11月1日は投稿分です。
「……あれ?」
気がつくと俺は見慣れない一室にいた。周囲を見渡す。竿緑天井、板作りの床に木の襖。
天井の端の方には蜘蛛の巣が。壁には所々にシミがある。
「どこかの寺か?」
何か懐かしい感覚に少し戸惑ってしまう。
「俺は何をしていた?」
記憶が少し飛んでしまっている。
思い出せない。俺は確か……。
「………そうだ」
考え始めて十秒ほど。
なんとなくだが、抜けていた記憶が蘇り始めた。
俺は何か大切なことをしていて……は!
「早く自決しないと!」
抜けていたパズルのピースが一つ一つあっていくような感覚ですぐに全てを思い出す。
俺は無限列車で任務をしていた。
俺のうっかりで鬼の術中にハマってしまったのだ。
だが、種が割れれば抜け出すのは簡単。
俺は手元にあった俺専用の日輪刀を抜き、先を向ける。
自決したことないけど、この世界は夢なんだ。
……でも、刺すの痛そうだなぁ。
原作の炭治郎は何回も自決した。
本当に強い精神なきゃ無理だ。
「ふぅーーー」
俺は力を入れて自決をーーー。
「だめぇぇぇぇぇ!」
「うお?!」
することはなかった。
俺を止めにかかる人がいたからだ。
「獪岳お兄ちゃん!ダメだよ!」
俺は慌てて下を見るとそこには10歳くらいの少女がいた。
「……沙代?」
「……ほんとうにお手入れしてただけなの?」
沙代に自決を止められ、その場で大泣きされてしまった。俺は沙代を宥め、その場で言い訳をした。
理由を聞くと納得してくれ、勘違いだと思ってくれたらしく、縁側に座り話していた。
「あれが刀の手入れのやり方でね。刀身が曲がってないか確認してただけなんだよ」
「そうなんだ。ごめんね」
純粋な子供を騙して心が痛い。
でも、早く自決して現実に戻らないといけないのに、どうしても放っておけない。
後ろめたい気持ちがあったせいで今まで寺の人たちとは会っていなかった。
悲鳴嶼さんから会ってみないかと屋敷に呼ばれたことはあったが、断っていた。
どうしても会いたくなかった。あの場でみんなを見捨てて逃げたのだから。
だからだろう。夢とはいえ、どうしても悲しむ顔は見たくなかった。
「もう、終わったの?」
「え?……何が?」
「お手入れ」
「あぁ……終わったよ」
「そうなんだ!よかった!」
沙代はパッと笑顔になる。
え?どうした急に。
「久子お姉ちゃんが呼んでたよ?」
「久子が?……なんで?」
「あれ?……なんだっけ?」
えぇ……忘れたのかよ。
久子は俺と同い年。年が近いこともあってよく遊んでいた……記憶があるなぁ。
「えっとね……なんか、すっごく怒ってた」
「理由ーー」
ドン!引き戸が思いっきり引かれたのか大きな音がしたので言葉が途切れる。
俺は慌てて後ろを振り向くと。
「あぁぁ!こんなところにいた!」
そこには黒髪を簪で止め、薄い茶色の着物を着ている久子がいた。
てか、めっちゃ怒ってるし。
なんでだよ。
「いくら休日だから気が抜けてるからって限度があるわよ!二人で買い物行く約束してたでしょ?なんでこんなところにいるのよ!もう!」
「え……ご、ごめん」
俺はとにかく謝る。
こういう時は男が謝るのが一番平和だ。これは俺の人生に相手の教訓だ。
女と男は立場は女の方が上だと俺は思ってる……あれ?なんかこの習慣誰かと一緒に過ごしていた時に学んだはずなんだけど。
俺は薄れる記憶に少し疑問を抱く。
「反省してないでしょ?」
「そんなことないよ」
「どうかしらね」
なんだろう?このやりとりはずっと続いていたような。
「妻を待たせた罰として、今日は全て荷物を持ってもらうからね」
「………え?」
俺って結婚してたっけ?いや、してた。でも、何か違和感が……。
「大丈夫?何か顔色が悪いけど」
久子は心配そうな顔をする。
「いや、なんでもない。早く行こうか!」
気のせいかもしれない。
「ありがとね!手伝ってもらっちゃって」
「大丈夫!こういうのは男の仕事だから」
「そう言ってくれると助かるわ」
買い物を終え、久子と二人歩いていた。
買い物は週に1.2回でまとめ買いをしている。だから女一人だと大変なため、今日は二人できた。
なんとなくだが、思い出してきた。
ここは間違いなく鬼滅の刃の世界。だが、鬼は存在せず、鬼殺隊もない。
なぜ、気づけたかと聞かれれば、悲鳴嶼さんの存在や自分の名前でだったか?
