「あぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺は悲鳴と同時に目が覚めた。
あたりを見渡すと電車内であった。腕には縄が巻かれていて、10代くらいの少年と繋がれていた。
どうやら夢から抜け出せたらしいな。
……夢か!いや、よかった夢で!
ブチギレたらカナエ……怖すぎだろ!
あそこまで切れてるカナエはみたことない。
「状況は!」
俺はカナエの恐怖にいまだに震えている体にカツを入れ、周囲を見た。
「うわぁ」
魘夢ってもうこの段階で列車と同化してたんだ。でも、本当にぎりぎりだ。
俺の周囲は何かの体内のようだ。赤とピンクが一面に広がり、乗客を食べようとしているのか、何か変な生き物が様子を伺っていた。
「ムーー!」
ふと、俺の足元におでこにたん瘤を作り泣いている禰豆子がいた。
あれ?まだ炭治郎たちは起きていない?
どうやら俺が一番先に起きたようだ。
まぁ、これなら都合がいい。
「禰豆子さん、君の血鬼術でこの縄焼ける?」
「ムーー!」
禰豆子は元気よく縄を燃やし始めた。
あとは、俺の仕事だが……。
とりあえず乗客を守ること最優先。
残念ながら俺は何かを切ることはできない。
だが、方法がないわけではない。
俺は日輪刀を抜き、懐から一つの瓶を取り出した。
これは珠世さんとしのぶが共同開発した新しい対鬼用毒が入ったもの。これは十二鬼月を想定して作ったものの試作品。
効果は殺すための毒ではなく、体を痺れさせる痺れ毒。
この毒になんの意味があるのかと聞かれてもわからない。
一応理由を聞いてみたら
『鬼舞辻無惨はただ殺すには惜しい。徹底的に苦しめ生きていることを後悔させなくてはいけませんから』
……この時の珠世さんの目はマジだった。
どれだけ憎んでるんだよ。毒の研究に熱心になりすぎだろ!
女の恨みは怖いすぎだろ。
そんなこんなで、今回の相手はちょうど良い。相手は下弦の壱。実験には十分。
俺はその毒を刀に垂らす。
「なんで邪魔すんだよ!」
「うん?」
作業に集中していたが、急に怒鳴られ、アイスピックのようなもので攻撃をされたので最小限の動きで捌く。
……危ねぇ。何すんだよ。
「お前たちが列車に乗ったせいで、俺たちはいい夢を見られなかったんだぞ!」
「そうよ!」
「余計なことしないでよ!」
俺と縄で繋がれていた少年ともう一人。
縄を焼かれたことで覚醒したものが数人。鬼側の人間だ。
まだ、炭治郎、善逸、伊之助の3人は寝ていた。
「は?そんなの俺には関係ないね。こっちは命がかかってたんだ」
「うるさいうるさい!」
ああ、だめだ。怒りで我を忘れている。
もう、肉が出始めている。
原作と違って早く人間を喰らうつもりらしい。
乗客の被害をなるべく少なくしなければ。
「な!」「ふぇ?」「ぐぁ!」
俺は2人の女と男1人を首をトンとして、気絶させる。
「君はどうする?」
俺は一人、炭治郎と繋がれていた少年に声をかける。
その少年は涙を流して、首を横に振っていた。
敵対意志はなしと。
「そうか……強く生きてほしい」
「………はい」
俺は少年に言葉をかける。
これで準備は完了。
あとは雰囲気作りは大切だ。
無限列車編で杏寿郎が言っていたセリフをパクるようだが、許して欲しい。
一度言ってみたかったんだよこのセリフ!
「よもやよもやだ……不甲斐なし。穴があったら入りたい!」
俺は高速で移動を開始し、体内に毒を注入し始めた。
もちろん、途中熱界雷を放って落雷の音を奏でながら。
さぁ、反撃の開始だ!
「あ、これかなりきついわ」
毒の効き目があり、肉の触手は動きが鈍くなっている。
俺は何往復かして熱界雷を放っているからある程度ダメージは食らっていると思うが流石に8両を一人で守るのは無理があるな。
杏寿郎も5両守ってたしなぁ。
俺は鬼を切れない隊士。
殺す手段は人の作った毒のみのなんちゃって隊士だ。
……あれ?今落雷の音した?
やっと起きたか、かまぼこ隊!
