GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版   作:ウルヴァリン

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61:2つの議題

特地における拉致問題発覚はすぐさま日本に齎された。

 

連絡を受けた本居はすぐにディレルと周に問題を知らせ、更に拉致被害者の中にウクライナ人もいるということもあり、テレビ電話にてウクライナを含めた4カ国による緊急会談が執り行われていた。

 

 

 

「みなさん。特地の狭間陸将からの連絡で帝国元老院、旧軍港内倉庫、コロッセオの爆撃と破壊が完了したようです」

 

「作戦成功だな。民間人に被害は出たのか本居?」

 

「いえ、精密爆撃により民間人に犠牲者はもちろん怪我人すら出ていませんよ」

 

「それは良かったです本居総理。いくら報復とはいえ民間人を巻き込む訳にはいきませんからね」

 

「私としたら優しい位だがな」

 

 

 

テレビ電話にて会談を行う本居、ディレル、周とウクライナ大統領のユーリ・ヴォドロフ・コヴァレンコ。

 

空爆で破壊した元老院、コロッセオ、軍港内倉庫と共通点がないように見えるが実際には明確な理由があった。

 

元老院に対しては重鎮達を一瞬で全員を排除出来る。

 

闘技が行われるコロッセオでは優秀な兵士を簡単に排除出来る。

 

倉庫は様々な隠匿された補給物資を灰に出来る。

 

そういったメッセージが込められていて、実際の人的被害は皆無。だが強烈なメッセージであるということは明白であり、講和派議員を増やすと同時に主戦派議員を牽制する目的が今回の爆撃の目的だった。

 

 

 

「向こう側の議員達には我々のメッセージが正しく理解されていることを願うが、あまり期待は出来ぬだろうな」

 

「私もそう思います。先軍主義や奴隷承諾、一方的な侵略行為や搾取を容認している連中ですし、中には未だに我々を弱者と見ている主戦派議員も存在しているようです」

 

「だが本居、本当に人的被害を出さない空爆だけで良かったのか?私達としては主戦派議員共を一挙に空爆して排除した方がいいと思うのだが………」

 

「ユーリの言いたいことも分かります。自国民が拉致された挙句に奴隷とされていたのですから、私も聞かされた時には帝国に怒りを持ちました」

 

「まぁ落ち着いたらどうだねユーリ?」

 

「俺は落ち着いているよディレル。今回の爆撃は帝国に我々の圧倒的力を見せつけて抑止力とするということが真の目的……拉致した人間を早期返還しなければ次は無いと脅しをかける」

 

「その通りです。首謀者の名前はゾルザル・エル・カエサル。帝国の次期皇帝最有力候補となっている皇太子で、現皇帝モルトは事態の終息と拉致被害者捜索と返還、更にゾルザルにより捕らえられている奴隷達の解放を約束しました。そこに今回の空爆が加われば………」

 

「より我々に有利な条件を提示させられるということだな?」

 

 

 

うまくいけばゾルザルを含めた戦犯者の身柄引き渡しも実現するかもしれない。

空爆により間違いなく帝国は動揺している筈だし、同じ攻撃を受けたく無ければこちらが提示する条件を飲まざる得ないし、向こうはあまり条件を出せなくなる。

 

これでも帝国に一方的有利な条件を出してこようとするなら、そいつはよっぽどの馬鹿か無能のどちらかだろう。

 

それから各国は特地派遣団の態勢について話し合い、日本は第3戦闘団編成準備でアメリカは旧式の再導入だがレシプロ機などで編成された航空戦力の充実化、台湾とウクライナはそれぞれ黒衣隊とヴァローナ隊の戦力増強をそれぞれ実施すること。

 

連合に表立ったことはしていないが裏側で妨害工作をして来ている中国、韓国、ロシア、北朝鮮の4カ国を警戒することで話は纏まった。

 

 

 

 

一方で同時刻の帝都ウラ・ビアンカ元老院跡でも議員達が皇帝の緊急招集により集められていた。

 

 

「陛下にお尋ねしたい‼︎キケロ卿によれば連合特地派遣団なる者達の使節は和平を望み、会合を重ねていたそうです‼︎私も近々会合に応じることとなっていましたが、これはどういうことか⁉︎なぜ元老院が粉微塵にされなければ成らないのか⁉︎」

 

 

玉座に腰掛けるモルトに対して実質上の講和派No.2のカーゼルが問いかける。

 

 

 

「民は恐れているのです‼︎今回の一件は神の怒りではないのかと⁉︎」

 

「……………」

 

「陛下がお答えいただけぬのでしたら私が話しましょう……ことの発端は開戦前、門の向こう側より民を数人ほど攫ってきたことにある」

 

