GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版   作:ウルヴァリン

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07:皇帝

アルヌスの丘より東に約600km離れた帝都‘‘ウラ・ビアンカ’’。

 

強大な国家である帝国の首都であり、眩い建物に帝都を見回るワイバーン部隊、街の至る所に靡く帝国の国旗。

 

その中央に位置する白く輝く立派な建造物中では多数の人が何やら話し合っていた。

 

 

「大失態でしたな皇帝陛下。帝国の保有する総戦力のなんと6割が喪失。如何なる対策をご講じられますかな?皇帝陛下はこの国をどうお導きになられるか?」

 

 

円形状となっている玉座の間で中央に立つ元老議員のカーゼル侯爵。

 

その彼の眼の前にいる金髪で他の元老議員や将軍達とは明らかに立派な服を身に纏い、頭には王の証である王冠が被さっている。

 

現皇帝の地位に居座るモルト・ソル・アウグスタス。

 

若かりし頃は王族の一員であったが自ら騎士団を率いて幾多もの敵を退け、時には知略と武芸を駆使して敵国の王を討ち取って名声を高めていき、現在の‘‘侵略国家’’を作り上げた英傑。

 

自身の考えに共感する者にはたとえ敵対していた直後であっても助命して仲間に引き入れるという気概も持っているが、同時に敢えて同盟を締結させた後に向こう側に不手際を強いて要求を無理やり承諾させ、最終的には自国に完全に取り入れるという遣り口をする独裁性が強い野心家だ。

 

しかも人種至上主義を掲げ、亜人などを迫害する政策を容認したり、侵略した地方の圧政に目を向けたりしないという、国益を優先させすぎる傾向がある。

 

皇帝は頭を少しだけ抱えながらカーゼル公に返答を始めた。

 

 

「カーゼル公爵。卿の心中は察するものである。此度の損失によって帝国の軍事的優位が薄れたというのは確かだ。外国や諸侯達が一斉に反旗を翻し、一斉に帝都に攻め込んでくるのではないかと不安なのであろう?」

 

「…………」

 

「痛ましいことである」

 

 

抱えていた手を離した皇帝はカーゼル公爵を見るが、それは決して悲痛な顔つきではなく、どちらかといえはからかっているかのような表情をしている。

 

 

「我が帝国は今回のような未曾有の危機に直面する度に皇帝、元老院、そして国民が一致団結して更なる発展をしてきた。

如何なる精強な軍勢であろうと百戦百勝は存在せず、必ずや敗北を経験せざるを得ん。しかし戦での敗北こそが勝利の方法を教える良き師なり。故に此度の敗北の責任を追求はせぬ。まさか他国の軍勢が帝都を包囲するまで‘‘裁判ごっこ’’に明け暮れようとする者はおらぬな?」

 

 

皇帝が言い放つと周りの議員から少しばかりの笑い声が聞こえる。だがカーゼル公爵だけは不満な顔をしていた。

 

 

(自分の責任を不問に………)

 

「しかし如何なされるか?」

 

 

カーゼル公爵の隣につく杖をついて頭に包帯を巻いた老人………ゴダセン議員が発言を開始する。彼は2週間前に行われた門奪還戦で軍を率いたが僅か2日で潰走し、命からがら帝都に帰還したのだ。

 

 

「送り込まれた私の軍は僅か2日で壊滅してしまい、更に門は奪われ敵はこちら側に陣を築こうとしているのですぞ。

無論我等も丘を奪還せんと迫りました。だが遠くにいる敵がパパパパンという音と共に我が軍を蹴散らしたのです」

 

 

ゴダセン議員は自身が見た光景を思い出す。

 

夜だというのに敵はこちら側の兵を次々と正確に薙ぎ払い、爆発させて吹き飛ばす。

それによってこちら側は全く丘に近付くことすら敵わず、遂には敗走してしまったのだ。

 

 

「儂も長年魔導師をしておりますが、あんな魔術、儂は見たこともございません‼︎」

 

「何を弱気なことを言っておる‼︎戦って奴等を殺せばよいのだ‼︎」

 

 

ゴダセン議員の発言を遮るように今度はスキンヘッドで体格がいいポタワン議員が声を上げながら発言する。

 

 

「窮地だからこそ攻めるということが唯一の打開策だ‼︎全土に散らばる軍を結集させてアルヌスにいる蛮族共を討ち滅ぼし、然る後に再び門の向こう側に攻め込むのだ‼︎」

 

「それが出来ればとっくにやってるぞ‼︎」

 

「力押しでやってどうなる⁉︎ゴダセン殿の二の舞になるぞ‼︎」

 

「それに各地の治安が悪くなるんだぞ‼︎分かって言ってるのか⁉︎」

 

「そんな逆賊共と愚民なんぞ皆殺しにすればよい‼︎皆殺しにして女子供は奴隷にし、街を廃墟にして誰もおらぬ荒野にしてやればよい‼︎

そうすれば我等に歯向かう者は出ぬ‼︎素晴らしい考えではないか‼︎」

 

「そんなことをしたら敗戦に続く敗戦だぞ‼︎それに掻き集めても兵が足りないぞ‼︎」

 

 

そんな野次の飛びあいが玉座に響き渡るが、皇帝が片手を上げて制した。

 

 

「事態を悪化させることを余は望まん。だが民を護ることもまた然り………」

 

「ならば⁉︎」

 

「属国や周辺諸国に使節を派遣せよ‼︎大陸侵略を目論む賊徒を撃退する為に援軍を求めるのだ‼︎

我等"連合諸王国軍(ゴドゥ・リノ・グワバン)を糾合し、アルヌスの丘へと攻め入る‼︎」

 

 

皇帝が立ち上がり、連合諸王国軍という軍勢の助力を可決させると元老議員達が拍手しながら一斉に立ち上がった。

 

 

「皇帝陛下に忠誠を‼︎」

 

「偉大なる帝国に栄光あれ‼︎」

 

「………皇帝陛下」

 

「なんだ?」

 

「アルヌスの丘は人馬の骸で埋まりましょうぞ」

 

 

カーゼル公爵がそういうと皇帝は不敵な笑みを浮かべながら無言で答える。

だがこの皇帝の策略は別の目的があったことを誰も知る由が無かった……………。

 




帝国の要請を受けてアルヌス近郊に集結した連合諸王国軍。しかし2度もの攻勢は大失敗に終わる。
エルベ藩王国のデュランは今回の戦に疑問を感じながらも、夜襲で最後の攻勢に出る。


次回[エルベ藩王国の獅子]
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