GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版   作:ウルヴァリン

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79:邪神と猊下の戯言

いったい何が起こったんだ………。

 

ダークエルフがヤオを残して全滅し、用意していたHEATも携行していた7.62mm弾もFRAG12も撃ち尽くした。

万事休すの状態にレレイから凄まじい殺気が溢れ出し、まわりの剣が宙を舞いだしたら一斉に炎龍を襲い出し、仕上げとばかりにテュカが魔法を撃ち上げて辺りに雷が降り注いだ。

 

その雷が炎龍に突き刺さった刀に浴びせられ、炎龍を内部からダメージを与えている。

どんな生物にだって血は流れており、炎龍にも膨大な水分が循環しているので感電。

炎龍が苦しみ悶えている姿を俺たちは呆気に取られていた。

 

 

 

「すげぇ………」

 

「炎龍が……死ぬ……」

 

「………はっ⁉︎まずい……すぐ逃げるぞ‼︎」

 

「ご主人様?」

 

「あんな大量の電気だ‼︎C4に伝わる‼︎」

 

「まずい………みんな逃げるんだ‼︎」

 

「走れ‼︎」

 

 

 

俺の言葉に全員が一斉に洞窟から外に走り出す。

あれだけの質量を有する雷が炎龍に浴びせられ、その足下には75kgのC4がある。

そんな状態で電気がデトコードに伝わったら間違いなく誤作動を起こして起爆する。

そう感じながら走っていると炎龍の呻き声が盛大な爆発音により打ち消された。

恐らくはデトコードのすぐ側に電気を帯びた剣が落ちて来て、それがデトコードを通じてC4起爆に繋がったのだろう。

炎龍を仕留めるには充分過ぎるが、同時に洞窟自体が崩落を始めた。

 

 

 

「走れ走れ‼︎下敷きになるぞ‼︎」

 

「あっ⁉︎きゃあぁあああ‼︎⁉︎⁇」

 

「テュカ⁉︎」

 

「ぐっ⁉︎だ…大丈夫だ‼︎」

 

「しっかり掴まえました‼︎」

 

「いま引き上げる‼︎」

 

 

 

崩落が始まった洞窟から脱出すべく走り続けるが足下から崩落したことによりテュカが落下しかける。

だが間一髪の処でヤオとミオとルフスが腕を掴み、そのまま引き上げて再びテュカは伊丹の手を握りながら洞窟の外に脱出。

 

落盤に巻き込まれず脱出した俺たちは息を整えていた。

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

「ぜ…全員無事か?」

 

「い……生きてる……」

 

「此の身もなんとか………」

 

「損傷はたいしたことない」

 

「今回は流石に危なかった……」

 

「けれど……皆さんの仇は……討てました」

 

「あぁ………」

 

「ち……ちょっと待て……ロゥリィは?」

 

「ちょっと………遅いわよぉ……」

 

 

 

みんなが生存を表すとロゥリィがいないことに気がついた。

そしていつもより弱々しいロゥリィの声がしてきたので振り返ると全員が唖然となった。

そこには夥しい血を流し、身体中ボロボロとなっているロゥリィがいた。

 

 

 

「ロゥリィ⁉︎」

 

「ロゥリィ⁉︎しっかりしろロゥリィ⁉︎」

 

「腕が取れている‼︎早くひっつけろ‼︎」

 

「だがどうやって⁉︎軍の演習でもこれだけの負傷は出血多量で即死ものなんだぞ⁉︎」

 

「こうすりゃいいんだ‼︎」

 

 

 

普通なら生きている筈がない惨状に谷は軽く混乱するが、俺は伊丹が彼女を抱きかかえた際に落ちた右腕をひっつかせ、瞬く間に右腕が再生されていく。

そして他の傷口も再生されていき、息が乱れてはあるが彼女の身体は元通りとなった。

 

 

 

「いったい何が……」

 

「分からん。だかロゥリィがここまでやられるってことは相当な強さだ………」

 

「まだ近くにいる………ってことだ」

 

