GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版 作:ウルヴァリン
帝都ウラ・ビアンカ皇室庭園。
ここでは現在、ピニャと日本外交官の菅原 浩治とアメリカ大使のアーノルド・ノイマン、台湾外交官の孔 徳羽による講和派貴族達の家族を招いた園遊会が行なわれていた。
会場では第3偵察隊の古田とタスクフォース ナイツより派遣された劉が作った料理の他に栗林、富田、シンディ、クラークの4人による女性向け護身術講座に黒川による化粧体験。
桑原曹長、コーエンスによるジャズバンド、その他に簡易ボーリングや輪投げ、的当てなど老若男女問わず様々な催しを用意して来賓達を楽しませていた。
特に古田、劉の2名が作るマ・ヌガ肉焼きは大好評で、向こうから持ってきたマスタードやケチャップ。
更に刻みワサビといった薬味なども揃えていて、来客達は大満足だ。
そんな会場の端にある草原には伊丹、エース、谷の他に第4偵察隊、デスサイズ隊、台湾本土から増援で送られた第269機械化歩兵旅団第334小隊射撃チームが2名ずつで89式小銃にM16A4、65式突撃歩槍を構えて25m先にある帝国兵の鎧一式に5.56mm弾を叩き込んでいた。
自分達の装備を最も簡単に貫通する様子に驚愕する議員達に伊丹達は話し掛けた。
「いかがでしょう。これが銃の威力になり「売ってくれ‼︎」えっ⁉︎」
「いや⁉︎こんなものどうやって作るのだ⁉︎」
「お……落ち着いてください⁉︎」
「この銃というものを貴方方はどの程度保有しているのだ⁉︎」
「詳しくは申せませんが、用途に合わせて1人1丁は装備しているとお考え下さい」
エースの言葉に議員達は驚愕。驚きのあまり質問攻めを食らっていた伊丹と谷は解放されて一息吐いた。
「続いて81mm迫撃砲をご覧下さい」
そういうと少し離れた場所に待機している自衛隊のM252 81mm迫撃砲を全員が見る。
「半装填‼︎」
「半装填よし‼︎」
「発射‼︎」
特科の迫撃砲部隊がM252 81mm迫撃砲より榴弾を発射させ、1kmほど先の地点に弾着させる。
優秀な弓兵ですら最大射程が300m弱だというのに自分達の3倍以上もの射程の長さを有する迫撃砲に議員達は驚愕しきっていた。
「……デュシー侯」
「うむ………これ以上の連合軍との戦いが続けば我等は敗れる」
連合軍との戦いは帝国を滅亡に導く。そう判断したデュシー侯は様子を見にきていた菅原、アーノルド、孔に歩み寄った。
「これはデュシー侯爵。晩餐以来でしょうか?」
「菅原殿、ノイマン殿、孔殿。堅苦しい挨拶は無しだ。講和交渉におけるそちら側の条件を教えて欲しい………が…1つだけ教えてくれないか?」
「我々に答えられる範囲内でしたらお答え致します」
「連合軍はなぜ講和を求めるのか?我等と戦えばこちらは一方的に敗走すると分かっているのに何故か?」
「それは至って簡単です。我々が求めるのはただ1つ………平和だからです」
アーノルドの言葉にデュシー侯は暫く彼らを見る。
「平和………か……耳心地の実に良い言葉だ……だが……勝って与える平和は非常に美味で負けて与えられる平和は実に不味い。同じ平和だというのに真逆の意味が含まれている」
「これまで儂等は勝って与える平和しか知らなかった。連合軍に帝都が蹂躙される前に講和交渉が必要だろう。そちらは和平にどのような条件を出すつもりか?」
「はい。我々が求める条件は4つあります。1つ、帝国は戦争責任を認めて謝罪し、責任者を処罰すること」
「2つ目は帝国は賠償金として5億スワニもしくは相当の地下資源採掘権を支払うこと。3つ目はアルヌスを中心とする半径100リークを連合特地派遣団に譲渡し、その外側10リークを非武装地帯とする」
「そして4つ目は通商条約の締結………これらの4つが我々が掲示する条約となります」
「5億スワニ⁉︎」
「無茶な⁉︎国中から金貨をかき集めても到底届かぬ額だぞ⁉︎」
「驚かれましたか?一応はこちらの相場を日本の額に合わせたのですが、これでも我が国と台湾の年間国家予算を少し超える程度で、アメリカに関してはこれの何倍もの額が国家予算となってます」
5億スワニが連合参加国の年間予算と同じであると聞き、議員達は唖然としてしまっているが、特にピニャは改めて連合と帝国の差が天と地の差であると悟って倒れてしまった。
だが菅原、アーノルド、孔の3人は絶対に言えなかった。
5億スワニという金額はただ単に賠償金額が決まっていないから第2次大戦終結において日本への賠償金を参考にしただけ。
仮にそんな金額を支払われてしまったら間違いなく異世界の経済は破綻するし、菅原達の世界でもそんな大量の金貨が来れば市場相場が破綻して大混乱となる。
