【本編完結】コントラクト・スプラウト ~ おじさんでしたが実在合法美少女エルフになったので配信者やりながら世界救うことにしました ~   作:縁樹

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176【探索終了】こんなんでええやろ

 

 

 未開の秘境(おにわ)の探索を進め、なんと一般道路から新居の裏手までの私道を整備し終えた後。

 思っていた以上の開拓っぷりに『こんだけ働けばバチ当たんないだろ』ということで早々に切り上げ、ラニが投稿してくれていたらしい開拓予定地の写真を確認してたところ……モリアキからおれのスマホへ一通のREIN(メッセージ)が届いた。

 先日、彼にはとある取引を打診していたのだが……今回晴れて『準備できたっすよ』との返答メッセージが得られたのだ。

 

 ……というわけで、休憩もそこそこに【門】を開いてもらう。

 一瞬で長距離を移動でき、モリアキと会いたいときに会えるので非常に便利だ。……白谷さん、いつもありがとうございます。

 

 

 

 

 

「お疲れっす先輩。一昨日ぶりっすか?」

 

「おすおっす。度々ごめんなモリアキ」

 

 

 というわけで、日曜日に引っ越し関連のアレソレを手伝って貰って以来となるモリアキ氏。

 先日は車を回収しなければならないということもあり、あの後わざわざモールへ飛び、そこから車を運転して帰宅したらしいのだが……ちょっと彼にばかり負担を掛けすぎたかもしれない。

 今後は彼も泊まれるよう、早めに客間を整備しておくべきだろうか。

 

 

「いえいえなんの。どうせ埃被ってたノートですし。必要なデータは吸い出してあるんで、あとは好きに使ったってください」

 

「ありがとう、ほんと助かる」

 

「ありがとうねモリアキ氏。ボクもパンツ見せたほうがいい?」

 

「ラニはいてないでしょ!! 直はさすがにダメだと思う!!」

 

 

 えっちが過ぎるイタズラ妖精さんの発言に、さすがに『ビキッ』と硬直したモリアキ。わかめちゃんのパンツは恥ずかしがりながらも喜んでくれる彼だが……厳密には人間ではない妖精さんとはいえ、さすがに直でお目にかかるとなると穏やかではない。

 彼はハイスペックで気が利いて、蓄えもなかなかだという超優良物件なのだが……おれ同様『陰』の属性の人物(キャラ)なのだ。ラニちゃんは少し手加減してほしい。

 あらためて頭を下げつつ、彼のお古のノートPCをありがたく受け取る。

 

 ともあれ……今はこちらだ。なんでもこのパソコン、以前出先で『仕事』ができるようにと購入し、実際一時期は重用していたらしいのだが……りんご印の高性能タブレットPCと鉛筆型専用周辺機器が登場して以来、すっかり使わなくなってしまったのだという。

 今となっては型落ちとはいえ、グラフィックのお仕事に使える程度には高性能。しかしりんご印が実践配備されてしまった以上、恐らく日の目を見ることはもう無いだろう。だからといって下手なPCよりは高性能なので、棄てるのも勿体無い……という話を以前聞いたのを思いだし、妥当であろう枚数の諭吉チケットと引き換えに、本日晴れて受け取りに馳せ参じた次第である。

 

 

 ラニの新たな技術と、このPC。……これがあれば、色々と新たな展開へと繋げることが出来るだろう。

 

 

 

「それっと……明日っすよね? 例の()()

 

「そうそう。十時にお伺いする予定だから、八時に出れば良いかなって。だからそれくらいの時間にまた来るけど……ほんとに運転頼んじゃっていいの?」

 

「先輩電車で行くのは気が重いでしょう? 大丈夫っすよ。三納(みのう)市までなら高速乗っても電車より安上がりっす」

 

「本業の締切とか大丈夫? 本当夜更かしとか気を付けてね? 疲れたら疲労回復の魔法掛けるから言ってね?」

 

「はは、大丈夫っすよ。……いざとなったら、そんときは頼らせてもらいます」

 

 

 明日というのは、ほかでもない、おれの新たな企業案件の商談に向かうにあたり、彼には同席をお願いしてあったのだ。

 

 個人勢の動画配信者(ユーキャスター)として生計を立てることこそ目的と掲げているものの、ぶっちゃけおれはその手の契約やらにさほど詳しいわけではない。

 鶴城(つるぎ)神宮の一件は正直例外中の例外だと思っているので、いろいろと参考にはならないだろう。

 

 フリーランスとして現在進行形で活躍する彼の知識を借りるため、また単純に一人だとちょっと寂しくて不安なため、彼には打ち合わせの場に同行をお願いしてあったのだ。

 おれは中身はれっきとした大人だが、見た目幼女一人だけだとさすがにナメられそう……というより、ともすると失礼にあたるかもしれない。なのでちゃんとした大人の男性であるモリアキに『マネージャー』のような形で同席してもらいたい、という考えに至った次第である。

 

 

 

「じゃあそういうことで、明日の八時。よろしくね。……寝坊してたら電話して……」

 

「オッケーっす。お庭探索お疲れ様です」

 

「んへへ。……あとそうだ、今晩ちょっとゲーム実況配信やってみようと思ってるから、よかったら見てみて! 二十時ね!」

 

「マジっすか!? 了解っす。楽しみにしてます」

 

 

 

 今夜の配信は、例によって告知がギリギリとなったゲリラ配信。ゲーム実況の予定ではあるが、どちらかというとテスト配信に近い。

 おれのメインPCは問題ないだろうが……サブPC――より正確に言うと、モリアキより譲り受けたばかりのハイスペックノートPC――がちゃんと動くのか、おれの思い描いているような配信が行えるのか。そのあたりをテストするための配信である。

 

 ……なので、そのあたりに詳しい視聴者(リスナー)さんがいてくれると、コメントとかで教えてもらえるので……ぶっちゃけ非常に助かるのだ。

 

 

 ともあれ……とりあえずはネット環境に繋ぎ、配信する予定のゲームをインストールしないことには話にならない。

 おれはあらためてモリアキに感謝の意を告げると、ラニが繋いでくれた【門】へと身体を滑り込ませ……新居の居間へと一瞬で帰還を果たした。

 

 

 現在時刻は……まもなく十七時。配信開始予定は二十時なので、作業に費やせる時間は二時間ほど。……だってゆっくり晩御飯食べたいし。きりえちゃんがせっかく用意してくれるんやぞ。

 しあわせな晩ごはんを堪能するためにも、おれはセットアップへ向かい動き出した。

 

 

 


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