海神さんが第四次聖杯戦争に参戦するようですよ?   作:ぴんころ

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第四話:乱戦

 サーヴァントの保有するスキルの中には『神性』というものがある。

 それは、サーヴァントの体に神霊の適性があるのかどうかを示すスキル。

 ランクが高ければ高いほどより物質的な神霊と人間の混血であり、肉体の強度も高くなるというもの。

 

 当然、神霊マナナン・マク・リールの分霊である以上はアルターエゴも神性がスキルとして表記される。

 本物の神霊、人間との混血ではなく純血の神霊である以上、そのランクは当然最高峰(A+)であるはずなのだが、彼女の場合は人間を依代として召喚されているという関係でサーヴァント・アルターエゴとしての神性はランクにしてB。

 

「よもやこの我を差し置いて”王”を称する不埒者が、こうも早く湧くとはな」

 

 そして今、イスカンダルの咆哮じみた煽りに姿を示したアーチャーのサーヴァント、ギルガメッシュもまた本来ならば最高峰の神性を持ちながらも、本人の気質のみでランクを下げているという、その強大さを示す存在だった。

 

 たった一言。それだけでイスカンダルが放った幾数の言の葉によって形作られた、傲慢な王という形容を上回るほどの傲慢さを見せつける黄金の王。

 当然、ライダーもそんな相手が出てくるとはいささか予想外だったようで、毒気が抜けたような困惑顔を見せつけている。

 けれど同時に、呆気に取られようともこの場に集った面々は誰一人として、誰かが動いた瞬間に対応ができないような惰弱な存在ではない。

 ゆえにこその膠着状態。誰もが街灯の上に立つ英雄王に目を取られながらも、戦場の緊張感は一切消えていなかった。

 

『アルターエゴ』

 

 そんな中バゼットへと送られてきた念話。その言葉の意味自体は不明だったが、やれと言われたならばやるべきだ。

 彼女の側にあった、少年が使役する烏がバゼットに掴まれ圧殺される。

 再利用も考えれば離脱させれば良かったのかもしれないが、この場に英雄王がいる以上、空からの……英雄王よりも高くに飛翔しての離脱は悪手だと判断してのことだった。

 英雄王は王を僭称する者にこそ侮蔑と殺意を向けている。

 当然、この場において最も危険なそのサーヴァントからは誰も視線を離すことはなく、だからこそその処理はほとんどの存在に気づかれることはなかった。

 

「難癖つけられたところでなぁ……イスカンダルたる余は正真正銘、世に知れ渡る征服王に他ならんのだが」

 

「たわけ。真の英雄たる王は天上天下において我一人。あとは有象無象の雑種にすぎん」

 

 あっさりと言い捨てる言葉はあまりにも傲岸。あまりにも不遜。

 けれど、ライダーもまたその傲慢なまでの夢にて大軍を率いた者。であれば今の時点では、最上位であろうと『ただの傲岸不遜』にしか思えぬ程度の言葉に怯むことはない。

 

「ほう、そこまで言い切るとは。さぞや名のある王なのだろう。では当然、その天地に轟かせたであろう威名、憚ることはすまい?」

 

「問いを投げるか? そこな小娘の正体もわからぬ雑種風情が、王たるこの我に向けて?

 我が拝謁の栄に浴してなお、この面貌を知らぬと称する蒙昧であれば、生かしておく価値はあるまい」

 

 バゼットがその言葉にわずかに反応する。当然、この場において女は彼女一人。

 あるいは、少し離れた場所にはセイバー陣営もいるのかもしれないが、ライダーとの会話において現在出現する”女”であれば、縁を結んだ彼女以外にはあり得なかった。

 

「その言葉、私の正体を知っているととっても?」

 

「むしろ気づかぬとでも思ったか。その神性、生半なものではあるまい」

 

