極めろ熱界雷!!目指せ一撃逃走   作:花河相

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どうにかなってよかった。

 俺はどこで間違えしまったのだろう?

 やはりタイミングだろうか?いや、タイミングは完璧であった。

 カラスとのやり取りのせいで出遅れてしまったが、皆のピンチを救ったという点で大丈夫なはずだ。

 態度?

 それも違う。

 一応丁寧に接したつもりではいたし、話し合いに持って行こうとした。 

 今思うとこの状況……ここにいる皆が俺に対して高い警戒心を持ってしまったのは殺気を放ってしまったのが原因かもしれない。

 だが、言い訳をしたい。

 焦って困っている状況でそれを悪化させるような発言をされたら誰だってそうなる。それなりの達人なら、敵対心を向けられたら条件反射で臨戦体制に入ってしまうのはしょうがないと思うんだ(あくまで俺の感覚だが)

 

 本当にどこで選択肢を間違えたのだか……。

 

 ……もうやってしまったことを振り返ってもしょうがない。時を戻せるなら最初からやり直したいが無理だろう。

 だから、もう切り替えて他の打開策を模索しよう。

 このまま黙っていてもしょうがない。

 俺には原作知識というアドバンテージがあるんだ。それをフル活用すればいける……はず!

 まずは状況整理をすると、この場で唯一俺を敵ではないと思ってくれるのは炭治郎だけである。

 俺は原作知識と今世で生きた経験や人との関わりを活かし打開策を導き出す。

 

 あぁ、本当によかった。冨岡義勇とコミュニケーションしておいて。

 俺は原作知識から義勇の不器用さを知っていた。だから義勇が柱になり、共に訓練をする上で偶に話をするようになった。

 その話の中で兄を守った稀有な鬼のことを二時間かけて長々と一から義勇の話を聞いた。

 義勇は基本話す時、結論しか言わないか、過程だけを長々と説明しかできない。本当に不器用だ。だが、その努力が今、実を結ぶ!

 思考は刹那、流れを組み立て、話し始めた。

 

「そこの少年……鬼殺隊同士での争い、そして何より鬼を守ろうとする。これは重大な隊立違反じゃないか?」

「それは……」

 

 俺の正論を聞き、炭治郎は少し動揺し、周囲の者たちは様子を窺っている。

 本来の鬼殺隊であれば当然の反応だ。禰豆子のような例外を知らなければ当事者にそう質問するのは当然のことだ。

 まぁ、大概の鬼殺隊は話よりも行動で示してしまうが……。

 とにかく俺は炭治郎から珠世さん、愈史郎、禰豆子についての情報を話させなければいけない。頼む!

 これで話をしてくれ炭治郎!

 

「確かにそうかもしれない。でも…妹は……禰豆子は人を傷つけることはしない!禰豆子は今まで人を守るために俺と一緒に戦ったんだ。珠世さんも……愈史郎さんも……医者として今まで沢山の人を助けてきた。この人たちは悪い鬼とは違うんだ!」

 

 やべぇ、自分でやっててまじで悪者にしか見えないわ。例えるなら柱合会議で示した初対面の不死川だ。

 物語では最後まで不死川は炭治郎から嫌われていた……最後の方は知らないけど。

 このままなら俺も同じ扱いになるだろう。

 同じままなら…だ。

 

「つまり君は……この人達は味方だと?そう言いたいのか?」

「そうだ……」

 

 ここまで順調に話が進んでる。炭治郎から聞かなきゃいけない話。珠世さんと愈史郎、この二人のこと、そして妹の禰豆子の名前を直接聞き出すことに成功した。後は、炭治郎自身が鬼殺隊となり、成長したことを示してくれれば解決だ。

 

「一つ聞こう。……君は今、満身創痍だ。そんな状態で俺がこの人達を殺すと言ったら?」

 

 俺はそう言いながら刀に手を乗せ鬼達へと視線を向けた。

 俺が炭治郎から示してもらいたい成長、それは強者に立ち向かう勇気だ。炭治郎は義勇と初対面した時、頭を下げて助けを求めた。義勇はそれを咎め、それから二年ほどが経過した。

 今の炭治郎なら……。

 

「やめろー!」

 

