正直に言おうと思う。
熱界雷 六連は俺の最大火力の実質必殺技である。
俺が先生に指南を受けてから三年間ひたすら努力をしたものの、六連までしかできるようにならなかった。
善逸のように神速とか八連とか新たな型とか無理だった。
これが俺の限界なのだろう。
本当に善逸はすごい。限界まで極めた極限まで磨き上げた結果なのだろう。
こう言ったのはやはり意識の違いなのだろう。
善逸はクズ(獪岳)とともに隣に並び戦うため、そして何より強くなるために鍛え続けた。
それに比べて俺はただ死にたくないがため、生きたいがために熱界雷を磨き続けた。
それでもやはり足りなかった。
意識の違い。その壁は考えている以上に高かった。
でも、これはいまさらだ。
俺は善逸ではない。ただの獪岳だ。
俺は物語に関わる気がない。
原作ではあまり登場がなく、出た場面でもただクズを晒しただけ。
俺はそんなのごめんだ。
でも、もしも目の前で何かあった時は出来る限り尽くそう!
俺はそう決意を固めるとともに今やらなければならないことを考え意識を切り替える。
生き延びることだ。
こんなところで死んでたまるか。
そう思い山道をできる限り気配を消し、移動する。
移動を始めて数分、俺は近くで戦闘をしている事に気づいた。
気づいた手前放っておくのも悪いかと思い、近くに寄ってみた。
そこには息を切らしながら4体の鬼に囲まれ戦い続けている胡蝶さんがいた。
え?なにやってんの?あんなの早く倒せばいいのに。
いや、無理そうだな。
俺が観察して居ると胡蝶さんは呼吸が乱れ型が使えておらず右足を庇いながら戦っていた。
見た限り実戦慣れしてないように見える。
おそらく焦り、苦痛、そして死の恐怖。
それらのせいで追い詰められて居る。
俺はすぐに助けに入る。
よくある鬼滅の刃二次創作では必ず胡蝶カナエ生存ルートが多くある。
あんな美少女失ってしまっては世界の損失である。
俺は戦闘に入るタイミングを測って割り込む。
「雷の呼吸 伍ノ型 熱界雷 乱」
俺は一瞬で鬼達と胡蝶さんの間に入る。
そして鬼4体にそれぞれ一回ずつ斬撃を飛ばす。
ちなみに熱界雷 乱は周囲に4つの斬撃を飛ばす熱界雷の派生技だ。
熱界雷 六連と同じような型だが、全くの別物。六連は一回一回刀を鞘に戻してそれを連続で放つ。ほぼ同じタイミングで斬撃を飛ばすため、二連は二倍、三連は三倍の様に威力が上がる。
熱界雷 乱は自分を中心に周囲へ4回斬撃を、回転しながら斬撃を飛ばす。
一回一回鞘に刀を戻すのではなく、刀の刀身四分の一のみ鞘に入れ周囲に斬撃を一回転に四回斬撃を飛ばす。
ただ、普通の熱界雷よりも威力は二分の一程度に落ちてしまうが……。
でも、状況によって一気に形勢逆転出来るなど、使い勝手はいい。
俺は飛ばした鬼たちを確認。
運が良かったのか、木にぶつかる、刺さるなど行動不能に持ち込めた。
そして周囲を確認、鬼がいないことを確認し胡蝶さんの様子を見る。
着物は着崩れており、身体中泥まみれだ。
肩を大きく上下に動かし呼吸をしている。
警戒心を強めていたが、俺を認識するなり強張っていた表情が少し綻びた。
「はぁ…はぁ…獪岳さん?」
「大丈夫…ではなさそうだね、間に合って良かったよ」
俺がそう言うと胡蝶さんは落ち着きを取り戻し呼吸を整えた。
「助けていただきありがとうございます。獪岳さんが来なかったら今頃私は……」
胡蝶さんはそう言って表情を暗くする。
確かにそうだ。俺がいなかったら死んでいただろう。
しかしなんでこんなにボロボロなんだろう?
そこまで強い鬼はいないはず。
「何があったんだ?君ほどの実力者がこんなになるなんて」
「戦闘中にいきなり大木が飛んできまして……直撃はしなかったのですが、避けた際に体勢を崩し、右の足首が折れてしまったんです」
「………大木?」
「はい。私は遭遇しませんでしたが、大木や大岩を投げてくる鬼がいるらしいです。おそらくその鬼が投げたものが飛んできてしまったのかと」
……俺のせいじゃないよね?
俺のところにも飛んできたし違うよね。
「俺のところにも飛んできた。でも、戦闘中だったとはいえ、そこまで速くなかったし避けられるんじゃない?」
「いえ、私も戦闘中にたまに妨害に遭いましたが、避けられました。しかしその時のは速さがケタ違いだったんです」
「…………」
「どうかしましたか?」
「……ちなみに飛んできた木は近くにあるの?」
「それならすぐそこに刺さってますよ」
俺は胡蝶さんに促されるまま、視線を向ける。
なんか見覚えあるような……。
よく見たら六つの切り傷があるような……。
俺のせいじゃん!!