GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版   作:ウルヴァリン

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66:取り戻すための旅

テュカの心が壊れてから11日、爺さんに相談してから次の日の朝。

 

俺たち第3偵察隊は総監部からの指令に従って再び帝都に向かうべく、チヌークに乗り込んでいた。

 

おやっさんが隣で今回の主任務である偵察および調査対象のゾルザルに関する資料に目を通している中、俺は64式小銃改2型をスリングに繋ぎながら窓の外を見る。

 

滑走路の端には見送りにやってきたロゥリィとレレイ、そして不安そうな表情をしているテュカがいた。

彼女にはすぐ帰ってくると約束したが、その間にますます悪化する可能性がある。

そしてパイロットが離陸しようとしてローターの出力を高め始めた矢先に昨日の夜の言葉を思い出した。

 

 

 

‘‘心では既に決まっている筈じゃろ?それに男には馬鹿をやらなければやっていけぬ。時には周りに囚われず自らの心に素直に従うということも大事じゃ。そうは思わぬか?’’

 

 

 

心に従う。

 

その言葉に俺は立ち上がり、おやっさんに振り向いた。

 

 

 

「隊長、どうかしましたか?」

 

「すんませんおやっさん‼︎俺降ります‼︎」

 

「なんです⁉︎」

 

「あと頼みます‼︎」

 

「隊長⁉︎」

 

 

 

おやっさんに部隊の指揮を委託すると俺は装具を機外に放り出して俺もチヌークから飛び降りた。

そしていきなり飛び降りた俺を見る自衛官、アメリカ兵、台湾兵の視線を感じながらテュカに歩み寄った。

 

 

 

「………どうかしたの?」

 

「帝都に行くの……やめたよ」

 

「いいの?」

 

「あぁ、お前の方が大事だからな……」

 

「なに娘を口説いてるのよお父さん」

 

「ははっ……それもそうだな。それよりテュカ、これから旅に出ないか?」

 

「旅に?」

 

「あぁ。南にあるエルベ藩王国までな………嫌?」

 

「ううん‼︎お父さんと一緒なら喜んで‼︎じゃあいちど帰って支度してくるね‼︎」

 

 

 

炎龍退治を伏せて旅に出るというとテュカは本当に嬉しそうにしながら家に戻っていく。

すると直後にヘリから飛び降りたことを知った柳田が俺に駆け寄って来た。

 

 

 

「伊丹⁉︎お前馬鹿か⁉︎あの娘と2人でドラゴン退治⁉︎しかも他の隊員が見てる前で任務放棄⁉︎これでお前だけを派遣する状況を考えろって正気かよ⁉︎」

 

「あんたも元凶の1人なんだからその位はして貰わないとな………」

 

「確かにそうだが悪いことは言わん‼︎別便でマリーンレイダースが交代で向かうからそいつに乗れ‼︎手配はしてやるから‼︎」

 

「それに決めたんだ。これ以上テュカが壊れる姿を見たくない……やるべきことを先送りにした結果の後悔は嫌という程してきたんだ。だから今は心に従って動く」

 

「………チッ⁉︎分かったよ‼︎………で、なにがいるんだ?」

 

「LAMのHE弾頭10発に発射筒を予備を含めて5基。C4爆薬75kg、車両も欲しい」

 

「荷物運搬だったら俺のを使うといい」

 

 

 

柳田と話していると誰かが別で話しかけてきた。

 

振り向くと私服の上に装具というPMCオペレーターのような格好のエースと谷、それにいつものメイド服じゃなく黒と赤のアルヌス警邏隊所属のワーウルフが使っている軽装鎧姿で腰に数本の投擲斧のフランキスカのミオとロゥリィみたいなゴスロリの水色の衣裳を着たルフスがいた。

 

 

 

「エース……谷……」

 

「お前のことだ。命令違反をしてでも向かうことなんて分かりきったことだからな。予想し易かった」

 

「………ばれてた?」

 

「何年お前の親友をしてると思ってんだ?」

 

「そうだな………それより2人とも大丈夫なのか?これって一応は命令違反になるんだけど?」

 

「安心しろ。国境付近まで偵察に行くだけだ。まぁ、途中で地図が駄目になって仕方がなく隣国に迷い込んでトカゲと戦うかもしれないがな」

 

「作戦計画書には国境周辺の単独調査としてあるから大丈夫だ。地形調査も戦車乗りにとって重要な仕事だからね。GPSなんて無いんだから"うっかり"越境してたとしても文句は言われない」

 

「そっちは用意周到って訳ね………ありがとう」

 

「いいってことよ。装備も用意できてるからな」

 

 

 

そういうとエースは自分の車である民間への払い下げとなったM1038カーゴハンヴィーに連結されているトレーラーの防水マットを開けた。

中には通常より銃身が短くされたAKや前にイタリカでエースが使ったショットガンに予備弾薬が所狭しと並んでいた。

 

 

 

「今回は時間があまりなかったから俺が選んでおいた。お前と谷はAKMSUを使え。一応はフルオートでも撃てるが変な場所に当てたくなかったらセミオートだけにしておけ。ハンドガンは好きなのを使え。推奨は40口径ホローポイントのグロック22だがIMI デザートイーグルなんかもありだ」

 

「こんなにどうしたんだ?」

 

「兄貴に頼んで送って貰った。テキサスで武器屋をしてるのは知ってるよな?」

 

 

 

確かにエースには兄貴がいて、テキサスで"クレイグ ファイア ガレージ"というガンショップを経営してるっていう話は聞いたことはある。

 

