーナ参考人」
「はい」
「日本語は話せますか?」
「はい、少しなら話せる」
「今はどのような生活をされていますか?」
「今は難民キャンプで共同生活をしている」
「では不自由などはありませんか?」
「不自由の定義が理解不明。自由ではないという意味合いならばそれは当たり前。ヒトは生まれながらにして自由ではない」
「では言い方を変えましょう。生活する際に何か不足しているものはありますか?」
「衣・食・住・職・霊。全てにおいて必要は満たされている。質を求めたらキリがない」
「…………結構です」
「次、テュカ・ルナ・マルソー参考人」
レレイと入れ違うようにテュカが前に出る。見た目は美少女でジーンズにシャツという格好の時は高校生にも見えたが、今のスーツ姿によって雰囲気が一新されてモデルのような美しさがあった。
「私はエルフ。ロドの森部族マルソー氏族。ホドリュー・レイの娘、テュカ・ルナ・マルソー」
「えっと………失礼を承知でお尋ねしますが、その耳は本物ですか?」
「はい。自前ですよ、触ってみます?」
そう言いながら綺麗な長い銀髪を捲り上げ、エルフ独特の笹みたいに長く先が尖った耳をピョコピョコと可愛らしく軽く動かすテュカ。
その瞬間にマスコミ関係者からのシャッターが凄まじく鳴り響き、議員達も思わず携帯を取り出して写真を撮るまでに至る。
「静粛に‼︎静粛に‼︎」
「で……ではテュカさん。あなたがドラゴンに襲われた際のことを話して頂けませんか?」
「よく……覚えてない………あのとき私は井戸で気を失っていたから……でも連合は懸命に私や他の人たちを助けていたということは間違いなく言えます」
「………結構です」
自分の求める答えがなく、扱いが雑になる幸原。
その杜撰な対応に俺達は徐々に怒りを強めていき、特に俺は自分でも分かるくらいに今にも飛び掛かりそうな怒気を発しているみたいだ。
「私はルフス・エム・ヴォーディッシュ。神エムロイに仕えるデュラハン族にして死者の導き人」
「………はい?」
「我が一族は代々、自在にこの世とあの世を行き来できる。この場合ならば見せたほうが早い」
そういうとルフスは自身の首を外して脇に抱え込んだ。
その瞬間、議員達が悲鳴を出し、その内の何人かはあまりの衝撃的光景に意識を失ってしまい、駆け付けた救護班に搬送されていく。
幸原に戻すように促されるとルフスは首を元に戻した。
「で……ではルフスさんにお尋ねしますが、あなたは難民キャンプへ保護といいながら実は強制連行されたということはありませんか?」
「私は自ら谷について来た。強制などではない。それに難民キャンプの子供達は笑顔で遊び回っている。強制連行されたのならそのような笑顔など発しはしない。根も葉もない根拠を並べるのは相手に対して無礼を働き、不快を与えるからそちらの発言は些か度し難い」
尤もな意見をするとルフスは自分の椅子へと戻った。
帰って来たルフスの頭を谷が撫でるが、自分に都合が悪いことに対して逆ギレしそうな表情をする幸原は次にミオを指名した。
ミオも普段の立ち振る舞いを見せてはいるが、彼女はワーウルフ。
表情では笑顔だが狼が怒りを見せる時のように毛が逆立っていて幸原の失礼極まりない質問に不快感を感じているようだ。
「私はミオ・ルカ・ヴォートス。フォルマル伯爵領イタリカの当主ミュイ様にお仕えしているワーウルフのメイドでございます」
「ではミオさん。あなたに質問しますが、自衛隊はあなた達を不当な扱いをしたり、非人道的な行為をしてはいないでしょうか?」
「私は難民キャンプに到着して日が浅いです。しかし自衛隊やアメリカ軍、台湾陸軍の方々はとても親切で困っている方を見捨てず自ら危険を顧みないで手助けして下さっています」
「失礼ですが、その発言は派遣団に強要されているのではありませんか?」
「いえ、紛れもなく私の考えで発言させて頂いております。憶測ではありますがあなた様の方がまるでご主人様方に不利な発言を強要しているようにしか思えません。申し訳ございませんが極めて不愉快な気持ちになりました。あなた様のような非常識な方にお話しすることはございませんので話はこちらにて打ち切らせて頂きます」
これ以上話すことはない。そんな雰囲気を醸し出してミオは俺の隣に腰掛けた。
今の段階で何一つ自分に都合がいい返答を得ていない幸原。
すると最後の1人となったロゥリィに思わず笑みを浮かべた。
(黒服にベール……喪服ね………適当に誘導して死んだお馬鹿さんの責任を自衛隊に押し付けてやればいいわ……)
そんなことを考えながらロゥリィを見る。
「では、あなたのお名前をお願い致します」
「ロゥリィ・マーキュリー」
「では、あなたのキャンプでの生活を教えて下さい」
「簡単よぉ。朝、目を覚ましたら生きる。祈る。命を頂く。祈る。夜になったら眠る。その繰り返しよ」
「命を………頂く?」
「そう。例えば食べること。生き物の命を貰うこと。エムロイへの供儀とか……」
「分かりました……ではあなたは見たところ大事な人を失ったようですが、その原因に自衛隊やアメリカ軍、台湾軍の対応に問題があったのではないでしょうか?」
最初に頭を傾げたのは通訳をしているレレイだ。
ひとまずはロゥリィに通訳し、質問の意味が分からないとだけ伝えた。
「避難民には150名もの犠牲者が出たにも関わらず、身を挺して戦わなければならない自衛官や軍人には死者どころか怪我人すら出ていません。これは自身の命を最優先にし、その結果として民間人を見捨てたのではないのですか?
さぁ話して下さい‼︎あなたの大事な人を死へ導いた無能で臆病な自衛隊やアメリカ軍、台湾軍の悪行を‼︎」
「てめぇ‼︎さっきから黙って聞いていれば‼︎」
「落ち着けエース⁉︎ここで乱闘はマズイって⁉︎」
「そうだ中尉⁉︎気持ちは凄く分かるが耐えるんだ⁉︎」
もう我慢ならない……。
伊丹と谷が暴れ出そうとしていた俺を抑え始めるが、それは徒労に終わることになる。
「あなた‼︎お馬鹿ぁあっ⁉︎」
ロゥリィの発言によりマイクから発せられる雑音。あまりにもいきなりだったので全員が耳を塞ぎ、それに間に合わなかった俺とミオは後ろに倒れてしまった。
「だ……大丈夫か谷、エース?」
「ま……まだ耳鳴りが続いてるけどなんとか………」
「あぁああ………俺……昔からハウリングだけは駄目なんだ……」
「せ……世界が……世界が回ってますぅ……」
何気にダメージが大きい俺とミオを他所に幸原は唖然としてしまっていた。
「い……いま何と?」
「‘‘あなたはお馬鹿さんですかぁ?’’と言ったのよ…………お嬢ちゃん」
完璧に近い日本語でそれだけいうとベールをたくし上げるロゥリィ。
彼女は笑みを浮かべてはいるが、その笑っていない目は目の前にいる馬鹿で自己中心的な愚か者を見下す蔑視の視線であった……………。
ロゥリィによる馬鹿発言。だが自己中心的な共産主義者は年齢優先な発言でロゥリィの逆鱗に触れかける。そして止めに入った伊丹から衝撃的な事実が明かされる。
次回[真実の話]