野球の最中、飲み物を買いに行く時、東堂はこんな事を言い出した。
「まだ少し先の話だが、高田ちゃんがイベントを行うのだ。真依とベストフレンドも一緒に行かないか!」
「ええ……」
「何よイベントすんの?」
「そうだ、このサイトにアクセスすると……高田ちゃんと1時間一緒にいれる動画も見れるのだ!」
ぐいぐいと押し付けてくるスマホを、人のいい虎杖と興味を持った釘崎、そしてうんざりした顔の真依は覗き込む。伏黒は我関せずだ。
「五条先生のコスプレ? これ。この動画だけすげー浮いてるし」
「なになに? あっ 確かに似てるかも」
そして、自分でもそのサイトを表示させた虎杖は、なんとなく、本当になんとなく五条悟と入力してみる。
その瞬間、サイトがおどろおどろしいデザインに変化する。
「あ、アルバム情報出た。今だけフル試聴可能」
「なんだと!?」
バッと東堂はスマホを奪い取る。
そしてクリック。
大音量がその場に流れた。
「えっ 帳って……パスといい、高田ちゃんって呪術関係者?」
「……いや、そんな話は聞いた事がない。この業界は狭いし、関係者なら俺が知らないはずはない。ましてや、百鬼夜行の事を言っているなど……歌詞は、これか。……かなり意味深だな。この歌で歌っているのは宿儺か?」
「またパスワード表示だ。イベントの日時か……仮装だからハロウィンかな?」
「ちょっと待て。パスって何を入れたんだ」
「せんせーのフルネーム」
「なんだと……」
ポチポチとクリスマスを入力。クリスマスのイベント情報が出る。
「……」
少し考えて、東堂はハロウィンの日付を入れた。
掲示板と、右端に動画、下には昨日襲撃してきた呪霊や自分達の紹介が載っている。
動画は、骸骨達に囲まれ、囚われの身になっている五条先生だった。
「あ、これ。メカ丸」
デフォルメされたメカ丸が真人に襲われ、五条が暴れようとするも骸骨に阻まれ、項垂れる。
なんだこれは。なんだこれは。なんだこれは。
「俺の術式が書かれている……? 渋谷事変で腕を失い、術式もまた失われるだと……?」
「ちょっと、渋谷事変後に禪院家にて実の父に殺されるって何よ!」
「ちょっと私、真人に顔半分吹っ飛ばされて瀕死ってなってるんだけど。真人って誰よ。後、術式が真人特効って?」
「漏瑚に宿儺の指コレクション一気飲みチャレンジを強制されて宿儺に一時的に乗っ取られ、大量虐殺……お兄ちゃんに救われる? 俺に兄貴なんていねーし! ママン(偽)がパパン(偽)になって現れて無量空所ってなんだよ! 宿儺の器になるべく作られ順当に罠にハマって器にされた人ってなんだよ!!」
「メガンテ中毒ってなんだ。オガミ婆が復活させた父と宿儺に救われるってどういうことだ」
「ほう、珍しい。予知系の術者ということか?」
宿儺の言葉にハッとする。
高田ちゃんが予知系の能力者!??
「じゃあ、先生が捕まるって事!?」
「「「「それはない」」」」
掲示板を見る。
『ごくもんきょーに住まう骸骨その1です。渋谷事変を解決したい人集まれー>< 東京も大事ですがなんとか五条先生を笑顔にしたい……。ノリノリで動画作ったけどリアル曇らせはマジ勘弁……。たかたんビームはあまりに無力っっ……』
『ひとまず、渋谷事変について詳しい情報を持ってる人と見える人募集です! 当方戦闘経験ないので、戦える人いませんかー!? 真人倒せないのはもうしょうがないですが、漏瑚もしょうがないですが、陀艮もしょうがないですが、えっと倒せなくて仕方ないほど強い敵多すぎない? 一般人にも倒せる呪霊はいませんか……? 五条先生お代わりください。一人じゃ足りない……。二人に分裂したりしない? 無理ですかそうですか……。ごくもんきょー内で囚われの五条先生を千年撫で続ける作業が始まるお……』
伏黒は携帯を開き、五条先生に電話した。
「あの、昨日襲撃してきた呪霊のサイトを見つけてしまって……ええ。マジです。ちょっと五条先生も直接見てください。URL送ります。パスは五条悟と10月31日です。パソコンで見た方が見やすいかもしれません」
「伏黒! 書き込んだら反応あったけどやばい! サイト消すって言ってる」
「止めろ。先生。証拠隠滅されそうなんですぐ見てください。一旦切ります」
『えっと渋谷事変を知らない人は入れるはずがないと思うんだけど……。ここはハロウィンに行われるイベントについて話し合う場なの。関係者以外は帰ってね。内緒にしてくれると嬉しいな。うーん、それにしても参ったな……。ひとまずパスワード制の掲示板のURL張ってこのサイト消そうかな。パスは乙骨くんの決め台詞なので皆わかると思います! この女誑しめ! に漢字含む四文字で』
『高田ちゃん! その前に大事な確認事項がある。……五条 悟や乙骨のファンなのか?』
『それはそう。東堂くんも好きだけどね! 私のファンでいてくれてるし! もちろん、真依ちゃんも好きだよー! また笑顔で握手会に来てほしい。だから20日までにどうにもならなそうだったら、流石に保身諦めて東堂くんの所に突撃する。信じてくれるかはわからないけど、助けてくださいって。ファンのよしみで話ぐらいは聞いてくれるかもしれないし』
「お、俺のことが好きだと!? 高田ちゃんが!??」
「落ち着きなさい、私の事も好きだって言ってくれてるでしょ」
『高田ちゃんが困っているなら絶対助けるし話を聞く』
『ありがとー! 全部終わったらオフ会開こうね、私、いっぱい歌っちゃうよ!』
『五条先生に話すのはダメなの?』
『いやー。接触が無理、信じてもらうのが無理、その後の保身も無理。無理オブ無理。まだ色んな意味で東堂くんの方が接触しやすいかなー。それでも証拠もないし、頭おかしいって思われるかもだし。ギリギリまで保身を図りたい……。おっと、そろそろ握手会の時間だ。サイトの書き換えは後かな。東堂くんに連絡先こっそり渡さないと。上手くいくかなぁ』
「高田ちゃんが! 連絡先を!! 教えてくれる!!!」
「ちょっとそれはそれとして、あんた達の所のメカ丸スパイって書いてあるわよ」
「なんですって!?」
「なんだと!?」
もう飲み物を買うどころではない。
一同、サイトをぽちぽち見る。
そして電話が来た。五条先生よりお褒めの言葉を頂き、とりあえず普段通りの顔をして戻るよう指令が出るのだった。
普段通りに。普段通りに。普段通りに。
「おねえちゃあああああああん!!」
「うおっ どうした真依! まさか東堂に泣かされたのか!?」
「うわああああああああああ!!」
「俺は特に何もしてないぞ!?」
「怪しげなサイトは見せてたけどなー」
「うわあああああああん!!」
ボロボロと泣きじゃくる真依を抱きしめた真希はすっと刀を取り出して東堂に向かって構える。
目が本気だったので全員で擁護した。