GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版   作:ウルヴァリン

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39:逃げに逃げる

波乱万丈の証人喚問を終えて俺たちは国会議事堂を後にした。

 

正面はマスコミや新聞記者、更には野次馬が大挙して押し寄せて来ており、正門からバスが出た瞬間にフラッシュが焚かれるがそうは行かない。

 

本来ならば移動手段としてマイクロバスを利用して大統領達が待つ横須賀に向かう手筈だったが、マスコミの中に共産国の手先が紛れ込んでいるのは目に見えていた。

だから警護主任の駒門は直前に移動をバスから地下鉄に変更するという奇策を提示し、こっそりと裏門から地下鉄へと乗り込んだ。

 

現にバスを走らせたら暫くすると無理やりバスと護衛車両の間に割り込んで分断してきたらしいが、見事なまでに相手は囮に引っ掛かった。

 

地下鉄丸ノ内線がホームに滑るように国会議事堂前駅に入って来て、扉が開いたがルフス達は暫く唖然としていた。

 

 

 

「……開いた」

 

「開いたねぇ」

 

「何を馬鹿をやってるんだ?早く乗らないと出発するぞ」

 

「足下気を付けて。隙間があるから」

 

 

 

クレイグ中尉に促されて全員が急いで地下鉄に飛び乗るが、ロゥリィだけは警戒するかのようにソロソロと乗ろうとする。

伊丹2尉が腕を引っ張って車内に乗り込ませたら扉が閉まり、ゆっくりと走り出した。

 

幸いにも車内に乗っている乗客は国会中継を見ていなかったようだが視線が痛かった。

 

金髪、銀髪、黒髪の美女と美少女達を引き連れているのだから仕方はない。

 

そんな視線を浴びながら伊丹2尉は溜息を吐いている。

 

 

 

「……これじゃあ怪しいタレント事務所のスタッフだな」

 

「そう言うな。だが騒ぎにならないのが救いだな」

 

「あぁ。中国の連中が何かしてくるのかと思ってたが地下鉄を使用するなんて思わなかったようだ」

 

「だが警戒は緩めるな。連中は人命なんざ二の次なんて考えを持つキチガイ連中だ。だから奴等が一般人を巻き込んで仕掛けてくる可能性は十分に考えられる」

 

 

 

俺たちが警戒をしていると反対側からピニャ殿下とボーゼスさんを引き連れた富田2曹と栗林2曹が私服に着替えてやって来た。

 

 

 

「隊長」

 

「よぅ」

 

「焦りましたよ。てっきりバスで移動するかと思ってましたけど急に地下鉄に変わるんですから……」

 

「まぁ合流できたから良かったじゃないか」

 

「後ろの姫は何をソワソワしてんだ?」

 

「地下に入ってからずっとこうなんですよ。‘‘このまま地の底まで連れて行く気か?’’とかで……」

 

「地下鉄も初めてだからなぁ……まぁ仕方がないことか」

 

 

 

そんな会話をしていると電車が揺れて、思わずボーゼスさんが富田2曹にしがみ付いた。

少ししてから顔を赤くしながら離れて、富田2曹も赤くしていた。

 

 

 

「し……失礼……」

 

「い…いえ……」

 

 

 

そんな光景に2人は案外意識し合っているのではないかと思うが、伊丹2尉の腕にロゥリィがしがみ付いていた。

 

 

 

「どうしたロゥリィ?」

 

「地面の下はハーディの領域なのよ…」

 

「ハーディ?」

 

「たしか向こう側の冥府の神の名前だった筈でこっちだったらハデスだったか……それがどうかしたのか?」

 

「あいつやばいのよ‼︎200年前からずっと、お嫁に来いってしつこくってしつこくって‼︎ 無理矢理お嫁にされそうなの‼︎」

 

「それで…何で伊丹にしがみ付くんだ?」

 

「ハーディ避けよ‼︎あいつ男が嫌いだから、こうしてたら近寄って来ないかも知れないでしょう⁉︎」

 

「い……いくら何でもこっちに来ることなんか無いんじゃないか?」

 