 

 

「AKの7.62mm弾は123.5グレインを使ってる。射速が上がってるから注意しろ。本来なら光学器機を取り付けたいんだが山岳の移動が予想されるから今回はなしだ。それとこいつは兄からの借り物だから、壊したり無くしたりしたら請求書がいくからな」

 

「柳田、追加で食料を6人分で1週間、車両は員数外のM-ATVで」

 

「無視かよ……」

 

「本当に6人でいいのか?」

 

「だって俺、エース、谷、テュカ、ミオ、ルフスの6人だろ?他に誰がいるんだよ?」

 

「あぁ〜……因みに片足を上げることを勧めるぞ伊丹」

 

「谷?………へっ⁉︎」

 

 

 

谷からのいきなり視線が空になり、いきなり何かが顔のすぐそばに突き刺さった。

改めて確認するとご立腹で仁王立しているロゥリィとレレイがいた。

 

 

 

「ロゥリィ⁉︎」

 

「女を火遊びに誘いたいんだったら素直にそう言いなさいよねぇ」

 

「いや……けど相手は炎龍だぜ?」

 

「すっごく楽しみぃ♪ぞくぞくしちゃう♪それともぉ最初から死ぬつもりぃ?」

 

「いや………けど……」

 

「伊丹、ロゥリィの戦闘力は俺たちより遥かに強力だ。連れて行って損はないだろう」

 

「さっさと言えってのおい」

 

「ぐっ⁉︎分かった分かった‼︎言うから腹を殴らないで本当に痛いから⁉︎………ロゥリィ……一緒に来てくれるか?」

 

 

 

なんか脅迫されたような………そういうとロゥリィは先ほどまでの不機嫌な表情から明るい笑みをしてようやく俺の上からどいてくれた。

 

 

 

「高いわよぉ」

 

「借りとく。返せるかわからんけどな」

 

「大丈夫よぉ。耀司が死んだら魂を私が頂いて返してもらうからぁ。そしてそのまま私の眷属になってもらうわぁ」

 

「お前は悪魔か⁉︎いででででで⁉︎」

 

 

 

物凄い爆弾発言に俺はもちろんエースも谷も柳田もドン引きしていた。すると間髪入れずにロゥリィは俺の右腕に思いっきり噛み付いて、出てきた血をひと舐めする。

 

 

 

「ふふふっ♪契約完了ぉ♪」

 

「マジ完了?………どうなんの俺……」

 

「あ~………伊丹…強く生きろよ」

 

「何があっても、俺達は友達だからな?」

 

「え………ええっと………頑張れ」

 

「お前ら薄情だな⁉︎」

 

「柳田ぁ♪1人分ご飯追加ねぇ♪」

 

「違う。2人分追加」

 

「って⁉︎レレイも⁉︎」

 

「生還率を上げるには魔法は必要不可欠」

 

「えっ………ええっと……レレイ…さん?」

 

「な……なぁ……エース……」

 

「言うな…………本音は俺も怖い……」

 

「此の身は只今より未来永劫伊丹殿のもの。なんなりと仰せつけください」

 

「やっぱりお前もなのね………まぁ道案内が必要だからな。責任とって退治では手伝ってもらうからな?」

 

「足手纏いはするな。それと分かってるとは思うがお前を仲間とは思わん。もし間に合わずテュカの心が壊れたら問答無用でお前を殺す。部族に関しても討伐対象になるから死ぬ気でやれ」

 

「結局食料9人分か……中身は適当に詰めておくから文句はなしだぞ」

 

 

それから俺たちはすぐに動きだし、アルヌス街にテュカ達を迎えに行く。そして話を聞いた街の人達が一堂に集まり、炎龍討伐成功と無事の帰還を祈ってくれて、柳田が用意してくれたM-ATVに乗り込むと出発した。

目指すはエルベ藩王国シュワルツの森、テュカの心を救い出すため俺たちの旅が始まった……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「若者が行ったか………」

 

 

儂があの若者に会った時の印象はどこにでもいる優男じゃと思ったが、話してみるとなかなか筋がある若者じゃった。

それにあやつを見た時に若い頃の儂を思い出してしまい、何となく助言をしたくなった。その若者と奴を支える者達が藩王国に向かっていくのを連合の石でできた見張り台にて見送っている。

 

 

「デュランさん‼︎また勝手に出歩いて困りますよ‼︎それにここは立ち入り禁止って言ったでしょ⁉︎」

 

「スマンスマン。リハビリじゃよリハビリ」

 

 

看護師に見つかってしまったわい。こ奴らは口うるさいが医術者として腕は本物で非常に献身的だ。

 

 

「さぁ‼︎病室に戻ってください‼︎」

 

「分かった分かった………じゃがその前に頼みたいことがある」

 

「えっ?」

 

「………すまぬが一番地位のある者を呼んでくれぬか?」

 

「どうかされたのですか?」

 

「あぁ………儂のことで話しがあると。それと街の警邏隊にグラビという若者がおろう。其奴も連れてきてくれ」

 

 

 

医術者にそう頼むと儂は杖を突きながら建物に戻る。

 

さて……儂も若者の為に頑張るとするか……………。

 




炎龍退治に向かった伊丹達を見送ったデュラン。彼も一つ決断をした。狭間陸将、シュガート大佐、周大佐達を部屋に呼び、最後の1人を待つ。そして全員が揃ってからデュランはある話を始めた。


次回[帰還する獅子]
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