まぁ、今はそんな昔のことどうでもいいかな。
なんせ今ある平凡な幸せがある。
同じ寺で悲鳴嶼さんにずっとお世話になり、物心ついた時から一緒の久子と夫婦となった。
今までお世話になった分、悲鳴嶼さんに恩返しをする。
それが今の俺の幸せ。
ずっと望んでいた、平凡な幸せ。
「なに?そんなににやけて?何かいいことあったの?」
「いや、何にも。ただ」
「ただ?」
もう、いいのかもしれない。ここは夢の世界で、現実ではない。
最初はそう思っていた。
その考えが間違っていたのかもしれない。
ここには俺が望んでいた。平和な日常がある。平凡な幸せにはここにはある。
「幸せだなって思っただけだよ」
そうだよ。俺は何を勘違いしていたんだ。
この世界は本物のはずだ!
なんせ、こんな毎日が幸福に満たされる。
これが現実なんだ。
この世界が夢でもいい。
この幸せな日常が死ぬまで続くように。俺努力していこう。
「そ……そうなんだ」
久子は顔を赤らめて返事をした。
「ならそんなに幸せならそろそろ欲しいな……私たちの……その……ね」
「なんだよそんなにおどおどして」
「だから……私たちもそろそろ大人だし」
「何言ってんだよ。もう少し詳しく」
なんだよ。そんなにモジモジしてどうしたんだ?
はっきり言ってくれないとわからないっての。
「悲鳴嶼さんに……ね。孫を……」
ああ、子供か。
自分たちの生活で精一杯だが、最年少の沙代が大きくなったし少しだけ生活に余裕ができた。
これもお世話になった悲鳴嶼さんへの恩返しになるのかな。
「……そろそろちょうどいいかもね」
「……うん」
この世界で長く幸せに生きていく。
俺はそう決意したのだった。
極めろ熱界雷!!目指せ一撃逃走!!
〜完〜
「……あの人誰かしら?」
「……へ?」
会話が終わり、変な雰囲気のまま二人で歩いていると久子が指さす方向に目を向けるとそこには一人の女性がいた。
「誰ですか……その女?」
そこには黒い学ランの制服を着て、右手にピンク色の刀をもつ全身血まみれの黒髪の女が一人。
目のハイライトは消え、真顔で俺を見つめていた。
動きは挙動不審でどこか壊れたブリキの人形のようであった。
「え?……誰?」
何故か頭の片隅に何かが引っかかる。
………………カナエ?
は!俺は今まで何をしていた?!
そうだ。ここは血鬼術による夢の世界なんだ!
確か無限列車にいて、現実に戻るため、自決するんだった。
……危なかった。
なんでカナエが夢の世界に現れたのから不明だが、助かった。
……あれ?今冷静に考えると俺のしてたことやばくない?
もしかして、会話聞かれてたり……。
「その女と子供……作るのですか?」
やばいやばいやばいやばい!
マジで聞かれてた。
どうにか説得を!
「いや!これは」
「私を幸せにすると言ったのに……本当の意味での夫婦になろうと言ったのも全て嘘だったんですね」
どうしよう?
もうカナエを説得する手立てはない。
このままだと殺される!
「一度話を「嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき
そんな獪岳さんなんて い ら な い」
俺はその場で自決した。
少し補足です。
今回の主人公が見た夢ですが、本来なら主人公は争いのない生活を心から望んでいました。
寺で過ごした子供たちと貧しいながらも助け合って暮らしていく、これが理想だでした。。それでも、最終的にはカナエが一番大切だと無意識に思ったので、カナエが出てきたという感じです。