極めろ熱界雷!!目指せ一撃逃走   作:花河相

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Zzzz……Zzzz

 どうしてこうなった?

 

 何がいけなかったのだろう?存在することが悪かったのか?

 いや、そもそも俺をクズキャラに憑依させた神様が悪いのか。

 そうだ。

 神様が悪い。

 俺をもう少し別のキャラにしてくれたり、別の世界線に転生させてくれたらこんなことにはならなかった。

 

 ……考えるのはやめよう。

 考えるだけで虚しくなってくる。

 

 もう受け止めるしかない。

 

 この運命に。

 

 俺は今、お館様に頼まれた任務のため品川駅から出発する無限列車の中にいる。

 

 席には空きがいくつかある。中の乗客は正装の人が多い。

 この時代の列車は気軽に乗れるものではない。今俺が乗ろうとしている無限列車も75銭もする。現代の日本円に換算すると1万円くらいだ。

 

 

 俺も普段ならば乗らない。

 疲れるが走った方が早いし、無駄に金がかかる。今は必要経費としておりる。それがなければ乗る機会はないだろう。

 

「はぁ……」

 

 俺は椅子に座りどうするべきかと考える。

 おそらく今置かれている状況は原作では無限列車編の杏寿郎が向かうきっかけとなった最初の様子の段階だ。

 

 

 向かわせた隊士が全員行方不明になり、被害が拡大した。

 

 

 それがお館様が柱を出動させた理由だ。

 

 

 この原因となるのが下弦の壱 魘夢だ。

 この時の魘夢は無惨に血を与えられ、強化されている。

 那田蜘蛛山編がきっかけで、無惨が下弦の鬼を虐殺した。

 

 その時に魘夢は無惨に気に入られて多くの血を与えられた。

 

 魘夢はその後無限列車と同化し、上弦の鬼になるべく、人間を喰らい始めた。

 

 その初期の段階が今俺が置かれている状況だ。

 まぁ、でも対策さえしっかりしていれば攻略は簡単。

 魘夢の血鬼術 夢操作は厄介な能力であるが、解除方法と発動条件がわかってればいい。

 

 俺は原作知識から情報がある。

 まず、一番初めの駅の切符。

 駅員さん切符を切らせなければまずかからない。

 

「そうだ!」

 

 ……自分で持ってるのも怖い。とりあえずこの場で隠せそうなところは……椅子と椅子の間か。

 

 そこならバレないだろう……多分。

 

 切符無くしたのは全部鬼のせいだ。駅員さんには申し訳ないけど、現金を渡して許してもらおう。賄賂だ。

 

 それで許してもらえればいいし、ダメなら黙っておりればいい。

 駅員さんの反応で鬼がいる云々の確証にも繋がるだろうし。

 

 とりあえず俺は椅子と椅子の間に切符を隠しすぐに現金を渡せるように準備をする。

 

 

 まぁ、こんなことしなくても仮に血鬼術にかかってしまっても夢の中で自害すれば抜け出せる。

 

 夢から抜け出せれば後は楽。

 鬼の首は無限列車の先頭付近にあるのでそれを切れば倒せる。

 

 だが、ここまで知識を引っ張ってきて見たものの、問題があるとすれば首を切れないこと。

 

 流石に俺だけには荷が重い。

 乗客を守りながら、鬼の首を切りに行く。

 列車を停めるため、線路を破壊することも考えたが、乗客が危ない。

 

 俺一人には荷が重い。

 

 今回の目的は調査だけ。

 相手をするのは下弦の壱のみ。……尽力はするが守り切る見込みがない。守れる範囲で尽力するしかない。

 

 とにかく出来る限りのことはする。

 

 

 炭治郎がいなければ猗窩座が来ることはない。しかもまだ原作の無限列車編とは期間がある。

 

「うぉ!!!でけぇ!!勝負だ!!」

「おい!やめろよみっともない!何度言えばわかるんだ。これは生物じゃないんだ!!」

「いやまて。大きいからって敵とは限らない。ここは一度話し合って」

「だから!生物じゃないの!」

 

 ……あれぇ?

 幻聴かな〜。

 よく知ってる……てか昨日聞いたばっかの声がするんだけど。

 

 キノセイカナ?

 

「あそこですお巡りさん!」

 

 ……気のせいではないらしい。

 かまぼこ隊の3人は日輪刀を隠していなかった。そのせいで一般人に通報されていた。

 

 ああ、このまま捕まってくれたらいいのになぁ。

 俺はそんなことを思いながら現実逃避をした。

 その後列車はすぐに出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!獪岳さん!よかったです間に合って!」

「すげぇぇ!はえぇぇ!よし!この俺様とどちらが早いか勝負だ!」

「おい、窓から頭出すなよ!死ぬぞ。てか競争しようとすんな!」

 

 

 列車が出発してから5分後、炭治郎、善逸、伊之助の3人は俺の乗っていた車両に乗り込んできた。

 

 炭治郎は俺を見つけるなり話しかけてきて、伊之助は列車が走り出すなり勝負だの言ってそれを善逸が止めていた。

 