 炭治郎は刀を構え、俺に切り掛かってきた。

 そうだ。それでいい。今、興奮しているからまともな判断はできないだろう。

 それでも不利な状況でも大切な存在を守るために自分よりも強い俺に立ち向かった。

 俺は自分の策が思い通りにいき、ニヤけそうなのを我慢し、向かってくる炭治郎を転ばした。

 

「ぐぁぁ」

 

 炭治郎は転び、うめき声を上げるもすぐに体制を整え、睨んでくる。

 俺はそんな炭治郎に声かける。

 

「試すようなことをして悪かったな……竈門炭治郎」

「……え?」

 

 俺は炭治郎の名前を出した瞬間、警戒の中に少し疑問が生まれるのを確認した。

 俺はその一瞬の揺らぎを見逃さず、何か言われる前に話を続ける。

 

「以前、義勇からお前たち兄弟のことを聞いたんだ。妹を人間に戻すために鬼殺隊になったお前の話をな」

「冨岡さんから……」

「ああ」

 

 今の炭治郎の雰囲気は先ほどに比べ、警戒心は見られず、驚きの表情を見せていた。匂いで嘘をついていないのだと理解したのだろう。

 炭治郎は鼻がいい。真実の匂いとか知らんけども。  

 俺はそんな炭治郎の確認後、視線を珠世さん達へ向ける。

 炭治郎としたやりとりで愈史郎は警戒を解いていないものの、疑問が生まれており、禰豆子は臨戦体制を解いていた。珠世さんは……よくわからないけど、警戒はしてなさそうだ。

 

「勘違いが起こるような行動をして申し訳ありません。しかし、俺は炭治郎、禰豆子の行く末を確かめる必要がありました。どうか矛を収めてはもらえませんか。敵対の意思はありません」

「俺たちの?」

 

 俺は刀を地面へと置きながらそう言った。

 炭治郎は俺の言葉に反応するも、今は時間がないため、無視する。もうすぐ朝だし。消えちゃうよ珠世さんたち。

 これでひと段落済んだと思う。敵ではないと分かってもらえたらいいのだが。

 後は反応次第だが……。どうだろうか?

 俺は皆の反応を待つ。

 

「……わかりました。あなたを信用したいと思います」

「?!珠世様!こいつは「よしなさい愈史郎」しかし!」

 

 珠世さんは俺の提案を受け入れるが、愈史郎はそれを認めようとはしない。

 まぁ、愈史郎は人間を信用していない。今この場で信用しているのは炭治郎くらいだろう。炭治郎の現状と、真っ直ぐすぎる優しい性格。

 これらが起因して、信用を勝ち取った。……まぁ、素直にはなれていないが。

 

「愈史郎……考えてもみなさい。もしも彼が私たちを殺すことが目的なら初めからそうしていたでしょう」

「……く!……わかりました」

 

 言葉ではそう言った愈史郎だが、それは珠世さんを信頼してであって俺に対しては未だに敵対心を隠さないでいる。

 でも、今はいい。最悪の事態にはならなかったのだから。

 だが、今回の一件……珠世さんと達と交流できたのは今後のことを考えると大きい。

 原作では珠世さんの鬼を人間に戻す薬を完成させるのは鬼舞辻無惨の最終決戦前だ。 

 もしも、その薬がもっと早く出来ていたら?もしかしたらもっと効力の高い薬ができるかもしれない。

 そうすれば戦いを有利に進められる。それに現在しのぶは下弦の鬼を殺す毒をも作った。もしも、今のしのぶ、珠世さんが組んだら?……考えるだけでも恐ろしい。

 

 受け入れてもらえるか分からないけど、提案してみるだけしておこう。

 

「えっと……珠世さんでしたっけ「気安く名前を呼ぶな!」……」

「……愈史郎?」

「……はい」

 

 いや、話が進まないんだけど。愈史郎……頼むから黙ってほしい。

 

「ゴホン……珠世さん、信用してくださりありがとうございます」

「いえ、私の方こそ、危ないところを助けていただきありがとうございました」

 

 定型文のような言葉を並べる珠世さん。

 本当に感情が読めない。いや、だからこそ冷静な判断ができるのだろうか?とにかくこの場所から移動しよう。

 

「とりあえず場所を移動しませんか?お話したいことがございます」

 

 俺の提案に珠世さんは黙って頷き、それを見て大きく深呼吸をした。

 

 

 

 

 どうにかなってよかった。

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