GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版   作:ウルヴァリン

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63:悪夢の再来

ゾルザルのクソッタレから虜囚となった望月 紀子とマミーナ・シェフチェンコ及び奴隷となっていた亜種の女性を救い出してアルヌスに帰還した。

 

到着後すぐに彼女達は衛生班による診察を受けることとなり、アルヌスベースに設けられたアルヌス病院に連れて行ったが到着してすぐ俺と伊丹と谷は情報部の柳田から信じられない話を聞いた。

 

それによれば望月 紀子は銀座事件の2ヶ月前に行方不明となり、その行方を探る為に両親は銀座にてビラを配っていて、事件の時にもビラを配っていた。

 

そして遺体も確認されたらしい。

 

しかも彼女の実家は漏電により炎上し、親戚も少なかったという彼女に帰る場所が無くなったという。

 

生き残る為に必死に耐えたというのに帰る場所や大事な家族もこの世にはいないという彼女にとって過酷極まりない現実が待ち構えている。

 

だが俺たちに出来ることはない。

 

だからせめて彼女が前に進み続けられるよう祈ることにした。

 

俺たち3人は夜に難民キャンプに向かっていた。

 

 

 

「あの馬鹿が……現場のことを知らずに勝手なことを……」

 

「まぁまぁ……だけど現場を知らないってのは問題だよな」

 

「あいつの言いたいことも分かるが大事なのは人命だ。だから気にする必要はないよ」

 

 

 

その日の晩、俺は再び柳田に呼ばれてアルヌス街のデリラが給仕長をしている店に行ったが奴の口にした言葉に腹が立った。

 

俺たちがいない間に炎龍に襲われたダークエルフが討伐を依頼してきて将軍が断ったらしいのだが、出没したのは膨大な石油や鉱物資源が確認されたエルベ藩王国。

 

討伐自体ならば可能なのだが王国とは何の外交手段もないし、今は帝国との講和交渉をしている最中で兵を無駄に死なせはできないということで依頼は断られた。

 

だが柳田は石油と鉱物資源を確保したいが故に部隊を率いて資源調査という名前の炎龍退治を提示してきた。

 

奴は部下に死んでこいと言ってきたのだから腹が立つ。

 

だが奴は帰り際に‘‘エルフ娘のところに行ってみろ’’と口にして、俺たちはなんだか嫌な予感がしてテュカの家に向かっているという訳だ。

 

 

 

「だが……奴は何でテュカのところに行ってみろと言ったんだ?」

 

「分からない。あいつは俺なんかよりも頭が回るし、何よりも腹黒い………嫌な予感がしてきたよ」

 

「俺もだ…………着いた」

 

 

 

テュカの家に到着した俺たちは扉をノックして部屋に入ったが、そこにはレレイとロゥリィ、ミオ、ルフスがいて、テュカはベッドに腰掛けて泣いていたのだ。

レレイ達の深刻な表情にますます嫌な予感がし、特に伊丹は一番嫌な予感がしているようだ。

 

そして恐る恐るテュカに話しかけた。

 

 

「テュカ?」

 

「どうしたんだ?」

 

「………………」

 

 

 

目を真っ赤にさせて泣いたままのテュカはゆっくりと伊丹を見ると、そこから発せられた単語に驚愕した。

 

 

 

「お父……さん………」

 

「えっ?」

 

「なっ⁉︎」

 

「お父さん‼︎‼︎」

 

「テュカ……伊丹はお父さんじゃ「待て‼︎」むぐっ⁉︎」

 

 

 

いきなりテュカが伊丹のことをお父さんと言って、違うと言おうとした谷の口を俺は慌てて塞いだ。

だが抱きつかれた伊丹は状況が理解できず、テュカもレレイ達に振り向いた。

 

 

 

「ちゃんと帰って来たじゃない‼︎みんな冗談が過ぎるわ‼︎」

 

「えっ……あっ……」

 

「あの嘘つきダークエルフ……嘘をついてたのよ前々から……絶対に街から追い出してやるんだから‼︎」

 

「うっ……嘘つきダークエルフ?」

 

「連合に敵討ち断られたからってあんな嘘をついて………誰が信じるもんですか‼︎」

 

「敵討ち……嘘……いったい………」

 

「あいつ………お父さんが炎龍に食い殺されたって言うのよ……バカみたい………目の前にいるっていうのに………そうでしょ⁉︎お父さん‼︎」

 

 

 

テュカは涙を流しながら伊丹を見るが、俺はその表情に恐怖を抱いた。

 

‘‘テュカの心が壊れた’’

 

そして伊丹は口を抑えながら外に飛び出して食堂で口にしたものを全て吐き出した。

 

