GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版 作:ウルヴァリン
無事に敵の奇襲部隊からの追撃を腐れ縁である劉が指揮する黒衣隊により切り抜けることに成功した。
あれからパーキングエリアにて昼になるまで休息を採り、簡単ながらも食事にして銀座に戻る準備をしていた。
そこで特殊部隊員の彼氏を絶賛大募集である栗林が‘‘瞬殺の具現者’’と云われていて、尚且つ出世頭で収入は非常に安定している劉にアタックを仕掛けていたが、劉本人は既に結婚していて小学生の双子がいると知ったらガックリと肩を落としていた。
そして梨紗と伊丹の妙案でミオ達が昼頃に銀座から異世界に帰るということを敢えてインターネットを駆使して大々的に公表し、言い方は悪いが集まった群衆を盾にしてしまうことにしたが、銀座に到着した時点で別の問題が発生してしまっていた。
「……全っ然動かないな……」
「参ったなぁ……まさかこんなに集まるなんて……」
思惑そのものは成功してはいるのだが、予想を遥かに上回る数が銀座に集結してきた。
梨紗のオタク仲間たちがこれだけ大勢来てくれたことに感謝しているが、流石にこれ以上の人が来るとは思ってもいなかったのだ。
「それでどうするエース。この人混みの中を車で行く気か?」
「…このままじゃ動く気配がないな………いっそのこと歩いて行った方がいいかもしれないな」
「その方がいいかも知れないなクレイグ中尉」
<2号車から大尉>
「こちら指揮官。どうした?」
<問題が発生。ロゥリィ・マーキュリーが車を降りました>
車内に設けれている無線機からの通信を聞いてすぐに後ろを見た。すると後ろのバンからロゥリィが右手にハルバート、左手に献花台へ捧げるオオアマナの花束を持って車外に飛び出た。
それに驚いたギャラリーが献花台まで道を開けるように一斉に立ち退き、直後にファンからの熱い声援が聞こえてきた。
「あの馬鹿………やりやがるな」
「どうすんだエース?俺たちは本来は日本にいないことになってんだから姿を見せられないぞ?」
「仕方が無い………ここで降りて銀座基地に向かう。ミオ、ルフス。ここからは歩きだ」
「畏まりました」
「あぁ」
「大尉。我々はここから歩いていきます。送って頂いてありがとうございます」
「気にすんな中尉。礼ならそこの馬鹿に請求するから心配ないぞ」
「誰が馬鹿だ誰が………まぁいい。向こうで酒でも飲むぞ」
「だったら無線機を持っていけ。別部隊に繋がってるから。俺らも編成が完了したら特地に向かうから、美味い酒を用意しておかなきゃ承知せんならな」
互いに冗談を言い合うと俺は扉を開けてミオとルフスと谷と共に先に外へ出ていた伊丹達と合流。向こうは正面から警戒しており、俺と谷も中央で移動するロゥリィ達にミオとルフスを一緒にして、後方を警戒する。
「ロゥリィ様ぁ〜‼︎‼︎」
「レレイ〜‼︎」
「テュカ〜‼︎」
「きゃー‼︎ミオちゃ〜ん‼︎」
「ルフス〜‼︎こっち向いて〜‼︎」
周りからは彼女達に声援を送る熱狂的ファン。やがて妨害なく献花台に到着したら花束を捧げ、彼女達は犠牲者に黙祷を捧げ始める。
「………すごい数だな……」
「あぁ……間違いなく万単位はいるだろうな。だが気をつけた方がいいだろう。人を隠すなら街の中っていうし、警戒すべきは敵の工作員だけじゃない」
「分かってる。激情に任せた遺族も何をしでかすかわかったものじゃない」
<こちらルーンキャスター1-6。リーパー00どうぞ>
「こちらリーパー00。無事だったかハイデッガー」
<中尉、西の群衆から赤いニット帽を被った少年が飛び出しました。間も無くで到達します。こちらも向かいます>
無事だったハイデッガーからの無線を聞いて西側を見る。すると確かに赤いニット帽を被った12歳くらいの男の子が凄い剣幕をしながらこちらに走り寄って来ていた。