「はははははははっ‼︎その通り‼︎」

 

 

 

辺りを警戒していたらいきなり笑い声がしてきて、俺はKel-Tec P11とを引き抜き、伊丹と谷もGlock22とP226を引き抜いて構える。

するとそこには2匹の新生龍を従わせている青色の肌に銀髪、ロゥリィの神官服によく似た白いゴスロリ服を身に纏い、大鎌を担いだ龍人族の女性がいた。

 

 

 

「お姉様……おいたわしや………主上ので奥さんになられるお方が人間の雄なんかにお身体を触らせるなんて……」

 

「……誰がハーディの嫁なんかになるもんですか」

 

「まだそのような事を仰って………主人の妻となるのがお姉様のうんみぇ……」

 

「………噛んだな」

 

「噛んだ」

 

「あぁ……完全に噛んだな」

 

「あぁ〜……敬語使おうとしたらいっつもこうだ………おいヒト種の雄‼︎主上さんの妻になる人に気安く触んじゃねえ‼︎」

 

「仲間の手当てをしてなにが悪い?それにロゥリィをこんなにしたのはテメェか?」

 

「あん?テメェ等だれに口きいてんのか分かってんのか⁉︎」

 

「うるさい‼︎私の主神はエムロイ………死と断罪と狂気……そして戦いの神‼︎あんな女の妻に……だれがなるもんですか⁉︎」

 

 

 

ハルバートを杖代わりにして、あれだけの回復で体力が消耗しているがハーディとかいう神の妻になることを拒むロゥリィ。

 

その拒絶に満ちた表情から本気で嫌がっていると悟った。

 

 

 

「………ロゥリィを拉致する為に戦ってたってのか?」

 

「あぁそうさ。せっかく見つけたんだ。主上さんの御意には従わねぇとな」

 

「ロゥリィを1人でここまで追い詰めたってのか?」

 

「バカかテメェ………よっぽどのことでもねぇ限りでよくて互角だっつうのに、キレは悪いし勝手に傷付くし………幾らお姉様でもムカついたがよぉ………そこにいる奴が繋がってたせいじゃねぇか」

 

 

 

ジゼルがそういうと伊丹は自信の体を確認する。

すると戦闘服5型とチェストリグはところどころで破れているが激戦だったのに擦り傷1つない。

俺は額を切っていて谷は腕を負傷しているにも関わらずだ。

つまりアルヌスでロゥリィが一方的にやった伊丹を眷属にするっていうのは本当だったみたいだ。

 

 

 

「そうと分かりゃあ手加減はなしだ。俺が手塩を掛けて世話したこいつ等と炎龍が組めば勝てる亜神はいねぇ。その為に冬眠中の炎龍たたき起こして水龍と番わせたんだからな」

 

「え……炎龍を………起こした?」

 

「さてと………ちゃちゃっとやっちまっか「お待ち下さい‼︎」あん?」

 

 

 

デスサイズを構えて仕掛けようとするジゼルにヤオか左腕を抑えながら話しかける。

 

 

 

「猊下が………なぜですか⁉︎此の身らはハーディの信徒‼︎主神に仕えてきた同胞への代償が……炎龍という災厄だったと⁉︎炎龍の餌になれというのがハーディのご意思だったと⁉︎」

 

「んっ………あぁ…炎龍のやつがどっからエサを獲ってくると思ってたら…あれテメェ等だったのか。そりゃあ災難だったな」

 

 

 

俺がジゼルの言葉に対して徐々に怒りを蓄積していく中、ヤオは目を見開き、膝からガクリと地に伏せた。

 

 

 

「さ……災難………何度祈り……何度問い救いを求め絶望したか………その度に主神を想い……希望を求めて旅に出た……それなのに………それなのに此の身の祈りに神々は応えてくれなかったばかりか‼︎耳すら貸していなかったというのですか⁉︎」

 

 

 

ヤオは地面を何度も叩き、怒りのあまり涙を流しながら悲痛な叫び声でハーディ信徒を意味するネックレスを引きちぎった。

彼女達ダークエルフは冥界の王ハーディを崇拝しているのに、その信じていたハーディに裏切られたんだ。

 

