何気ない日常を繰り返し過ごす。それが何にも代えがたい幸福である事。
何気ない日常を繰り返し過ごす。それがどんなに愚かで退屈で窮屈な事。
どちらも正しく、どちらも間違いでいる事を理解し、分ち合えるだろうか。
矛盾しているが、一人一人の立場、環境、視点によって意味が変わることを僕は経験してきたつもりだ。
・・・突然であるが僕はいわゆる転生者という者だ。
本当に突拍子も無いことを言っている事を理解しているが信じてほしい。
勿論、今から話す事全てを信じるも流し聞くも、貴方自身の判断に任せるものとする。
それは貴方が他でもない自分自身で決めた事であるから、その決断を我が身の為に好き勝手代えていいはずがない、いや、簡単に代えられるものでは無いのだから。
それを百も承知で有るが為に、ただポツリ、ポツリと独り言の様に書き記そうと思う。
さて、上記にも有る通り、僕はこの世界に前世界の記憶を保持して生まれてきた。
しかし、それは必然の様なものともいえる。
僕が転生したのは7回目であるからだ。
そして、今世が最後の転生である事も知っている。
というのも、最初の転生前、言い換えると最初の死の時に、自称神を名乗る者に出会い、そう伝えられたからだ。
所謂そういう特典だとの事で、一方的に与えられ、後は何も言い返す間もなく最初の転生が行われた。
そんな理不尽さに納得がいかず、赤子の時に強い怒りを覚えたのは言うまでもないだろう。
僕としてもやはり小説に有る様な、強靭なパワーを持って・・・とか、天才的才能を持って・・・等といったモノを持っての転生、主人公の様な存在には憧れが有ったからだ。
しかし、渡された特典はただ記憶を保持して7回も転生が出来るだけ。
それ以外は平々凡々な才能を持った1人間で有る事だった。
最初の転生先である世界だが、みんなが憧れる様な剣と魔法の世界である。
魔法が当たり前に有る世界という事に初めて気付いた時は、それはもう感動をしたものだ。
それと同時に、そんな世界に転生させておいて、何の役にも立たない特典を与えた神には少し恨みもした。
だが、どうしようもない事実であるが為に、そんな思いを忘れるかの如く魔法の勉学に励んだ。
やはり、魔法というロマンそのものに勝るものは無かったからだ。
言葉理解し始めた頃、魔法についての知識と理解を得ようと本の虫になっている僕を両親が天才だともてはやしている事に快感を覚え、さらに本を多く読み進めていた。
そんな事も有り、地元の同年代では頭一つ以上に魔法に秀でており、周りもそんな僕の事を「彼は天才だ」とはやしたて、そんな話を聞くたびに、僕の鼻は長くなっていった。
・・・その鼻が折れるのにはそう時間は長く無かった。
井の中の蛙で有った僕は、長らく学習をしていた分の貯金がある為、魔法学園なる場所の受験に当たり前の様に合格し、2度目の学園生活を過ごす事となった。
そこで出会ったのだ、本物の「天才」という者に。
その才を初め見た時はマグレによるものだと思った。しかし次になると焦りを覚え、その次になると認める他無かった。
僕はそんな彼の次席でしかないことに。
自分の中に有った自信やプライドといった何かが消えていく様なそんな気を覚え、気が付けばそのまま学園を卒業していた。
何処までも灰がかった心境で、流れるままに冒険者という職を得て、そこでの判断ミスで若くして命を落とした。
気付くと真っ白な空間にいた。
周りはただ途方もなく広く、浮いているのか沈んでいるのか、立っているのか寝そべっているのか判らない、ただただ真っ白な空間。
呆然としていると、何処からか声が聞こえた。
「1度目の転生はどうだった?」っと。
それが神と名乗る者の声だと気づくのに少し掛った。
しかし、理解すると同時に、堰をしていた恨みつらみを濁流の如く自分の口から流れていく。
そんな僕の言葉はどうでも良いのか、自称神は「インターバルは終わりだ、次の世界の行くと良い」という言葉のままに、直ぐにまた転生が行われた。
次の世界もまた魔法が存在していた。
けれど、前世の魔法との原理や発動する際のプロセスが違っていた為、そこの修正が手間取っていた。
それもまた幼いうちに始めた為、前世の様にまた「天才」等とはやしたてられる様になっていた。
しかし、僕は知っていた。
この世界にもどうせ、本物の「天才」という者がいるのだと。
だから僕はより前世よりも一層、勉学に力を入れていくことにした。
勿論その過程で、本物の天才にもであった。
だが、あの時は違い折れずに何度でも食らいついていた。
長らくそうしていたからだろうか、彼からは「ライバル」だと認められ、彼もまた食らいつこうとする僕を離しに掛る様に力を付けていく。
学園を卒業しても、その関係は変わることなく、何時までも行われていた。
そして、漸く天才である彼を超える事が出来たのだ。