俺は正面に回り込んで彼を抑えた。
「おっと坊主、こっからは立ち入り禁止だぞ」
「うるさい‼︎離せ‼︎父さんと母さんを返せ‼︎殺人者‼︎」
「なっ……」
少年の言葉に俺は驚いた。この子は帝国に殺害された両親の子供で、恐らくはインターネットを使ってミオ達の到来を知り、ここに来たのだろう。
俺は抵抗して彼女達に殴り掛かろうとする少年を必死に抑え込む。
「この人殺し‼︎厄病神‼︎お前らが来なきゃみんな死ななかったんだぞ‼︎」
「よせ坊主」
「離せ⁉︎離せよ‼︎こいつらにも同じことを味合わさせてやる‼︎」
「いいから落ち着け坊主。冷静になれ」
「うるさい⁉︎お前なんかに分かるもんか‼︎」
「いいから落ち着け‼︎」
なかなか落ち着かない少年を俺は止むを得ず転倒させ、地面に抑え込む。谷は万一に備えて懐のM1911A1に手を伸ばすが俺が制した。
「いいか聞け坊主。あの事件で確かにお前の坊主の両親は死んだんだろう。その怒りが帝国に向けられ、矛先が彼女達に向けられるってのも分からないこともない」
「だったら殴らせろよ⁉︎仇を取らせろよ‼︎」
「だがな……彼女達は銀座事件に何も関わってなどない。怒りをぶつける相手を間違っているんだ」
「うるさいうるさい⁉︎異世界から来たんならみんな敵なんだ‼︎みんな共犯なんだよ⁉︎」
「俺もあの事件で妻を殺された。だからお前の気持ちは凄く分かる」
エミリアを殺害されたことを口にすると、少年は大人しくなった。そして少年を起こして両肩に手を置いてじっと目を見させる。
「俺も最初は帝国全てが敵だと考えていた。妻を殺した奴らを皆殺しにし、仇打ちを果たしたいとも思った。だがそれは間違った考えだ」
「……………」
「本当に裁きを与えなきゃならないのは帝国そのものじゃなく、帝国に戦をさせる少数の人間。帝国の中にも平和を願っている人間もいるっていうことを俺は気がついたんだ」
「けど………けど父さんと……母さんは……」
「坊主。その怒りと悲しみをバネにして多くの人を救える大人になってみろ」
「バネ…………」
「大丈夫だ。俺みたいな奴にも出来たんだ。だからお前が出来ない筈もないし、それにお前の両親は………」
そういうと俺は少年の心臓辺りを軽く突いた。
「両親は常にお前の心の中で生きてる………だからお前は1人じゃない」
「くずっ………ふうぇ………」
「泣きたい時には泣き、立ち止まりたい時には立ち止まればいい。だがそれが済んだら前を向き、後ろを振り返らずに只管に進め。お前は1人じゃない。それが出来たらお前は英雄だ」
「中尉」
「ハイデッガー………この子を家まで送り届けてくれ」
「了解です」
駆けつけたハイデッガーに涙を流す子供を託し、それを見送った。悲しみに浸されていたがあの子の目は瑠璃色の瞳をした非常に透き通ったいい目をしていた。
俺は道を示しただけで後はあの子次第となるが問題はないと確信している。あの子は間違いなく将来は人を助けられるデカイ人間になる。
その少年を見送り、2時の鐘が鳴り止むと俺たちは銀座基地に入り、群衆の熱が入った見送りを受けて迎えに来た倉田2曹とコーエンスの高機動車とITVに乗り込み、ゲートをくぐって異世界に帰還した。
「ミオ、どうだった初めての異世界は?」
「はい‼︎すっごく楽しかったです‼︎」
「それは良かった」
隣にいる土産のお菓子と原宿で買った洋服を抱えながら楽しそうにこちらを見るミオの頭を撫でてやる。
久々の日本は騒がしかったが、楽しかったというのは間違いない。異世界に戻ってきた俺は気を引き締めて任務に取り掛かろうとしよう……………。
異世界に戻ったエース達。帝国に帰還するピニャを呼び止めてエースは彼女と話をする。
エースとピニャ。英雄達は何を語るか………。
次回:遭遇編最終話[エース]