極めろ熱界雷!!目指せ一撃逃走   作:花河相

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再び戦場へ

「すまねぇ、助かった」

 

 天元、無事でよかったよ。

 黒死牟の一撃から寸前で助かった天元は苦笑いしながらそう言った。

  

 だが、このタイミングでの援軍はありがたいと思う反面、状況はあまり優勢とは言えない。

 

 上弦の鬼一体で最低柱は3人必要だと言われている。

 だが、黒死牟はそれが当てはまらないほど反則級の強さを持つ。

 

 しかもこの中にいるものは俺も含め透き通る世界を使える人(伊黒は現時点で)は誰もいない。

 

 

 幾ら束になってかかったところで勝てるかどうか。正直勝ち筋が見えない。

 生き延びることを主にしたとしてもそれでもできない。

 

 それほどまでに実力差が開いている。

 

 ふと、情報共有をしている天元、カナエ、伊黒に視線を向ける。

 その時カナエと目が合うが……強い眼差しを向け頷いた。

 やはり一緒に戦うらしい。

 『もしも約束破ったら私も後を追いますから』……以前した約束。

 もちろん忘れていない。

 

 相手が悪過ぎるが、贅沢は言っていられない。

 元とはいえカナエは柱。今この場では少しでも戦力がほしい。

 だから、俺はカナエの意志を尊重して一緒に戦ってもらう。

 

 それから天元はカナエにもらったであろう解毒薬を再び打ち込み、体の調子を確かめている。

 

 まだ本調子ではないらしい。それほどまでに鬼の毒は強力らしい。

 だが、本調子じゃないからと戦うなと言えるほど余裕はない。それも本人が一番わかっているらしく、深呼吸後意識を黒死牟に集中させていた。

 

「降って湧いてきたか。……花と蛇か。……蛇は初見だが……悪くない」

 

 これで油断してくれれば良いのだが隙がない。やるしかない。

 ここで死ぬのは嫌だが、やらねば死ぬ。

 

「名を聞きたい。俺は胡蝶獪岳という」

 

 俺は話しながら左手で天元たちに指示をする。

 

「獪岳……意図が見え透いているぞ」

「待ってくれたのか……ありがたい」

 

 指示を出したことはすでにバレているのだが、黒死牟は待ってくれたようだ。

 俺が伝えたのは、黒死牟の血鬼術や動きの先読みができること。

 

 なぜ、そんなことを知っているのか、そのことを聞いてくる人は誰もおらず、皆黙って頷いた。

 それは今まで俺が積み上げてきた信頼から。

 

 この強者と対峙した時点でわかっているだろう。まともに戦っても勝つのは難しいと。

 なら少しでも可能性が見出せるなら。

 

 さあ、始めようか。

 強者狩りを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ダメだ。まだ体が動かない。動け!動け!獪岳さんのところに戻らなきゃ!)

 

 炭治郎は獪岳の熱界雷により飛ばされて強制的に撤退させられた後、いまだに動けない状態にいた。

 上弦の壱が現れ、恐怖で体が動かせなかった。

 上弦の伍を倒すことができたことにより、自分も役に立てると思った矢先に上弦の壱が現れた。

 

「おい!もんじろう何やってんだ!シャキッとしろ!」

「……い…伊之助?」

 

 だが、そんな中同じく強制避難をさせられた伊之助が駆け寄り声をかけてきた。

 その後ろには未だに花提灯を作り寝たまま立っている善逸も一緒にいる。

 伊之助にいつも通り変わらない様子で話しかけられたことに驚く炭治郎。

 

「……伊之助はすごいなぁ。俺、今も震えているーーって!痛い何すんだ伊之助!」

 

 伊之助は炭治郎の言葉を遮るように頭を叩く。

 すると、伊之助は鼻息を荒くして言った。

 

「お前の目は節穴だな!……よく見ろこの俺様の手足を……ブルブルしてやがる!」

「……伊之助」

 

 伊之助は強がっていた。

 あの上弦の壱の化け物を見ただけで。

 

「この山の王の伊之助様をここまで震えさせるなんてあのやろう、大したやつだぜ」

「……ごめんな伊之助、ありがとう」

 

 未だ震えている炭治郎は伊之助の言葉を見ていまだ震える体に鞭を打ち立ち上がる。

 だが、まだ弱気になってる炭治郎を見て伊之助はさらに言葉をかける。

 

「らしくねぇぞ!まだ獪岳の野郎は戦ってるんだ。なら、俺様たちも行くぞ!」

「そうだな……俺たちに出来ることをしよう。役に立つんだ!」

「おうよ!もう昔の伊之助様じゃねぇからな!」

 

 伊之助と炭治郎は互いに見つめ合い、覚悟を決める。

 

 再び戦場へ。

 

 それは足手纏いにしかならないことはわかっている。

 それでも、できることはある。

 

「覚悟は決まったようだな。行こう二人とも」

「ぜ…善逸?」

「こいつ一生寝てりゃいいと思うぜ?」

 

 だが、行こう!と宣言したのは炭治郎でも伊之助でもない、寝息を立てながら獪岳がいる戦場を見ている善逸であった。

 そんな姿に呆れた炭治郎と伊之助であったが、とりあえず、それぞれがコメントを残した。

 

「禰豆子。ここで少し待っててくれるか?」

「ぷいぷい!」

 

 炭治郎は禰豆子にここに待つように優しく頼んだ。

 そして、懐から一つの瓶を取り出して再び話しかける。

 

「ごめんな。この件が終わったら禰豆子を人間に戻してやる約束だったけど……今は少しでも獪岳さんたちの役に立ちたいから」

 

 その瓶は薄紫色の液体の入った小瓶。

 今回の任務で事前に珠世から受け取っていたものであり、今回の任務が終わったら人間に戻すと決めていたものだ。

 

 鬼から人間に戻す薬は物語で終盤に出来上がった薬だ。

 そのため、貴重で製作方法も定まっているものの、抽出に時間がかかり鬼一人人間に戻る量の薬を作るのに時間がかかる。

 今の薬も半年以上かけて作ったものだ。

 

 だが、今は黒死牟を倒すことを優先にした。

 

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