 

 

俺がそう言うが、ロゥリィは伊丹2尉にしがみ付いたままだ。

 

 

「あいつの事だからあり得なくはないのよ‼︎」

 

「しかしロゥリィ………ここは嘘でもいいからこう言ってくれ………‘‘か…勘違いしないでよねぇ‼︎ただの虫よけのカムフラージュなんだから!!’’ってな」

 

「お前なぁ……」

 

「「気持ちわるっ⁉︎」」

 

 

 

クレイグ中尉がこめかみを抑えながら呆れ、俺と栗林2曹が揃って2尉に引いた。すると次の駅である霞ヶ関駅に到着して扉が開くと、そこから駒門さんが乗り込んできた。

 

 

 

「よう」

 

「どうやらそっちも上手くいったようだな?」

 

「予定を早めて箱根へ向かうぞ、このまま東京まで行って乗り換えだ」

 

「バスはどうしたんです?」

 

「見事に引っかかったよ、移動の変更の手段を知らなかった時点で情報漏洩の容疑者は二人に絞り込めた。今行き先を突き止める為泳がせている」

 

 

 

このままいけば敵に情報を売り渡した馬鹿と主犯格を拘束できるだろう。

するとロゥリィが今にも泣きそうな不安の表情で伊丹を見上げていた。

 

 

 

「伊丹ぃ‼︎此処から出たいの‼︎もう我慢出来ない~‼︎」

 

「もう少しだ、次の次で降りるから」

 

「あぁ。いい子だから我慢してくれ……………伊丹、谷」

 

「感じたか?」

 

「あぁ。尾行されてるな」

 

 

 

ロゥリィは降りたがっていて、それに俺は苦笑いするしかなかった時にある気配を感じとった。

 

俺は着ているジャケットの中に手を入れ、伊丹2尉はコートの内側、クレイグ中尉は手にしているアタッシュケースを視線が感じた方角に向ける。

そしてスッと横目で電車内の奥を見ると誰かが見ていたらしく、俺の気配に気づいたのかすぐに何処かに隠れてしまった

 

俺だけじゃなく伊丹2尉とクレイグ中尉もそれに対して自分達が尾行されていることに気が付いたようだ。

 

そして丁度次の駅である銀座に到着し、伊丹は怖がるロゥリィを連れて電車を降りた。

 

 

 

「悪い、此処で降りるぞ」

 

「よしみんな。ここで降りるよ」

 

「はっ⁉︎ちょ⁉︎おい‼︎」

 

 

 

駒門さんは俺たちの独断行動に驚き、伊丹2尉の肩を掴む。

 

 

 

「待てって⁉︎アンタ等何勝手な事を言っているんだ⁉︎こっちにも段取りがあってなぁ⁉︎」

 

「あのまま乗り続けている方が危険だ。間違いなく尾行されている」

 

「尾行ってな………」

 

 

 

駒門がそう言った時にアナウンスが流れる。

 

 

 

『お客様にお伝えします、現在丸の内線は銀座~東京間で発生した架線事故の影響で運休しています、運転再開のめどは立っておりません。現在丸の内線は………』

 

 

 

いきなりの架線事故があったという放送を聞いた俺たち。駒門さんは伊丹2尉の肩を離して仕方なく駅から降りた。

外に出ると辺りはすっかり暗くなっており、ロゥリィはようやく外に出れたことにより背伸びをしながら安心しているようだ。

 

 

 

「連中の目的はなんだと思う?」

 

「デモンストレーションだろうなぁ……こっちはいつでも手を出せることを知らしめたいんだろうさぁ」

 

「胸糞悪いコミュニスト共が………だがいくらなんでも先回りされ過ぎてるんじゃないのか?」

 

「あぁ。これはどう考えても作戦が筒抜けだ。情報管制はちゃんとした方がいいんじゃないのか?」

 

「だが奴等はバスに電車、2回とも失敗している。次は間違いなく分かりやすい行動をしてくる。例えば………」

 

 

 

