極めろ熱界雷!!目指せ一撃逃走   作:花河相

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ここが正念場だ。

「会いたくなかったよクソ野郎」

 

 また再会するとは思ってなかった。いや、内心わかっていた自分がいたが、まさか……はぁ。

 

「……知っているんですか?」

 

 背後から炭治郎が聞いてくる。まぁ、知ってるっちゃ知ってる。

 嫌というほどに。

 

「ああ。4年前に一度ね」

 

 的確に短く返答する。

 会話に集中するのはまずい。

 

 今猗窩座に対抗できるのは俺だけだ。

 その証拠に猗窩座が攻撃してきた時3人は反応することができなかった。

 

 いくら強化しているからってやはり一ヶ月で上弦との差は埋められなかったか。

 

「3人とも、待機だ」

 

 声を出していないが、戸惑っている3人。純粋に目の前にいる猗窩座の圧迫されるような闘気に当てられ萎縮してしまっている。

 

「……でも」

「これは命令だ!理由は……わかるな?」

 

 やはり炭治郎は正義感が……いや、精神力が強い。震えて声が出せないでいる伊之助と善逸と違い声を出せただけでもすごい。

 俺の言葉の意味を理解しているのか、それ以上は何も言わなかった。

 

 俺は3人が命令を聞くこと確認すると猗窩座へと歩く。

 

「話は終わったか?」

「待たせて悪いな。まさか、待ってくれていたのか?」

「ああ……俺は本気のお前と戦いたいからな」

「そりゃどうも」

 

 嬉しくねぇよ。

 正直侮ってくれていた方がよかった。

 それにしても猗窩座が言っていることは矛盾している。なら、なんで初手で俺以外を狙ったのだろう?

 

「俺と戦いたいと言うならなぜ先程俺以外を狙った?」

「何……お前を試しただけに過ぎん」

「試す?」

 

 確か原作だと弱いやつが嫌いで話すのに邪魔になるから炭治郎を狙ったとなっていたが。

 

「4年……俺がお前を逃して4年が経った。その年月でお前がどのくらい強くなったか……。慢心せずに鍛錬を怠っていなかったらしいな」

「……それで、俺は強くなっていたのか?」

「ああ!想像以上だ!前とは比べ物にならん!反応速度、技の練度、身体能力……何より、未熟であった闘気の練りが素晴らしい!……見違えたぞ!」

「お褒めに預かり光栄だ」

 

 興奮気味の猗窩座は俺を認めてくれているらしい。4年間の成果は出ていたらしいな。

 

「やはり惜しい。お前は鬼になるべきだ!もう一度問おう……がいかく、鬼になれ!そして、俺と永遠に戦い続けよう!」

「……」

 

 本当に時代が違えば、種族が同じなら気が合っていたのかもしれない。もしも同じ鬼殺隊なら。俺が鬼として転生していたらもっと別の道があったのかもしれない。

 

 だが、残念ながらその誘いには答えられない。今の俺には守るべきものがあり、支えてくれる家族も仲間もいるのだから。

 

「その誘いは4年前にも断ったはずだ。俺は鬼にはならないと」

「……そうか」

 

 これ以上の言葉は入らない。

 そう言わんとばかりに猗窩座は血鬼術を発動させる。

 

『術式展開 破壊殺 羅針』

 

 猗窩座は足場に紋章を出現させる。

 

「残念だが、お別れだ。鬼にならないなら殺す」

 

 猗窩座はお互いに接近してくる。

 

『雷の呼吸 伍ノ型 熱界雷』

 

 正面から左からのストレートの拳を最小限の動きで躱し、近距離から熱界雷で後方へ飛ばす。飛ばした方向は近くの森林。

 俺は倒す気はない。

 夜明けまで残り一時間ほど……。

 時間稼ぎが目的。

 

「お前の狙いは見え透いているぞ!」

『破壊殺 空式』

 

 空中に飛ばされた猗窩座は体勢を整え反撃をしてくる。

 ……チッ!そのまま森林に入ればいいのに。4年前の一件から俺が地の利を生かす戦法が得意なのはバレていて、今の一手だけで狙いもバレる。

 俺はバックステップで、猗窩座の衝撃波を全て躱す。

 

『雷の呼吸 伍ノ型 熱界雷 三連』

 

 猗窩座が空中から着地するタイミングに合わせて迎撃。

 もちろん熱界雷を飛ばした方向は森林だ。今度は三発放つ。少しずつ威力を上げていき、どの程度が通じるのか探らなければいけない。

 

 お互いある程度手の内を知っている状態だ。だから慎重に攻めなければいけない。

 

 そして、なるべく早く俺は森林に移動しなければ詰む。

 俺が真っ向から勝負しても少しは、やりあえるかもしれないが、夜明けまで時間を稼ぐのは不可能だ。

 地の利を活かさなければ。

 

『破壊殺 乱式』

 

 猗窩座は拳打の連打で正面から受け止める。

 

 マジかよ……。三連でもそこそこ威力あるのに。

 いとも容易く。

 

 

 熱界雷はまだ数段上がある。本当ならどのくらいの攻撃が効力があるのか、線引きをしておきたかった。

 だが、今のやりとりだけで、俺と猗窩座には実力差がある。。

 

 ……猗窩座が現れたことはすでに手の空いている他の柱たちにも情報は流れているはず。

 

 だが、いつ到着するかはわからない。

 いつ来るか、わからない援軍を待つよりも、どうやって夜明けまで時間を稼ぐかを考えた方がいい。

 

 さて……どうしたものか。

 ……あれ?

