GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版 作:ウルヴァリン
連合特地派遣団が特別地域にやってくることとなった銀座事件にて帝国軍はかなりの帝国兵を捕虜とされていた。本来ならばジュネーブ協定により彼等は捕虜ではなく単なる犯罪者となる。
だが日本の温情もあって1回限りで捕虜とすることになり、この日は連合と帝国の講和交渉の足がかりとして釈放された15名の帝国兵が帰還する祝賀会が行なわれていた。
そこには菅原やアーノルド、孔を始め白百合副大臣を長とした使節団。各国からのアドバイザーも出席していた。
「なんか色々あったが、ようやくここまで漕ぎ着けれたな」
「全くだよ。本音を言えば宮殿に入った瞬間に人質にされると思ってたんだが、向こう側も外交ルールはしっかり守ってるからな」
「本当だよ」
ワインを片手に祝賀会を見渡さす菅原、アーノルド、孔。
先ほどまで連合側と帝国側で戸惑いの溝があったのだが、菅原に好意を抱くカーゼル候の類縁でテュエリ家令嬢のシェリー・テュエリがきっかけを作ってくれて使節団と帝国重鎮達が談話を楽しんでいる。
「まさか真面目一本の菅原にロリ趣味があったっていうのは笑ってしまったがな」
「全くだ。関係に口出しはしないが法律には従えよな?」
「いや……だから俺にそんな趣味はないからな?」
「隠すな隠すな♪」
「そうだって。それにあの子は確かに上玉だ。あと数年すりゃあ間違いなく美人になるぞ。今から仲良くしときゃ玉の輿……いてっ」
「だから俺は結婚は興味ないし、そんな趣味はないって……」
冗談をいいながら菅原を揶揄うアーノルドに菅原が小突き、それと同時に大扉が開かれた。
「モルト皇帝陛下並びに皇太子ゾルザル殿下、皇女ピニャ殿下御入来‼︎」
そこから現れたのは礼服に身を包んだモルト皇帝と側近。傍には菅原達が追加の講和条件として身柄引き渡しと指名したA級戦犯のゾルザル、理由は分からないが付き従うヴォーリアバニーのテューレが入室してきた。
室内にいた重鎮達もすかさず臣下の礼をし、菅原達も会釈して出迎える。
「相変わらずムカつく奴だな」
「あぁ……あれだけの犯罪をしておきながら威張るような態度をしやがって……」
「落ち着いたらどうだ?それに講和交渉が本格化したらあいつは裁かれるんだ。遅かれ早かれな……」
ゾルザルに小声で悪態をつきながら睨みつける菅原達。あれからゾルザルは自身の使者を遣わして自分は講和派で、捕らえた民間人を返還すべく動いたが行方不明となっていたと説明してきた。
それを伺っているとピニャがモルト皇帝に白百合に話し掛けてきた。
「陛下。お初にお目にかかります。連合特地派遣団日本国本居内閣特地問題対策副大臣の白百合 玲子と申します」
「ほぅ……女性の大臣かな……余が帝国皇帝のモルトだ。此度の我が兵等の返還、誠に感謝しておる。これで漸く貴国等との講和会議を始めることが出来る」
「はい、1日も早く平和が実現することを心から願っております」
「うむ、我等は其方と刃を交えたが間違いであった。其方等とは手を取り合い、共に進めるというのであれば我等も平和を望むべきだ」
白百合と話をして挨拶をする皇帝。すると扉が再び開かれ、そこに現れたものに全員が息を飲んだ。
数人の戦闘奴隷が担ぐ神輿に乗せられ、瞳の色を完全に失った炎龍の首だ。
この首は深夜の雨に乗じてタスクフォース サーヴァントに参加しているプレデターの誘導を受けて、自衛隊のチヌークによって帝都の大城門の掲揚台に設置されたものだ。
炎龍の首がゆっくりと床に降ろされて皇帝が歩み寄り、その冷たくなった鱗にそっと触れた。
