GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版 作:ウルヴァリン
いつの間にか眠ってた……。
柳田に言われてテュカの家に向かえばエースと谷も含めて嫌な予感が強まった。
到着して泣いてるテュカに話しかけると彼女は俺に抱きつき、父親と言った。
テュカの綺麗で透き通るような水色の瞳は虚ろで輝きに曇りが見えたことで俺はテュカの最も恐れてたことが起こったって感じた。
テュカの心が壊れた。
出会った時から俺はテュカはまだ死んだ父親が生きてるって錯覚しているということにすぐ気がついたが、俺は騒ぎにならないよう扱いには慎重に慎重を重ねていたが結果的にテュカの心が壊れた。
レレイが掛けた眠りの魔法が解けて目を覚ますとエースを囲むようにみんなが集まっていた。
「はぁ………遂に知っちまったか……」
「すまない伊丹」
「エースは悪くない。話して欲しいと頼んだ俺が悪いんだ」
「いや………別に秘密って訳じゃないから気にしてない。それに悪いのはテュカを陥れた奴だ」
俺の過去を話してしまったことを謝るエースに、そのエースを庇う谷。別に秘密じゃないんだからそんなに謝れたらこっちがなんだか悪い気がする。
エースと俺は20年近く交流がある親友だ。
だから18年前のことも知っている。
俺がまだ中学生だった頃に俺とお袋は親父からの暴力に苦しんでいた。
親父はろくに仕事をしないで毎日ただただ酒を飲んだり、ギャンブルに負けた腹いせに俺らを殴ったりとロクでもない奴だった。
そんな苦痛の日々に限界を感じたお袋がとうとう親父を刺し殺した。
正当防衛が適応されて罪にはならなかったが今思えば罪になってくれた方がお袋のためだったかも知れない。
その日からお袋は自分を恨み続けた。
多くの親戚や知人、カウンセラーがお袋の心を救おうと励まし続けたが全てが無駄に終わり、俺自身もかなり疲労が溜まってたけど唯一の救いが親友が出来たこと。
エースだ。
中学2年の時にエースは交換留学生としてアメリカから来て頭脳明晰で運動神経抜群。
学校のヒーローにすぐなって俺ともすぐに意気投合して親友となった。けどお袋の解決にはならないのは解りきってた。
そんな状態が高校に上がるまで続いて俺はある日に‘‘親父はもういない。あんたが殺したんだ’’と我慢できず思わず口にしてしまった。
あの時に戻れたら……あの時に俺も狂っていたらと何度も考えていたが過去は過去だ。
そして俺がエースを連れて家に帰った際にお袋は自身の身体に油を被って自殺を図った。
一命は取り留めたが遂に精神病院にて隔離されることが決まり、必死に助けてくれるよう叫ぶお袋を置いてきてから実に18年も会っていない。
その後に帰国したエースから事情を聞かされたエースの親父さんが生活費を出してくれたり、近所の人達が助けてくれたりもあったから俺は大学を出た後に幹部自衛官になって今の2尉にいるって話だ。
「それで……テュカに余計なことを言った奴はだれなんた?」
「ダークエルフのヤオ・ハー・ディッシュって奴だ」
「だれ?」
「ほらぁ、デリラの店で私をガキって言ったぁ」
「………あぁ……柳田が話してたあいつか………でもなんであいつが?」
「それは……「それは此の身から話そう」……」
レレイか何か言おうとした矢先にいきなり扉がゆっくりと開けられた。そこにいたのは銀髪のダークエルフでテュカの心を壊した張本人であるヤオだ。
こいつの出現でロゥリィはハルバート、レレイは杖、ルフスはデスサイズを手にしてミオは爪を出現させる。
そしてヤオを見た瞬間に怒気を隠そうともしないエースと谷はKel-Tec P11とM1911A1をホルスターから取り出して銃口をヤオに向けた。
「先日は誠に失礼した聖下。そして緑の人達よ」
「………何の用だクソ野郎?」
「ここはお前みたいなクズ女が来るような場所じゃない。テロリスト風情が……」
