「大丈夫なのか獪岳……やつれているようだが」
「いえ、大丈夫です悲鳴嶼さん」
本日二人目の見舞い。岩柱悲鳴嶼行冥さん。俺の恩人。
原作最強キャラ。
カナエとのお話が終わり、午後の3時ごろになりきてくれた。
来てもらって本当に申し訳ない。
「すいません。悲鳴嶼さん。わざわざ来ていただいて」
「気にすることはない。獪岳……お前は俺にとっては息子同然なのだ」
「……悲鳴嶼さん」
嬉しすぎて涙が止まらない。
尊敬する悲鳴嶼さんからこのように言ってもらえるなんてどれだけ恵まれているか。
「怪我の具合はどうだ?」
「はい。しっかり療養すれば復帰できます。……まぁ、時間はかかるらしいですが」
「そうか、無理はするな」
「はい」
悲鳴嶼さんはそう言いながら頭を撫でてくれる。
本当にこの人に撫でられると自然と嬉しくなる。
お父さんって感じで嬉しい。
そういえば、沙代たちはどうしているだろう?
「……沙代たちどうしてますか?」
「元気でやっている……どうした?」
「いえ……夢を見ました」
「夢?」
「はい」
今回の一件を通して向き合おうと決めた。
「実は今回、下弦の壱の戦いの時に奴の血鬼術にかかってしまいまして」
俺はゆっくりと説明をする。
「簡潔に言ってしまえば、本人が心から望む夢を見させる能力でした」
「心から望む内容か。それで……どういった夢だったんだ?」
俺は悲鳴嶼さんに簡潔に伝える。
「寺のみんなと何も起きず過ごしていたら……そういった内容の夢でした。一番末っ子だった沙代が成長して大きくなっていて、俺も寺のみんなのために働いていて……貧しいながらも助け合って生きている……そのような内容でした」
「そうか……みんなと過ごした夢を」
悲鳴嶼さんは相槌をしながら俺の話を聞いてくれる。
それからしばらくして、質問がきた。
「獪岳……お前はどうしたい?」
「どうしたいって?」
「何故お前はその夢のことを俺に話したんだ?何か思うことがあったから話したのではないのか?」
そう、今回悲鳴嶼さんに話した理由は。
「一度寺のみんなと……話をしてみたいと思いました。……ここ数年何回も悲鳴嶼さんに声をかけてもらいましたが。それでも、会うのが怖くて……断っていましたが、夢で実際に見て……このままではいけないと思いました」
「……そうか」
急にいなくなったこと。
どうしても、獪岳として過ごしていた時、ひどいことをしてしまったと記憶がある。食べ物を一人で隠し食いしたり……。
生き延びることで必死になっていてそのようなことをした。
そのことの謝罪と急に居なくなって心配をかけたこと。
彼らはあまり心配をしていないかもしれない。
でも、迷惑をかけたことは変わらない。
だから、一度話をしたいと思った。
でも、年月が経過するにつれて会うのが怖くなってしまった。
「あの子たちはお前を責めてはいない」
「え?」
……俺の内心に確証をつくような一言。
本当にこの人には敵わない。
「だが、まだ会い辛いだろう。お前のこの四年の態度を見る限り」
「えぇ……まぁ」
すると、悲鳴嶼は懐から一通の手紙取り出し俺に手渡してくる。
「みんなは今回の件でお前の心配をしていた。これはあの子たちからの手紙だ」
「……え?」
俺は戸惑う。
俺の反応を見てか、悲鳴嶼さんは微笑みながら提案してくれた。
「時間はまだある。時間がかかってもいい。少しずつ距離を詰めていくといい」
まずは文通から。
悲鳴嶼さんの優しさ。その提案に俺は涙を流した。