モブキャラのはずの俺が破壊神のナホビノってマジか? 作:兵庫人
前世の記憶を取り戻すのとほぼ同時に魔界に転移した上、女神転生シリーズでも最強の悪魔と名高い破壊神シヴァのナホビノとなった不動カイ。彼が魔界に転移した日からすでに数日が経過しており、現在不動は……。
「アラミタマ狩りじゃあああーーーーー!」
と、奇声を上げながら魔界と化した東京の港区にあるトウキョウ湾ブリッジを全力疾走していた。
不動がこんな奇行を行っているのは魔界に転移したことに絶望して狂ったから……ではなく、当然理由があった。
数日前。どういうワケかゲームの主人公の代わりに序盤のボスであるヒュドラと戦って勝った不動の前に現れた、ベテルのインド支部に所属していると言う人間、スカンジナビア・ペペロンチーノ。彼は魔力の波長や気配から不動がシヴァ関係の悪魔であることに気づいており、ベテルの本部……天使の軍団に内緒で不動をベテルのインド支部に保護をすると言い出したのだ。
不動は最初、ペペロンチーノの申し出に戸惑ったが、他に行く宛が無かったのでペペロンチーノと共にインド支部へと向かうことにした。その後、不動とペペロンチーノはいくつものトラブルがあったが何とかインド支部に到着し、これでもう安心だと思っていた不動だったが……そうはいかなかった。
インド支部に到着した不動はそのままペペロンチーノに支部のトップ、シヴァの元に連れて行かれ、そこで初めて不動を見たシヴァは一目で彼が自分のナホビノであることを見抜いたのである。幸いと言うかシヴァはナホビノに戻ることに興味はないようで、それを聞いてシヴァに取り込まれることはないと胸を撫で下ろしていた不動だったが、続けてシヴァが言った言葉に凍りつくことになる。
「しかし我のナホビノがこうして現れたということは、神はやはりとうの昔に滅びていたということか……。神なき今、この世界が滅びるのも時間の問題、ならばこのシヴァが宇宙ごとこの世界を滅ぼすのがせめてもの慈悲というものだろう」
「……………!?」
そう、「真・女神転生Ⅴ」のシヴァは宇宙ごとこの世界を滅ぼそうとしており、ゲームの主人公はサブクエストで宇宙の破壊を防ぐためにシヴァと戦うことになっていたのだ。
シヴァの言葉によりゲームの設定を思い出した不動は、なんとかシヴァに宇宙の破壊を止めてもらえないかと必死で説得をして、それに対してシヴァは自らのナホビノにこう言った。
「ふむ……。それでは我がナホビノ、確か不動カイと言ったな? 宇宙の破壊を防ぎたければ我を打ち負かしてみせよ。自らのナホビノに負けたのならば、我の中に宇宙の破壊をためらう迷いがあることになり、この世界は存続する天命を持つ何よりの証となる。我はいつでもお前の挑戦を受ける。お前が本当に宇宙の存続を望むのであれば力をつけて我に挑むがよい」
こうして不動はゲームの主人公に代わり、「真・女神転生Ⅴ」のサブクエストの一つ、「宇宙の破壊を阻止せよ」を請けることになったのである。
(チックショウ! 何だよ、コレ!? 何なんだよ、俺の人生の詰みっぷりは!
レアな異世界転生を体験したかと思えば、転生先はオシャレでカッコいいペルソナ世界ではなくて、カッコいいけど人類滅亡が前提条件の女神転生世界で!?
前世の記憶を取り戻したら即座に悪魔がウジャウジャいる魔界に強制転移で!?
ナホビノになって悪魔に対抗する力を手に入れたらナホビノは存在が許されない禁忌の存在で!?
何とか保護してもらえたと思ったら保護してくれた俺の半身の悪魔が宇宙ごと世界を破壊しようとしていて!?
挙句の果てにその半身の悪魔が女神転生シリーズで最強とされる破壊神シヴァ!?
こんなのどうしろってんだよ! 世界はそんなに俺を殺したいの!? 本当に俺ってば何か悪いことでもしたの!?)
心の中で絶叫して仮面の下で盛大に泣きながらも全力疾走をしている不動。そんな彼の前には赤くて奇妙な形をした石の悪魔、アラミタマが高速で飛んで彼から逃げようとしていた。
世界の、宇宙の、そして何より自分の命のためにシヴァと戦うことになった不動は強い悪魔の仲間を求めた。いくら自分がシヴァの力の一部を使えるナホビノでなっても、ゲームのラスボスよりも強いシヴァと一人で戦って勝つのは不可能だからだ。
しかし強い悪魔の仲間といってもそう簡単に見つかるはずもなく、そこで不動が目をつけたのが、今必死に追っているアラミタマとこのトウキョウ湾ブリッジなのである。
アラミタマは倒すと悪魔の仲間のレベルを一つ上げることができるアイテム「魔導書」を確実に落とし、そしてこのトウキョウ湾ブリッジにはアラミタマを初めとする貴重なアイテムを落とす悪魔しか出現しないのだ。
トウキョウ湾ブリッジはゲームの後半でベテルのエジプト支部の拠点となるのだが時期的にゲーム序盤の今は誰もおらず、不動は今のうちに悪魔の仲間を強化する魔導書を集められるだけ集めようと考えたのだった。
「オラァ! アラミタマ狩りじゃあ! 狩って狩って狩りまくるんじゃあ! 狩って魔導書ゲットで強い仲魔をゲットじゃあっ!」
もうほとんど自棄になってアラミタマを叫びながら追いかけ狩っていく不動。この数日間で彼はトウキョウブリッジを百回近く往復しており、そのかいもあって魔導書もかなりの数が集まっていた。
そして今まさに不動が目の前のアラミタマに追いつき狩ろうとしたその時……。
「あー! もう! うるっさい! 一体何なの!? この数日間、大声を出して!」
「……え?」
突然聞こえてきた女性の声に不動は思わず立ち止まり、声が聞こえてきた方を振り返る。するとそこには一人の女性の悪魔がバスの上に立って彼を睨みつけていた。