GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版 作:ウルヴァリン
帝都にて再び諜報活動を行い始めた第3偵察隊はすぐにリーパー隊の面々と合流。
一時的だが指揮官不在ということもあって第3偵察隊とリーパー隊はタスクフォース サーヴァントの指揮下に入ることとなり、特殊部隊の補助として監視や特殊部隊ではあまり手が回らない現地人への相談役や医療関係における診察を任される。
その中で栗林とシンディはヴァローナ隊へ監視役として同行。
古田も板前をしていた経歴が評価されて黒衣隊に一時的に異動を命じられ、今は好戦派貴族の無礼講にマフィアを経由して流れの料理人として厨房に潜入することとなった。
「マ・ヌガ肉の香草焼き上がったよ」
「はい、スープが出来たぞ。早く持っていってやりな」
「すみません古田さん‼︎あの黄色の揚げ物追加でお願いします‼︎」
「あいよ。天麩羅だね?少し待ってくれ」
「劉さん‼︎貴族の方々が貝料理を気に入られたから追加して‼︎」
「蔭鼓蚵仔(牡蠣のモロミ炒め)だな?すぐ作るから待って貰ってくれ」
給仕役からオーダーを聞き、次々と料理を作っていく古田と劉。
この2人の共通点は非常に腕がいい一流料理人ということで、特に古田は自衛隊入隊前は実際に料亭で料理人をしていた。
劉も古田程ではないにしても店を出しても十分に通用する程の腕前を有している。
「しかし貴族の連中……よく食べますね」
「料理人としては気に入ってくれて嬉しい限りだが、目的はゾルザルに近付くことだ。今回の無礼講は奴が主催してるから接触には絶好のチャンスだ」
「分かってます。けど独裁性の強い奴が料理には煩く、しかも実際に料理もするなんて………」
「意外性が強過ぎるな」
これまでの調査でゾルザルに関することは判明しているが、特に注目したのが奴もたまにだが料理をすることだった。
腐っても奴は帝国の重鎮であり職務はこなしている。
それ故にデスクワークで忙しくて簡単な料理ならば自分で作るらしいし、一時期は自身の作った料理を配下の人間に振舞っていた。そんな奴が対象ならばならこの世界にて存在しない日本料理と台湾料理に食い付くはずだ。
因みに今は現地の食材で代用して古田が和食の天麩羅、劉が台湾の伝統料理である蔭鼓蚵仔を作っている。
そんな状態で料理をしているとホールに続く階段から誰かが降りてきてマ・ヌガ肉を焼いたのは誰だと尋ねてきた。振り返ったらテューレを引き連れているゾルザルだ。
そしてゾルザルは2人を見つけるとそのまま歩み寄り、2人は無意識に腰に隠しているSIG P365に手を伸ばしていた。
「ばれたか?」
「分かりません……」
「お前達があの料理を作ったのか?」
「………はい」
「お気に召しませんでしたでしょうか?」
「そうか………探したぞ‼︎」
「「えっ?」」
そういうとゾルザルは2人の肩に手を置き、凄く嬉しそうな表情で話し始める。
「前に妹のピニャの宴席で料理をしていたであろう?」
「えっ……は…はい‼︎」
「俺はあの味が忘れられないんだ‼︎少し前に顎を怪我したんだが、あのマ・ヌガ肉の焼き方といい、あのマスタードというソースは今まで食べた事がない位に柔らかいし美味かったぞ‼︎」
「それは……大変だったようで……」
その怪我をさせたってのが自分達の仲間だということに気づかず、素直に料理を讃えるゾルザル。
だが料理人として称えられるっていうのは悪くはないと思ってたりしている。
「お前達‼︎名前はなんて言うんだ⁉︎」
「じ……自分は古田といいます‼︎」
「私は劉。古田の相棒です」
「古田と劉か………お前達には感謝しているぞ‼︎なにせあんな美味い料理を出してくれたんだからな‼︎」
「あ……ありがとうございます」
「そこでだ……お前達は既に何処かの店で働いているのか?」
「い……いえ………各地を旅しながら料理を振るっています」
「そうか‼︎だったら俺の処で料理人をしてくれ‼︎お前達なら即採用で抱えの料理人共も納得するだろうからな‼︎」
「よろしいのですか?」
「あぁ構わぬ‼︎明日の昼に屋敷まで来てくれ‼︎いいな⁉︎」
それだけ早口で告げるとゾルザルは出来上がった料理を持ってホールへと戻っていく。
すると古田はゾルザルに付き従っている女性に視線がいった。
パーティ用とまではいかないが奴隷にしてはしっかりした服装をしているテューレだ。対してテューレは軽く古田と劉を睨むと嬉しそうに料理を持って行ったゾルザルの後を付いて行った。
「あれは………」
「あんたの隊長からの報告だったか?ゾルザルに付き従っているヴォーリアバニーの女性がいるって……あいつがそうだろうな」
「……………」
「どうした?」
「い……いえっ………なにも……」
「若いなぁ、一目惚れか?」
「ち…違いますよ⁉︎」
「隠すな隠すな♪………だがあのヴォーリアバニー……分からんが気をつけた方がいいだろう」
「大尉?」
「俺は戦場で何度もあんな目を見たが………あれは復讐の目だ」
「一体なにに復讐を?」
「そこまでは分からん。一応は伯に調べさせておこう」
小声で話すと怪しまれないように料理を再び作り出す。
ゾルザルに近付く絶好のチャンスを得られた古田と劉はすぐに新田原に報告し、次の日の昼にゾルザルの屋敷に向かった……………。