その時の嬉しさたるや、世界一の山を登頂した様な、そんな清々しい達成感で満ち満ちていた。
しかし、そんな気持ちは直ぐに無くなり、現実が押し寄せてきた。
彼を超える為だけを考えていた僕は、超えて得たものよりも多くのものを取りこぼしていた。
それは、お金で有ったり・・・
それは、人間関係で有ったり・・・
それは、家族で有ったり・・・
そして、残りの時間で有ったり・・・
結局、僕が残しているものはほんの少しの功績しか残っておらず、孤独による虚しさを残したままその生涯を終えた。
気付けば、またあの空間にいた。
「今度の世界はどうだった?」
ふいにあの声が聞こえる。
その声に反応し、震えながら一つ一つと口にするのは、後悔と懺悔の悔いの念だけであった。
やはりそれにも気にする事はないのか、急かす様に次の世界へと繰り出された。
時には、性別が代わって生れ落ち、戸惑い続けながらも生きて。
時には、人では無い生物に生まれ代わり、人によって理不尽な仕打ちを受け。
時には、時には・・・・
こうして様々な世界に生まれては死に、記憶を紡いで、この世界に生れ落ちた。
この世界は貴方が知っている様に魔法なんてモノが無く、化学が発展し続けている、なんの代わり映えが無い様に見えて、日に日に成長や進化をしている、そんな世界だ。
僕はこの世界がとても懐かしく思えていた。
転生が起こり続ける前、初めて死したその世界そのものだから。
勿論、僕自身は転生している為に全くの別人となっている。
けど、何気ない日常が愛おしかったあの世界である。
この事を思い起こした時に僕は決心した。
本当の意味で生まれ変わろうと。
其れからというもの、何気ない日常と云うものを愛おしく思いながらも、周りの人の助けになれるよう勉強と努力を重ね。
間違いやすれ違いが起きた時は、相手ではなく自分のしてきた行動の見直しを行い、逆に相手の立場になって考えもした。
そうして出会いや別れを繰り返し、最愛の人と出会い子供も生まれた。
仕事に育児に悩みながらも、しかしながらそれを楽しみ慈しみ。
気付いたらとっくに歳も老けていった。
7度も転生を経験して、初めて幸せに終わる世界だと思っていた。
しかし、思い返せばどの世界にも幸せと辛さがあった。
僕自身が、その幸せと辛さを尺度を僕自身で測っていただけだった。
ただ、それに気付づいた時には悔いは無かった。
むしろ、そこに気付いた事に感動と感謝をし、他の誰に教えようと思ったくらいだ。
その為、僕はこうして今読んでいる貴方に向けて記している。
長々と書いているが、貴方に伝えてい事を簡潔に伝えると、「貴方が望む幸せな人生は、貴方自身から代えていかない。」という事だ。
今貴方がいるこの環境は、無意識に貴方が行っていた事や思って事で出来ている為、もしもそれを変えたいと望むのならば、まずは貴方自身から代わり成長しなければならない。
それは日頃の言動で有ったり、それは日頃の考えで有ったり。
しかし、最初から全てではなく一つ一つの最優先事項を考え、時間をかけて変えていく必要がある。
そして、変わろうと始めた時が一番困難でとてつもないエレルギーが必要となるものだ。
挫けたり悩むことも有るが、きっとそれも成長の糧となる事だろう。
そうして自分が変われたなら、今度は周りの人に目を向け助け合いをする。
その努力が貴方の目指していた物となり、其れもまた通過点として人生は過ぎていく。
そして、自分の最期がどう有りたいかまで考えられたらどれだけ幸せな事だろう。
勿論、これは僕が想い考えた1つの答えの様なものだ。
貴方にとって、それが正解かもしれないし、間違いなのかもしれない。
しかし、この考えに貴方がの役に立つ何か感じたのであれば、僕はうれしく思う。
最後に一言、「貴方の人生に幸多からんことを僕は願っている。」
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
「・・・・なんだこれ?」
12月になり大掃除をと家族総出で家の掃除をしていると、押入れの奥から変なノートを一冊見つけた。
軽く流し読みしていると、何とも信じがたい事ばかりが書かれている。
父さんか親戚の誰かが若いときに書いたイタイ小説の様なものだろうか。
しかし、何故か捨てがたく感じている自分がいる。
「シオ~ン、こっちに来て手伝って。」
「は~い、今行くから待ってて~。」
別の場所を担当していた母からのヘルプに応じて押入れを出る。
しかしノートを持ったままだった事に気付き、一度自室に向かってから母の元へと向かった。
私の名前は『楠 シオン』
今年から高校生になる事に少し興奮し、何か大きな転機が来ないかと期待してながらも何気ない日常を幸せを感じ過ごしている。
そんなどこにでも居る人と同じ1人だ。