 何故か、猗窩座はその場で自分の両手を見ながら止まったまま。何も仕掛けてこない。

 

 ……どうしたんだ?

 

 

「一つ問いたい」

「……なんだ?」

 

 不思議そうに問いかけてくる猗窩座に俺は戸惑う。 

 だが、話をしてくれるのはありがたい。

 体力の回復は勿論、引き延ばせれば夜明けまでの時間稼ぎにも繋がるしな。

 

「なんだ、お前の刀は……」

 

 ああ、やっぱり気になったか。

 猗窩座は興味から質問をしてきている。

 

「俺専用の刀だが……それがどうした?

「お前専用?……刃のない刀がか?」

「そうだ。……何か悪いことでも?」

 

 日輪刀を自分の戦い方に合わせて作る柱は多い。

 刀の形が特殊なもの。特別な仕掛けをしているもの。

 

 それぞれが鬼殺のため、特殊な形をしている柱の刀は千差万別。

 その本人にしか使いこなすことはできない。

 

 猗窩座が聞いてきた刃がない刀。それが俺の使っている刀の特徴だ。

 

 普通の刀と比べて横幅が少し分厚い。熱界雷を飛ばすのに特化しているその刀は普通の刀に比べて空気抵抗が増す。

 そのおかげで鍛錬によって数年前とは比べ物にならない威力を誇る。

 

 また、俺の刀の特徴は2つ。

 毒を注入するために刀の先は普通の刀と同じ形状で、つかには奥の手として仕掛けがしてある。

 まぁ、しのぶの刀のように鞘の中で毒を調合はできないので、持参している毒を直接塗るしかないが……。

 

 それがこの4年で研究し、最終的にたどり着いた俺だけの専用の刀。

 

 ……少しこの話で時間を稼げるか?

 

「お前も知ってるだろう?俺の戦い方を。……長所を生かすためにこの形状の刀にした」

「なるほどな。……だが、それだと俺を斬ることはできんぞ?」

「いいんだよそれで。……自分の道を追求したまでだ」

「……悪くない。不躾な質問だったな。忘れてくれ」

 

 仕切り直しか。

 会話はこれで終わってしまったが、少し考えをまとめられた。

  

「出し惜しみをしている余裕はあるのか?……本気で来い獪岳。お前の実力はこんなものじゃないはずだ!」

 

 確かにそうだ。出し惜しみしていたらダメだ。どうせまともにやったって勝ち目はない。

 

 もともと出し惜しみできるような相手じゃないんだ。

 

「ふぅ……」

 

 俺は深呼吸し、猗窩座に向かって走る。

 俺の戦い方の理想は一撃逃走。だが、今の数回のやり取りでそれは無理だと判断した。

 

 長い時間戦い続ければ不利になるのは俺だ。

 呼吸を使い続ければ疲労し、動けなくなる。

 

 少しでも生き延びる希望を見出せるならばここで出し惜しみしてはいけない!

 

『雷の呼吸 伍ノ型 熱界雷 六連』

「さぁ!こい!」

『破壊殺 乱式』

 

 4年前までの最高火力、猗窩座に向かって6発放たれた熱界雷を最小限でかわし、拳打で受け止める。

 

 だが、俺の熱界雷は一方向で放った訳ではない。

 猗窩座の足元を囲うように二発、猗窩座自身に残り四発。

 

 猗窩座の周りには土埃ができる。

 それは猗窩座の油断を誘い、一瞬でも視界を奪うことが目的。

 

「はああああ!」

『雷の呼吸 伍ノ型 熱界雷』

 

 出し惜しみはしてはいけない。このチャンスは二度はない。二度は同じ手は通じない。

 

「八連!」

 

 熱界雷を連続で放つ。

 この四年間で俺は限界を超えた。善逸に並ぶことができた。

 

「素晴らしいぞ!獪岳!」

 

 放たれた熱界雷は猗窩座を後方の森へと飛ばした。その時、叫ぶように猗窩座は俺を称賛した。

 俺はせっかくできたチャンスを逃さないため、猗窩座をすぐ追う。

 

 さて、夜明けまでの時間は稼げるだろうか?

 ここで負ければ炭治郎たち、せっかく守った乗客たちが殺されてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここが正念場だ。

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