ViVid Strike! バトローグ   作:紅乃 晴@小説アカ

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第二話 強者たちの鍛錬場

 

 

アーセナル・ボディメーカー。

 

略名でアーセナルと呼ばれるそのメーカーは、ストライクアーツ発展の礎となったDSAAと共に歩いてきた。

 

最初は吸水性、速乾性に優れたアンダーウェアなどを扱うメーカーであったが、ストライクアーツの競技人口が増え始めた頃に格闘技向けのウェアや防具、トレーニング用アイテムを展開。ほどなくして設立されたDSAAとメーカー初の業務提携を結び、爆発的な成長を遂げたのだった。

 

今では単なるスポーツウェアのメーカーではなく、DSAAとの共同出資によるアマチュア大会の主催や、イベント運営、選手向けのトレーニング機材などを手掛け、数年前から大規模なストライクアーツの専門施設を作ると同時に企業チーム「アーセナル」を発足。

 

プロリーグにて上位に位置し続けるほど、アーセナルのストライクアーツへの力の入れようは他に追随を許さないものとなっていた。

 

アーセナル・ロッジは、同メーカーが生み出したストライクアーツを主眼においた訓練施設であり、その施設の充実性は他の競技と共用で作られた施設とは根本的に異なっている。

 

特に目立つのは選手の独自性を優先した造りであり、アーセナル・ロッジは新たなる発見と才能の発掘、ストライクアーツの更なる発展と進化を目的に設立されたのだ。

 

ミッドチルダで初となるアーセナルロッジは自然豊かなアルトセイム地区に建設され、自然の覚悟さと柔軟性を取り入れた施設はプロチームにも人気で、予約も数年待ちという状態が続いていた。

 

 

 

 

 

 

「すごーい!!トレーニングルーム広っ!!?」

 

 

到着早々、リンネがぶっ壊れた。

 

普段はクールビューティーとファンから呼ばれ、親友であるフーカにも落ち着いた態度を見せるリンネが、まるで幼少期に逆戻り……というより、テンションが爆上がりして腕をブンブンと振るいながら施設を見て回っていた。

 

ドドド!!と言わんばかりに施設を走り回るリンネを、まさか全員で止めに行くことになるとは思っても見なかった。とりあえずアインハルトやフーカがはしゃぐリンネを捕まえてから改めて施設を見て周る。

 

アーセナル・ロッジは予約が半年先まで埋まっているとまで言われる最高峰のストライクアーツ専門施設。

 

普段使うトレーニング機材は最新式。さらに最新式として導入された仮想空間でのVR模擬戦。各階級のスパーリング相手が常駐するファイトルーム。そして広大な敷地を利用し数々のアクティビティが備わっている。

 

 

「見ろ、リンネ!ランニングコースめちゃくちゃあるぞ!?」

 

 

あっても5コースくらいだろうとタカを括っていたフーカが思わず仰天する。コース数は現実世界では15。仮想空間での擬似コースだと百種類近くあるのだ。しかも平坦なコースではなく、上り勾配や下り勾配も再現する最新式のランニングマシーンが備わっている。

 

 

「オーソドックスなコースから山道などの勾配がきついコースまで……」

 

 

現実のコースもそれに引けを取らない。アルトセイム地方の雄大な自然を活用した山道や、自然道。湖畔沿いを走るコースなど多種多様。とりあえず現実世界のコースは制覇すると息巻いてるリンネに、付き合うことが確定しているフーカは少しゲンナリした顔をしていた。

 

 

「宿舎大きい!!高級ホテルみたい!!」

 

「プールもすごい!!逆流プールとかもあるの!?」

 

 

宿泊施設も豪華。ロッジの名の通り、宿泊施設は五カ所存在し、それぞれが契約したチームが貸し切るスタイルとなっている。近くには競泳用のプールと、トレーニング用のプールの二種類があり、ヴィヴィオとミウラが目を輝かして見ているのは水流が進行方向と逆に流れる高負荷のプールだ。

 

少し歩けばアルトセイムの自然湖も利用できるため、水中でのトレーニングは申し分ない。

 

 