そう話しながらロゥリィの方をチラリと見る。すると帽子を被った男がロゥリィのハルバートをひったくって逃げようとするが、ロゥリィのハルバートは普通の人間では担ぐことすら難しいものだ。

男はハルバートの重さに耐え切れず、少しだけ走った辺りでハルバートの下敷きになるように倒れた。

 

その事に呆れながらも駒門さんは歩み寄ってハルバートに手をやる。

 

 

 

「はぁ〜………なにやってんだあんたは……やるならちゃんとやれ……」

 

「あっ⁉︎」

 

「ちょっ⁉︎」

 

「待て‼︎それは⁉︎」

 

「あぁ?……なんだ?」

 

 

 

俺たちが駒門さんを制止しようとしたが手遅れだった。持ち上げようとした瞬間に立木の枝が折れるような音が彼から聞こえてきた。

 

 

 

「ぎぎゃっ⁉︎」

 

 

 

腰に走る痛みに駒門さんは崩れるように両手で腰を抑えながら地面に伏した。

 

俗にいう急性腰椎捻挫………ぎっくり腰である。

 

ロゥリィのハルバートは大の大人が4人がかりでふらつきながらも何とか持てるようになる重量で、重量はたしか300kgほどらしい。

 

暫くしてから通報を受けた救急車とパトカーが到着してひったくり犯人を連行していき、負傷した駒門さんはストレッチャーで搬送されていく。

 

 

 

「だらしないわねぇ。この位で……」

 

「普通の人間には無理」

 

「「以下同文」」

 

「と……とりあえず今夜は市ヶ谷会館に……」

 

 

 

それだけ言うと駒門さんは救急車に乗せられて病院へと直行した。それを見送ると俺たちは今後の方針を話し合った。

 

 

 

「では、そこに向かいますか?」

 

「いや、待ってくれ」

 

「秋葉原には行きませんよ」

 

「違うって………」

 

「伊丹の言う通りだ。これまで待ち伏せを受けてるんだ。だったら市ヶ谷会館にも何か仕掛けてくるのは目に見えてる」

 

「ってことは別の場所に向かう必要があるか………だが心当たりはあるのか?」

 

「あぁ。ちょっとクセが強いんだけど、そこなら追尾なんかは無い筈だ」

 

「行ってみる価値はあるってことか……仕方が無いからそこに向かう方がいいだろう。クレイグ中尉、俺たちで背後を警戒しよう」

 

「了解だ」

 

 

 

そういいながら俺たちは伊丹2尉の案内を受けて駅前から離れた。そして道中のコンビニで彼は食料を買うと離れた場所にポツンと建つ一軒のアパートに到着し、‘‘葵 梨紗’’と書かれた部屋の前に到着した。

最初は誰か分からなかったが2尉はなんの迷いも無く扉を開けて室内に入っていく。俺たちが入り口前で顔を覗かせながら伺っていると人の気配。

 

 

 

「エアコンくらい付けたらどうだ?寒いぞ?」

 

「ご……ご飯‼︎」

 

「はいはい、ちゃんと買って来たから………」

 

「ふへへへ〜………あったかい」

 

「あ〜……伊丹……まだ付き合ってたのか?」

 

「まぁな」

 

「てか隊長………誰ですか…その人は?」

 

「あぁ、これは………俺の‘‘元嫁さん’”だよ」

 

「えぇ?」

 

「嫁………さん?」

 

 

 

伊丹2尉の言葉にクレイグ中尉を除いて全員が理解不能に陥るも、ようやく言葉の意味を理解して目を大きく見開いた。

 

 

 

『えぇええええええええええええっ‼︎⁉︎⁇』

 

 

 

クレイグ中尉、レレイを除いて全員が驚きの声を出したが、肝心の元嫁さんはようやく俺たちの存在に気が付いたようだった……………。

 




伊丹の元嫁である葵 梨紗の部屋に避難したエース達。その翌朝に横須賀に向かう前に思い切り午前中は遊ぶことになる。それぞれが楽しむ中でエースはオオアマナの花束を片手にエミリアが亡くなった場所へと足を運び、かつての部下と再会する。


次回[追悼]
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