「なんと⁉︎そんなことが⁉︎」

 

「何を馬鹿な‼︎たかが家畜を盗んだ程度でだと⁉︎」

「その事実を知った者達は大層怒り狂い、こともあろうにゾルザル殿下を打擲するに及んだ‼︎」

 

 

 

カーゼルがそういうと全員がゾルザルに振り向く。

 

そこには愛用している大剣を杖代わりにしていて、エースにより散々殴られたことで包帯まみれになっているゾルザルがいた。

だが、皇帝やピニャだけは哀れに思う処か逆に自業自得に思えるような表現で見下していた。

 

 

 

「しかも殿下を打擲した当人は我等が‘‘無慈悲の鬼神’’という異名で恐れ、更には亜神の如くの強さを秘めた鬼エース・クレイグ‼︎なぜそのような者が怒り狂ったのか⁉︎なぜ当たり前に存在する奴隷の為に⁉︎」

 

「カーゼル公爵。妾に説明させて頂きたい」

 

 

 

カーゼルの問いかけにピニャは挙手をして立ち上がり、玉座の中央に立つ。

 

 

 

「妾が知っていることを述べさせて頂く。彼ら連合と初めて出会ったのはイタリカにおいて連合諸王国軍敗残兵との戦いでだ。そこで妾は………」

 

 

 

それからピニャは自身のあったことを詳しく議員達に語る。

イタリカにおける第4空中強襲戦闘団の力やエースの帝国に対する怒りと憎しみ。

門の向こう側において自分達の技術や文化とは比べ物にもならない発展した街に帝国軍が束になっても傷を付けられるかも怪しい程に強力な軍隊。

 

なにもかも帝国が格下の中の格下であるという事実に議員達は半信半疑だが、ピニャはそれらを説明すると懐より紙束を取り出した。

 

 

 

「これはその折ニホンにより提供された我が軍の捕虜の名簿となる」

 

「なんですと⁉︎」

 

「なぜそれを早く見せて下さらぬ⁉︎」

 

 

 

ピニャより渡された名簿に群がる議員達。最初の日本侵攻の折に未だ出兵した息子や孫の消息が分かっていない議員もいて、この時だけは本当に父親や親戚の表情となっていた。

 

 

 

「おいモーリス‼︎お前の息子の名前があった‼︎生きておるぞ‼︎」

 

「息子が……儂の息子が生きておる……」

 

「誰か⁉︎マオロの名を見なかったか⁉︎」

 

「あったぞ‼︎孫が生きている‼︎」

 

「妾は見返りとして15人の身請けを許された。講和交渉に関わる者の身内を優先させて頂いたことを許されたい」

 

「殿下はお狡い⁉︎候補に漏れたもの達はどうなることやら⁉︎」

 

「その通りです⁉︎息子が奴隷に落ちるなど⁉︎」

 

「それは心配無用だ。向こう側の世界には奴隷はおらぬ上に身代金もいらぬと言っていた」

 

「ど……奴隷が……いない?」

 

「農奴もか?鉱山でもか?」

 

「信じられぬ……よく生活ができるな」

 

「そして妾は向こう側において連合に参加している日本、アメリカ、台湾の王達と話をする機会に恵まれ、そこで彼等は国民1人1人を大切にしていると感じ、戦も国際戦争法なるものを設けていると知った」

 

「そんな馬鹿な話があるか⁉︎」

 

「綺麗事を‼︎彼等は神か何かと言うつもりか‼︎」

 

「そして妾は確信した。我が兄上に暴行を及んだエース殿の怒りはまさにそこを理由としている。国民を大切にする義心や、捕虜でさえ厚遇する寛大さ。

しかも妾達は彼等が定めている掟を踏み躙り、尚且つ存在してはならない奴隷を発生させてしまった………そんな状況で自国民が貶されて彼等はまさに子を取られたグリフォンの如く怒り狂い、その結果がこれだ」

 

 

 

それだけいうとピニャは崩壊した元老院を指す。その光景に議員達は唖然となった。

 

それから協議として連合特地派遣団との講和交渉推進が全体の8割が支持するという形で決まり、主戦派の異世界再度侵略や連合特地派遣団蹂躙、全ての民の奴隷化など絵空事は全く取り入られないまま議会は解散となる。

 

そんな中、ゾルザルは連合に対する逆恨みを浮かべながら人知れず元老院を後にしていた……………。




拉致被害者と奴隷達を救出した谷達はアルヌスに帰還する為に自衛隊のチヌークとの合流地点に向かう。その見送りで薔薇騎士団が見送りにやってきて、ピニャの腹心が話しかける。

次回[烈火と猛火の騎士]
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