「ちなみにリングも五つ施設があって、その内一つがうちの貸切だ」

 

「ふおおお!!」

 

 

再び、その場にいる全員のテンションが上がる。とくにリンネとアインハルトは早くトレーニングがしたくてずっとソワソワしているようにも見えた。

 

アーセナル・ロッジは5チームが入れ替わりで入り、契約期間中は貸切でリンクも宿泊施設も利用できる。

 

5チームが定員なのは、せっかく充実した訓練施設が混雑して利用できない、などと言った要素を排除する目的もある。故に予約が半年も取れない施設となっているのだが、宿泊時の訓練密度は普段の練習とは比べ物にならないのだ。

 

まずは入場手続きをするためにメインエントランスに向かう必要がある。ついた途端に辺りをウロチョロするはしゃぎメンバーをとっ捕まえて、引率兼代表者のノーヴェは疲れたようにため息をついてきた。

 

 

「ありがとう、ザフィーラ。付き合ってくれて助かるよ」

 

「ミウラの引率のようなものだ。それに弟子でもあるしな」

 

 

横を見ると両肩にトレーニング用のウェアや防具、備品諸々が入ったバッグを抱えるザフィーラ。その後ろにはリンネの引率として同行するジルもいる。

 

今回は長期の合宿。ロッジという宿泊施設はあれど選手のサポートや飲料水の準備、トータル的なマネージメントや技術指導とやることは山のようにある。この二週間をヴィヴィオたちにとっていかに有意義にできるかはノーヴェや同行するコーチの采配に掛かっている部分もあった。

 

 

「……で、何でお前もついてきてんだよ。ウィンディ」

 

 

そう言ってノーヴェはザフィーラの影に隠れていたお手伝い役その1であるウィンディを睨みつけた。

 

 

「えぇー!だってノーヴェ姉が人手足りないからって言ってたから」

 

「だからザフィーラに声掛けたんだろうが……」

 

 

できればギンガに来て欲しかったのだが、彼女は夏季休暇中に別件の仕事がある。無理強いもできないので、ザフィーラとジルと自分でどうにかスケジュールを回そうと考えていたら、ナカジマ家の姉と妹が手伝いの名乗りをあげたのだ。

 

 

「まぁ良いじゃないか。二週間の合宿。色々とやることは多いだろう?」

 

 

ウィンディと共に参加してくれるチンク・ナカジマ。彼女は主に選手たちの記録や体調管理などを行ってくれる頼りになる姉だ。

 

 

「チンク姉。付き合わせちまうのが申し訳なくて……」

 

「スバルからもよろしく言われているからな。ここは姉として手伝わないわけにはいかないぞ」

 

「そうだそうだー!」

 

「ウィンディは余計だっての!」

 

 

チンクの脇に立って鬱陶しがるノーヴェに絡むウィンディと、それに声を上げるノーヴェ。間に挟まれるチンクはやれやれと言った表情で妹たちの喧嘩を眺めていた。

 

 

「なんだか、素の会長見るのは新鮮じゃなぁ」

 

 

ノーヴェの新しい一面を見てフーカが頷いている。その様子を見たヴィヴィオとアインハルトはなんとも言えない顔で、ザフィーラはとても優しい目をしているのが印象的だった。

 

メインエントランスへと着くと、ノーヴェたちが手続きのために受付へと向かった。残ったヴィヴィオたちはエントランスに待機。フーカとリンネは壁に飾られているDSAAの初代チャンピオンの写真やサイン入りウェアを見学していた。

 

アーセナルの歴史などの資料を見ながら歩いていると、フーカは前を見てなかったため、不意に誰かと肩がぶつかってしまった。

 

 

「おっと、失礼し……」

 

「どこ見て歩いてんだ、テメェ!!」

 

 

フーカの謝る声を遮ってぶつかった相手が凄まじい剣幕で怒りの声を上げた。咄嗟にフーガを庇うようにリンネが前に出る。

 

 

「な、なんじゃ!?不注意はすまんとは思ってるが……」

 

 