「落ち着けってエース、谷………だがなぜテュカに余計なことを口にした?」
「余計とは心外な………此の身は事実を伝えただけだ」
「………ふざけんじゃねぇぞカスが‼︎」
「だから落ち着けってエース……それでもなぜだ?」
「決まっている。悪意があったからだ」
ヤオの言葉に俺も徐々に怒りを積もらせていった。
「御身方々はこの五方を大切にしていると聞いた。守るためならば多少の規則破りをも厭わないとも………ならば利用しない手はないだろう?」
「お前……やっていいことと悪いことくらい「此の身も子供ではない‼︎」……」
「丘の上には炎龍など敵ではない強大な力が唸る程あるというのに‼︎此の身の同胞にはだれも手を貸してくれぬ‼︎」
「当たり前だ………俺ら連合は規律を重視する軍隊だ。勝手に動くことは出来ない」
「それに目的の為に手段が無かったにしろ、貴様がやったのは民間人……しかも炎龍被害者を陥れたんだ‼︎貴様のやったことは賊となんら変わらない‼︎そんな奴の願いなんざ誰が聞くか⁉︎んなことを承諾する部族なんざこの世から滅びてしまえ‼︎」
「だが拒絶した者どもは口を揃えてこう言う‼︎‘‘伊丹、エース、谷なら’’とな‼︎」
「………レレイ」
「……通訳した」
「だから………だから壊したのだ」
テュカの心を壊したと宣言したヤオ。
その悪意に満ちたヤオの瞳からは涙が流れ出すが、俺たちの怒りを買うには十分だった。俺が殴り掛かろうとした直前にエースが先にヤオを殴り飛ばし、開いたままの扉から外に吹き飛んだ。
そのまま完全に頭に血が上ったエースも外に出てヤオの襟を掴んでP11の銃口をヤオの額に突き付けた。
「テメェ‼︎殺してやる‼︎」
「やめろエース⁉︎こんな奴に弾の無駄だ‼︎」
「放せ谷⁉︎こいつだけは殺す‼︎殺さなきゃならねぇ‼︎」
「愛する者を奪ったのが人ならば…その下衆を追い求めれば復讐を果たせよう⁉︎天災ならば神を呪うしかない‼︎ならば炎龍ならばどうだ⁉︎敵は目の前にいるというのに手も足も出ない‼︎誰も捕らえることも罰することもできない‼︎ならばこの怒りと憎しみは誰に向ければよい⁉︎愛する者を奪われた憎しみは誰に向ければよい⁉︎」
「だからってテュカを巻き込んでいい理由にはならないんだよ⁉︎」
「あのエルフを救うには父親が炎龍に殺されたことを含めて敵を討つしかないぞ‼︎どうする⁉︎緑の人達よ⁉︎このままエルフを見捨てるか⁉︎それとも武器を手にして立つか⁉︎」
「……………」
「自分勝手なのは分かっている………だが復讐は自らの鎮魂のために必要な儀式だ………それを経て遺された者たちは明日を見ることが出来る………此の身は全て伊丹殿に捧げる……この場で八つ裂きにしても慰み者にしても構わない………だからお願いだ………」
エースの拘束から外されたヤオは今までにない悲痛な声で涙を流しながら跪き、祈願し始めた。
「あの娘のついででいい………此の身の同胞を救って欲しい………」
「………付き合う必要はないぞ伊丹。テュカの心は別の手段で救えばいい」
「エースの言う通りだ。端から見たらこいつは立派な犯罪者だ。そんな奴の戯言なんて聞く価値すらない」
「…………えろ………」
「伊丹………」
「今すぐ俺達の目の前から………テュカの前から………」
俺は一呼吸すると叫ぶように言った。
「消えろ‼︎」
それだけいうと頭を下げたままのヤオを放置してテュカの家に戻った。
俺は普段はこんなことは口にしないが今回だけは違う。
自分達が助かりたいがだけで無関係な人を傷つける。
だが今はテュカが心配だ。
テュカの心は絶対に救い出してやらなきゃならない……………。
テュカの心が壊れ、伊丹はそれから自衛官としての自分とテュカの父親を演じる暮らしとなるがテュカの心は徐々に酷くなる。
そんなある日に病棟のベンチにて考える伊丹に1人の老人が話しかける。彼の言葉に伊丹は決断を下す。
次回[出会いと決断]