『雷の呼吸 伍の型 熱界雷』
先制を仕掛けたのは俺だ。
だが、残念ながら簡単にいなされる。黒死牟は俺に接近してそのまま一閃の斬撃を喰らわしてくる。
……俺ってこんなに動体視力よかったっけ?
色々疑問が出るが、俺はバックステップで紙一重でかわす。
一度攻撃を受けたので、黒死牟の歪の斬撃も避けられた。
そのまま俺は刀を抜いたまま撃ち合う。
このまま何か技を放つべきかもしれないが、俺は熱界雷以外はゴミ同然、未熟な技を仕掛けるほどバカじゃない。
「歪な刀だな」
ついついそう呟いてしまう。
黒死牟の刀は変幻自在に形も変えられる。まじで反則だよ。
『蛇の呼吸 壱ノ型 委蛇斬り』
次に伊黒が俺の背後から黒死牟の首目掛けて横薙ぎの一太刀を振るい、俺はそのまま距離を空ける。
『雷の呼吸 伍の型 熱界雷 六連』
俺は流れるように五連の熱界雷を黒死牟に一連を伊黒に向けて。
「効かぬ」
だが、黒死牟は伊黒の攻撃を何なく受け止め、俺の一撃を横薙ぎの一太刀で薙ぎ払う。
その刀の延長線には伊黒もいた。
「チッ」
だが、伊黒は舌打ちをしながらも俺の放った熱界雷の斬撃を巧く使い、回避。
飛ばされながらも、受け身を取り体勢を整える。
「食らいやがれ!」
『花の呼吸 肆ノ型 紅花衣』
続いて、天元が火薬弾投げながら接近し、カナエが周囲に向けて無数の斬撃を放つ。
天元の投げた火薬弾が爆発、黒死牟を中心に煙が舞う。
『花の呼吸 陸ノ型 渦桃」
視界が塞がった瞬間、黒死牟の真上に飛びカナエは空中に飛びながら斬撃を放つ。
天元は火薬玉を投げた後黒死牟に切り掛かる。
だが、瞬間俺は危険信号だと判断しカナエに向かい飛び上がり、カナエと黒死牟の間に割り込み技を放つ。
『月の呼吸 陸ノ型 常世孤月・無間』
『音の呼吸 肆ノ型 響斬無間』
『雷の呼吸 伍の型 熱界雷 十連』
予感は的中した。
黒死牟は天元とカナエに向け前方に無数の斬撃を放ってきた。
天元は後ろに後退しながら対抗するため、型を放ち迎撃、俺はカナエと天元を守るために黒死牟に向け十連の熱界雷を放つ。
限られた球数の中、どうすれば致命傷を避けられるかどうか考え、熱界雷を放つ。
この至近距離では無傷で切り抜けるのは無理だ。
だから、俺は胴体を避け、利き腕を避け、戦闘を続行できる程度に被害を抑える。
それでも相殺しきれなかった。
黒死牟の絶技はとてつもない破壊力であった。
俺と天元、カナエは黒死牟と距離をとり、一箇所に集まる。
「カナエ!しっかりしろ!」
「……大丈夫です」
「ち……ちくしょう」
斬撃をくらってしまい、距離を空け、状況確認をする。
天元は胴体に斬撃をくらい、止血、縫合しなければ内臓が飛び出てしまうほど重症。
カナエも胴体は異常ないが、両足の付け根で斬撃は骨に達しているほど深い怪我を負う。
止血しないと戦闘続行は不可能。
俺はある程度相殺できたものの、体中に切り傷ができた。
だが、骨に達している傷はなく、呼吸や筋肉に力を入れ、止血すれば戦闘は続行可能だ。
……黒死牟、化け物すぎるだろ。
天元は咄嗟の判断で後退していなかったら、もしも技を放っていなかったら。
俺も熱界雷の最大火力を放っていなかったら。
俺を含め細切れになり死んでいた。
そんな俺たちを見て、援護のため伊黒が黒死牟が技を放ち終わった直後、背後から蛇行しながら接近する。
『蛇の呼吸 伍ノ型 蜿蜿長蛇』
『月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月』
黒死牟は伊黒に向け切り上げるようにして正面に三連の斬撃を大きな月型の刃で取り囲むように放つ。
『蛇の呼吸 肆ノ型 頸蛇双生』
伊黒は途中で技を切り替え、それを全て躱し切り、首を両側から挟み込むように切り掛かるも、伊黒の攻撃は空を切ってしまい、すぐに体勢を整え、着地する。
「……完全に躱したはずなのに」
黒死牟から間合いをとり着地するも隊服から血が滲んでおり、多量の出血が。
……今ので斬られたか。
全てをいなすことはできずに伊黒は斬撃を喰らう。
「蛇の呼吸か……見事なり」
黒死牟は感心したのか発言している。
伊黒はその余裕な姿に舌打ちするも、すぐに間合いを離れる。
「違う呼吸の使い手同士……ここほど見事な連携……お前達が初めてだ」
本当に冷静な分析腹立つわ。
柱クラス4人を相手にして余裕に立ち回るとかどんな化け物だよ。
……朝までそんなに時間がないはずなのに。1秒がとてつもなく長く感じる。
柱クラスが4人いるからどうにか勝てるかもとか、夜明けまで持たせられるかもとか……考えが甘すぎた。
こいつを倒すための最善を尽くす。
それしか生き延びる道はないのだから。
「俺が時間を稼ぐ、天元は傷を縫合しろ、カナエもだ」
どこか原作にあったシーンを思い出す。
物語終盤で黒死牟相手に悲鳴嶼さんが不死川に出した指示と似ている。
天元とカナエにはとりあえず、傷口を縫合してもらう。
特に天元は毒にも侵されている状況なのに、戦わせて申し訳ないが、許して欲しい。
それに加えて伊黒も負傷。
状況は悪化する一方。
動けるのは俺だけって。
「ふぅ」
少しでも時間稼ぎを。天元たちは俺と黒死牟から距離を空け、応急手当てを始める。
少しでも時間を稼ぐ。そう思い無謀ながらも黒死牟に接近。
「愚かなり」
黒死牟は呆れたようにそう呟き、歪な刀で俺を切り裂こうとする。
……だが、俺はそれを冷静に対処。
斬撃の延長線を意識、歪な斬撃の軌道を先読み。
……空中に逃げても殺されるだけ。
なら、避けるのは後ろでもなく……下。
それは自然な流れであった。
踏み込もうとした右足をそのままスライドさせ前後に足を目いっぱい広げてスライディングし、黒死牟の足元に体を捩じ込むように間合に入り、やり過ごす。
通り過ぎる際、右手で鍔付近にある俺の刀のボタンを押して、黒死牟の死角から足物に向かい注射器を2本発射させる。
「小賢しい」
だが、その2本の注射器は黒死牟に刀で弾かれてしまう。それでも、割れた注射器から液体が数滴黒死牟の体に付着する。
発射後は刀を持っていない左手を地面につき、それを軸に黒死牟に背後を向けぬように振り向き、体勢を整える。
「……この土壇場で踏み入れたか」
「……何を言って」
「自身の体の異変に気が付かぬのか?……見えたのだろう?」
見えている。
その単語を黒死牟に聞いてあることが思い浮かぶ。
透き通る世界。
……そうか、今まで戦いの中で少し違和感を感じていたが、正体はこれか。
原作でも炭治郎を含めた一部のキャラしか発現できなかった身技。
その領域の片鱗に足を踏み入れることができたらしい。
まだ、終わらない。