唸り声が聞こえてきそうなくらい威嚇する相手。毛先はブロンドで頭の天辺は黒髪。黄土色の瞳。耳には存在感を主張するピアスをつけていて、ジャージを着崩している姿はいかにもヤンキーといったような風貌だった。

 

そんな相手はジロジロとフーカとリンネを見る。彼女らが身につけるジャージには見覚えがあった。

 

 

「はん?ナカジマジムだぁ?ここはテメェのような雑魚が来る場所じゃねぇんだよ!」

 

「……なんじゃと!」

 

 

売り言葉に買い言葉。フーカの腹の底から響くような声に少し離れていた場所にいたアインハルトたちも何事かと視線を向けた。

 

リンネに止められながらも前に出ようとするフーカ。大切なジムを貶された上に雑魚呼ばわりとはどういうことだと怒りの表情を露わにしたと同時。

 

 

「やめなさい」

 

 

威嚇しまくっていた相手の頭に入場用の分厚いファイルが落とされた。ゴンっと明らかに硬い音が響き、喧嘩ムードだった相手は激痛に頭を押さえてうずくまった。

 

 

「すいません、うちのバカ娘が。この子少々拗らせていて」

 

 

私、こういうものです。レディースのスーツ姿で、ヤンキー娘を沈黙させた女性は呆気になるフーカとリンネに名刺を差し出した。

 

〝ブラッディ・グローブ。メインコーチ〟

〝エイコ・ロードスター〟

 

 

「こっちで蹲ってるのが私の教え子、レオナ・ルーチェ。見た目はアレだけど、結構強いのよ?」

 

 

その名刺を見たリンネが小さく声を上げる。ブラッディ・グローブはミッドチルダとは異なる世界、第3管理世界「ヴァイゼン」でワールドチャンピオンとなったチームの名だ。

 

リンネも試合でブラッディグローブの選手と戦った経験があり、まだストライクアーツを初めて間もない頃で、敗北した記憶が鮮明に残っている。

 

ニコニコと笑うブラッディ・グローブのメインコーチであるエイコ・ロードスター。彼女もヴァイゼンでのストライクアーツ覇者であり、引退後に名コーチとして名を轟かせる人物だった。

 

 

「拗らせてなんかねぇーッ!!」

 

 

ようやく立ち上がりながらエイコに噛み付くレオナ・ルーチェ。どうせまた誰かれ構わず喧嘩を売ってるんでしょう?とエイコは呆れ顔で言うと、レオナはうぐぐと言葉を詰まらせる。

 

 

「い、いえ、私も不注意でぶつかってしまって……」

 

「レオナ、年下の子に謝らせて自分は知らんぷりでもするつもり?」

 

 

先に謝罪したフーカに、エイコは罰悪そうに顔を背けるレオナにそう問いかける。ん?謝らないの?と詰めると、彼女は顔を背けたままつぶやいた。

 

 

「……すんませんした」

 

 

声ちっさ……ッ!そう思ったけど声に出さなかったフーカは偉かった。声に出していたら余計拗れること必須だった。騒ぎを聞きつけてアインハルトやヴィヴィオもやってくる。

 

必然的にナカジマジムの面々と、エイコとレオナが向き合う形になる中。

 

 

「またトラブル起こしてるの?勘弁してほしいものね」

 

 

横から竹刀袋を肩にかけた少女がレオナに声をかけた。全員の視線が集まる中、アインハルトは目を見張って驚いた様子だった。

 

 

「……レオ?」

 

 

竹刀袋を肩にかける彼女も、驚いた様子のアインハルト見て手を振って応じた。

 

 

「ハロー、アインハルト。まさかこんなところで再会できるとは思ってなかったわ」

 

 

私もです、と挨拶を交わす二人。フーカが不思議そうに二人を見ていると隣にいたユミナが困ったような顔をしていた。

 

 

「あー、話せば長くなるんですが……あの人はレオ・アーウィンさんで、アインハルトちゃんと、私の友人です」

 

 

飛燕式剣術、師範代のレオ・アーウィン。かつてDSAA、ミッドチルダの地方予選でアインハルトと対峙した古流剣術使いだ。アインハルトの覇王流の対となる飛燕式剣術の正統後継者であり、その剣術の発祥は覇王流と同じく古代ベルカのシュトゥラである。

