俺は猗窩座の提案を聞き、困惑していた。
それはあの猗窩座が俺を認めた点もそうだが、何より俺を鬼に勧誘したことについてだ。
「何を言っている?正気かよ?」
「あぁ、俺は至って真面目だ。鬼はいいぞ?永遠の時を生きられ、怪我をしてもすぐに治る。何より永遠に武を高めることができる」
俺の答えは決まっている。
「断る。俺は絶対に鬼にはならない!!」
俺がただの獪岳ならばこの提案を受けていただろう。
しかし鬼になってしまっては今までの俺の努力が水の泡になる。
何より人の思いを踏み躙ることになる。
俺は自分の待ち受ける運命を変える為、努力をしてきた。上手くいかず挫け、挫折したこともあった。それでも努力を続けてきたんだ。
もちろん死にたく無い。助かりたい。
でも、俺はクズに成り果てるくらいなら死を選ぶ。
「そうか、残念だ。お前のような人間とは今まで会ったことがなかった。お前となら高め合えると思ったんだがな。今まで俺が誘った奴らはみな断った。何故なんだろうな?理解ができない」
「俺は絶対に鬼にならない。鬼に比べたら人間の一生は短い。だがそんな短い人生こそ人間の美徳だ。人は出会いと別れを繰り返す。その中で悲しみや後悔を繰り返し成長していくんだ。成長し続けられるから人は強くなれる。何度だって言ってやる。俺は鬼にならない」
そう、俺の人生は悲しみや後悔の繰り返しだ。
前世でも今世でも何も成し遂げられずにいた。
クズにならないと思っても、罪を犯してしまった。
せっかく美少女とのフラグを立てたのにそれを自ら手放した。
前世ではできなかった恋人ゲット、結婚のチャンスすら投げ捨てた。
やってしまってから後悔し続けた。
だからこそもう二度とこんなことはしないと思い、次チャンスが来たら絶対にものにしてやると強い決意ができた。
それを乗り越えたからこそ、次に生かすための成長ができた。
鬼になってはそんなチャンスすら来なくなってしまう。
人間に好かれるどころか余計に嫌われてしまう。
美少女が寄ってくるどころか離れていってしまう。
俺にだってプライドがある。
そんなプライドを捨てるくらいなら死んだほうがマシなんだ。
「はぁ、なら死ね」
俺の言葉にほんの少しくらい感銘を受けて見逃してくれないかなーとか思ったがダメみたいだ。
もう少し時間を稼げば生き残れたかなと思ったがやはり足りなかった。
俺は目を瞑り迫り来る死を覚悟する。
「チッ!話しすぎた」
「え?」
しかしいくら待とうが猗窩座から止めを刺されることはなかった。
ふと、気になり目を開けてみると猗窩座は目の前から消えていた。
そして後ろを振り返ると日光が地面を差していた。
「助かったのか?」
俺は周囲を見渡した。
戦闘に夢中で気がつかなかったが、木々は全て倒れ、平地になっていた。
猗窩座の最後に地面に打ち込んだ技が如何に強力であったのかを物語っていて、来た時の豊かな自然がなくなっていた。
それほどまでに俺と猗窩座の戦闘は熾烈だったのだろう。
そのおかげで日光が早く差し込んだのだが。
ふと自分の日輪刀を見たら血が付着していた。
日光に当たっているため、少しずつだが消えつつあった。
俺は急いで布を取り出して綺麗に拭き取り、その後、布を保存用の袋に入れた。
鬼の血は貴重だ。特に上弦の参、この血はかなり貴重だ。
今後何かの役に立つと思い大切にしまった。
「本当によく無事だったなー」
俺は誰もいないこの大地で一人でつぶやいた。
俺の体はボロボロだが致命傷はない。
怪我は足の骨折?と上半身の骨と筋肉がずれてるくらいだ。
しかしこの程度なら数ヶ月で治るだろう。
俺は全集中常中を身につけており、ある程度使いこなせている。
そのため普通の隊士よりも治りが早いはずだ。
今後、もう二度とあんな連中とは戦わない。
死ぬのはごめんだからだ。
そう決意した。
そして限界に達した俺は意識を手放した。
フラグかな?