 

 

「伊丹⁉︎」

 

「お父さん⁉︎お父さん⁉︎」

 

「伊丹⁉︎落ち着いて深呼吸しろ‼︎大丈夫だ‼︎ゆっくり吸って吐け‼︎谷‼︎水を持ってきてくれ‼︎」

 

「分かった‼︎」

 

 

 

伊丹を落ち着かせようと谷に水を持ってこさせるとレレイが睡魔の魔法を使い、伊丹がゆっくりと意識を失って倒れた。

 

 

 

「なにするのレレイ⁉︎お父さんが死んじゃう⁉︎」

 

「落ち着きなさいテュカ」

 

「でも⁉︎」

 

「大丈夫、眠っているだけ」

 

「とりあえず部屋に運ぼう」

 

 

 

俺は伊丹を担いでテュカの部屋に入り、空いているベッドにゆっくりと寝かしたが、テュカは完全に落ち着きを失っていた。

 

 

 

「エース⁉︎お父さんは大丈夫なの⁉︎」

 

「大丈夫だテュカ……こいつは眠っただけだ。心拍数も安定しているから死にはしない」

 

「大丈夫な訳ないじゃない‼︎父さんは突然吐いたのよ⁉︎もしかして何か病気かも知れないじゃない⁉︎」

 

「落ち着いてテュカ。こいつはさっきまで俺たちと飲んでたんだ。たぶん飲みすぎだろう」

 

「だけど⁉︎」

 

「ミオ」

 

「はい……すみません」

 

 

 

ミオに指示するとミオはテュカの後頭部に衝撃を与えて脳震盪を起こさせて意識を失わせ、ミオは受け止めるとゆっくり反対側のベッドに寝かしつけた。

 

 

 

「………何があったんだ?」

 

「ルフス、何があったんだ?これはどう考えてもテュカの心が壊れたと考えるべきだ」

 

「……………ヤオよ」

 

「ヤオ?」

 

「炎龍退治を依頼しに来たダークエルフだ」

 

「話は聞いている………だがそれと伊丹が父親だっていうのと何が関係してんだ?」

 

「それは分かりかねます谷様」

 

「……………」

 

「そういえば………耀司はなんで自分が父親じゃないって否定しなかったのかしらぁ?」

 

「………パーソナル障害」

 

「ご主人様?」

 

「テュカの表情と言動ではっきりした。彼女は個人的崩壊と機能障害に陥っている。間違いなく古典的なパーソナル障害の症状だ」

 

「なぜ分かる?」

 

「テュカは炎龍に父親を殺された。だが彼女は前々から父親がいるかのような行動をしていて、最初はエルフ特有の死者を弔うものかと思ったが違うようだし、そんな時に今回の一件だ」

 

「PTSDの可能性は?」

 

「ありえなくはないが今回はパーソナル障害に間違いないだろう」

 

「その根拠は?」

 

「…………伊丹がパーソナル障害を目の当たりにするのは今回が初めてじゃないからだ」

 

 

 

伊丹はパーソナル障害を見るのは初めてじゃない。そう口にすると全員が俺に視線を集中させて初めに沈黙を破ったのはロゥリィだ。

 

 

 

「エース、話しなさいよぉ」

 

「…………」

 

「この中で耀司と付き合いが最も長いのはあなたよぉ。だから耀司が何故自分が父親じゃないって否定しなかったか知ってるわよねぇ」

 

「…………あぁ。知ってる」

 

「エース……教えて」

 

「俺からも頼む。こいつとは既に俺も友達だから知っておいた方が解決策が見つかるかもしれない」

 

「ご主人様、ご無理を承知でお願い致します。お話頂けませんでしょうか?」

 

「エムロイに仕える者としてではなく、私個人として願う。話してはくれないか?」

 

「………お前達は知っておいた方がいいだろう………だが奴の過去はかなり想像を絶するし、こいつも過去を知られるのを嫌う。それでもいいなら話すが?」

 

「構わないわぁ」

 

「あぁ。何か言われたら責任を取る」

 

 

 

ロゥリィと谷が最初に承諾し、ミオとレレイ、ルフスも頷いて承諾する。それを確認した俺は机に置いてあったお茶を一口のみ、少し落ち着かせると話し始めた。

 

伊丹の過去を………。

 

 

「…………18年前、俺が日本にいた頃の話だ」

 

 




テュカの心が壊れた。目を覚ました伊丹にとって悪夢以外なにものでもなく、そこに元凶のヤオが現れる。
テュカの心を救うには炎龍を倒すしかないと言われ、混迷渦巻く中で伊丹の苦心が始まる。

次回[壊された日常]
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