【本編完結】コントラクト・スプラウト ~ おじさんでしたが実在合法美少女エルフになったので配信者やりながら世界救うことにしました ~   作:縁樹

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175【秘境探索】車両が解禁されました

 

 

 大変満足感の高いお昼をごちそうになった後、再びラニと二人で探索へと飛び出した。きりえちゃんも誘ってみたのだが、残念なことに『やるべきことが残っておりますゆえ』と断られてしまった。

 お手伝いの申し出さえも丁重に固辞されてしまっては、おれに打つ手は残されていない。進んで家事を引き受けてくれるのはとても助かるのだが、彼女一人に負担を掛けるのもやっぱりよくないと思う。落ち着いたときにでも当番を決めるべきだろうか。

 

 

 

「午前中はあっち方向だったから……こっちいってみよっか」

 

「オッケー! 未踏のダンジョンとか見つかると良いね」

 

「良くないよ!?」

 

 

 能天気な相棒に苦笑を返しながら、生命力を感じさせる藪を掻き分け進んでいく。

 おれの視点の高さでは茎や葉しか目に入らないが、その代わり上空から俯瞰してくれるラニが目を光らせてくれているはずだ。

 

 ダンジョンなんていう非常識なものが、人の手の加えられた別荘地(跡地)に沸いているとは思えないが……そこまで行かずとも『おもしろい』ものを彼女ならば見つけてくれそうな……そんな気がし始めた、まさにそのとき。

 

 

 

「ねぇノワ、ちょっと待って」

 

「ん、んう? どしたの?」

 

「…………ここさ、もしかして……道じゃない?」

 

「え、道? …………いわれてみれば、足下固められてる……ような気もする」

 

「木の生えかたも不自然っていうか……枝が伸びまくってわかりにくいけど、ちょうど道の形に空いてる気がするんだよね」

 

「……すごい、ラニちゃんよく見てるなぁ。とりあえず写真写真」

 

 

 さすがにアスファルトやコンクリートで舗装されたりはしていないが……屈んでよーく見てみればその地面は確かに、人工的に敷き詰められたとおぼしき砂利で覆われている。

 周囲の地面は赤土だったはずなので、白っぽい砂利は尚のこと不自然だ。

 

 つまり、やはりこれは人工物……工事車両なんかが出入りしていた道路(跡地)なのだろう。

 

 

 …………ということは。

 少なくとも車両を出入りさせる必要のある場所が、この先にはあるはずなのだ。

 

 

 

「ねえノワ、そういえばテグリさんのおうちさ、『車両保管庫予定だったみたい』とか言ってなかったっけ?」

 

「…………方角的にも()()っぽいね。あっちはテグリさんちの近くに向かってて……つまり、こっちに辿っていけば」

 

「大きな道路に出られるはず、っと。……いいね! クルマごとおうちの裏まで寄せられるようになるかもよ!」

 

 

 

 今さらになって思い出したが……そもそもこの土地は、売れ残りの別荘区画を抱き合わせて一区画に併合したという経緯がある。

 元々は幾つもの別荘分譲区画に区切る予定だったはずであり、当然それぞれ別荘まで自家用車でアプローチできるようにも計画されていたことだろう。

 であれば、それぞれの区画にアクセスするための私道が計画されていてもおかしくはない。

 

 おそらくは、統合前の区画と区画の境目だったのだろう。今となっては併合された一つの区画の内部、草木に埋もれた砂利道でしかないが……少なくともこの道の行く先には、大きな可能性が待ち構えていることだろう。

 

 

 

「行ってみるっきゃ無ぇよなぁ!」

 

「いっそ道切り拓いちゃおうぜ! そのナイフなら出来るっしょ!」

 

 

 確かに……これが道であるのならば、拓いておいて損はない。仮に道路に繋がっていなかったとしても、敷地内の移動が楽になりそうだ。

 何よりも、どうせこの程度の魔力であれば……一晩眠れば回復する。

 

 

「よっし! いくぞ神剣『十三(キロ)』! おまえの力を見せてみろ!」

 

「気合い入れ過ぎるとマジで危ないから慎重にね!?」

 

 

 

 その後おれは、行く手を遮る低木や笹藪や竹藪を切り払い続け……数十年にわたって録な手入れがされていなかった道を、それはそれは破竹の勢いで切り拓いていき……

 

