GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版 作:ウルヴァリン
「‘‘あなたはお馬鹿さんですかぁ?’’と尋ねたのよぉ、お嬢ちゃん」
いきなりレレイを介さないで日本語で話し出すロゥリィ。
その完璧に近い日本語ではなく馬鹿という単語に議会にいる全員が唖然としていた。
だがロゥリィは表現を変えずに幸原に答えを突きつける。
「さっきから黙って聞いてたら、まるで伊丹達が責任放棄したと責めたいみたいじゃないのかしらお嬢ちゃん?
寧ろ今まで力と恐怖の象徴である炎龍を相手に戦って生き残ったことを讃えるべきでしょうにぃ。
四分の一が亡くなった?
違うわね……伊丹とエース達は四分の三を救ったのよぉ。それに兵士が自分の命を大事にして何が悪いの?彼等がいるからあなたみたいなお嬢ちゃんが雨露凌いでただ駄弁っているだけの存在もいれるのよぉ。
そんなことも分からないなんて、あなたみたいなお嬢ちゃんが元老議員をしているのだから、この国の兵士も随分と苦労してるのねぇ」
「参考人は口を慎んで下さい」
ロゥリィの発言に議長は注意するも、ロゥリィの睨みで黙り込む。すると相手に対して侮辱するがされるのは我慢ならないというくだらない考えの幸原はロゥリィが気に入らないのか、すぐに反論した。
「………大人への口の利き方がなっていないわね……こういった場所は初めてでしょうけど、この国では年長者を敬なければならないのよ、お嬢ちゃん?」
「お嬢ちゃん?それは私に言ってるのかしらぁ?」
「他に誰がいるのですか?全く………やっぱり異世界は非常識な人間しか居ないみたいねぇ。だから野蛮人は嫌いなのよ……」
「随分と面白いことを言うわねぇ。たかが………」
そういいながらロゥリィはハルバートを隠している布を取り払おうとする。
その笑顔だが殺意が溢れ出している‘‘死神’’の表情は今にも目の前にいる虚栄心の権化を肉片が無い位に惨殺しようとしていた。
ロゥリィの無双はエースをも遥かに上回る圧倒的強さだ。
イタリカの二の舞が頭に過ぎった伊丹と谷とエースは流石に不味いと判断してとっさに彼女を止めに入った。
「ちょっとぉ……なんで邪魔するのよぉ?」
「いやいやいや⁉︎それを出したら不味いからな⁉︎」
「暴発しかけた俺が言うのもなんだが、ここでイタリカの再現は絶対にするな⁉︎」
「議長‼︎幸原議員は重大な勘違いをされていますので発言させて頂く許可を‼︎」
「伊丹参考人。発言を許可します」
「感謝します。我々日本人は年齢を武器にしてしまうという悪い癖がありますが、こちらのロゥリィ・マーキュリーさんはここにいる誰よりも年長者なのです」
「ふん‼︎いったい幾つだというのです?」
「女に年齢を聞くのは失礼だけどまぁいいわぁ。今年で私は961歳になるわぁ」
「きゅ………900⁉︎」
ロゥリィの年齢を聞いて幸原、議員、マスコミ、更にはテレビや携帯の向こう側の人達は騒然となった。
目の前にいるロゥリィは外見こそは12歳かそこらの可愛い少女。
だが実際は70代後半である議長よりも10倍以上の年月を生きている存在だ。
「じ……じゃあテュカさんは……」
「165歳になるわ」
「因みに私は423歳になる」
「私は101歳になります」
「ま……まさか⁉︎」
「私は15歳」
ロゥリィは961歳でテュカは165歳、ルフスは423歳でミオは101歳と聞いて幸原は不安になってレレイにも聞くが、15歳と聞いて胸を撫で下ろした。
するとレレイがロゥリィに代わって解説を始めた。
「門の向こう側では様々な人種がいる。私達ヒト種は平均寿命は60から70前後。テュカは不老長寿のエルフ。その中でもエルフ種で2番目に希少なハイエルフと呼ばれる妖精種であり、寿命は永遠に近い。
ロゥリィも元々はヒトだけど、亜神になったことにより肉体年齢は固定された。通常は1,000年程で肉体を捨てて霊体となり、やがては神になる。
戦いの神エムロイの従者ともいえるデュラハン族のルフスもエムロイの加護を受け、使命である死者を冥界に導く代わりに寿命は存在しない。
