XXハンター、トレーナーやるってよ 作:謎のハンターXX
「ここがあの人の拠点ですか…」
多くのウマ娘が夢を掴む為目を輝かせながら桜の門をくぐる春。駿川たずなは兵庫県の神戸市に来ていた。
目的はマンハント…もとい、人材発掘だ。たずなは定期的に地方に赴いては有能な人材を探す。中央は常に人材不足だ。それに、トレーナーの寿退社が頻発し漫然的にトレーナー不足なのだ。
「もしもし、渡部さん。今いらっしゃいますでしょうか?私は中央から来たトレセン学園理事長秘書の駿川たずなです。少しお話をさせてください」
インターホンを押し呼びかける。実はここに有能だが変わり者なトレーナーが居ると聞いてきたのだ。その彼の同僚だと言う☆Lucifer☆と名乗る人物は「アイツはやめておけ」と言っていたが、たずなからして見ればアグネスタキオンのトレーナーよりイカれた人物は居ないと信じている為、ここに来た。
もう一度たずながインターホンを押すと、重い足音が聞こえてくる。ドアが開けられ、その男は姿を現した。
「だからさぁ!名前出すのやめろって!誰だい、君ぃw」
たずなは絶句した。異常者はタキオントレーナーが頂点だと信じきっていたたずなの価値観は破壊される事になる。
まず、全身を覆う太った猫の着ぐるみ。もうじき暑かろうという時期に着る代物では無い。そしてその着ぐるみは…七色に光り輝いていた。
「……ぁ、ええと、中央から来たトレセン学園理事長秘書の駿川たずなです。貴方が渡部ゆうきさんですね?」
「だからさぁ!」
渡部ゆうきと呼ばれた男は甲高い声で怒鳴る。
「名前出すなって言ってんじゃん!?お前、刑務所だぞ!?」
たずなは断じて刑務所では無いのだが、何やら怒っている事はわかったので謝る事にした。
「も、申し訳ありません。では何とお呼びすれば?」
「XXハンター。キリトかエレンでも良いよ!」
自信満々に名乗る渡部ゆうき…もとい、XXハンター。
「ではXXハンターさんと。それで、お話なのですが…中央トレセン学園のトレーナーになりませんか?勿論、好待遇でお迎えします」
「いいよ!デモチュウオウーッテナンダロ」
二つ返事でオーケーを貰えたたずなは内心ガッツポーズで踊り狂った。
「そうと決まれば話は早いですね!さぁ、今すぐ行きますよ!」
「ちょっと待って!飯食ってない!」
「ご飯なんてあっちで幾らでも食べられますから!」
「嘘だろもう!?やってらんないよ…」
XXハンターはそう言いながらも渋々着いてきた。現役ウマ娘に負けないくらいの速度を持つたずなに追いつく程の速さで。
(この人…中々に速い。だけど、私には…フッ!)
たずなはスッカリ現役時の魂を取り戻していた。因みに、XXハンターは強走薬Gを飲みローリングをしまくっていた。その後、兵庫駅付近で爆走する女と凄まじい速度で転がるデブ猫の噂が流れたという。
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東京、中央トレセン学園。
これから模擬レースが行われようと言うところに、闖入者が現れた。その者は、虹色に輝く猫の着ぐるみをつけたXXハンターだった。
「なにあれ…?」「知らない、スポンサーとか?」「まさか!誰かのトレーナーとかじゃない?」「ちくわ大明神」「誰よ今の!?」
XXハンターは自分を見つめる奇異の目を物ともせずどっしり構えてレースを観戦しようとしている。実はと言うと、XXハンターはたずなから中央のレベルを知っておけと言われてここにきたのだ。一応トレーナーであるXXハンターはレース場にいるウマ娘達を一瞥し吟味する。
(あのライスシャワーとか言う奴、ライに似てるな。黒いし。あと強そうなのは…ネセトウアスアンクとか言う奴か)
ウマ娘達の興奮も収まり、いよいよ出走だ。各ウマ娘達は緊張した面持ちで前を見据えゲートが開く瞬間を今か今かと待つ。
ガタンッ!
