GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版 作:ウルヴァリン
大統領達との会談を終わらせた俺たちはすぐ東京駅に引き返し、そこから最後の目的地である箱根の温泉宿に向かった。
箱根の温泉というのは世界的にも有名な温泉街であり、箱根駅に到着したら観光客が多かった。
すぐに自衛隊共済組合が運営している温泉宿に到着し、ようやく休息できたというわけだ。
折角なので久々に温泉にゆっくり浸かり、日頃の疲れを解消してしまいたいが、なにを勘違いしたのか富田が……。
「やめてください隊長⁉︎俺は女の子が好きなんです‼︎」
「なにを勘違いしてんだ⁉︎」
伊丹から逃げようとしていた。
だが富田……伊丹は同性愛者じゃないから安心しろ。そんなやりとりをしながら温泉を出ると男子部屋にて浴衣姿になって寛いでいた。
「あ〜……このまま年末までいて仕事を忘れたい」
「そうも言ってられんでしょう?」
「全くだ。相変わらず面倒が嫌いなんだからな………次は谷だ」
「そうだ伊丹2尉。仕事が出来るから生きてられるんだ……おっと、ペアだ」
伊丹のボヤキを聞きつつ4人でトランプのババ抜きを楽しむ。
こいつは昔から面倒から逃げる傾向があるが何かの為になら全力を出せるという本来の姿を俺は知ってるから俺はなにも言わない。
7のペアを揃える。
その直後、襖が勢いよく叩かれて俺らは持っていたトランプを投げ捨てて伊丹、富田、谷は懐に手を伸ばし、俺も近くに置いていたトランクを取った。
「富田‼︎エース‼︎谷‼︎」
「はい‼︎」
「敵か⁉︎」
「だったらまだいいかもな………」
身構えた瞬間、襖が勢いよく解き放たれた。俺たちが臨戦態勢をとった先には……。
「うう〜……男共ぉ‼︎ぢょっと顔だせやあ‼︎」
「だせやあ‼︎」
「「だっせやあ‼︎‼︎」」
完全に酒に酔って凶暴化している栗林にロゥリィ、逆にテンションが高くなっているミオとルフスだった。
そこから有無を言わされずに隣の女子部屋に連行されると益々カオスな光景が広がっていた。
酔い潰れて布団で寝ているテュカに看病をするレレイ。ビーフジャーキーを食べながら片手にウィスキーを持つ姫さんに同じくウィスキーを手にするボーゼス。
久々の旨い酒に日本酒を豪快にラッパ飲みする梨紗だ。
別に羽目をはずすのは構わないんだが、幾ら何でも外しすぎな気がする。
だが本当の厄介はここからだった。
富田はボーゼスにからかわれて部屋の隅で膝を抱えながら暗くなり、伊丹は栗林に特戦群の隊員を紹介するよう迫られ、了承すると喜んだ栗林のアッパーを顎に食らってノックダウン。
谷は完全に出来上がったルフスに正座させられてグダグダと説教されて最終的には手にしていたウォッカをガブ飲みさせられて撃沈。
俺もミオに甘えられて抱擁されると首が無意識に締め付けられて意識を失う羽目になった。
「いてててて………酷い目にあった」
「くぅん………申し訳ありませんご主人様……」
暫くしてから意識を取り戻した俺は庭の長椅子にてミオに膝枕されていた。
最初に起きた時には恥ずかしかったが、ワーウルフである彼女の毛並みが気持ちよく、頭を優しく撫でられていたから起きるのを身体が拒んでいた。
軽く時計を見ると午前1時を少し過ぎた時間帯だったので外は寒く、逆にミオの毛並みで暖かかった。
「だが……若干だがミオの明るい姿を見れて役得だったぞ」
「ご冗談を………」
「普段は何処か他人に対して距離を置いたような口調だが、君も酒が入るとあんな喋り方になっちまう。やっぱり君は面白いよ」
「くぅん………」
「からかい過ぎたか?」
耳を垂らしながらこちらを見下ろすミオ。やはり雰囲気はエミリアとよく似ており、彼女もときどき膝枕をしてくれてからかうと困った表情を見せる。
「………ご主人様」
「なんだ?」
「前から聞きたかったのですが………ピニャ様のことはどう思いますか?」
「姫さんか?」
「はい……ご主人様の奥方様は帝国に殺められたと聞きました。帝国に対して恨みを持たれるということは当然のことです」
「あぁ。仇を取らなければならないからな」
「ですが………その……ピニャ様だけは許されては如何でしょう?」
「……………」
「ご主人様達と比べたら確かに見劣り致しますが、それでも民を賊から守ろうとしたり、配下の兵を大事にしたりしておられます。それに………」
「………分かってるさ」
「ご主人様?」
姫さんの話をしながら俺は身体を起こした。
「頭では理解している。俺の妻を殺したのは帝国であって、彼女じゃないってな。だが俺の心が………帝国を許さないっていう心が姫さんを突き放していた」
「……………」
「あいつは柔軟性に欠けるし、少し高飛車なところがある。だが祖国への忠誠心や部下と民を想う優しさは本物だ。何事にも一生懸命だし、どこか抜けている箇所もある。それにな………」
「それに……なんでしょう?」
「………眩しすぎるんだ。俺みたいな復讐に生きている汚い人間じゃなく、光に満ちている存在………実戦経験が皆無なのは仕方がないがな……」
「ご主人様………」
「だからさ…………向こうに帰ったらあいつに謝ろうと思う」
「ご主人様……それでは……」
「俺が真に復讐を果たさなきゃならないのはあいつじゃなく、帝国に戦をさせる連中だ。だから今まで何の関係もないのに辛く当たっていた非礼は詫びなきゃならん」
「…………」
「それを気付かせてくれたのは君だ。帝国にも悪い奴らばかりじゃない。君のような優しい人もたくさんいる。本当にありがとう」
「…………私はワーウルフですよ?」
「そうだな」
そのことに可笑しかったのか、俺とミオは手を繋ぎながら笑い合った。本当にエミリアと瓜二つだよ本当に……。
そんな和やかな雰囲気を満喫していると不意に気配が強くなり、俺は立ち上がって気配の方角を見る。ミオも感じ取ったようで拳を作って両手から刃を出現させると戦闘種族に相応しい表情をする。
「感じたか?」
「はい。距離は離れているようですが、徐々に近づいているようです」
「あぁ。どうやらお客さんのようだが歓迎している暇なんてない。早くみんなを起こして逃げると……なっ⁉︎」
敵の襲来を感じ取った俺は戦闘になる前に逃げることを提案するが、いきなり2人の人影が飛び出した。よくみるとハルバートとデスサイズを構えたロゥリィとルフスであり、敵の気配を感じ取って暴走してしまったようだ。
「くそっ⁉︎やっぱり戦うことになるのかよ⁉︎」
「どうされましょうか?」
「ミオ‼︎悪いが2人を追ってくれ‼︎俺も伊丹達を叩き起こしてから向かう‼︎」
「御心のままに」
そう頼むとミオは戦闘モードとなって飛び出した2人の後を追う。俺も室内に戻って伊丹達を叩き起こして所有していたトランクから私物のM3グリースガンを取り出してミオ達の後を追った……………。
波乱の宴から意識を失っていた伊丹は顎を摩りながら目をさます。飲み直しで飲んでいたロゥリィに誘惑されるも、近づいていた邪な気配を察知して臨戦態勢となる。
次回[伊丹とロゥリィ]