GATE 連合特地派遣団 彼の地にて斯く戦えり リマスター版   作:ウルヴァリン

9 / 89
08:エルベ藩王国の獅子

帝国の皇帝から使節がやって来て、連合諸王国軍招集、アルヌスの丘に屯する異世界の賊徒を殲滅する為に援軍を要請してきた。

 

我等エルベ藩王国軍も援軍要請に呼応する形でアルヌス近郊に赴いた。

 

敵の兵力は1万にも満たず、逆にこちらの兵力は30万足らず。

 

普通ならば戦の勝敗は火を見るよりも明らかで、30万の兵力に敵が勝てるはずもない。

 

アルグナ、モゥドワン、リィグゥの3個軍団が初日の先鋒を務めることになったが、火山の噴火の如くの爆発によりアルグナ王、モゥドワン王、リィグゥ公の3人は行方が知れず、リィグゥ公の壊された兜のみが見つかった。

30万を超えた兵力は1週間もしない内に半数以上が死亡したか重傷を負って後方に送られた。

 

昼間でどれだけ波状攻撃を仕掛けても簡単にあしらわれ、翼龍も近づく前にまるで羽虫のように叩き落とされた。

 

だが今回の戦に対してエルベ藩王国国王のデュランは初めから違和感を感じていた。

 

帝国軍が軍勢どころか一兵も見当たらないのだ。

 

初日の会合に来た伝令によればアルヌスにて対峙していると言っていたが全く対峙などしておらず、どこにもいなかった。

 

我々は帝国の思惑に薄々と感じてきているがこのまま黙って帰る訳にはいかないというのも事実である。

 

昼間で全く歯が立たないというのであれば月明かりのない夜に残り少ない兵力を投入し、物音を立てずに丘の反対側に向かっていた。

 

 

「このまま敵が気付いていなければよいが………」

 

「デュラン様、如何なされましたか?」

 

「いや……今までの熾烈な戦が嘘のような静寂ぶりで逆に不気味でな……」

 

「敵は完全に油断しきっているか……はては正面しか警戒していないか実は向こう側も負傷者が多いのか……」

 

「分からぬ……しかし油断は出来ん敵であるということには変わらん」

 

「しかし何としても成功させなければならないということもまた事実……アルグナ王やモゥドワン王やリィグ侯の死を無駄にしない為にも………」

 

「そうだな………礼をいうぞグラビよ」

 

「デュラン様に付き従えて既に10年足らず………どこまででも付き従います」

 

「うむ………儂はそなたのような従者を持てて幸せであ………」

 

 

デュランが従者であるグラビ・ルナ・ウォースラーに礼を言おうとした瞬間、デュランを含めた諸王国軍将兵全員が驚愕した。

 

月明かりのない新月に広がる闇夜がいきなり昼間の如く明るくなったのだ。

デュランが見上げると複数の眩い光を放つ球体がゆっくりと地上にゆらゆらと降りてきており、かなり明るいものだと分かるが、これがデュラン達にとって危険な事態であるということを直ぐに察知した。

 

 

「いかん‼︎ハァ‼︎」

 

 

デュランは馬を急いで駆けさせる。ここにいるのはデュラン達連合諸王国軍以外には敵しかおらず、彼等があげたものでないということは敵が上げたものだ。

 

つまり敵からはデュラン達が見えていたということだ。

 

それを察知したデュランは前方に向かって馬を走らせ、グラビもまた同じように馬を走らせる。

 

 

「全軍突撃‼︎馬は駆けよ‼︎人は走れ‼︎」

 

「敵の攻撃が来るぞ‼︎死にたくなければ陛下に続け‼︎」

 

 

デュランとグラビが馬を駆けた瞬間、アルヌスがある丘から高速でこちらに近付く物体が飛来し、それが地上に落ちると爆発が発生して将兵が吹き飛んだ。

 

 

「止まるなぁ‼︎走れ走れぇ‼︎後に続けぇ‼︎」

 

「陛下‼︎前に何かが⁉︎」

 

 

グラビが何かに気付いてデュランを制止するが間に合わず、鉄の茨で出来た針金………有刺鉄線に馬ごと突っ込んでデュランは投げ出された。

 

 

「デュラン様⁉︎いまお助けします‼︎」

 

「大楯隊前へ‼︎デュラン様をお救いせよ‼︎」

 

 

そう指示があるとグラビを先頭に大楯を手にした兵が有刺鉄線を乗り越え、デュランを護るように盾を構える。

少しだけ気を失っていたデュランはグラビに抱えながら朦朧とする意識をなんとか戻し、暫くして状況が切迫した状況であると把握した。

 

 

「デュラン様‼︎お怪我は⁉︎」

 

「逃げろグラビ‼︎兵を率いてすぐに逃げるんだ‼︎」

 

「陛下⁉︎」

 

 

デュランの退却命令の中、今度は無数の銃弾がデュラン達を襲う。大楯隊も銃弾防ぐべく構えるが防弾能力のない鉄板で作られた盾では防げるはずが無く、次々と貫通して兵士が倒れていく。

 

次々と倒れていく兵士を見ているしか出来ないデュラン。そしてグラビを不意に見た。

 

 

「ぐ……グラビ……」

 

 

グラビは地面に倒れていた。長年付き従った従者を呆気なく失って唖然としたデュランは足元に落ちた弓を手にして構えた。

 

そして弓矢を射掛けるが、悲しいかな弓矢は敵に届くはずも無く、山を描くように弓矢は地面に落ちていった。そしてデュランは全てを悟った。

 

‘‘我々は帝国に捨て駒とされたのだ’’と………。

 

辺りで爆発が発生する中、デュランもまた爆発に巻き込まれた……………。

 

 

 

戦闘が終結して6時間後、辺りにはまだ火薬の臭いや血生臭さが残り、死体に群がるハゲタカが辺り一面にいた。

 

連合諸王国軍の死傷者は10万、捕虜2,000人に達し、敗残兵は退却していった。第4次アルヌス攻防戦も負傷者すらいない連合特地派遣団の完全勝利で終わった。

 

そして物語は更に進んでいくこととなる……………。

 

 

 




合計4回もの攻勢を防ぎ切った派遣団。最後の夜襲が終結してから狭間陸将は深部偵察隊を編成し、海兵隊も偵察隊を編成する。
エース率いるリーパー隊も偵察任務として伊丹率いる第3偵察隊と途中まで行動する。


次回[リーパー]
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。