GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版   作:ウルヴァリン

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49:エース

異世界に帰還した俺たちはすぐに状況報告を求められた。

 

狭間陸将と海兵隊司令のシュガート大佐、台湾軍司令の趙大佐が集まった陸将室にて箱根での中国、韓国、ロシアの襲撃や一時的な行方不明の経緯、いつの間にか敵からこっそり拳銃を入手していた姫さんとボーゼスの拳銃所有理由などということなどだが、緊張して仕方がなかった。

 

そしてその際に明日の朝にピニャはイタリカを経由して帝都ウラ・ビアンカに帰還すると聞かされて、報告が終わるとすぐにピニャ達が滞在している一室に足を運び、彼女を連れて官舎屋上にやってきた。

 

 

 

「ど……どうかしたのかク…クレイグ殿?」

 

「いやなに………ちょっとあんたと話をしたくてな……」

 

「話を……?」

 

「あぁ………姫さん、単刀直入に聞くがあんたは初めての異世界を見てどう思った?」

 

「思った?」

 

 

 

ピニャの聞き返しに俺は頷く。俺たちは史上初めて異世界に足を踏み込んだ軍人であるように、ピニャ自身も初めての異世界に足を踏み込んで驚愕していた。

 

 

 

「俺は初めて異世界であるこの世界に足を踏み込んだ時に感じたのは期待ではなく怒りだった。ようやく妻を殺した帝国に復讐できる……帝国兵を駆逐してエミリアの仇を討つ………俺が抱いた第1の感情はそういった負の感情だ」

 

「負……の感情……」

 

「だがな………あんたやミオやロゥリィ、いろんな人間に会って、それがだんだん哀しくなって来ちまった。やろうとしてることは帝国兵となんら変わらない」

 

「………………」

 

「だから………あんたに言っておきたいことがある……すまなかった」

 

 

 

俺が謝罪の言葉と同時に頭をさげるとピニャは驚愕した。

 

この世界において頭をさげるということは相手に対して弱みを掴ませることを意味しており、国同士の場合は相手国に対してかなり有利な状況を作り出すことになる。

 

暫くしてから頭を上げると呆然としているピニャに話しかけた。

 

 

 

「今まで本当にすまなかった……講和を求めて尽力してたあんたに辛くあたってしまって……」

 

「い……いや⁉︎わ……妾達もエース殿に無礼を働いてしまっているのだ⁉︎そ……それに貴殿の奥方も⁉︎」

 

「確かに妻を殺したのは帝国だ。だが殺したのは主戦派一党であってあんたは銀座事件になにも関わっていない………それは分かっていたんだが、それでもな………」

 

「だが……妾達は勝手に戦争を始めてしまい、なんの関係もない日本の民を何人も殺めてしまった………例え関わっていなくとも帝国に身を置く妾にも責任がある」

 

「…………聞いてもいいか?」

 

「………あぁ」

 

「だが聞きたいのは帝国の人間としてではなく、異世界を目の当たりにし、俺たちの世界に足を運んだ1人の人間として聞きたい。あんたは帝国をどうしたいのかを…………」

 

「……………正直にいえばまだ悩んでいる」

 

「……………」

 

「妾達帝国は力こそが正義……帝国こそがいかなる国家よりも上位であると信じて来た。他国を力を持ってひれ伏させ、その国が持つもの全てを帝国のものとすることが許される。そう信じていた」

 

「ただ力を振るうだけでは平和にはならない。それは単なる暴力でしかなく、力は新しい戦いを引き起こさせる。それは分かっているか?」

 

「妾も馬鹿ではない。だが帝国は数百年もの間に1度も負けたことがないのだ。危機はあったことはあったようだが………」

 

 

 

その話ならレレイから聞いたことがある。確か歴史上で帝国が敗退したのは今から約1,000年ほど前らしく、古代魔導戦争というこちらでいうところの第2次大戦。

正確には帝国の前身であるアマリオ王国が魔導主体の周辺国に制圧されたのだが現在の騎士主体の編成で各地にて奮戦し、遂には逆転。魔導師達を皆殺しにして100年という長い期間を費やして次々と諸侯を制圧。今の帝国を作り出したらしい。

 

だから会った当時の彼女や帝国史上主義を掲げる気狂いが生まれても仕方がないということだ。

 

 

 

「確かに妾は陛下の娘だ。だが妾は戦争を止めたい」

 

「それは現皇帝どころか帝国全体の反逆者になりかねない。それでもか?」

 

「もし……帝国と連合が本格的に戦うことになれば……帝国は間違いなく負ける。貴殿の世界の力の差も含め、兵士ひとりひとりの実力も歴然だ………だがなにより……」

 

「…………」

 

「妾達に殴り掛かろうとしたあの少年………妾はあの少年が味わった絶望を無くしたい………例えそれが……父上や兄上達……仲間全員を裏切ることになろうとも…妾はなんとしてでも止めなければならない」

 

 

 

その言葉を聞いて彼女の瞳をじっと見る。

 

オッドアイの瞳から伝わるのは決意に満ちた燃え上がるような迷いのないものだった。そのことに俺は嬉しくなり、彼女に手を差し伸べた。

 

 

 

「クレイグ殿?」

 

「エース。こう読んでほしい」

 

「えっ?」

 

「そして約束してくれ。必ず講和を成功させると………必ず2つの世界が手を取り合えるように尽力すると………」

 

「…………あぁ。約束しよう………エース」

 

 

 

ピニャも約束すると手を取り、俺と握手を交わした。

 

約束を守ると誓ったピニャに期待をし、彼女は翌朝に荷物を纏めて出発。そして互いの文化や言葉を教えあう組合に薔薇騎士団も向かわされ、俺も彼女達に言葉を教えてもらうこととなった。

 

願うことなら早く平和が来て欲しい。

 

現地歴687年、戦乱や動乱荒れ狂うその年はまだ半ばを過ぎようとしていた……………。

 

 

 

Capter 1 Completion.

 

 

 




特地に派遣されて3ヶ月、特地での生活に慣れてきたエース、谷、伊丹。連合に更にウクライナをはじめとした複数国の武官とアドバイザーが参加し、アルヌスの発展も合わせるように順調だった。

そんなアルヌスにダークエルフのヤオ・ハー・ディッシュは一族救援の為に狭間陸将、シュガート大佐、趙大佐と会うが……。


次回:第2章炎龍編[雨]
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