ゲートが勢いよく開き、ウマ娘達が一斉に駆け出す。先頭はマジンゲルミュッド、逃げの戦法を取り後続を引き離そうとする。
しかし、ライスシャワーはそれに劣らず先行する。自力が違うのだ、弱者の逃げなど強者の先行の前には無意味である。
そんなライスシャワーに必死に食らいつくナイスメモリー。しかし、50mしか持たなかった。ナイスメモリーの全力はライスシャワーの手加減以下だ。
圧倒的な強さで一位を維持するライスシャワー。このレースで勝たねば退学がかかっている2年生のエンドレースは死に物狂いでライスシャワーに並ぶ。
「このッ!アタシは、勝たなきゃいけないんだよぉっ!どけ!」
エンドレースはライスシャワーに隠し持っていた砂を投げると勝ち誇ったような笑みを浮かべる。しかし、黒い刺客の前では無意味だ。長い前髪が砂を弾く。ライスシャワーはすこし目を細めただけに過ぎなかった。不正をしてでも勝とうとしたエンドレースの策略は圧倒的な力の前に敗れ去った。
(ライス、嫌われてるのかな…意地悪されるなら…!)
ギアを上げるライスシャワー。これでもうライスシャワーに追いつける者は誰一人として居ない。10バ身差をつけライスシャワーが一着でゴールイン。続いてエンドレースが、ナイスメモリーがゴールする。
「ふぅ、ふぅ……また、勝っちゃった…」
ライスシャワーが少しネガティブになっていると横で泣き声が聞こえた。ハッとした顔でライスシャワーが見ると、泣き崩れるエンドレースがいた。
「あ、あの…エンド、レースちゃん…」
「何よっ!?お前までアタシを嗤うのかぁ!そうだよ!アンタに砂をかけたのはアタシだ!だけど、アタシはこの勝負で勝てなかったから退学しなくちゃならない!勝ち続けているアンタに、アタシの気持ちなんかわかるもんか!」
「…ぇ…!?た、退学って…」
「〜〜〜っ!バカに、するなぁっ!」
ライスシャワーが衝撃を受けていると、激昂したエンドレースがライスシャワーに殴りかかってくる。思わず目を瞑るライスシャワー。だが、来るはずの衝撃は来ない。恐る恐るライスシャワーが目を開けると、そこには大きな盾を構えた虹色のデブ猫が居た。
「バーカ!こっちには盾があるんだよ!ライスシャワーは僕が守るッ(キリッ)」
「な、何よ…アンタ…!じゃま、しないでよ!」
両者が睨み合っていると、騒ぎを聞きつけた教官が駆けつけてくる。
「何があった!?……!エンドレース、貴様…失望したぞ!ライスシャワーの妨害をするに飽き足らずトレーナーに手を上げるなど!貴様には最早情け無用っ!即刻退学だ!………お前達、今日のトレーニングは中止だ。散れッ!」
そう言って、抵抗しようと暴れるエンドレースを引きずり退場していく教官。
「嫌ぁぁぁぁ!!!お母ちゃんとの約束がぁぁぁぁ!!!ライスシャワーぁぁぁぁ!!!!!お前さえ居なければぁぁぁぁ!!!!!!アタシは幸せにぃ!トゥインクルシリーズに出れたんだよぉおおおおおっ!!!!!お前さえ居なければぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「っ!う、ごめん…なさい…っ!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」
その場に蹲り、謝り続けるライスシャワー。だが、XXハンターは絶望する者を見捨てない。何故なら、彼の根底には英雄願望が、英雄の証があるのだから。
「ライスシャワー、この際ライで良いか。ライ、君は勝ったんだから喜んだら?」
「ライスが、ライスが全部わるいんだ…」
「アンチの言う事なんて気にすんなって!僕はキリト、僕はキリトだぁ!だからアスナであるライを守る!」
ライスシャワーにはXXハンターの言っていることはいまいち理解できなかったが、何となく慰めてくれているのだとわかった。
「そうだ!(叡智)えーっと、ハンターと、ライは…チームです!チーム君です!良いですか?耳をかっぽじってよく聞いてください!僕がライを守るからライはレースを頑張れ!アンチは僕が駆逐してやる!」
足りない語彙を用い必死にライスシャワーを慰めるXXハンター。この男、身内と認識したものには死ぬ程優しいのだ。
(あれ…全然違うのに、この人がお兄さまに見える。いや、気のせいだよね。でも…この人だけだ。ライスを悪く言わないのは。冷たい目で見ないのは。だったら…)
「ライス、あなたのチームに入りたいっ!ダメ、かな…?」
「いいよ!僕とライでチームだ!」
こうして、ライスシャワーは少し間抜けなトレーナーを得た。
XXハンターは能天気なので温度差でブリザードを起こしています。
咆哮獣ユウキ