極めろ熱界雷!!目指せ一撃逃走   作:花河相

40 / 74
……マジデスカ

 

「……俺、無理かも」

「俺……やっぱり弱いのかなぁ?」

「伊之助、善逸。そんなことないよ」

 

 炭治郎が全集中常中を習得してから数日が経過した。

 俺は治療を終えた伊之助と善逸の機能回復訓練を見学していた。

 

 二人は機能回復訓練を行い、神崎さん相手には余裕で立ち回ったものの同期のカナヲに圧倒され、しかも同じくらいかと思っていた炭治郎にまで引き離され、ショックを受けてしまった。

 

 あ、やっちまった。

 後悔した時には遅く、二人は相当落ち込んでしまっている。

 

 炭治郎はあたふたしてどうにか立ち直らせようと説得をしているが、逆効果なようだ。

 

 まぁ、焦らせることを目的にやったことなんだけどね。

 原作キャラの強化はしておいた方がいい。

 もう原作乖離は取り返しがつかないから。

 

 もしかしたら、ひょんなことで死んでしまうかもしれない。

 これは取り返しがつかないことだ。

 だから、可能な限り強化する。

 

 炭治郎を最優先で育てたのはこれが目的だ。

 

「ちょっと二人とも!待つんだ!」

 

 炭治郎が声をかけるも、伊之助と善逸は落ち込んで病室に戻ってしまった。

 

「獪岳さん……どうすれば」

「大丈夫、方法は考えてあるよ」

「えーと」

「少し待っててみ、すぐにやる気を出して戻ってくるから」

 

 方法は単純だ。すでに専門家に頼んでおいた。

 あと数分で戻ってくるだろう。

 

 ドタドタ!

 

 ほら戻ってきた。

 

「おい!さっさとやるぞがいこつ!山の王を舐めんな!」

「俺を一番期待してる、俺を一番期待してる。俺を一番期待してる。やるぞぉぉ!」

「ほら帰ってきた」

「……本当ですね」

 

 やる気に満ち溢れる伊之助と善逸。それを呆れて見ている炭治郎。

 

 俺がやったことは単純だ。

 胡蝶姉妹にお願いしただけ。

 

 伊之助には「山の王も大したことありませんね。簡単なこともできないなんて……あ、出来ないんですよね。……ごめんなさいね。誰でもできるような簡単な技術なのに」とカナエがいい、しのぶが「ダメですよねえさん。人には向き不向きがあるんです。幾ら基本とはいえできないことを押し付けるのはよくないですよ。……それにしても基礎もできないなんて山の王は大したことありませんねぇ」と追加で煽る。

 

 そして、善逸は右手にカナエ、左手にしのぶがそれぞれ両手で握り「「一番期待してますよ!!」」と言った。

 

 結果は上場。

 やる気マックスの二人。

 俺はそんな3人を森林に連れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、まずは二人には全集中常中を身につけてもらう。技術はそれからだ」

「おう!んな簡単なこともすぐ身につけてやるよ!この嘴平伊之助様はな!」

「俺が先に身につける!なんたって一番期待されてるんだからな!」

「ああ、うん」

 

 なんか単純な人って扱いやすくていいよなぁ……うん。

 二人は俺と炭治郎を残して訓練に向かう。

 

「それで、炭治郎は俺に聞きたいことがあるんだったな。何かな?」

 

 森林に向かう道中、俺に聞きたいことがあると言ったので、それを聞く。

 

「はい。訓練に夢中で忘れてしまっていたのですが……獪岳さんってヒノカミ神楽ってご存知ですか?」

「ヒノカミ神楽?」

「はい実はーー」

 

 炭治郎は那田蜘蛛山の出来事を説明してくれた。

 下弦の肆との戦いで走馬灯を見て、代々家に伝わるヒノカミ神楽の呼吸で技を出せたらしいのだが、何故それで技を出せたのか不明らしい。

 

 一応原作知識で知っているが、全てを語ることはできない。

 まぁ、それでも言えることはあるが……。

 

「すまないが、そのヒノカミ神楽というのは全くわからない」

「……そうですか」

「でも、そのヒノカミ神楽と直接的に関係あるかはわからないけど……いや、無駄に詮索させてしまうかもしれないな。忘れてくれ」

「それでも、お願いします!」

「それでいいなら」

 

 少し勿体ぶるように前置きをする。

 俺が言えるのは原作ではしのぶが言っていた言葉のみ。

 

「炎の呼吸は火の呼吸と言ってはならない」

「火の呼吸?」

「そう。俺が知ってるのはこのくらいだ。それがなんの意味を指しているのかはわからないけど、火の呼吸とヒノカミ神楽がもしかしたら何か関係しているかもしれないと一瞬思っただけなんだ。杏寿郎……炎柱が何か知ってるかもしれない。今度時間がある時に聞いてみるといい」

「はい。ありがとうございます」

「すまないな。このくらいしか話せなくて」

「いえ!手がかりが見つかっただけでも嬉しいです」

 

 無限列車編に繋がる手がかりはこのくらいでいいだろう。

 今やるべきは炭治郎の強化。

 方法は遊郭編でやっていたことを今の時点で身につけさせること。

 

「それにしてもヒノカミ神楽か……よかったら一度見せてくれないか?」

「……はい。わかりました」

 