 

彼女の祖先はアインハルトの側近騎士であったが、ベルカでの戦乱で二人は袂を分かち、殺し合いをした。結果、現代まで続く遺恨となったのだが、アインハルトの誠実さと覇王の遺恨を解消したことによって、レオとも和解。

 

後日、アインハルトの紹介でユミナとも出会い、三人は交流を続けていたのだった。

 

 

「飛燕式剣術……前にハルさんが言ってた古流剣術ってやつか……」

 

 

ストライクアーツはナカジマジムなどの近代格闘技といった系統が一般的だが、中にはベルカの戦乱期や、さまざまな文化で花咲いた流派を駆使して戦う古流武道の選手層もいる。だが、古流武道を極める者たちはDSAAの試合に出ない傾向が強い。

 

レオの有する飛燕式も同じくで、DSAAのミッドチルダ地区予選に出場したのは覇王として名を馳せるアインハルトの真意を確かめる目的があったから。

 

それ以来、彼女は公式の試合の場に出ることはない。飛燕式剣術は「人を殺す技」である以上、使い方を誤れば相手に癒えない傷を与えてしまう。それを悪戯に伝播すること、試合でひけらかすことを代々から禁じてきたのだ。

 

だが、トレーニングをしないとはいっていない。レオ曰く、飛燕式の流派は管理局や警備組織から高く評価されており、護身術兼、制圧武道として年に数回講師として招かれるのだとか。

 

飛燕式剣術の門下生を連れてアーセナル・ロッジにきたのもひとえに流派の鍛錬のためだと言っていた。

 

 

「レオ!今年こそはお前の生意気な顔面に一発入れてやるからな!」

 

 

そんなレオに噛み付くのは、ブラッディグローブのレオナである。二人には因縁があるらしく、レオナの吠え声にニヤリと笑みを浮かべながらレオは煽りを返した。

 

 

「できるならやってみなさい。できるものならね?」

 

 

ほら、この右頬に一髪入れてみてよ。とさらに煽るとレオナは瞬間湯沸かし器のように顔を真っ赤にして吠えた。

 

 

「ムッキィィイ!公式戦で出ないくせに偉そうに言いやがって!!」

 

「はいはい、落ち着いて」

 

 

バタバタと足を振って今にも掴みかかろうとするレオナをコーチであるエイコが羽交締めにして押さえていた。煽り顔をやめないレオ相手に鼻息を荒くする一方、それを見ていたアインハルトは状況が飲み込めずにいた。

 

 

「あの……お二人は……?」

 

「あぁ?!アタシらはチーム、ブラッディグローブ!そっちは古流剣術でチーム組んでる!アスアスなんとかってやつだ」

 

「チーム名はアストライアですよ、レオナさん」

 

「はん!クソライアで充分だろ」

 

「喧嘩なら買いますよ?」

 

「売ってんだよクラァっ!!くわわわーっ!!」

 

「やめろっつてんだろっ!」

 

 

放っておくとレオとレオナが延々と悪態と喧嘩の売り言葉買い言葉の応酬が続きそうだ。我慢の限界を超えたコーチのエイコが敵意丸出しで威嚇するレオナの頭にゲンコツを落とす。

 

一撃の元、元気いっぱいに喧嘩を売っていたレオナは地面に突っ伏して何も言わなくなった。最初にみた大人びた顔とはかけ離れたエイコの形相に全員が絶句すると、彼女はそれに気づいたのか「あはは」と笑って取り繕う。

 

 

「失礼。昔のクセが」

 

「あははは……」

 

 

ヤンキーチームを率いるエイコもまた、現役時代はオラオラ主義を地で走ってきた選手だったんだろうな、とその場にいる全員が察した。とりあえず首根っこを掴まれて大人しくなったレオナはエイコと共にメインエントランスの出口へと向かってゆく。

 

すると、去り際にレオナはフーカを睨みつけた。

 

 

「最初に言っておくが、お前らみたいなアマチュアでワイワイ楽しむなら……他所でやりな。アタシは、ストライクアーツに生活が掛かってる。この期間に邪魔をするなら容赦はしねぇからな」