 展開されるのはアサシンを一切抵抗させずに消滅させた、武装を呼び出す黄金の波紋。その内から湯水のように姿を見せる、英霊の象徴(シンボル)たる宝具。

 使えば正体に繋がりかねないが、だからこそ正体を隠すことに繋がるという特殊な事象。

 それを当然のものとして扱いイスカンダルへと向けながら、同時にバゼットへと向ける言葉には冷酷と殺意と傲慢が入り混じりながらも先ほどまでよりは遥かに優しい。

 正体をマスターから聞いているバゼットとしてはイシュタルと比べているのだろうか、なんてことは考えられても真意まではわからないし、興味もなかった。

 

「お? お前さんこいつの正体がわかるのか」

 

「ええ、まあ。先ほどまでの言葉と、この宝具の大量展開で」

 

 広がったのは驚愕の気配。

 ウェイバーは嘘だろと叫び、イスカンダルはなんと、と思わずと言った様子。

 ディルムッドは自分の真名を見破ったのもそれか、と呻き。

 その真名を隠すつもりだった遠坂陣営は、己の邸宅で誰よりも動揺している。

 

「知らないのがおかしい、というのであれば、歴史上誰よりも古いということ。その上で大量の、それこそ場所も年代も問わずありとあらゆる宝具を展開できるということは、それら財宝を手にした逸話のある人物。

 その上で王というのであれば、おそらくは古代ウルクの王、英雄王ギルガメッシュではないでしょうか」

 

「如何にも。それで、わかったところでどうする異境の海神」

 

「別にどうとも」

 

「は、はぁ!? さっき同盟を結んだばっかだろうが!?」

 

 バゼットが簡潔に答えれば、叫ぶのはウェイバー。さっきから叫んでばかりだが、彼の心境を思えば仕方あるまい。

 

「おいおい、落ち着け坊主。アルターエゴは王ではないのだろうよ。王であれば持つであろう気風というのが感じられん。であれば、この話に加わらんのもおかしくはないだろう」

 

「ええ、サーヴァントとしての私はともかく、この”私”は王ではないので」

 

「うん、そいつはどういう……?」

 

 イスカンダルが疑問を口にするよりも前に、現れるのは新たな乱入者。

 突如として渦巻いた漆黒の魔力の奔流。英雄王すらもわずかにそちらに意識を向けた相手は、漆黒の影とでも呼ぶべき、言葉にならない狂気の叫びを吐き出す黒鎧のサーヴァントだった。

 誰が見てもわかる。彼こそは狂戦士の称号を冠する基本七つのクラスを一枠、バーサーカーのサーヴァントである、と。

 

「誰の許可を得て我を見上げている、狂犬風情が」

 

 彼が視線を向けたのは英雄王ギルガメッシュただ一人。

 狂っているが故に、主人の魔力量を気にすることはなく、けれどよほどのことがない限りは主人の命令を忠実にこなすだけの犬が見上げるということは、彼の標的はアーチャーであるということ。

 イスカンダルを潰すために用意された宝剣の照準がバーサーカーへと移行する。

 

「せめて散り際で我を興じさせよ、雑種」

 

 そんな言葉と共に放たれるギルガメッシュの猛攻。

 誰もが目を奪われる煌びやかな殺意を横目に、バゼットから放たれていた闘志が内へと収束する。

 

「では、私は帰らせていただきます」

 

「は? おいおい。この戦いを見ていかんのか?」

 

「ええ。先ほども言いましたが、私のマスターは一般人なので。魔力消費のことを考えるとあまり戦闘は長引かせたくはない。あの二人が戦っているというのであれば、こちらに標的が向く前に帰ります。それとも、私のマスターが生き残るための協力が同盟条件なのに、最初から破るつもりですか?」

 

「むぅ……」

 

「では、今度こそ」

 

 そう口にして、気がついたランサーが反応するよりも早く、バゼットは今度こそ霊体化してその場を去るのだった。




乱戦(参加するとは言ってない)
多分セイバーはそろそろこの場にやってくる
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