極めろ熱界雷!!目指せ一撃逃走   作:花河相

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最終話です。


〜完〜

 その後の話をしようと思う。

 

 引退した後、俺は育手として鬼殺隊を支えた。

 と言っても、両足を無くした俺ができることは少なかったので、刀鍛冶編が終わり次第義足を作ってもらった。

 ちなみに刀鍛冶編というのも、まず鬼たちは襲って来なかった。

 せっかく炭治郎に上弦の鬼の情報、倒し方どんな血鬼術かを教えていたのにカラスからの連絡もなく、何もありませんでしたよと帰ってきた時には驚いた。

 

 その時から鬼たちは活動しなくなった。

 この時の俺は少し焦った。本来刀鍛冶編では上弦の肆と伍の二体が刀鍛冶の里に迫るはずだったからだ。

 どうやら俺がこの世界に関わったことにより刀鍛冶編をすっ飛ばしてしまったようだ。

 

 無一郎の記憶が戻る重大イベントを壊してしまったわけだが、炭治郎と関わった結果、心境変化があったようなので良しとしよう。

 

 

 この期間を好機と考えたお館様の指示で鬼殺隊の中で柱稽古を開催した。

 これも原作通り平隊士たちを柱の元で稽古をさせ底力を向上させたのだ。

 もともと隊士の質が落ちていることが問題視されていることもあり、隊士の中には全集中常中を身につけた人もちらほらいた。

 理由は原作以上に訓練内容が厳しかったから。

 柱全員生存しているんだ。厳しいに決まっている。

 心が折れても再起不能になろうが無理やり立たせて訓練を強要する。

 そんな熱血指導により隊士たちは全員強くなった。

 俺は義足を作ってもらい、リハビリがてら柱稽古に指導側として参加した。内容はお館様からもらった森林での鬼ごっこ。

 もちろん俺が逃げる側。

 素早く逃げさせ、反射神経を底上げする。

 死角から熱界雷を放ち吹き飛ばす。そうすることで瞬間的に受け身を取る訓練、戦いで怪我を最小限に防ぐための訓練を参加した。

 おかげで現役には程遠いものの、柱たちと模擬戦をこなせるようになるまで復活できた。

 

 その間にも俺ができること。簡易的な日輪刀を赤い刀にするための方法、原作知識から上弦の鬼の知りうる限りの情報を共有した。

 どこから仕入れた情報かと聞かれたが、未来で一度戦ったことがあり何故かその記憶があったと適当な理由をでっち上げた。

 信用されるかわからないが、俺の信頼度は思っていたより高かった。

 すぐに情報共有してくれた。

 後は、無惨が迫ってくるかもしれなかったので、常にお館様の近くには常に数人の柱と強力な藤の毒、老化させるための毒、人間に

戻すための薬を注入させるためのの罠を仕掛けた。

 

 結果は言うまでもない。

 無惨は原作通りお館様を襲いにきた。

 

 大量の毒を注入され、返り討ちになった無惨はその場から逃亡し、そのまま最終決戦の無限城編突入。

 猗窩座と黒死牟の不在、事前に俺からの情報から対策を練っていた鬼殺隊が有利に戦いを進めることができ、結果的に勝利を収めた。

 俺との対決で黒死牟は日光を浴びて倒れたのだろうと推察する。

 これにより悲鳴嶼さんと不死川が負傷することなく、無一郎が死亡することがなくなった。

 原作よりも余裕のある立ち回りで勝利を収めた。

 

 ちなみにこのことを知ったのは全てが終わった後。

 俺はカナエと屋敷の中で皆の武運を祈っていた。

 

 知り合いが死ぬことなく無事にことが済んだ。

 何より、この俺が関わったことにより、ハッピーエンドで終わらせられたことができたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから10年が経った。

 

「ーーはい!今日はここまで。続きはまた明日」

「ええ!なんで?!もうちょっとだけ!」

「そうだそうだ!意地悪ぅ」

「ねぇ!その強い鬼さん倒した後どうなったの!」

 

 秋の虫の綺麗な鳴き声に、少し寒い風が戸口から吹き込む。

 薄い掛け布団をかけて寝るのに最も心地の良い秋の夜。 

 屋敷の大広間で俺は子供たち三人を寝かしつけるために昔話をしていた。

 

「ほら、また明日早いんだから」

「「「やだぁ!」」」

 

 と駄々をこねる子供たちを宥める。

 

 俺はカナエと六人の子供を授かることができた。

 ただ、全員女の子なので肩身が狭い。

 今後成長して思春期を迎えたら、洗濯物を一緒にしないでとか、大嫌いとか言われるのだろうか?