 

 

「んなこと知ったことじゃねぇんだよ……テメェ等は黙って炎龍のエサになってろってんだ」

 

 

 

詫びる処か変わらず炎龍のエサになれと言い放つジゼル。その言葉をきいて怒りを見せるヤオはカットラスを手に斬り掛かるが……。

 

 

 

「うぉおおおおおおおお‼︎‼︎‼︎」

 

 

 

俺が先にシュペーアナイフを手にジゼルへ斬り込んだ。こいつは絶対に許せねぇ……。

 

祈りを叶える叶えないかは確かに神々の自由だ。

 

だが目の前にいる龍人はただ己の欲の為に無関係な人達を虐殺したんだ。

そんな奴を目の前にして怒りを抑えるっていうのが無理だ。

俺はジゼルの薙ぎ払いを身を低くして回避し、そのままシュベーアナイフで奴を攻撃し、鋒を奴に対して怒りと共にぶつけた。

 

 

 

「はん‼︎軟弱なヒトの分際で俺に刃向かうってのか?」

 

「………黙れ」

 

「あん?」

 

「………俺は自分が恥ずかしい………ヤオにテュカの心を壊されたことに囚われ過ぎて、ダークエルフを敵愾視していた。ダークエルフも騙されていたことに気がつかなかった。本当の敵に気がつかなかった………」

 

「本当の敵だって?」

 

「本当の敵は………邪神ハーディとそれに従う貴様だ‼︎」

 

「………ざけんなねぇよクソ野郎が。ぶっ殺すぞ」

 

「そっくりそのまま返してやる………貴様も貴様のペットと邪神も炎龍と同じ場所に叩き落としてやる」

 

「ありえねぇ………ヒトなんかが炎龍を殺せるかよ」

 

「だったらそこのトカゲに確認させてみろ。そんだけの時間はくれてやる」

 

 

 

シュペーアナイフを構えつつジゼルの後ろにいた新生龍に確認させてやる。すると炎龍の巣を確認した新生龍が戻ってきて大鎌を構え直す。

 

 

 

「うはっ……マジかよ」

 

「お前等も同じ状態にしてやる」

 

「炎龍をヒトが斃すなんてなぁ……嬉しいねぇ。使徒になった甲斐があったぜ。おい、名前は?」

 

「………エース・クレイグ。貴様を殺す復讐の鬼の名前だ」

 

「覚えておいてやるよ………トワト‼︎モゥト‼︎お姉様を確保するのは後だ‼︎こいつの相手はオレがしてやるからひっこんでな‼︎」

 

「伊丹‼︎谷‼︎みんなを連れて下山しろ‼︎」

 

「………分かった‼︎」

 

「ご主人様⁉︎」

 

「お前もいけミオ‼︎」

 

「しかし⁉︎」

 

「いいから行け‼︎こいつをぶっ殺してから俺も向かう‼︎」

 

 

 

ジゼルが指示すると2匹のトカゲが伊丹達に向かい、ミオは残ろうとするがルフスに引っ張られて下山を始める。

 

 

 

「いいのかよ?テメェが死ぬってのが決まっちまうぜ?」

 

「ほざけ………そっくりそのまま返してやると言っただろ?それに貴様にいい言葉を教えてやる」

 

「へぇ……なんなんだ?」

 

「……………"血が流れるなら殺せる"だ‼︎」

 

 

 

そういいながら俺はジゼルに斬り込む。この神を名乗ったテロリストを絶対に許しはしないし、生かしておく理由もない。

ジゼルの振り下ろされた大鎌と俺のシュペーアが火花を散らし、俺の亜神との戦いの幕が上がった……………。

 




エースとジゼルとの戦い。亜神の力を持つジゼルにエースは徐々に押され、遂に窮地となるがエースの身体に変化が見られた。それに驚くジゼルにエースは走り出した。


次回[猊下との戦い]
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