 ヒノカミ神楽は威力に比するだけでだいぶ消耗が激しい。

 これを使いこなすには段階を踏む必要がある。

 それを自覚させる。

 

『ヒノカミ神楽 円舞』

 

 ゴオオオオオと息をし音をたて、型を繰り出した炭治郎。

 だが、技を出した途端刀を落とし、倒れてしまう。

 

「おい!大丈夫か?!」

「はあ……はぁ……」

 

 呼吸を整える炭治郎の背中をさする。

 自分でやらせたことだ、なんか申し訳なくなる。

 

「落ち着いたか?」

「はい……ありがとうございます」

 

 とりあえず無事なことを確認してから思い当たる原因を話す。

 

「あくまで俺の見解なんだが」

「はい」

「原因は型が体に合っていないのか、型を使うだけの体が出来ていないのか……今思い当たる原因はその二つだ」

「はい」

 

 炭治郎は黙って相槌をする。俺は話を続ける。

 

「まだ、わかっていることは少ないから少しずつ調べていこう」

「はい」

 

 少しずつ調べていく。

 それが一番伝えたいこと。全てを語ることはできない。

 あとは、方針を決めていこう。

 

「今使った呼吸は見た限りだと威力が高そうだな。使ったところにクレーターできてるし」

「……そうですね。下弦の五の戦いで切れなかった糸を切れたので」

「なるほどな」

 

 今の段階で威力が水の呼吸よりあると言う認識だけは持ってもらえたかな?

 まぁ、原作では後半になってから水の呼吸の足捌きや体の使い方を活かしていく上でヒノカミ神楽を実戦で使えるように習得していた。

 

「とにかく使って慣れる。まずはそれからだな。体に負担がかかるから連発は出来ないから1日1回使う。これから始めていこうか」

「……はい」

 

 先が長そうだ。

 炭治郎はそう見える表情をした。

 まぁ、後はもう一つきっかけを与える。

 

「あとはそうだな……いっそのこと、水の呼吸とヒノカミ神楽の呼吸を混ぜて新しい呼吸にするのも一つの手だな」

「呼吸を混ぜる?」

「ああ」

 

 急に出した提案に炭治郎は興味を示した。

 俺は言葉を続ける。

 

「新しい呼吸というのはそういった発想から生まれるんだ。例えば雷の呼吸から音の呼吸が。水の呼吸から花の呼吸、そしてその花の呼吸から蟲の呼吸が生まれたように、基本の呼吸から自分に合った呼吸を作るという発想から新しい呼吸はどんどん派生していった。呼吸を混ぜるのは一つの手段でしかない」

「……」

「これはあくまで一つのヒントにしかならないよ。呼吸を混ぜて実践で使えるか、新しい呼吸が生まれるのか。それはわからない。それをするのは炭治郎自身なんだから」

「……」

 

 真剣に考える炭治郎から返事はなかった。

 

 ただ、何かのヒントを得たようだ。

 今の炭治郎の表情は落ち込むことはなく、何かに期待を胸に行動を起こすやる気に満ち溢れた。

 

 

 

 

 

 この時の俺は知る由もない。

 

 俺の行動は物語に予想よりも大きな影響をもたらしてしまったことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから一週間ほどで善逸と伊之助は全集中常中を取得した。

 その後はかまぼこ隊3人と稽古をつづけ、俺は鬼殺の任務をする生活を続けた。

 

 そんなある日、お館様から産屋敷邸に来るように通達があった。

 

「急にきてもらってすまなかったね」

「いえ、お館様がお呼びとあれば参上するのは当たり前のことでございます」

「そう言ってくれると助かるよ。それで、炭治郎たちはどうだい?」

「はい。実力向上していて、前とは比べものにならないほどです」

「そうか……さすが獪岳だね。任せてよかったよ」

「お褒めに預かり光栄です」

 

 まさか、誉めるために呼んだのか?

 そんなことないよな?

 それだけなら帰っていい?

 

「お館様、今日は何用でしょうか?」

「そうだね。経過報告はこれくらいでいいかな。実は今日、獪岳には危険な任務をお願いするために呼んだんだよ」

 

 え?危険な任務?

 まさか直接呼ぶほど危険なものなのか?

 もしかして。

 

「十二鬼月ですか?」

「すまないがわからない。情報が不足していてね」

 

 またかよ。

 基本、十二鬼月の任務は柱が行う。

 

 だが、今回のように情報があやふやで危険な任務は俺が引き受けることになっている。いや、自然にそういった流れになった。

 

 お館様が危険と判断した場合、普通の隊士を向かわせると無駄死にする。隊士の数は不足していて、無駄死にをさせないために怪しい任務は俺に振ってくるのだ。

 

「お受けします」

「いつも悪いね」

「いえ、大丈夫です。……して、その任務はどういった内容でしょう?」

「わかったよ。実は列車に乗った乗客が皆、行方不明になったと情報が入ってね。その調査をお願いしたい」

 

 うん?………列車?

 もしかして……いや、でもそれは杏寿郎が受ける任務であって……。

 でも、待てよ。今の時代列車は多くはないが、無限列車とは他のかもしれないな……うん。

 

「一つお聞きしてもいいですか?」

「ああ、答えられる範囲でならなんでも答えるよ」

「その列車の名前はなんでしょうか?」

 

 頼む。

 違ってくれ。別の名前を言ってくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無限列車だよ」

 

 ……マジデスカ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。