 

 

怒り……というよりもそれは侮蔑。差別するような目をしているようにフーカは思った。

 

ストライクアーツに生活が掛かっている。奇しくもそれはフーカも同じだった。ミッドチルダでの上位ランカーになったフーカは補助金などが支給されている。

 

けれど、あそこまで張り詰めたような空気感はなかった。それはアインハルトやヴィヴィオたち、そしてリンネがいてくれたおかげだとも思う。

 

去ってゆくブラッディ・グローブのチームをフーカは何も言わずにじっと見据えていた。

 

 

「……全く、愛想がないと言うか好戦的というか、誰にでも喧嘩を売るというか」

 

「師範代ー!」

 

 

レオナのいい草に呆れるレオも、飛燕式剣術の同門や、チームメイトに声をかけられた。竹刀袋を持ち直して、彼女はアインハルトとユミナに手を振った。

 

 

「じゃあ、アインハルト、ユミナ。私も行くね」

 

 

去ってゆくレオと入れ違いになるように手続きを済ましたノーヴェたちも戻ってきた。

 

受け取ったパンフレットで、自分達が宿泊するロッジの場所と、貸切のリングなどの施設の説明の後、ノーヴェはこの施設内には他にもチームがいることを話し始めた。

 

 

「他のリングにはプロ、アマのチームが入ってる。暇があれば見学にでも行けばいいさ」

 

 

貸切ではあるが、ちゃんと話をすれば他のチームの練習を見学することもできるし、コミュニティも好きに構築してもいい。それがアーセナル・ロッジの基本方針だ。

 

学べる機会を貪れ。パンフレットの中にもその言葉が書かれている。

 

しかし、フーカは思った。あの喧嘩っぱやいやつのチームの見学にだけは行きたくないな、と。

 

 

「ノーヴェさん、どんなチームがいるんですか?」

 

 

リオが手を上げて質問する。ノーヴェは貰ってきた責任者用の資料をパラパラとめくりながら答えた。

 

 

攻撃主体の喧嘩殺法、ブラッディグローブ。

 

公式戦には出ないが管理局や警備組織に認められるほどの強さを誇る古流剣術使い、アストライア。

 

その二つはさっきフーカが遭遇したレオナ・ルーチェと、レオ・アーウィンが属するチームである。

 

 

「それに加えて、防御を主体とするガーディアン・トロイアと、もうひとつとんでもない奴らが今日からロッジに来ている」

 

「とんでもないやつら?」

 

「アーセナルが抱えるプロチームだ。なんでも今年は怪物がチームに加わったらしい」

 

「怪物……?」

 

「第4管理世界、カルナログ地区出身のワールドチャンピオン。アンネローゼ・ヴェルファイア」

 

 

その名を聞いて、アインハルトとヴィヴィオが息を呑む。

 

アンネローゼ・ヴェルファイア。

 

その名はストライクアーツを学ぶ者なら一度は聞いたことがある名前だ。

 

かつて、無敗のチャンピオンであるジークリンデ・エレミアとの激闘を繰り広げ、僅差で敗北してからはさらに鍛錬を積み、今では手がつけれないほどの強者にやっている。

 

圧倒的なセンスと攻撃力を持つそんな選手が、自分達と同じ施設でトレーニングをしている。

 

 

「そんな選手が……ここに集まってるんじゃな……ッ!」

 

 

フーカは鳥肌が立った。普段目にしない強者たちの鍛錬。それを見て学べることは多く、深い。リンネもアインハルトもヴィヴィオもリオもコロナとミウラも、みんなワクワクした顔をしていた。

 

 

「さて、じゃあとりあえず挨拶にいくぞ」

 

 

全員が荷物を持ってメインエントランスを出たところで、ノーヴェは進路を右に変えた。宿泊用のロッジは左だというのに。

 

 

「挨拶?」

 

 

全員が首を傾げると、ノーヴェは笑みを浮かべてこう続けた。

 

 

「私たちが二週間、お世話になる相手だ」

 

 

 

 

 

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