 

 今はお父さんと結婚する!とみんな言って俺を取り合いしているのだが……今後どうなることやら。

 

 そんなことを思いつつも時刻はもうすぐ22時になる。カナエから寝かせておくように言われたんだけど寝付くことはない。

 

 今俺が話したことも昔話ではなく実体験を話したら好評だった。

 

 一応、今はクライマックス。

 過去でいうところの黒死牟を俺が倒したことあたりだろう。

 

「ほら、言うこと聞かないと悪い鬼が食べにきちゃうぞぉ」

 

 子供を怖がらせる方法は昔から決まっている。

 お化けとか鬼とかいえば怖がるに決まっている。そう思って言ったのだが。

 

「もう怖い鬼いないから平気だもん!」

「そうだそうだ!」

 

 あ、つい最近鬼がいなくなったこと話したんだった。

 逆効果だったかもしれない。

 ……いや、まだ最強の鬼はいる。

 鬼舞辻無惨ではない、この世の男性が絶対に勝てない最強の鬼が。

 

「そんなこと言ってると……本当に鬼が来ちゃうぞぉ。その鬼は……今だに生き続けているんだ。……雷落としちゃうかもよぉ」

「本当にそんな鬼いるのぉ?」

「なんて鬼なのぉ?」

「それはね……鬼嫁という名の男を尻に引く世の中最強の鬼なんだ」

 

 カナエという名の鬼だ。

 俺はお館様から歴代鬼殺隊最強の称号を承っている。俺は否定したんだが、柱たちみんなが認めた。

 

 そんな鬼殺隊……いや、人類最強の俺でもカナエには頭が上がらない。

 どこかの戦闘民族でも嫁には勝てなかったんだ。

 

「へぇ……そんな鬼がいるんですねぇ……詳しく教えてください」

 

 お、食いついてきた。

 ちょっと話を盛ってやろう。

 

「鬼嫁は最強の剣士でも頭が上がらないんだ。……もしも悪いことしたらその鬼が食べに来ちゃうぞぉ……どうした?」

「パパ……その」

「お父さん……うしろ」

 

 話している途中子供達は俺の後ろを見ながら怯えていた。

 その反応に思わず冷や汗がでる。

 

 ……あれ、そういえば鬼について聞いてきたの子供達じゃなかったような。

 

「あ!鬼嫁だぁぁ!こわーい!」

 

 透き通る声だった。子供は純粋な生き物。

 この後の結末を考えずに思ったことを口にしてしまう。

 

 ギギギッと重たい首を後ろを振り向くとそこには。

 寝ている子供を3人抱えた俺の鬼嫁(カナエ)の姿がいた。

 

「あ……いや……これは」

「うふふふ……面白い話をしてますね。……みんなお父さんに迷惑かけちゃダメですよ。……寝ない悪い子はお仕置きしてしまおうかしら?」

「「「おやすみなさい」」」

 

 ……あ、やっぱり鬼嫁やべぇわ。

 一言で子供を躾けたよ。

 

 あ、俺もそろそろ眠くなってきた。

 

「おやすみお母さん」

「……少しお話ししましょうか……ね?あなた?」

「…あ…はい」

 

 首根っこを掴まれ引きずられ寝室から連れ出された。

 子供達は狸寝入りをしていたらしく、俺を見るなり合掌していた。

 

 それから部屋から連れ出され寝室から少し離れた小部屋に連れ込まれた。

 俺は壁に腰掛けると(足がないため正座ができないため)目のハイライトが完全に消え、両腕を胸下で胸を支えるように組んで見下すカナエ。

 

「それで?」

「……いや、子供たちが寝ないから」

「……で?」

「これには山より高く谷より深い事情が」

「………で?」

「……」

 

 どうやら言い訳を許せないのがカナエらしい。

 この威圧……ふ、さすがは最強の鬼。

 

「さすがは最強の鬼……とか思ってないですよね」

 

 なぜばれた。

 

「……」

「最近あなたの考えることわかるようになったんですよ」

「す……すごいなぁ……愛の力かな?」

「誤魔化しても無駄ですよ?」

「申し訳ありませんでした」

「……」

 

 俺は頭を床に擦り付けて謝った。

 その後はカナエは無言であった。今回はかなりのお怒りのようで。

 

「……鬼嫁は……どんな鬼なんですか?」

「……え?」

「悪い子には……どんなことをするのか聞いているのです」

「……なんだっけなぁ……忘れちゃったなぁ……あはは」

 

 言ったらダメな気がした。

 だが、俺の弁解はもう不可能なわけで。

 

「もしも悪いことしたらその鬼が食べに来ちゃうんでしたよね?」

 

 ……この後の何があったかは想像に任せよう。

 だが、数年後に男児が生まれて肩身がわずかに狭くなくなったと記しておく。

 

 これが俺が勝ち取った平和な日常、あわよければこの幸せな時が続きますように。

 

〜完〜

 

 

 




この物語はこれで完結となります。

最終話宣言から約一月後の投稿となりました。遅くなり申し訳ありません。
やはり、最後はどのようにまとめるべきか悩みました。
考えた結果物語の最後はカナエとの始まりの原点が一番だなと。

誤字脱字が多く、色々と課題が多かった作品でしたが、お付き合い抱きありがとうございます。
読んでくださった方々も物足りない感はあるかもしれませんが、最後は作者がやりたいように完結させて頂きました。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

今後も作品投稿を頑張りたいと思います。応援してくださると幸いです。


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