最終選別が終了し俺は正式な鬼殺隊の隊士となった。
無事に最終選抜から帰ったので先生は褒めてくれると思った。
しかし、開口一番に言われた言葉は。
「なんじゃ獪岳、帰ったのか?」
心配しないの?
確か原作主人公の炭治郎が帰った時、鱗滝左近次……炭治郎の師匠は泣きながら抱いていた。
正直俺も期待していた。
「先生、弟子が最終選別から帰って来たんですよ!!その反応はおかしくないですか?もっと感動してくださいよ」
「バカもん!!これは師として弟子を信じていたからだ。心配せんでもお前の最終選別通過は分かっておった」
「先生………」
俺をそこまで信用してくれていたとは正直驚いた。
そして先生は俺に近づき頭に手を乗せて、
「よく頑張ったな獪岳……師として誇りに思うぞ」
「………はい」
先生の言葉に俺はそう返事をした。
それから数日して日輪刀と隊服が届き、そして先生から黄色い羽織が贈られそれらを着込む。
俺は三年間過ごした故郷を離れ、鬼殺隊として活動を始めた。
俺が鬼殺隊として活動し始めて半年が経った。
怪我することはなく、安全マージンで活動している。
討伐数は結構少ない。
俺に鬼の首は斬れない。
斬ろうとすれば斬れるけど、怖くて近づけない。
だから鬼と戦闘が始まったら日の出まで逃げて日光でトドメを刺す。
ただ、全く戦わなかったわけではない。
近くに来たら熱界雷で吹っ飛ばし、場所によって壁があったり、鬼が地面に倒れた場合は別。
熱界雷を連発して修復できないくらいのダメージを与えたりした。
最終的なトドメは日光の光でだが……。
それが理由で鬼の討伐数は現在六体。
普通の隊士なら早くて二週間で終わる。
でも、そんなこと知るか!俺は死にたくないんだ。文句の言いたい奴は勝手に言ってろ!
そんなこんなで俺は方針を変えずに生きていく。
この半年、特に事件らしい事件は起きていない。
やっていたことと言えば仕事以外は鍛錬。
あとは一回だけ文通をした。
相手はカナエさんだ。
カラスを通して「文通をしませんか?」と手紙が送られて来たが、俺は「仕事と鍛錬で忙しいしそんなことしてる暇がない。今後送って来ても返信はしない」との旨を返した。
おそらく勘違いでなければカナエさんは俺に好意を持っている。
しかしその原因は俺の自作自演。
もう関わらないと決めているため、わざと嫌われるように仕向けた。
それ以降手紙は来ないし、連絡は完全に断絶した。
俺は心から良かったということ。カナエさんはおそらく一時の気の迷いだったのだと分かり安心した。
でもカナエさんはあと二年と少し、一七歳になったら上弦の弐 童磨に殺されてしまう。
時期はわからない為、動きようがないが、もしも間に合うなら多少の手助けはしよう。
そう決意した。
その決意からさらに一年と少しが経った。
ここで鬼殺隊になって大事件に巻き込まれる。
運がないにも程がある。
ただ至急任務だと言われ、森林に入った。
しかし、ついた時には隊士の死体が山のようにあった。
そのため、鬼の情報を持ち帰り金を貰おう!そう決めて周囲の探索を始めた。
鬼の情報を持ち帰ればその質や鮮度によって報酬ははずむ。
俺はこの一年半、戦いたくないなと思ったらすぐに上の階級の人に仕事を振った。もちろんある程度の情報を提供した。
そして、一度だけその鬼の情報が貴重だったのだろう。すごい大金が手に入った。
金にして千円。
まじボロ儲け。リスクを冒すことなく、情報持ち帰るだけでだ。
俺はその一件から情報を持ち帰るのに目が眩んでしまい、何かやばそうな鬼がいたら出来るだけ情報を持ち帰るようにした。
しかしそれが悪かった。この時の俺は思う。
なんですぐに逃げなかったのだろう?
金に目が眩んで情報を集めようとしてしまったのだろう?
現場についてからしばらく経ち、周囲を探索していると、大きな岩に座っている鬼を見つけた。
俺は気配を消して、対象を観察。
流石に血鬼術とかはわからないけど、鬼の特徴はわかった。
これだけでも十分だ。
相手の戦闘力も未知数、そんな状態で戦うなんざ俺のポリシーに反する。
そう思い、その鬼から離れようとした。
………が
「そこにいるのは誰だ?……また増援か。殺しても殺しても次々に湧く、実力もないのに本当に鬼殺隊というのは虫の集まりなのか?」
なぜバレた?
まさか探知能力に優れているのか?
これは好都合!!
さらに情報が増えた。
俺はそれがわかった瞬間鬼に向かって熱界雷を放ち、即座に撤退。
まさに一撃逃走!!
俺はこの戦法に自信がある。
今までこの戦法を前に対応できた鬼は一体もいない。
俺は走りながら儲けた金をどうしようか考えていた、が
「貴様!!戦おうとすらしないのか!!」
………あれ?
なんで俺について来れてるの?
なんで振り切れないの?
鬼は俺を追撃している。
気のせいか距離が詰められてるような……。
「おい!!」
気のせいじゃなかった。
俺は逃げきれないと判断し、再び鬼に向かい、技を放つ。
『雷の呼吸 伍ノ型 熱界雷 三連』
二連でも良かったが、念には念を入れて三連にした。
流石の鬼もこれならと思ったが、
『破壊殺 鈴割り』
鬼は正面から容易く無力化した。
『破壊殺 空式』
『雷の呼吸 伍ノ型 熱界雷 四連』
そして俺に向けて衝撃波を四発放って来た。
俺は反射的にその衝撃波を型で迎撃した。
それもそうだ。俺の熱界雷は一撃だけでも人一人を容易く吹き飛ばせる。
連続で熱界雷を放てば威力はそれだけ倍になる。
三連とはいえ、渾身の一撃を容易く無力化した奴だ。
そんな奴の放った衝撃波に当たったらひとたまりも無い。
その一瞬の駆け引きで鬼は俺に距離を詰めてついに追いつかれてしまった。
俺は警戒心を高めて奴と向かい合う。
「ほう!今のを防ぐか。どうやらお前はただの虫ケラではないようだな」
対峙して気が付いた。
俺は奴の目を見て一気に緊張感が増した。
奴の目には「上弦 参」と書かれていた。
………これ死んだわ