敵対フラグを無事に回避した俺は今、珠世さんと愈史郎の二人が隠れ家にしていた場所の地下にいる。
怪我をしている炭治郎の手当て、愈史郎の血鬼術を使い、家を隠す。痕跡を消すための作業には少し時間がかかってしまったため、その間は炭治郎と珠世さんから今回の一件についての話をした。
珠世さんと愈史郎の存在について。何故鬼舞辻に襲われたのかなど。
そして、愈史郎の作業が終った頃には時刻にして12時を回ってしまった。
現在俺、珠世さん、愈史郎、炭治郎の四人は地下の部屋で談話をしている。
立ち位置としては俺、炭治郎が隣で真ん中を挟むように愈史郎、珠世さんが座っており、愈史郎は未だに俺への警戒心が解けておらず常に睨みつけられている。
本当にやめてほしい。
「すいません。貴重なお時間をいただいてすいません」
「本当だ!珠世様の貴重なz「愈史郎」……はい!」
「えっと……差し出がましいのです「図々しいぞ!」……」
「……愈史郎」
「はい!」
「……お願いがございま「断る!」…」
「………愈史郎?」
「はい!」
いや、話が進まん!
わかってんなら返事すなマジで!
珠世さんは愈史郎に対して逐一注意しているが、懲りずに話に割り込んでくる。
どうしよう。
「愈史郎……少し黙っていなさい」
「しかし!」
「話が進みません」
「……はい」
いや、だからそこまで俺を警戒せんでもいいのに。
珠世さんに怒られたの自分のせいだろ!だから、俺を睨むのやめてくれ。
だが、せっかく珠世さんが俺の話を聞いてくれる気になったんだ。
話を進めよう。
「単刀直入に言います。……鬼殺隊に協力してもらえませんか?」
「え?」
珠世さんは少し驚いた表情を見せる。……普段無表情の人が驚くとギャップがすごいなーと感想を抱くも、俺は話を続けようとする。だが、それを愈史郎は待ったをかける……ことはなかった。
反論してくると思ってたけど?
なんで何も言ってこないんだろう?
「……理由をお聞きしてもよろしいですか?」
「……はい」
理由か……原作知識からですと言っても信用してもらえないだろう。
原作から引っ張るとすれば……。
「理由はいくつかありますが、一つはお館様の意思だからです。……以前より、珠世さんにお館様……いや、産屋敷の人間から接触があったのではないですか?」
「?!」
俺の言葉に珠世さんは少し反応を示した。
ここで珠世さんの年齢を言うと、四百歳以上。今の反応を見る限り、産屋敷の人間が接触を図ったことがあるのだろう。
そうでなければ、お館様が珠世さんのことを知っているはずがない。
でも、珠世さんはそれを断り続けた。
理由は不明だが……。
「お館様は自分の代で鬼舞辻無惨との因縁を絶とうとしています。それには珠世さんの協力が不可欠」
「……」
確信をつく言葉。
珠世さんは少し考え込むような表情をした。
少し揺れ始めた。この後の言葉は慎重に選ばなくては。
俺は少し考え話始める。
「炭治郎は鬼殺隊で初めて鬼舞辻無惨に遭遇しました。そして、鬼舞辻は炭治郎、禰豆子の兄弟を狙っている、鬼舞辻から接触を図る、これは鬼殺隊の発足以来初めてのことです」
未だに珠世さん黙って聞き続ける。
まだ納得している雰囲気はないか。
なら、追加情報だ。俺は上弦に接触した経験がある。
「それと、俺は鬼殺隊になって以来、十二鬼月……上弦の鬼の二体と遭遇、有益な情報を持ち帰り生還しています」
「そ……それは本当なのですか?」
と、ここで俺の功績に黙って話を聞いていた炭治郎が反応を示し、珠世さんが今日一番の驚きの表情をした。
「本当です。この二つの事例は鬼殺隊発足以来、はじめてのことです。鬼舞辻は自分から行動を起こすことはなかったとお館様にお聞きしました。鬼舞辻が行動を起こした理由は不明ですが、今現在、均衡が崩れようとしています。お館様はこれを好機と捉え、そのための準備もしてきました。