 ……乗り遅れなかったようだ。

 来てしまったものはしょうがない。

 

 首を切る手段が増えたと思っておこう。

 

「……なんでここに?」

「はい。今日の朝無限列車で獪岳さんと合流する様に指示が出まして」

「……なるほど。援軍か」

「え!いやいや援軍ってほどでは……むしろ足手纏いにならないかと緊張してますよ」

 

 本当に謙虚だなぁ。

 

「足手纏いなんかじゃないさ。炭治郎は少し自分を過小評価しすぎだ。十分強い」

「獪岳さん……」

「とりあえず座ってくれ」

「はい」

 

 座るように促すも、素直に座ってくれたのは炭治郎だけだ。

 善逸もこれくらい素直ならなぁ……。

 

「切符はちゃんと買えたのか?」

「はい。善逸が教えてくれたので」

「そういえばあいつは都会出身だっけな」

 

 ふと、伊之助と騒ぎ続ける善逸を見る。

 

 かまぼこ隊の3人は意外にバランスがいいといつも思う。

 

 社会常識の面では善逸が優れていて、こういう時に一番役に立つ。

 炭治郎は山育ちのため、一般常識が不足していて、伊之助に限っては常識が全くない。

 

 人間性の部分では炭治郎が優れているが、善逸はズレていて、伊之助は何においても前向き。

 伊之助は誰が落ち込んで心が折れそうな時でも進んで前へ進むことのできる。

 

 原作の無限列車編で心が折れかけている炭治郎と善逸を救ったのは紛れもなく伊之助だ。

 

 長所短所がそれぞれ違った3人だから原作を乗り越えることができた。

 かけがえの無い唯一無二の仲間なのだろう。

 

「どうしたんですか?」

「いや、なんでもない」

 

 少し、ニヤけていたかな。炭治郎に指摘されてしまったな。

 

「実は俺切符が手元になくてね」

「ええ!」

「……いや、そんなに驚かなくても」

「す…すいません」

 

 炭治郎は鼻が効く。嘘をついたら匂いでバレるが嘘はついていない。

 椅子の間に置いて本当に手元にないから。

 

「駅員さんに謝らないといけないから、後で切符を切りにきたら声かけてくれるかな?」

「それはいいですけど……なんでですか?」

「少し、瞑想をして集中力を高めておきたい。まだ日が完全に落ちるまでは時間あるしね。列車が出発してしばらく経たないと来ないし。10分くらいでいいから」

「わかりました」

 

 集中力を高めたいのは本当だ。

 俺は炭治郎たちを守る立場にある。これでもし誰かが欠けてしまってはこの世界は終わるかもしれない。

 

 対策は多分平気だ。後はどう立ち振る舞うかだけ。そのため万全な準備をするに越したことはない。

 

 俺は目を閉じ、頭を真っ白に。ゆっくりと深呼吸を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……い…さん!獪岳さん!」

「……ん?」

 

 ……そろそろ時間か。

 

「すまないな。ありがとう」

「いえ。大丈夫です」

 

 集中力は十分に高まった。

 後は任務に集中するだけだ。

 

 が、その前に駅員さんに謝っておくか。

 お金も用意していたし、渡せば良いだろう。

 

 迷惑乗客だが、こっちは命がかかってるんだ。

 これは必要な行為であって、こっちは悪くない。そう!これは正義のためだ。

 

 だが、俺は目を開けてあたりを見渡すも……誰もいない?

 

「あれ、駅員さんは?」

「ああ、それ何ですが」

 

 もしかして鬼が現れたのか!?

 

「実は獪岳さんが瞑想に入った後に、切符がここの間に入ってるのを見つけまして。もう切っておきました」

 

 ふぇ?

 

 ………ドウイウコト?

 

「……どうやって見つけたんだ?」

「はい。切符の匂いを嗅いだら椅子と椅子の間に落ちてました。声をかけるのも悪いと思いまして……。切符は切っときました!」

 

 その善意……いらない。

 

 え?マジかよ。集中力高めたの意味ないじゃん!

 

 あれ?……なんか眠気が。

 ……だめだ!ここで寝たら……ね…た……ら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夢を見ながら死ねるなんて……幸せだよね?」

 

 列車の先頭車両。

 車街の天井の上で佇む黒のジャケットに灰色のパンツズボンを着ている男。

 下弦の壱 魘夢。

 

「どんなに強い鬼狩りだって関係ない。人間の原動力は心だ、精神だ。精神の核を破壊すればいいんだよ。そうすれば生きる屍だ。殺すのも簡単。人間の心なんてみーんな同じ。硝子細工みたいに脆くて弱いんだから……うふふふふ」

 

 魘夢は両手をそれに掲げて笑う。

 

 電車の中には魘夢の手駒がいる。病に犯されそのことにつけこまれ幸せな夢を見させて安楽死をさせることを約束に。

 

「さぁ……俺の手駒たち、行っておいで、そして鬼狩りたちの心を壊してくるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Zzzz……Zzzz

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