GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版 作:ウルヴァリン
遂にこの時が来た。
テュカの家族や仲間を殺し、更にはダークエルフがテュカの心を壊すきっかけとなった炎龍の巣に到着した俺たちは警戒しながら巣がある岩棚にたどり着く。
そこには炎龍の巣を囲むように巣立ちしたらしい炎龍の子供の卵の殻。周りには炎龍退治にやってきて返り討ちにされた勇者達の遺留品の数々。カットラスやバスターソード、ハルバートや魔法が込められた武器などフェン曰く全てを人種が売ったら孫の代まで遊んで暮らせるらしい。
宝探しをしたくなるが我慢しつつ足下に落ちてあった鞘に納められたソードブレイカーを失敬して伊丹の指示に従う。
「よし、持ってきた箱の包み紙を剥がしていってくれ」
「見た目は美味そうだな……乳漿みたいだ」
「あ〜………言っておくが食うなよコム」
「へっ?なんで?」
「そいつはC4。中にRDXが91%に爆発物マーカーが0.1%、可塑剤が5.3%、結合剤が2.1%、界面活性剤が1.5%込められている」
「えっと……つまり?」
「要するに毒が込められてるって訳だ」
「うげっ⁉︎」
C4を小さくちぎって食べようとしていたコムをエースがC4の成分配合を言ってから要約した伊丹の言葉で口から離した。
実際にC4は猛毒の塊といっても過言じゃなく、舐めただけでも嘔吐や腹痛などを起こして病院送りになった将兵も結構いるみたいだ。
実際に我が台湾軍工兵部隊の訓練でも興味本位で口の中に放り込んだ新兵が病院送りになって、数日間も入院したという事案があった。
そこから次々とC4起爆に必要なデトコードにM7型信管、セーフティヒューズ、M60型発火具が納められた箱から取り出していく。
因みに発火具とデトコードをダイレクトに繋げたらピンを抜いた瞬間に爆発する危険性があるから絶対にしてはならないし、信管に関してもタイムヒューズを挿入する時に回しながらしたら摩擦で発火する危険がある。
爆破自体に必要な機材は大まかに爆薬、導爆薬、信管、導火線、発火具の5つと少ないが扱いには細心の注意が必要となる。
「よし、バンとフェンとノッコは巣の中心に腕くらいの深さの穴を掘ってくれ」
「俺は残りを持ってくる。ミオ、すまないが手伝ってくれ」
「分かりました」
「他はこいつを捏ねてくれ。よく捏ねればそれだけ威力が上がる」
そういいながら俺もC4を次々と捏ねていくが流石に75kgもあるから一苦労する。
それからバン、フェン、ノッコが掘った穴にC4を敷き詰めていき、伊丹は信管とデトコードを接続していく。
「谷、ロゥリィに連絡してみてくれないか?」
「通信不良か?」
「みたいだ。電波が岩で遮られてるみたいけど……頂上にいないのかな?」
「ちょっと待ってくれ…………ロゥリィ、外の様子は?」
<……………>
「ロゥリィ、聞こえるか?谷だ。聞こえるか?」
<……………>
「ダメだ。やっぱり遮られてる」
「エース。すまないが対空監視を頼む」
「了解だ」
「こっちはその間にやっちまおう」
「ところで伊丹」
「ん?」
「今更なんだが……無線つけたままで大丈夫なのか?」
「…………あっ」
俺が無線のことを思い出して無線機を外した。下手に火花が出ていたら確実に爆発して俺たちは炎龍じゃなく炎龍の巣を道連れにするという間抜けなことをするとこだった。
暫くして俺と地雷を仕掛け終わったエースは只でさえ強力なC4の威力を高める工夫で剣をこれでもかというくらいに敷き詰めてから土をかぶせる。
「谷、この剣は何か意味があるのか?」
「あぁ。C4が爆発する時に爆破エネルギーってのが発生してな……衝撃波になって対象を体内から損傷を与えるものだ。こうしておけば爆破エネルギーで砕けた剣の破片が辺りに飛び散って炎龍の土手っ腹にグサっていくんだ」
「だが死者の遺留品を使うのはな……」
「抵抗があるか?…………分からなくはないが使えるものは何でも使う方がいいし、持ち主も炎龍が倒されるってんなら本望だろう」
「…………だといいな」
「それに……どんな方法でも使ってやった方が武器にとっても本懐だ。炎龍の後には帝国が待ってるし、ソードブレイカーも戦いに使ってやりたい」
「…………相変わらず戦士の鏡みたいな奴だな…お前は…………」
そう互いにいいながら俺は最後の剣に願いを込めてから埋設し、偽装していく。
設置開始から5時間後、全てのC4にデトコードをつなげて最後にM60型発火具に伊丹がセーフティヒューズを接続した辺りで俺とルフスも伊丹に合流した。
「伊丹、終わったか?」
「あぁ。エース、そっちはどうだ?」
「……………伊丹」
「どうした?」
「……最悪の事態だ」
空を見上げていたエースとミオ。
俺たちも同じく空を見上げると理由がはっきりとした。そこには巣の主であり、かつてロックフォードのAT-4で脇腹、勝本のLAMで左腕を持って行かれ、左目をテュカの父親であるホドリューにより射抜かれた赤い巨体………炎龍が戻ってきた。
着地した炎龍は唸り声を出しながら恐怖を与える黄色の眼で俺たちを睨みつけていた。
「…………落ち着け……」
「誰も動くな………奴は動きに反応するみたいだ」
「………ゆっくり洞窟に下がるんだ……少しずつ……」
状況は瞬く間に最悪になっていく。ダークエルフ達はLAMを所有しているが俺たちは罠を作る為に武器を置いていた。
そっと俺たちはホルスターに手を伸ばし、ルフスはデスサイズを構えてミオも両手から刃を出す。
エースの思った通り炎龍は睨みつけたままで仕掛けて来なかったが、炎龍がコムを睨んだ瞬間に…………。
「う…わぁあああああああああっ‼︎⁉︎⁇」
「コム⁉︎やめろ⁉︎」
「ナユ‼︎バン‼︎伏せろ‼︎」
恐怖に駆られたコムが後ろにナユとバンがいるにも関わらずLAMのHEATを発射させた。
それによりバックブラストでナユとバンは吹き飛ばされ、熱風と衝撃波により身体は内外共に焼かれて絶命してしまう。
しかも厄介なことにもなる。
コムは慌てていたのでHEATのプローブを伸ばしておらず、これにより対戦車ではなく榴弾としての使用となる。
「やった‼︎」
「馬鹿‼︎伏せろ‼︎」
俺が叫んだが遅かった。
振られた炎龍の右手がコムを襲い、回避する術もなくコムの上半身が消え去った。そのままコムの上半身は壁に激突して千切れ飛んだ身体がバラバラになって降り注いだ。
戦闘回避不能となったのですかさず俺はAKMSUでエースはバルメM78、伊丹もAKMSUを急いで回収。初弾を装填して構えた。
「くっそ‼︎結局こうなるのかよ⁉︎」
「愚痴はいい‼︎とにかくぶっ放せ‼︎」
「牽制射撃‼︎奴を釘付けにしろ‼︎」
そう叫ぶと一斉に炎龍に銃撃を開始する。炎龍との最後の戦いは最初から俺たちに圧倒的劣勢の状態で開始された……………。
圧倒的な力を見せる炎龍。次々と倒れるダークエルフの仲間達。決死に攻撃する中でエースも窮地に立ち、伊丹と谷も絶体絶命に陥る。
次回[背水の陣]