戦闘民族であるワーウルフは寿命は平均で約300。容姿も末期にでもならない限り変化がないとされている。ミオはその中でも希少とされるヴォルヴァーと呼ばれていて、瞬間治療に鋼鉄を切り裂く鉤爪などワーウルフの頂点ともいえる種族の出でもある」
「つまり、あなたの発言は矛盾しかないということよぉ」
「あぁ。しかも私達を野蛮人などと侮辱するとは……子供のくせに生意気な口を開くな」
「あなた様が望まれるのでしたら私も冷酷にやらせて頂く所存です」
そういいながらルフスも大鎌の布に手を伸ばし、ミオも握り拳を作って小指、薬指、中指、人差し指の各間からカミソリ状の刃を僅かに出す。
ワーウルフの上位種ヴォルヴァーの最大の武器は驚異的治癒能力に加えて鋼鉄のような犬歯と両手から出現するアダマンタイト級の強度とあらゆる物を切り裂く非常に斬れ味がよい刃だ。
3人は怒気と殺意を溢れさせるが幸原は全く気付かず、とうとう口にしてはならないことを口にしだした。
「ぎ……議長‼︎我々立憲民主党は‘‘参考人招致にて異世界の人間を’’と申したのです‼︎なのに来たのはバケモノ‼︎これでは正当な証人喚問は出来ません‼︎我々は後日改めて特地の"人間"を交えた参考人招致の再開を進言します‼︎」
「………テメェ……地獄に踏み入りたいのか‼︎‼︎」
「ヒィッ⁉︎」
幸原が口にしたのはロゥリィ達をバケモノ扱い。人種を蔑み、自分達以外を蔑む発言だ。
幸原に対して今迄にない怒声と殺気で座っていた俺は椅子を蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされた椅子は破片を出しながら壁に叩き付けられて破損し、音を立てて床に落ちる。
あまりにもいきなりの行動だったので議員達は唖然にとられるも俺は気にも止めないで扉に歩き出した。
「伊丹‼︎谷‼︎帰るぞ‼︎こんなクソ野郎に話をするだけ時間の無駄だ‼︎」
「あぁ。今の発言は俺も我慢ならない。議長、我々台湾軍は先程の暴言を口にした幸原議員と立憲民主党を含めた野党に対して後日国家を交えて正式に抗議させて頂きます」
「俺たち自衛隊もです。相手の文化や内情も何ら理解しようとせず、特地の皆様をバケモノと侮辱したことは非常に不愉快です」
「俺たちアメリカ軍もだ‼︎」
3人がそういうとロゥリィ達を引き連れて議事堂を後にした。特に幸原に対して怒り心頭の俺は中指を思いっきり突き立て、そのまま親指を首で切るジェスチャーをしながら出口に向かう。
後ろからは暴言を吐いた幸原が更に暴言を吐くが一切耳を傾けずに扉を乱暴に閉めた。
これにより参考人招致は強制的に終了となったが結論を言えば、特地における避難民への扱いは非常に良好で、このまま連合派遣団を特地に派遣したままで話が進んだ。
これは後に決まることだが、日本政府から俺達3人に多数の避難民を救い出した功績を称えて旭日重光章、台湾政府から忠勇勲章、アメリカ政府から功績軍団章が授与される運びとなる。
対して伊丹達やロゥリィ達特地からの参考人達に対して度が過ぎる暴言を吐いた幸原は証人喚問終了後、即座に釈明と責任のなすりつけを行おうとしたようだ。
だが今回の証人喚問は世界中で放送されていたので人種差別を問題視している国家から大使館や領事館を通じて猛抗議が入る事案が発生。
中にはテレビ中継を見て日本中の立憲民主党事務所へ幸原に対する抗議の電話が殺到し、嫌気がさした事務職員が逆ギレして苦情を入れてきた相手に死ねなどの暴言を吐いて、それが録音されていてインターネットを通じて全世界配信となったので更に問題となった。
ただでさえ反野党運動が激しいというのに幸原1人のせいで立憲民主党だけではなく野党全体に逆風が吹き込む結果となった。
日本にて英雄と称される俺達は次の目的地へ向かう準備をしていた……………。
参考人招致を終えて、バスを囮にして地下鉄にて次の目的地である箱根へと向かうも、途中で何者かの妨害工作を受ける。
そして伊丹は公安も信用出来ないと判断して信用出来る人物の下へ向かいだした。
次回[逃げに逃げる]