GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版   作:ウルヴァリン

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55:予知

ベッサーラファミリー壊滅から暫く、悪所にて連合特地派遣団は受け入れられつつあった。

 

残りの3大マフィアの顔役達は連合の邪魔をしないということを正式に通達してきて、更に連合を競合相手ではなく商売相手であると認知したようだ。

 

加えてマフィアの対応に最も慣れたアーロンの活躍により連合は報酬を払う見返りに、マフィア達は貴族達の中に自分達の配下の人間達を紛れ込ませた諜報活動を開始。これにより悪所は景気が良くなっていき、街に金が落ちるようになっていった。

 

だがある日の晩、自衛隊主体の第1セーフハウスでは何か動きがみられていた。

 

 

 

「いやぁ……鳥目には助かるよ」

 

 

 

夜のセーフハウスにやって来た翼人種の娼婦………綺麗なブロンドの髪に純白の翼、黄色の瞳をした絶世の美女ともいえる大人の翼人種であるミザリィ。

彼女の他にハーピィ、竜人族、ヴォーリアバニー、キャットピープル、メデューサ、ワーウルフ、ジヴォージョニー、蛇人族といった亜種の娼婦が一杯来ており、たまたま来ていたスティーブはミーアとなにやら話をしていた。

 

私服姿で悪所において看護師を務めていた第3偵察隊の黒川は腰に9mm拳銃をジーンズに挟み込みながら外の様子を伺い、危険が無いと判断したら扉を閉めた。

 

 

 

「ミザリィ、どうしたんですか?こんな夜中に大勢で……」

 

「あぁ………あたし達はあんたら連合が悪所で………いや…ウラ・ビアンカでなにをしようとしてるか薄々だけど感づいていた」

 

 

 

ミザリィの言葉に黒川はもちろん倉田やスティーブはそれぞれ手にしていたM4A1とMP7A1、特殊作戦群指揮官の新田原3佐は11.4mm拳銃のトリガーに指を掛けようとする。

 

 

 

「だけどねぇ……なにも言わず聞かず見なかったで通してきた。あんたらは顔役の大事な商売相手だし、この街ではそうするのが長生きの秘訣だからね。けどそうも言ってられなくなったんだよ」

 

 

 

ミザリィはそういうと隣の少女を前に出す。プラチナブロンドの髪をしたハーピィ族の少女だが表情はなにやら怯えているような感じをしていた。

 

 

 

「この子は義理の妹で名前はテュワル。話を聞いてあたしらを助けて欲しいんだ」

 

「お……お願いです……助けて下さい」

 

「助けるって何から……ベッサーラみたいなマフィアからか?」

 

「違います……なんだか分からないけど寒気がして……」

 

「それは病気か何かじゃないのかな?」

 

「ううん……ここから逃げ出したくなるような寒気なの」

 

「あぁああ‼︎もうまどろっこしい‼︎」

 

 

 

中々話が進まないことに焦らされたミザリィが立ち上がり、必死な表情で黒川達に訴えかける。

 

 

 

「つまりさ‼︎あんたらがあたしらを助けてくれたら‼︎これからはあんた達の力になってやるって言ってんだ‼︎」

 

「…………分かった。じゃあテュワルちゃんだったね?詳しく話してくれないか?」

 

 

 

テュワルの様子にミザリィの言葉に焦りがみえたことにより事は急を要すると判断したら新田原はミザリィを椅子に座らせ、少し落ち着かせてから話を聞いてみることにした。

 

 

 

「あ……あたいの故郷には火山があって、噴火の前には地揺れがあるんです。今日も仕事の合間に…その時と同じ感じがして“怖い、逃げなきゃ”って気持ちが強くなって………」

 

「地揺れ……地震のことか………この世界にも地震があるのかね?」

 

「地面が動くわけないでしょ?」

 

「そんナことになれバ世界の終焉」

 

「あたしも最初は気のせいだと思ってたんだけど、テュワルの話を聞いたらみんなも同じ気分になってたんだ。この街の男共は頼りにならないし、だからここに来たんだ」

 

「…………」

 

「どうかされましたか新田原3佐?」

 

 

 

新田原は彼女達の話を聞いて考え出す。

 

翼人種とハーピィの遥か昔の先祖は鳥だと倉田は前に新田原に話していた。そして90年から自衛隊に勤務している大ベテランの彼は3曹時代と1尉時代に、当時勤務していた駐屯地周辺で鳥や動物達が騒がしくなったことを思い出した。

 

スティーブの呼びかけに応じる形で新田原が先に話し出した。

 

 

 

「以前の勤務地の時に鳥や動物達が激しく騒ぎ出したことがあった」

 

「以前の……勤務地?」

 

「…………阪神と……東北……」

 

『‼︎⁉︎⁇』

 

 

 

新田原の言葉を聞いてスティーブ達も察知した。新田原が導き出した答えとは、かつて日本を窮地に陥れた1995年に発生した阪神淡路大震災と2011年に発生した東日本大震災だ。

動物達は人間と比べて特殊な磁場を察知することが優れているということは判明しており、特に鳩など鳥類は卓越して優れている。

 

かつて2つの震災の前兆で動物達が一斉に騒ぎ出し、その数分後に起きたのが大地震だ。

 

ミザリィとテュワルの言葉で彼女達の寒気が大地震が起きる際の磁場を察知したことであると確信した新田原は一気に立ち上がり、大きめの声で指示を出す。

 

 

 