それにそんな金額が入ってきたら間違いなく中国と韓国が歴史問題をネタにして奪い取ろうとするのは火を見るより明らかだ。
だから賠償金かそれ相応の地下資源採掘権という内容を付け加えたのだ。資源ならば金銀銅や宝石以外はあまり重宝されていないし、手付かずの油田もあるから寧ろ菅原達の真の狙いはこちらなのだ。
混乱する議員達にあくまで提示額であるということを伝えると、伊丹の無線機に通信が入った。
<アベンジャー。こちらアーチャー、送れ>
「こちらアベンジャー。どうした?」
<帝都方面より招待状のない騎馬の小集団が接近。招待客ではなさそうだが身なりが良く、盗賊の類には見えない。こちらで対処するか?>
「アーチャー。監視を続行せよ」
<了解>
「エース、谷。予約の無い客が来たみたいだ」
「聴いてた。すぐにVIPを退避させた方がいいだろう。表向きではまだ接触していないことになってるからな」
「南東門がある‘‘悪所’’からがいいだろう。あそこは茂みの中だから人目につかないし、門番も買収済みだ。俺は富田と一緒に車両を取ってくる」
「分かった。俺は使い魔達と合流する。伊丹は引き続き指揮を執ってくれ」
「あぁ。だがその前に………」
「分かってる。手間の掛かる姫様だよ全く………」
そう言いながらあまりの金額に倒れたままのピニャを起こし、すぐに伊丹とエースにイタリカでの許しを乞うように謝るが、2人は全く気にしていなかったから問題にはならない。
それからすぐにピニャに事情を説明し、講和派貴族を車両で脱出させて彼女はすぐに園遊会会場に引き返させた。エースも密かに潜伏していたヴァローナ隊と合流し、集音マイクを使って情報収集を始めた。
<兄上‼︎今日はなんのご用でしょうか?>
<なんだ?俺が来て迷惑だったか?>
<いえ、そういう訳では…ただ兄様はこのような催しには無関心なものでしたから……>
「あれがピニャの兄貴か………年は俺と同じかちょっと下って処だろう」
「確かゾルザルっていう名前だった筈だ。その下にディアボとかいう奴がいるって話だ」
「だが……なんだか分からないが気に入らない奴だ」
<ここに元老議員と敵の使節団は?>
<おりませぬが、どうかなさいましたか?>
<あ?あぁ、マルクスに行ってみろって言われてな>
<なんと言って?>
<敵と密会をしていると聞いたんだが気にするな。俺とマルクスの勘違いだったみたいだ>
「威力偵察………じゃなさそうだ。アーロン、確か主戦派の中にそんな名前があった筈だ」
「抜かりはない。マルクスって言えば皇帝の右腕だ」
園遊会での会話を盗聴しながら双眼鏡で2人のやりとりを監視する。連合特地派遣団と帝国の間に和平を求めることを頑なに拒否し、各地から徴兵して再びアルヌスに攻めこもうとしている主戦派一派がいるということは既にタスクフォース サーヴァントが掴んでいる。
ピニャの兄であるゾルザルこそが主戦派を束ねる中心的存在だということもだ。
<兄様。せっかくですから何か召し上がって下さいませ。マスタードというソースをつけたマ・ヌガ肉がオススメです>
<黄色のソース………不味そうだ>
「そう言うんだったら食うなよな……」
<………ピニャ。これを作った料理人を紹介してくれまいか?是非とも父上にも召し上がって頂きたい>
<お気に召されたようですね?>
<俺が料理に煩いのは知っているであろう?それで誰が焼いたんだ?>
<残念ですが少し前に帰られました>
<そうか……見かけたら俺の前に連れて来い。いいな?>
「………古田と劉が聞いたら喜びそうだな」
「データに記載しておく。何かに役立つだろう」
「おいおい………いくら気に入ったからってあんなにマスタードをつける馬鹿がいるか?」
「まぁ初めての味だから仕方がないか……」
隣でエースと同じく双眼鏡で監視するアーロンに集音マイクを操作するイワン、Fort-301を構えていつでも狙撃できる体勢をとるヴァシリ。
それからピニャとゾルザルのやりとりからあまり有効的な情報を得ることは出来ず、少ししてから土産に料理や酒を持ち帰っていった。
それから園遊会はなんの問題もなく終了し、会場監視の任務を終了した伊丹達はそれぞれの車両に乗り込んで帝都のダウンタウンである悪所へと向かった……………。
帝都の犯罪多発地域である悪所。スティーブが所属するタスクフォース サーヴァントも拠点を確保して市街地調査をしていたが、途中でマフィアに襲われている女性をスティーブが見つけ、救援に向かう。
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