俺は毒で鬼の体内に攻撃しながら音のした方向へ向かった。
「くっ……どうなってるんだ」
「ごちゃごちゃ言ってねーで鬼探すぞ!この伊之助様に続け子分ども!」
「わかってるよ伊之助!」
お、やっと起きたか。
いや、一名は寝てる状態か。
やっぱり気を失ってる善逸は頼りになる。
常に寝てればいいのに。
「よかった!起きたんだな!」
「獪岳さん!」
「黒髪のっぽ!」
俺の登場に二人は驚くも、どこか安堵の表情をしていた。
俺を慕ってくれてるのかな?
「手短に話す。君たちが起きるまでに全車両に攻撃をした。すぐには再生はしないだろううが、このままでは乗客が危険だ。この列車は全部で8車両。俺が後ろ後方5両を守る。善逸と禰豆子さんで残り3両を守ってくれ。炭治郎と伊之助は前3両を気にしながら鬼の首を探してくれ」
「首?……でもこの鬼は」
この指示内容は最適解だ。
原作通りだが、鬼の首を斬れない俺ではとどめをさせない。
適材適所。
俺は乗客を守るのに専念する。そして、炭治郎たちに実戦経験を積ませる。
「どんな鬼だろうと必ず首はある!俺も可能な限りのサポートはする」
「はい!」
炭治郎の気合の入った返事を聞くとその場を後にした。
「す……すげぇ……なんかすげぇ」
「すごい!……見えなかった。さっきから聞こえてた落雷はやはり獪岳さんのだったのか」
伊之助はその場で立ち尽くし、炭治郎は驚き思っていたことを呟いてしまう。
状況の把握と判断が早い。状況を察するに獪岳はいち早く鬼の術を破った。
炭治郎は起きてから状況を見ると焦った。念のため、3人で自分達のいた車両に攻撃をして、その直後に獪岳は現れた。
(本当に獪岳さんはすごい)
炭治郎は自分の恩人で、師である獪岳にまたも感心した。
「は!」
だが、すぐに意識を切り替える。
「3人とも!やるぞ!」
「ああ」
「ムー!」
「俺に指図すんじゃねぇ!」
炭治郎の言葉に3人は返事し、行動を開始した。
その後の決着は早かった。
獪岳による原作改編の影響は大きい。
魘夢は早い段階で炭治郎たちと戦闘したから。
炭治郎たちは獪岳により原作の無限列車編以上の実力がついていたから。
獪岳による毒の攻撃で魘夢は弱っていたから。
そう言った理由で魘夢の血鬼術に少しだけ苦労はしたが、早い決着となった。
うん。無事に任務は達成したな。
なんか、想像していた以上に決着は早くついた。
首を切った後、列車は線路から落ちて倒れたものの、魘夢の柔らかい肉のお陰で死傷者はなし。
俺は乗客の安全を確認後、炭治郎、善逸、伊之助、禰豆子の元へ訪れる。
「よくやった」
「あ、獪岳さん」
「!獪岳!どうだった俺の活躍!すごかったでしょ!」
「大したことなかったな!この俺様にとってはな!」
三者三様の答えに呆れてしまう。
何はともあれ死人は一人も出ていない。
平和に終わらすことができた。
ただ、夜明けまであと一時間ほど余っていることから決着も原作よりも早くついた。
まぁ、気にしなくていい。あとは帰って報告するだけだ。
だが、世の中はそんなにうまくいかないものだ。
俺は甘くみていた。
炭治郎という作中での台風の目を。
ドン!
それは突然であった。
俺を含めた4人で今日の軽い反省会の最中。
突然俺の背後から突然轟音が響き、会話を中断して振り向く。
俺はそいつを見て冷や汗をかく。
「?!」
『雷の呼吸 伍ノ型 熱界雷 二連』
その対象は俺たちが認識した瞬間、俺の付近にいるものたちに攻撃をしてきたので、反射的な熱界雷で吹き飛ばす。
「ああ……素晴らしいぞ獪岳!たった数年でここまで実力を上げるなんて!」
勢いよく後方へ飛ばした奴は体が有り得ない方向へと曲がっていたが、すぐに再生をして話しかけてきた。
「会いたかったぞ獪岳。さぁ、決着をつけようじゃないか!」
はは………。
まさか、再会するとは思っていたが、原作と同じようなながれになるなんて……。
「ああ……猗窩座」
かつて戦って防戦一方であった相手……猗窩座の言葉にこう返したのであった。
「会いたくなかったよクソ野郎」