「……なんだ?」
「鬼殺隊には優秀な薬師がいるんだ」
俺が黒死牟に放った注射器の中身は猗窩座に打ったものと変わらない。
しのぶと珠世さん作の上弦に通用する毒、不死川の稀血。
体内に打ち込めればよかったものの、やはり小手先は通用しないのか、刀で弾かれてしまう。
液体が黒死牟に付着し、匂いを嗅いだだけ儲けもん。少し変な感覚になっており、わずかに表情が崩れる。
この隙に付け込まないではない。
今は少しでも時間を稼ぎ、俺のことを意識集中させる。
透き通る世界の感覚はいつまで続くかわからない。黒死牟も今の俺を嫌でも意識するはずだ。
俺はそのまま接近を続ける。
透き通る世界は原作知識から知っている。
だが、今の状態は動きが視界がスローになるのと、感でこう来るなとなんとなくわかる程度。
……だめだ。雑念がなくならない。
使いこなすのは一朝一夕でできる物じゃない。
「ふぅ…ふぅ…ふぅ」
呼吸を整え、思考を整える。
今思えばなぜ俺はこいつの土俵で戦おうとしたのだろう。
忘れてはいけない、俺の鬼殺隊としての基盤を。
極めろ熱界雷、目指せ一撃逃走
なら、やることはシンプルでいい。
今までの俺がおかしかったんだ。
猗窩座と直接対決したり、妓夫太郎相手に天元と共闘したり。
さっきだってそうだ。なぜ黒死牟相手に俺は4人で協力の時だってわざわざ接近していたんだ?
朝まで粘れたら俺の勝ち、死んだら俺の負けだ。
その方がシンプルでいいじゃないか。
『雷の呼吸 伍の型 熱界雷 十連』
バックステップをしながら熱界雷を黒死牟に向けて放ち、そのまま黒死牟を中心に円を描くように駆け出す。途中反転や蛇行も入れながら。
俺はもともと遠中距離型だし、スピードには自信がある。黒死牟の戦闘ですでに崩壊した建物、うまく高低差を使い、熱界雷に多少の変化を加えながら攻める。
「小賢しい真似を」
『月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月』
それに見かねたのか、黒死牟は俺に接近し、斬撃を三つ放ってくる。
『雷の呼吸 伍の型 熱界雷 十連』
あくまで冷静に対処をする。
迎撃に九連、黒死牟に一連熱界雷を放つ。そのまま、最小限の動きで黒死牟の独特な形の斬撃をかわす。
透き通る世界を極めた黒死牟にとって俺の攻撃を先読みするのは容易いだろう。
だが、今黒死牟は藤の毒、不死川の稀血、俺の独特な戦法、透き通る世界に踏み込んだこと。
これらが運良く噛み合い、俺が黒死牟と戦えている。
透き通る世界に俺の体が順応できているからか、スピードも落ちるどころか上がっているのもあるかもしれない。
だが、その戦闘でも黒死牟に通用するのは後数秒だろう。
まだ、黒死牟は血鬼術を使っていない。
俺は距離を空け過ぎずにヒット&アウェイを繰り返し、熱界雷を放ち、黒死牟の剣筋を避け続ける。
「見事だ。私も400年の時を生きるがお前のような剣士はいなかった」
黒死牟はこのままだと埒が明かないと判断したのだろう。
ついに来たか。
俺は次に黒死牟の接近に対し俺は必要以上にバックステップで距離を取り。
『雷の呼吸 伍の型 熱界雷 十連』
熱界雷を放つ。
「ほう……よく反応できたものだ」
「ふぅ…ふぅ。なんだよ……その馬鹿げた刀は」
通常の刀に比べて長さは4倍ほど、刀芯を中心から枝分かれしているように伸びている刃が特徴的な刀。
平然を装っているが正直刃が早過ぎて見えなかった。
こんなの来ると分かっていても見えなかった。
「だが、わからぬ……今のお前には到底反応出来るとは思えん」
「は……どうだかな」
こんな化け物相手だが、十分に時間は稼いだ。
意識も多少外れているだろう。
「まぁ、ここまで戦った仲だ。継国巌勝さん」
「……何故それを」
明らかな動揺を見せる黒死牟、だが、俺はもう一言追加で言う。
「鬼になってまで生き恥を晒したのに弟に勝てなかった負け犬野郎……天元!」
「おらぁぉぁ!」
黒死牟を煽った後、俺は天元の名を大声で呼ぶ。
それが合図となり、天元は黒死牟に向かい、駆け出した。
さぁ、覚悟しろ。