「帝都各班及びアルヌスに緊急連絡‼︎間も無くで大規模地震発生の危険性あり‼︎我々も帝都外に避難する‼︎各自5分で装備を纏めて備えろ‼︎」

 

『了解‼︎』

 

「ミザリィ、皆さんを帝都外に固まって集合させて下さい」

 

「ありがとう。けど地揺れが起きるってなんで分かるんだい黒川?」

 

「私たちの世界では大きな地震………地揺れの時には前兆で鳥や動物が一斉に騒ぎ出したり逃げ出したりするんです。皆さんの今の状況みたいに……」

 

「………信じるよ。聞いたねみんな、すぐに避難するよ」

 

 

 

纏め役であるミザリィがみんなを纏めだし、スティーブ達もすぐそばにある広場に装備を全てまとめた状態で避難していく。

 

 

一方でウラ・ビアンカから約600km離れたアルヌスにあるロゥリィの部屋。何時ものように自身の部屋にて眠っていたロゥリィだったがレレイとテュカ、ルフスに起こされてミオの部屋に足を運んでいた。

 

 

 

「ふぁ〜……なんなのよぉ…こんな夜中にぃ」

 

「起こしてすまない。だけどミオの様子がおかしい」

 

「ミオの?」

 

「そうロゥリィ。朝から少し様子がおかしかったのだが、少し前から急に飛び上がって震えだした。だから先にカトー老師に様子を見てもらっている」

 

「ちょっと私たちじゃあどうすればいいか分からないし、本当ならエースに頼みたかったけど今は帝都に行っちゃってるからロゥリィにお願いしたいの」

 

「分かったわぁ」

 

 

 

ミオの様子がおかしいと聞き、ミオの部屋の前に着くロゥリィ。

 

彼女達6人はアルヌス協働組合において代表者の地位にあり、それぞれが複数の役割を全うしている。

 

レレイは総務・事業計画・営業・通訳担当。

ロゥリィは祭祀・宗教・治安維持担当。

テュカは農林産業・都市計画担当。

レレイの師匠であるカトーは児童教育・カウンセリング担当。

ルフスはアルヌス〜イタリカ間警務隊隊長・自警団顧問担当。

ミオは衛生・医療・食品製造担当。

 

これらにより彼女達の給料は日本円で26万円前後であり、この世界のデナリ銀貨支給でも多くて数万程度の3枚に比べたら5倍ほどの額となる。

ミオの部屋に着いて中に入るとそこには身体を掴んで震えているミオに、懸命に落ち着かせようとするカトーの姿があった。

 

 

 

「お師匠。様子はどう?」

 

「おぉ、戻ったかレレイ。変わらずじゃよ……見た感じでは病では無さそうじゃし、何かに完全に怯えとるようじゃが何なのかが本人にすらわかっておらぬみたいなのじゃよ」

 

「あらぁ?本当に様子がおかしいわねぇ………ミオ、どうかしたの?」

 

「わ……分からないのですロゥリィ……逃げなきゃ……逃げなきゃならないような気がして………逃げなきゃいけない気がして……」

 

「逃げるぅ?……確かにおかしいわねぇ……「聖下‼︎ロゥリィ聖下‼︎」あら?」

 

 

 

呼ばれてロゥリィは扉を開けると、そこには彼女の副官でもあり、以前は傭兵として連合を相手に戦ったが今は警務隊に所属しているハーピィ種のミューティの姿があったがミオと同じように何かに震えているようだった。

 

 

 

「どうしたのミューティ?」

 

「早くここから逃げないと⁉︎逃げなきゃいけないような気がするんです⁉︎」

 

「あなたもなのぉ………」

 

 

 

あからさまにミューティもミオと同じく何かに怯えていると察した直後、いきなりアルヌス全体に警報が鳴り響いた。それに合わせるように外ではアメリカ軍のM1117装甲警備車と73式小型トラック警務隊仕様車がサイレンを鳴らしながらゆっくり走行していた。

 

 

「住民の皆さん‼︎地震……地揺れの発生する危険性があります‼︎直ちに火を消して野原に避難して下さい‼︎繰り返します………」

 

 

 

放送を聞いて一斉に家から飛び出てくる住民達。只事ではないと感じたロゥリィは震えるミオとミューティを連れて同じようにアルヌス平原へと避難を始めた。

 

 

同じ頃、ピニャの屋敷に滞在していた伊丹、エース、谷、栗林、富田、古田、コーエンスは第1セーフハウスより齎された地震の予兆を聞き、急いで装備を纏めるとピニャ達を屋敷の外、なるべく広い場所に連れてきた。

 

 

 

「なんだというのだこんな夜中に⁉︎大地が揺れる訳がなかろう⁉︎」

 

「かなり可能性が高い。俺たちの世界で地震が発生する兆候が全て揃っているんだ」

 

「あぁ。それに何もなければそれはそれでいい。あってからじゃ遅いんだ……おっ?」

 

「富田」

 

「えぇ、揺れています」

 

「来やがったな………」

 

 

 

伊丹が最初に感じ取り、それから徐々に揺れが強くなり始める。そのこともピニャも気が付いたようだが最初はなんなのか理解出来ていないようだった。そして………。

 

 

 

「「「来るぞ‼︎」」」

 

 

 

その夜………帝都は地震に見舞われた……………。

 




帝都を襲った地震。今まで経験したことのない地震にミーアは恐怖に駆られてしまう。見かねたスティーブも彼女を落ち着かせる為に歩み寄る。


次回[スティーブとミーア]
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