珠世さんの経験や知恵……鬼殺隊にお貸ししてはもらえないでしょうか?」
もう、原作でお館様が言っていたことだから嘘ではない。準備に関しても、俺は柱たちと一緒に十ニ鬼月の対策として研鑽を積んだし、戦闘方法も確立したいから嘘はついていない。
ここまで話したがそれでも未だに首を縦に振る気配がない珠世さん。
まだ、俺が言っていることを信用するか悩んでいるのだろう。
正直、理由としては不十分なのは分かっている。だが、ここでどうしても珠世さんの協力を取り付けられれば今後の鬼との戦いを有利に進められる。
あと、もう一押し。何かないか……。
「あの……お話中すいません」
「うん?」
ふと、俺が珠世さんの反応を窺っていると、先ほどから黙っていた炭治郎が話しかけてきてこの場にいる者の視線が集中する。
「先ほどから獪岳さんは嘘をついていません」
「え?」
「獪岳さんからは珠世さんと同じように嘘偽りのない……清らかなにおいがしますから」
なんかむず痒い。
炭治郎はおそらく雰囲気を匂いで感じて、俺を後押しするために言ってくれたのだろう。
だが、この機を逃すのは惜しい。
「少し話はそれますが、実は俺の義妹は上弦の参の鬼から採取した血液から下弦とはいえ、十二鬼月を殺す毒を作った腕利きの薬師なんですよ。知識も技量も随一なんです。珠世さんが作ろうとしている鬼を人間に戻す薬を作るのにお役に立てると思います」
「……はい」
そう返事をした珠世さんからは先ほどから感じていた疑いの雰囲気はなかった。
本当に炭治郎様様だ。
よっぽど珠世さんは炭治郎を信用しているのだろうな。
俺はその場で頭を下げて。
「珠世さんと愈史郎の安全は保証します。これはお館様の意地でもあります。どうか鬼舞辻をこの世から消し去るため……協力をお願いします」
いわゆる土下座。誠心誠意込めてする。俺はお願いをする立場だ。
俺に言葉で人を動かす能力はない。俺の頭なんて何がないかもしれない。それでも、俺にはこれしかできない。だから、せめて誠心誠意を込めてお願いする。
「こちらこそよろしくお願いします」
珠世さんにそう言い、迷いがない返答を返してくれた。
これをしてくれたのは俺の力ではなく炭治郎の人間性が大きい。
本当に主人公には敵わねーわ。
無事に珠世さんの協力を取り付けることができたのだが、話が終わってからの愈史郎の対応が少し面倒臭かった。
愈史郎は珠世さんに注意を受けた後、全く話を聞いていなかったそうだ。
「注意をする珠世様もお美しいとか、話を聞いている珠世様尊い」とか思っていたのだろうな。
どれだけ珠世さんを崇拝しているのだろうか?
そんな愈史郎だが、珠世さんから一言説得ですぐ納得していた。
話が全て終了した後、炭治郎は次の任務のため旅立ち、夜になるのを待って俺、珠世さん、愈史郎の三人は移動を開始したのだった。
もちろん 報、連、相は忘れない。
このことはカラスを使いあらかじめ今日あった旨を蝶屋敷の人間とお館様宛に手紙にして送った。
カナエにはあらかじめ趣旨を伝えておかないと命に関わるかもしれない。この四年で俺も流石に成長をしたのだ。
珠世さんと愈史郎は蝶屋敷で保護をする予定だ。
これにはいくつか理由がある。
蝶屋敷には医療器具や薬剤が豊富にあるので、実験には最適のため。
珠世さんと愈史郎の安全を確保するため。
他の柱たちから隠すため。
一応まだ、他の柱に報告するつもりはない。だって、鬼いるとわかったら絶対襲ってくるし。
そして最後にカナエの夢を叶えるため。
これが一番の理由かもしれない。
絶対カナエ喜ぶだろうなぁ。どんな反応するかな?
楽しみだなぁ!