恐怖の象徴であると同時に力と王者の象徴でもあった炎龍に敬意を評して、振り返ると高々と宣言した。
「皆の者‼︎見るがよい‼︎長きに渡り民を苦しめて来た炎龍も遂に骸を晒した‼︎もう恐る必要もない‼︎これを神々からの引き出物として受け取り、今日の良き日を盛大に祝おうではないか‼︎」
その言葉に喝采が浴びせられ、暫くしてからピニャと彼女の部下の1人であるシャンディー・ガフ・マレアが歩み寄った。
「陛下」
「おぉピニャか……そなた、何か知っておるのか?」
「はい。此度の炎龍討伐に赴いたのは伊丹 耀司、エース・クレイグ、谷 劉郭、ロゥリィ、テュカ、レレイ、ルフス、ミオ、ヤオの9名。その者達を見知っているシャンディー・ガフ・マレアを連れて参りました」
「ロゥリィ?」
「はっ…はい‼︎エムロイの使徒ロゥリィ・マーキュリー聖下でございます‼︎」
「おぉ……あのお方が加われば炎龍討伐も納得がいく。となれば此度の活躍は神々のものであるか?」
「いえ。主力となったのは伊丹、エース、谷の3名となります」
「エースとは確か………鬼神エース・クレイグのことか?」
「はい。以前陛下の御前にて兄様を打擲した‘‘緑の人’’その者です」
「やはりあの者か………見ていて驚愕したがどこか清々しい者だ。他の者は?」
「はい。テュカはロドの森氏族のハイエルフでヤオはシュワルツの森のダークエルフ。ミオはイタリカにて副メイド長をしているワーウルフでルフスはエムロイの従者であります」
シャンディーからの報告に耳を傾ける。
「最後にレレイ・ラ・レレーナ。こちらはルルドの末裔で賢者カトー老師の弟子となります」
「おぉ‼︎カトー老師の弟子か‼︎」
「ご存知……なのですか?」
「うむ、我が幼き頃に教鞭を取っていただいてな。今でもあの方には頭が上がらぬのだ」
「如何致しましょうか?」
「うむ。そのレレイなる者を必ずや帝都に招聘するのだ。ぜひとも褒美と英雄の称号を与えねばならぬ」
「はい」
「皆の者‼︎炎龍を討ちたる者の名が分かったぞ‼︎その勇者の名は大賢者カトーの弟子‼︎レレイ・ラ・レレーナ‼︎」
レレイの名前を聞いて会場にいた出席者が歓喜に沸いた。だがその中で離れた場所にいたゾルザルだけは歯を食いしばっていた。
「くそっ……炎龍を倒した程度で何をそこまで誉めたたえる……。なぜこの場にいない愚民を賞賛する………」
長らく討ち取られなかった炎龍を倒したという功績は国を倒したという功績よりも高い。
だがゾルザルはそれを認めず、嫉妬に駆られる。
そんなことを知る由もなく、侍女が運んで来たワインを手にしてそれを掲げた。
「皆の者‼︎用意はよいな⁉︎祝おうではないか‼︎我が帝国に更なる繁栄と栄光を‼︎」
ワインを掲げ、それを口にした。だがそれは突然起こった。
「がはっ⁉︎」
ワインのグラスを落とし、口から血を流しながらその場に倒れたのだ。
その光景に会場には悲鳴が響き渡り、ピニャが血相を変えて駆け寄った。
「父上⁉︎しっかりしてください父上⁉︎父上⁉︎父上ぇえええっ⁉︎」
いくら揺さぶっても意識がなく、すぐに駆けつけた近衛兵達が皇帝を連れて行く。だがその光景に対してゾルザルと影に隠れながら見ていたテューレは企みに満ちた笑みを浮かべていたというのは誰も気がつかなかった……………。
皇帝が倒れる隙を突き、権力を掌握したゾルザルはウラ・ビアンカにて大規模な軍事展開と強制徴兵、更には講和派議員への弾圧を開始する。
その情報はすぐさま地球側にも伝えられ、連合参加国の緊急首脳会談が開かれた。
次回[平和を望むなら備えよ]