産屋敷邸から蝶屋敷に向かう道中。
「あの、獪岳さん。俺を庇ってくれてありがとうございました」
「どうした急に改まって」
なんのことだなんて聞くまでもなく、俺が炭治郎を庇った件だろう。
「いえ、あの場に獪岳さんがいなければ俺も禰豆子もどうなっていたか……」
まぁ、でも俺いなくたってどうにかなってたよ。どうせ不死川が暴走して禰豆子を串刺しにしたくらいだ。
でも、平和的に解決したかったので、やったまでだ。
主人公に嫌われたくないし、せっかく交流を持つんだ。
なるべく尊敬される先輩でいたい。
「俺が争いごとはあまり好きではないからね。なるべく平和的に解決するに越したことはない。……ただ、禰豆子さんには申し訳ないことをしたね。危険に晒してしまった。本当に申し訳ない」
「いえ!…獪岳さんが謝ることは……」
炭治郎は慌てて止めに入る。
本当にここまでいい子はそうはいない。
純粋すぎる。
冗談が通じなそうだな。
すると、ふと炭治郎が何かを思い出したかのように質問をしてきた。
「あの……なんで、獪岳さんは俺と禰豆子に良くしてくれるんですか?」
純粋な疑問。
正直、主人公だからと言う理由もあるが、一番の理由は。
「炭治郎がいいやつだから。初対面で俺相手にあそこまで他人のために行動したんだ。そんな善人を見殺しにするほど俺は人でなしじゃないよ」
「あ……あの時はすいません」
「いやいや、別に気にしなくていいよ。まぁ、今言った理由は半分かな」
「え?」
理由の半分はそれだが、やっぱり一番の理由はもっと別だ。
「善逸の友人だからだな!兄弟子としてあいつの悲しむ顔は見たくない。せっかく心許せる友ができたのに次あったら死んでいた。その場で崩れて泣き喚いて一生泣き続けるかもな」
「そ……そんなことは?」
「いやいや、女に振られたくらいで3日泣き続けるようなやつだぞ?メンタル豆腐で打たれ弱い。さらに性格面倒臭い」
「それは……なんと言いますか」
「心当たりあるみたいだね」
「えぇ……まぁ」
どこか遠い目をする炭治郎。
そういえば初対面で求婚して玉砕してたんだっけな?
それで、原作ではあまり見ることのできない炭治郎のゴミを見る目を披露していたな。
「とにかく、色々と面倒臭い弟弟子だが根はいいやつだ。これからも仲良くしてくれ」
「もちろんです!善逸は大切な仲間ですから」
「そうか。なら、これからもよろしく頼む」
「はい!」
炭治郎は元気に返事をする。
話していると時間は短く感じるもので、蝶屋敷に到着した。
着くと俺はカナエのところへ炭治郎は病室に向かう。
「あ、獪岳さん」
何かを思い出したように炭治郎は俺を呼ぶ。
「これからご指導よろしくお願いします!」
あ、そういえばお館様に俺から指導を受けるようにみたいなこと言われたっけなー。
ここは頼れる先輩としてかっこいいことを言っておこう。
「わかった。でも、今は療養に専念した方がいい」
まずは療養に専念させる。
そして、俺は後ろを向くことなく宣言する。
「お館様様からの命があるからね。完治したら俺のところに来るといい。十二鬼月と渡り合う術を教えてあげよう」
「?!……よろしくお願いします!」
ああ、今の俺すげぇかっこいい。
尊敬できる先輩、威厳のある姿を見せられたと思う。
俺は嬉しさのあまりスキップしたい気持ちを抑え、炭治郎と別れたのだった。
「おかえりなさい獪岳さん」
「ただい………ま?」
「なんで疑問系なのですか?」
蝶屋敷にある執務室。
俺の家にいないとき、基本的にカナエはここの部屋で書類仕事をしている。
だから、様子見で立ち寄ったんだが……。
なんでだろう?
なんか怒ってる?
キノセイカナ?
「どうでしたか?」
「え?……何が?」
問い詰めるように聞くカナエの姿は目のハイライトがなくなり、怒っていた。
あれ〜俺何かしたっけなぁ?
記憶を探り何かミスをしているか確認するも何も思い当たることがない。
こういう時は堂々とするに限る!
「全部無事に済んだよ!」
「そうですか……無事に」
えーと俺は何をすればいいんだろう?
「ちょっとこっちに来てください?」
「え?……いやぁ、なんでだろう。ちょっといけないなぁ……なんて」
「……」
「失礼します」
無言の圧力やめてぇ!
こえーよなんで怒ってんだよ!
俺はいつもの癖でカナエの前に移動し正座をした。
何を言われるのだろう?
「お館様から今日あったことをお聞きしました。……今日あったこと獪岳さんからご説明お願いしても?」
罰ってそういうことかい!
あ、終わった。