 

 別荘地『フォールタウン』内の舗装道路、おれの新居へと続く道の途中へと、()()()()()()()()()接続する場所まで辿り着いたのだった。

 

 

 

 

「あー……なるほどねえ。草で塞がってたのもあるけど……気づかないわけだよ」

 

「側溝、っていうか……排水路かなぁ。グレーチングも無いみたいだし……工事中は適当に丸太でも並べて、鉄板とかで橋渡ししてたんだろうね」

 

「本当『掘っただけ』みたいな有り様だ。たぶんだけど、水に削られて広がっちゃったのかな」

 

 

 Uの字というかVの字というか、石と土が露出してしまっているその側溝。よく見かけるコンクリートで形成されたものとは異なる形状であり、ちょっと『やっつけ』感が拭えない。長年雨水が流れ続けたことで一部が崩れてしまったのだろうか。

 今しがた切り拓いてきた私道の行き着く先。そこはアスファルト舗装された幅六メートル道路を目の前に……幅・深さそれぞれおよそ五十センチ程に及ぶ溝によって、非情にも絶たれていた。

 

 

「……どうするノワ、この溝モリアキ氏の車じゃ乗り越えられないよ」

 

「うーん…………繋いじゃうか。繋がれば便利そうだし。水がちゃんと流れれば良いわけでしょ?」

 

「そうだね。橋みたいにできれば一番いいと思う」

 

 

 ……実際に試すのは、勿論のこと初めてだ。この事態を打開しうる知識こそ会得しているものの、今までに使ってきた魔法よりも制御の難度は大幅に上だろう。

 だが、それでも。上手くいけば大きな恩恵が受けられる上、失敗したとしてもデメリットは特に無い。挑戦するためのコストも実質ゼロだし、何度でもやり直しが利く。……やってみる価値はありますぜ!

 

 

 

「というわけで、じゃあ…………【領地(シューレス)掌握(コンダクト)】」

 

 

 周囲の地形状況を探査・把握し、その構成成分を砂粒一つに至るまで完璧に掌握する。

 私道の終端、『橋』を架けるその位置を指定し、溝の底に水が充分流れるだけの幅と高さを確保し……それ以外を()()()()()

 材料なら周囲一帯に、それこそ()()()()()存在する。ただの土だろうと超高圧で圧縮すれば、立派な堆積岩(のようなもの)へと早変わり。

 

 さすがに一枚板で橋を架けるほどの強度は無いが、幸いなことに溝はそこそこの深さがある。アーチ構造を参考にブロック状の構造材を組み上げれば、シミュレーション上では大型トラックだろうと通過できる。……まぁ道幅的に無理だろうが。

 

 

「表面処理……こんな感じかな? なんちゃってコンクリみたいな」

 

「…………すっっっご……やっぱノワすごい。ボクが乗ってもびくともしないよ」

 

「……そりゃそうだろうね」

 

 

 魔法制御を絶やさず維持し続けるには相応の集中力を必要としたが……とりあえず形にすることはできた。

 一度や二度乗り入れる程度では壊れないよう造ったつもりだし、雨に晒されてもちょっとやそっとじゃ劣化しない。……と思うのだが、やっぱ定期的に確認しておこう。よっぽど劣化が見られるようなら、表面にコンクリでも打てばいい。それくらいなら費用もたかが知れているだろう。

 

 というわけで、入り口はこれで開通した。

 あとは……ゴール地点だ。

 

 

「じゃあとりあえず来た道戻って……テグリさんち前まで切り拓くか!」

 

「おっけー! 細かいとこはボクも手伝うよ!」

 

 

 

 刈り取った草木は道端に寄せて除けて、砂利道に埋まっていた根っこ部分も【領地掌握】で吐き出させ、最後に圧力を掛けて路面を固める。砂利道なのは相変わらずだが、これで圧倒的に走りやすくなることだろう。

 

 おれは土地開発魔法の熟練度をものすごいペースで稼ぎながら、秘境(おにわ)の開拓に打ち込んでいった。

 

 





【最近のつぶやき】


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□kinowaka-media_NOWA-IT:【白谷】けっこうしっかりした林がのこってる。木もまっすぐだし、小屋とか建てるのにもつかえそう #わかめ山
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